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西鉄バスの行先や系統番号を表示する「方向幕」。日ごろ目にすることは多いけど、いったいどうやって作られているんだろう……?
実は、この「方向幕」づくりの道を極めたプロ集団がいる。「西鉄エム・テック」を訪ね、制作の裏側に迫る!
バスに表示されている行先や系統番号を表示する「方向幕」(正式名称「LED式行先表示器」)。西鉄バスでは前面、側面(左右)、後面の3カ所に表示されている。(連接バスは4ヵ所)
かつては布製とフィルム製で、変更する際には営業所ごとに手作業で入れ替えていたが(大変!)、西鉄ではおよそ30年前からLED式に。
通常運行しているバス以外の特別な方向幕もあり、「めずらしい」とSNSなどで話題になったものも少なくない。
例えば、2015年6月に「福岡ヤフオク!ドーム」で開催された「AKB48 41stシングル選抜総選挙」に合わせて運行された臨時バスの方向幕。この日限定のレアな方向幕はAKBファンやバス好きの間だけではなく、ニュースや記事でも話題に。
「ブラタモリ」など人気のテレビ番組とのタイアップで作られた方向幕も、なかなかインパクト大!
ドットで描かれるLED方向幕の世界って、けっこう奥が深い!
方向幕の製作を手がけるのは「西鉄エム・テック」だ。一般車両や車検・自動車などを扱っていた「西鉄モータース株式会社」と、西鉄バスの整備を手掛けていた「西日本鉄道株式会社 整備事業部」が統合して2004年に発足。長年蓄積されてきた他社にない技術とノウハウが強みだ。
同社はバス・大型車の整備を核とし、車の販売・交通広告・保険など車周りの商品・サービスを幅広く提供している。
近年は、西鉄バスグループを中心とした車両の車検・整備の基幹業務はもちろん、LED式行先表示器や車載設備機器、スマートバス停等の開発・販売・メンテナンス等の業務も担っている。
方向幕を製作するのはデータサービス係で、業務を統括する渡邉さん(写真右から2番目)をはじめ合計4名。メインで方向幕の製作にあたっているのは、小城さん(写真左)、坂井さん(左から2番目)、石川さん(写真右)の3名だ。
小城さん、石川さんは入社して19年。坂井さんは入社して18年。全員パートとして入社し、およそ20年来、方向幕づくり一筋!
バスに搭載されている方向幕……。きっと、工場などで作業服を着た方々が作成しているのかと思ったら…なんと!作成しているのは、なんとも和やかに仲の良さが伝わる全員女性のチーム「データサービス係」の4名だった!
これまで作ったなかで、印象に残っているデザインを教えてください。
テレビ番組とのタイアップで方向幕を作る機会も時々あります。番組に出演するタレントさんが方向幕を見てリアクションやコメントをしてくださると「やった!」とうれしくなりますね。
私はスクールバスの校章がけっこう記憶に残っています。校章って、緻密にデザインされていることが多くて、LEDのデザインに落とし込むのはすごく大変でした。特にカーブを描くようなデザインは難しいポイントのひとつ。そんな視点で方向幕を見ていただけると、一歩踏み込んだ方向幕の魅力を知っていただけると思います(笑)。
「ブラタモリ」用に制作した方向幕もお気に入りですね。けっこう好評だったんですよ!
私は「小倉城」のイラストをぜひ見ていただきたいですね。ぱっと見て小倉城とわかるリアル感を追求したかったので、石垣まで工夫して再現しました。「祝」の筆文字も、固定のフォントがひとつだけなのでそれにアレンジを加えたりして。けっこう手の込んだ作業なんです。
LEDで表現するには、サイズやドット数などデザイン上の制約があります。そこから「どんなふうにまとめようか?」と考えながら手を動かしていきます。
なるほど。簡単ではないのですね!
一つひとつ違うデザインなので、モニター上で試行錯誤しながら作業しています。ねっ?
そうなんです。大変だけど、それが楽しいんですよね。
依頼を受けたら、webで画像を検索したり、どんな方向幕がいいのかみんなであれこれと相談しながら作っていくんです。
自分たちの提案を採用してもらえたり、気に入って使ってもらえたりするとうれしいし、やりがいを感じます。
もはや“孤高の方向幕クリエイター”と呼んでも過言ではない、実行力抜群のスペシャリストたち。何から質問していいのか迷ってしまいそうだけど、まずは素朴な疑問から……。
てっきり情報系に強い男性の職員さんが担当するものだと思っていました。作業をするのに、専門の資格などはいらないんですね?
私たち、みんなデータ編集作業の応募があり採用されただけなんです。そこから、LEDデータ編集をメインで任されるようになりました。なので、まさかバスの方向幕をつくるなんて知りませんでした。
と言うことは、熱狂的なバス好きだったわけでもないんですよね?
はい、そうです(笑)。
お仕事はどのように分担されているのでしょうか?
エリアによって担当を分けています。私は福岡市外と北九州、小城さんは福岡市内メイン、坂井さんは福岡市内の一部と久留米地区です。
どこから尋ねるべきか迷うのですが、方向幕について詳しく教えてください。文字数の制限など、製作のルールはあるんですか?
車両のどの面に表示されるかによってサイズが異なるので、必要な情報を入力後、バランスをみながら微調整しています。モニター上ではうまく表示されていても、LEDで実際に点灯すると読みにくかったり見にくかったりすることもありますから。正しい情報を伝えられるよう、視認性に配慮しながら作業するのがポイントですね。
となると、英語や韓国語は難しいのでは?!
そうですね。英語はどうしても文字数が多くなってしまうし、韓国語は文字の線の傾きが違うと言葉の意味が変わってしまうので、特に細やかな調整が必要です。
西鉄グループ内で合計すると、バスの台数は2,430台(2022年度時点)。下書きの原稿を見ると、入力が終わるまで気が遠くなりそうですが……大丈夫でしょうか?
原稿の項目にひとつずつチェックマークを入れながら、ていねいに進めています。ダイヤ改正の時はけっこう大変なんですよ。一部変更があるだけでも、方向幕だけでなく音声案内や運賃表示との連動も変わってきますから。
そう。「音声・運賃・LED」。常にこの3点がセットです。
「音声・運賃・LED」……なんだか合言葉みたいですね!
そんなベテランスタッフ3名が製作している方向幕。いったいどうやって作られているのか、製作工程を覗かせてもらった。
西鉄バスは主に、一般道を走る「路線バス」と高速道路を走る「高速バス」の2種類がある。系統番号に合わせて本社の担当者がデータ作成依頼内容を作成。それを元に専用ソフトを使って該当する項目を打ち込んでいく。
こ、これは、なんだか気が遠くなりそうな作業だ……。
平仮名・カタカナ・漢字・英語(ローマ字)はキーボードで入力するだけでOK。韓国語(ハングル)の場合やイラストを作成する際は、作業者がフリーハンドでデザインをしていくので大変!入力を間違えると誤った情報が流れてしまうので、確認作業も慎重に進めていく。
データの入力が終わったら、データを書き出して専用のモニター機で確認作業。
方向幕と連動する車内アナウンスの音声データと運賃表示データもここで製作されている。
確認後、間違いがなければデータを書き出してメモリに保存。各営業所にデータを渡し、バスに搭載されている、専用機器にデータを読み込ませれば、走る準備は完了!
文字やイラストを織り交ぜながら、LED方向幕で自在にデザインを仕上げるプロフェッショナルたち。今回の取材では特別に、「エヌカケル」のオリジナル方向幕を作ってもらった。
挑戦してもらったデザインは、パントビスコさんがデザインしてくれた西鉄バスの公式キャラクター「ババ・バスオ」。依頼当初は「さすがに難しすぎる!」と返答があり実現は不可能かと思われたが……。
プロの技術でこんなにかわいいババ・バスオ方向幕が完成!
さらに、「エヌカケル」オリジナルの方向幕もオーダー。
実際に路線バスに搭載してみると、こんな感じ!すごい!
「にしてつキッズしごと体験スクール」や学生向けのインターンシップでは、方向幕の製作を実際に体験してもらいます。自分自身で手を動かして制作した文字や数字、イラストが西鉄バスに表示されるまでを体感でき、子どもたちや学生にはすごく好評ですよ。
日ごろは何気なく見ている「方向幕」も、よく見てみればけっこう奥が深くておもしろいものなのだと知ってもらえたらうれしく思います。
ちなみに、一般の方でも西鉄の路線バスの貸切りが可能。オプションでオリジナル方向幕作成も受け付けている。イベントやサプライズの演出で盛り上がるかも……?!
【問い合わせ先】
西鉄バス 営業第一担当 【電話】092-734-1412
●西鉄路線バス貸切り
最低5時間 3万5,000~4万円 ※詳細はお問い合わせください。
●オリジナル方向幕作成
※デザインなどにより金額は異なります。
西鉄エム・テック株式会社
機器サービス部 機器第二課 データサービス係 係長
西鉄エム・テック株式会社
機器サービス部 機器第二課 データサービス係
2005年1月入社。福岡市内エリアの方向幕製作を主に担当。
西鉄エム・テック株式会社
機器サービス部 機器第二課 データサービス係
2005年1月入社。福岡市外および北九州エリアの方向幕製作を主に担当。
西鉄エム・テック株式会社
機器サービス部 機器第二課 データサービス係
2006年1月入社。福岡市内の一部と久留米地区の方向幕製作を担当。
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