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日本代表の移動や宿泊などは 
西鉄旅行が支えている!
世界的スポーツイベント舞台裏

日本代表の移動や宿泊などは 西鉄旅行が支えている! 世界的スポーツイベント舞台裏

個人や団体旅行の企画や手配を手掛け、さまざまな顧客の要望に応える旅行会社。なかでも、西鉄旅行にはスポーツビジネスの移動・宿泊・食事の手配を専門にした「スポーツ営業部」があるらしい……?!

その活躍がメディアで取り上げられることはほとんどないが、古くは 1950年代からオリンピックやサッカーW杯などに出場するトップアスリートたちを支えてきた同部署。現在は国内のさまざまなプロスポーツチームの移動・宿泊手配を担当。時にはチームの勝敗に関わることもある重要な役割を担っている。

それにしても、なぜ福岡に本社がある西鉄旅行が業界で大きな役割を果たしてきたのか? 東京都文京区本郷の日本サッカー協会(以下、JFA)の拠点・JFAハウス内にある西鉄旅行スポーツ営業部を直撃取材した。

目次

  • 長谷川 英司 さん
    長谷川 英司 さん

    西鉄旅行株式会社
    スポーツ営業部 部長

    1994年入社。 国際線の団体予約を担当後、2002年のFIFAワールド杯以降サッカーの仕事に従事。事務局員や役員の手配を主に手掛けてきた。東京スポーツ支店、東京スポーツ第一支店(業務拡大による分割)の支店長を経て、2022年4月から営業部長。

  • 髙橋 健一 さん
    髙橋 健一 さん

    西鉄旅行株式会社
    スポーツ営業部 東京スポーツ第一支店 支店長

    2007年入社。1年目は法人企業の出張手配を担当。2年目以降はスポーツプロモーション支店に異動。2010年10月~2012年9月まで2年間JFAへ出向。2015年からサッカー日本代表チームを担当し、2022年4月から東京スポーツ第一支店の支店長。

「JFAハウス」内に拠点を持つ 「スポーツ営業部」

取材会場は日本サッカー協会が拠点を置く「JFAハウス」。JFA 事務局のほか、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)や日本フットボールリーグ (JFL)、日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)など国内のサッカー事務局や関連企業が入居する。

また、1階には2002 FIFA W杯の開催を記念してJFAが開館した「日本サッカーミュージアム」があり、日本サッカーに関する写真や資料が展示されている。JFA関連の部署に囲まれるなかに「西鉄旅行」の拠点があるのは驚きであり、両者の関係の深さがわかる。

スポーツ営業部は全体で約30名。第一支店と第二支店に分かれている。全社では、サッカーJ1の18チーム中9チームのほか、バスケットB1の22チーム中9チームを担当。その他、野球、アイスホッケー、ラグビーなど、40 を超えるプロスポーツチームの遠征支援業務に加え、自社開発のシステムで審判員や関係者の宿泊・移動手配も一手に受託している。

西鉄旅行の歴史|業界のパイオニアとして~JFAとのつながり~

西鉄旅行が最初にスポーツ事業に取り組んだのは、まだ戦後の空気が残る1952年のこと。西鉄旅行の前身である「西日本鉄道(西鉄)航空輸送部」時代、日本が戦後初めて参加したヘルシンキオリンピック大会がはじまりだった。

これを機に、各国で開催されたオリンピックの選手団の輸送を担当して各競技の団体とつながりができ、スポーツ事業に力を入れてきたそうだ。オリンピックについては2008年の北京オリンピックまで担当。この時は、日本選手団の派遣以外に企業インセンティブ、視察ツアー、観戦ツアーの実施など、2,000人規模の手配を担った。

とりわけJFAとは強い連携を保ち続けてきた西鉄旅行。JFAが財団法人化する以前から「公式旅行代理店」の1社として深い関係性を築き、サッカー界の拡大とともに、 なでしこジャパンやユース代表の遠征、来日する対戦国の受入業務へと範囲を拡大。

2012年のロンドンオリンピック、会場はサッカーの聖地・ウエンブリー。
サッカー女子代表は決勝で惜敗して銀メダルに。

2006年以降の「AFCアジアチャンピオンズリーグ (ACL)」 では、日本から出場する全チームの輸送を担当し、Jリーグチームのシーズン遠征の仕事にも手を広げている。

サッカー日本代表の遠征事業では、宿泊輸送担当のチームスタッフとしてチームに帯同する社員を派遣することもあると言う。この日インタビューに答えてくれたスポーツ営業部・東京スポーツ第一支店の支店長・髙橋健一さんも、約2年間JFAに出向し、その後チームメンバーとして今も日本代表を支えている。

ロシアW杯での集合写真がTwitterで話題に

髙橋さんと言えば、2018年のロシアW杯でのベースキャンプ地・カザンで撮影した、MF本田圭佑選手やDF長友佑都選手が招集されていたサッカー日本代表の選手たちとのサプライズ集合写真がTwitterで話題に。写真はあっという間に拡散され、一部メディアからは後日取材を受けるなど、一部のファンの間ではすでに有名人だ。

みんなに呼ばれて撮影現場に合流した髙橋さんが分厚いダウンジャケットを脱ぐと、なんとピチピチのユニフォーム姿。体にみっちりと張り付いたユニフォームをよく見ると、おへそまで出ている(笑)。チームスタッフの「身体を張った」サプライズに現場が和み、その様子がメディアに取り上げられたのだった。

話題となった記事はコチラ↓↓
(出典)ゲキサカ
https://web.gekisaka.jp/news/japan/detail/?247184-247184-fl
高橋さん
高橋さん

私は映るつもりはなかったのですが、 チーム内で「何かおもしろいことをやろう!」 というムードになりまして……。ユニフォーム姿だけならまだしも、当時の西野朗監督が座る場所に私が座ることに。監督のポジションをお借りするのは恐れ多かったのですが、座るように促したのは、実は西野監督なんですよ(笑)。

まあ、おもしろい雰囲気が作れたのであれはやって良かった。それにしても、自分ではそれほどウケると思わなかったし、まさかあんなにカメラマンがいるとは驚きでした。

こうしたエピソードからも、日本代表と西鉄旅行の深い関係性がよくわかる。

ロシアW杯の第2戦があったエカテリンブルグのチームホテル、試合当日のキッチンの様子。
「ホテルの皆さんの協力も得ながら、試合に臨みました」(高橋さん)

西鉄旅行の仕事

アスリートを支える “影の”立役者

スポーツ選手の輸送において業界トップクラスの実績をもつ西鉄旅行。しかしながら、その活躍が表舞台に出たり、メディアに取り上げられたりするケースはごくわずかだ。

取材の様子。長谷川さんはオンラインで参加
長谷川さん
長谷川さん

スポーツ営業部の仕事は公にできない情報も多く、私たちの仕事が表に出ることは従来ほとんどありませんでした。こうして取材を受ける機会と言えば、社内の広報誌くらいでしたね。スポーツ営業部志望の新入社員が増えてきたのはこの10年ほど。観戦ツアーを開催したり、スタジアムに看板を出したりして露出が増えたので、名前を知ってもらえるようになったんだと思います。

私は福岡の飯塚出身なので 「西鉄」は身近な存在でしたが、高校時代はブラスバンド部で、スポーツ畑の人間ではありませんでした。 観光業界に興味があり、地元の旅行会社ということで西鉄旅行を志望しました。こうしたスポーツ関連の事業部があることは、入社するまでまったく知りませんでしたね。

高橋さん
高橋さん

私は東京出身なので福岡と縁はなかったのですが、ラグビーをしていたのでスポ一ツは身近でした。私も旅行業界に興味があり、お客さまの旅のお手伝いをしたいと思って入社に至りました。

偶然ですが、学生時代に入社が決まった後、国立競技場で警備のアルバイトをしていた時に現場で、後に西鉄旅行の先輩となる方が会場で仕事をする姿を見たことはあります。会場で電話しながら仕事をしていたので「西鉄旅行はスポーツの現場での仕事もあるのか」と、その時初めて知りました。

JFAとのつながり

長い歴史のなかで、強固な関係性を築いてきた西鉄旅行とJFA。西鉄旅行は具体的にどんな業務を担当しているのか。

サッカー日本代表チームに関しては、手配だけでなく国内外を問わずメンバーの一員としてチームに帯同するのが通例。年間100日ほどはチームに帯同しているそうだ。帯同するようになったのは、1993年にカタールの首都・ドーハで開催されたアメリカW杯アジア地区最終予選が最初(いわゆるドーハの悲劇)。

Jリーグなど国内のチームの試合では、リーグのカテゴリによって定められた予算や規定に則って手配を進めるが、日本代表チームなどのトップチームについては予算よりも「勝ち」 優先。結果につながるよう、選手のコンディションが整えられる環境を準備する。

全体のスケジュール管理はチームのフィジカルコーチが担当。試合時間を軸に組み立てられる。西鉄旅行はそれを受け、スケジュールに合わせた宿泊先や食事先をアサインする。主な業務は一般の個人・団体客と変わらないが、選手やチームにとっては「旅行」ではなく「仕事」であることが大きな違い。

また、選手と審判員でも手配の条件が異なる。審判員の場合、担当する試合に出るチームと同じホテルに泊まるのはNG。サポーターなど周囲を気にする方も多いため、試合後の移動は少し時間を遅らせるなどの配慮が必要となる。

審判専業ではない人も多いため、最終便で必ず当日中に移動が必要だったり、当日の朝しか移動できなかったりという場合もある。台風などのイレギュラーが起こると大変なのは想像にたやすいが、そこが腕の見せどころ。「例え早朝や深夜でも、状況に合わせてでき得る限りの対応を考えます」(長谷川さん)。

試合に出るチームの宿泊手配も西鉄旅行が担当しているケースも多く、それならば話は早い。試合ごとに選手と審判員の動きを社内で共有できるため、その分スムーズに手配できる。こうした連携が持てるのも、スポーツ業界と幅広く連携してきた西鉄旅行の強みだ。

日本代表チームとともに世界へ

海外での移動は、飛行機とバスがメイン。国内では、サッカー協会が去年から新しくチームバスを導入し活躍中だ。

コロナ禍の影響でファンと選手との交流は機会が限られるが、「バスは停車していれば写真撮り放題なので、どこに行ってもけっこう人気なんですよ」(髙橋さん)。日本代表を象徴する「SAMURAI BLUE」の文字は、どこを走っていてもすぐに目につくそうだ。

サッカー日本代表チームの場合、監督によってスケジュールの組み立て方や方針が異なり、選手によっても要望が変わるので個別のリクエストを受ける場合もある。例えば、食事制限を設けている選手も多く、特に海外では細やかな配慮が必要になる。

高橋さん
高橋さん

前の担当者は試合会場にも同行してボール拾いをしていたこともあると聞きましたが、私が担当するようになった2015年以降はチームスタッフの人数が増えてきたこともあり、練習には帯同しないことが多くなりました。

選手たちを送り出して戻って来る間に、部屋の清掃状況や食事の確認、次の移動手配、海外の場合は買い出しなどを済ませておきます。 試合は状況次第で観に行くこともありますよ。

えっ、印象に残っている監督ですか? ハリルさん(バヒド・ハリルホジッチ)でしょうか(笑)。外国人監督では珍しく毎日協会に出社され、執務部屋のレイアウトをご自身の好みに合わせてカスタマイズされるなど、細かなエピソードが記憶に残っています。

W杯で訪れた海外でのエピソード

旅先ではトラブルの連続

代表チームとともに国内外を駆けまわる西鉄旅行。現在も日本代表を担当する髙橋さんを中心に、サポーターの一人として率直な疑問を投げてみた。

宿泊先はいつも決まった場所なんですか?

高橋さん
高橋さん

国内で代表戦ができるスタジアムは限られているので、どの開催地でも「定宿」は持っています。監督の方針や試合時間にもよりますが、一度流れをつかめば事前に宿泊先に動きを伝えておくこともできますしね。関係性が強い宿泊先には、いつも柔軟に対応していただいています。

宿泊場所は、やはり事前に下見するんですか?

高橋さん
高橋さん

もちろん、宿泊先は最重要なのでJFAのスタッフさんとホテルを周って視察します。Webだけではわからない情報も多いので、やはり直接確認するのがいちばんです。

下見のチェックポイントは?

高橋さん
高橋さん

海外の場合、セキュリティ面を重視して、他のお客さまといっしょにならないようフロアごと貸し切りできるのが必要最低条件です。 60部屋以上使うことになるので、もし1フロアでおさまらなければ2、3フロアにわたる場合もあるでしょうし、 ケースバイケースですね。日本だときちんとしたフロアの見取り図を送っていただけるのですが、海外のホテルだと客室の扉の裏に貼ってある避難経路図の荒い画像が送られてきたこともあります(笑)。

海外らしいエピソードですね。そのほか、海外でのトラブルはなかったのでしょうか?

高橋さん
高橋さん

う~ん、いろいろありすぎてぱっとは思い出せませんね!(笑)。お願いしていたスケジュールが伝わっていなかったり、選手がいる時に清掃スタッフが入ってしまったり。小さいトラブルはいろいろあります。後から思い出せば、基本は笑えることばかりですよ。たまたまどこかで行き違いがあったのでしょう。ええ、そう思うようにしています(笑)。

心が広い!

高橋さん
高橋さん

海外でプレーする選手も多いので、選手も慣れている面もありますし、私自身も順応できる術は身についてきたと思います(笑)。

忘れられないロシアとヨルダン

なかでも、特に印象的なエピソードを教えてください。

高橋さん
高橋さん

そう言えば、2018年に開催されたロシアでのW杯でのことです。初戦となるコロンビア戦の早朝、ホテル中で火災報知器が鳴り続けるトラブルがあったんですよ。午前3時か4時ごろだったと思いますが、10分以上経ってもベルがずっと鳴りやまないんです。

 何事かと思って下のバーに降りると、深夜というか、早朝と言える時間なのにたくさんの人がいて、みんな平然とお酒を飲んでいる(笑)。実際、試合には勝てたので良かったのですが、「大切な初戦前に・・・・・・」と後から思い返すと冷や汗ものでした。

長谷川さん
長谷川さん

私が思い出に残っているのは、2010年に南アフリカで開催された FIFA ワールド杯です。 担当していたのは報道関係者総勢 200人ほど。 時差もあり、環境も違うので大変ななか、日本はグループリーグを通過し、自国開催以外で初の決勝トーナメント進出を果たしました。

試合に勝つと次の会場への移動が必要なわけですが、試合の勝敗はこの時特に予想しづらく、勝った瞬間に急いで手配を進めました。宿泊先を確保できないと困るので、勝った瞬間に確保できるよう事前に話を振っておくようにはしていますが、予算を動かして仮押さえをするのは難しいので苦労しましたね。

高橋さん
高橋さん

そう言えば、ヨルダンからの帰りもハードじゃなかったですか?

長谷川さん
長谷川さん

ああ、そうだった! 2014年のFIFAW杯・アジア地区最終予選で、ヨルダンのアンマンで試合をした帰りでのことです。チームに帯同していた私も髙橋も、ハードスケジュールのなか 24時間ほとんど寝ていない状態で飛行機に乗ったので、席についてすぐに寝てしまったんです。

1時間か2時間ほど眠ったと思うのですが、なんと目覚めても飛行機は飛んでないまま。トラブルで離陸ができない状態だったんです。急いで日本に電話してスケジュールを調整し、何とか事なきを得ました。

スポーツ選手と業界を支える仕事の魅力

今まで行ったことがあるのは何カ国ぐらいですか。かなりたくさんの国に行かれたのでは?

高橋さん
高橋さん

数えたことはありませんが、 50とか 60カ国かな? サッカーの代表チームはアジア予選がメインなので、一般の旅行ではなかなか行かない中東の国に行くことも多いですね。

長谷川さん
長谷川さん

私が担当になってから、中央アジアを除いて行ってない中東の国はないと思います。北朝鮮にも同行しましたしね。その時は外務省に特別に許可をもらって入国しました。いろいろと大変だったのでいちばん記憶に残っていますが、詳しいことはヒミツです。

部署内で担当の変更や支店の異動などはあるのでしょうか。

高橋さん
高橋さん

状況によってあり得ますが、スポーツは人脈や信頼が重要なので、配置転換の際はチームの状況をみながら考えます。 「長くいっしょにいてほしい」 と言っていただけるとありがたいなと実感します。

長谷川さん
長谷川さん

各スポーツで担当するチームが年々増えているので、その時は「さあ、どうしよう」という感じです (笑)。

確実性と臨機応変な対応が求められる、責任感あるお仕事だと思います。働くうえで大事にしていることは何ですか?

高橋さん
高橋さん

サッカーの代表チームに帯同するのは年5、6回で、1回あたり10日ほどです。その10日間何事もなく試合が終わり、「お疲れさまでした」と選手が無事に帰路に着いてくれるのがいちばんです。

長谷川さん
長谷川さん

私も同じ考えです。選手でも審判員でも、移動でストレスなく、万全な態勢で試合に臨めるように。仕事をするうえで常にそう意識していますし、部署のメンバーにも伝え続けています。

高橋さん
高橋さん

そこに良い結果がついてくると最高ですけどね。

長谷川さん
長谷川さん

本当に! できる限りのサポートを続けたいと思います。

ありがとうございました。

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