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西鉄の住宅事業がベトナムへ!
次々と大規模住宅開発を進める
海外開発事業部の仕事とは?

西鉄の住宅事業がベトナムへ! 次々と大規模住宅開発を進める 海外開発事業部の仕事とは?

西鉄電車・バス沿線地区を中心に戸建住宅やニュータウン、分譲マンション、シニアマンションなどの開発を手掛ける西鉄の不動産住宅事業。近年は首都圏や九州の主要都市にも進出し、ますます市場を拡大しています。
2015年には、これまで積み重ねた経験や実績を活かし海外にも進出! なかでも経済成長著しいベトナムでは活発に住宅開発を進めています。

なぜ西鉄が海外で住宅事業を?なぜベトナムに? 事業の最前線で奮闘する海外開発事業部の社員に話を聞きました。

目次

GDP成長率7.72%と経済成長が続くベトナム

あなたは「ベトナム」と聞いて何を思い浮かべますか? 生春巻きやフォーなどのベトナム料理、伝統衣装アオザイに身を包んだ女性、カラフルなベトナム雑貨、アジアならではの雑多な市場――。もちろんそういった魅力がありながらも、現在のベトナムは既存のイメージだけでは語れないほど、目まぐるしい発展を遂げています。
まずは、ベトナムの今を感じることから始めてみましょう。

ベトナムは、東南アジアのインドシナ半島に位置する国。正式名称は、ベトナム社会主義共和国といいます。国土は日本の総面積から九州を除いたほどの広さで南北に長く、首都・ハノイがある北部は四季がありますが、最大都市・ホーチミンがある南部は常夏の気候です。

人口は世界15位の約9,850万人(2022年)。なかでも注目したいのは33.3歳という平均年齢です。日本の平均年齢48.5歳と比べるとその差は歴然。若い力に溢れる国ということがわかります。

また、社会主義国家でありながら資本主義的な国策を取り入れた経済面の成長も注目を集めています。コロナ禍で世界各国のGDP成長率が伸び悩む中、ベトナムはプラス成長をキープ。2022年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率は前年同期比7.72%と絶好調です。

その理由のひとつに、世界的企業のベトナム進出が挙げられます。“世界の工場”と呼ばれた中国以外にも生産拠点を置く「チャイナプラスワン」という動きの広まりにより、ベトナムで数多くの工場が新規稼働。輸出力を高めた結果、急激な経済成長が続いているのです。

経済的に余裕が生まれると同時に、若い世代のカルチャーも活発化。ストリートウェアのブランドがいくつも誕生したり、おしゃれなカフェやレストランが増えるなど、街の風景もひと昔とは一変しています。

なぜ西鉄がベトナムで住宅開発をすることに?

2015年からスタートした海外での西鉄の住宅事業。立ち上げの背景や現状などを海外開発事業部に所属し、ベトナムの住宅開発に携わる3名の社員に聞きました。

  • 春山 幸嗣 さん
    春山 幸嗣 さん

    西日本鉄道株式会社
    海外開発事業部 ベトナム駐在所長 兼 アセアン事業統括 

    私鉄系企業で都市開発や海外事業に携わり、2022年1月に入社。3月にベトナムに渡り、現地の駐在所長を務めている。現地で同時進行する複数のプロジェクトマネジメントを担う。

  • 稲益 晃仁 さん
    稲益 晃仁 さん

    西日本鉄道株式会社
    海外開発事業部 ベトナム担当 係長

    2010年入社。入社以来、住宅系の部署に所属し、2018年から現職。福岡本社からベトナムの事務所とやり取りをし、新規案件の調整や既存案件の業務に携わる。

  • 久野 博江 さん
    久野 博江 さん

    西日本鉄道株式会社
    海外開発事業部 ベトナム担当

    2015年入社。入社当初からベトナムの住宅開発を担当。福岡本社での勤務を経て2017~2020年にホーチミンに駐在。コロナの影響で帰国したが、2022年から長期出張が可能になり、現地と福岡を行き来しながらパートナー会社とのミーティングや現地調査などに携わっている。

海外開発事業部はどんな部署ですか?

稲益さん
稲益さん

当初は、国内の住宅開発を行う住宅事業本部がベトナムの住宅開発を行っていました。
2015年から始めた海外での住宅事業がある程度の規模になってきたことや、住宅に限らず商業やオフィス、物流などの施設にも展開していきたいという狙いもあったため、2020年に海外開発事業部として独立しました。
現在はベトナムに加え、インドネシア、タイ、アメリカ、フィリピンの計5ヶ国で住宅開発を行っています。また、アメリカでは物流施設の開発を手がけた実績もあります。

西鉄が海外での住宅開発を行うようになった背景は?

稲益さん
稲益さん

西鉄の住宅開発は前身会社から数えて110年以上の歴史があり、多くのノウハウが蓄積されています。
この経験や実績を活かし、海外の方にも喜んでいただける住宅を提供したいという思いから市場調査を開始しました。これからの住宅需要はもちろん、国民性や親日国であることなどさまざまな条件設定をして調査を進めていました。
といっても法令や外資規制、市場環境、商習慣など日本とはまったく異なる環境のなか、西鉄1社で住宅開発を行うことは現実的ではありません。

そんな中、ベトナムの最大都市・ホーチミンを拠点に『これまで住宅をもっていない方に安価でいい住宅を』という西鉄の住宅事業と相通じる理念をもつ現地の大手ディベロッパー、ナムロンが手がける分譲マンションプロジェクトに参画することがまず決まり、同じく海外市場への進出を計画していた阪急阪神不動産に賛同いただき、3社での共同事業が始まりました。

現在開発中の案件・AKARI CITYの起工式。現地のディベロッパー、ナムロンや西鉄、阪急阪神不動産の社員が工事の安全と順調な進捗を祈願した。
ホーチミンに西鉄、阪急阪神不動産、ナムロンの3社共同事業会社を設立し、事業を進めている。

仲間がいれば安心ですね。3社の共同事業であることのメリットは?

春山さん
春山さん

単独で事業を行うよりも多くのノウハウが集まることになりますし、知の探索にもなります。ナムロンはベトナムにおける実績に基づくアイデアを、そして阪急阪神不動産や西鉄は長年培った日本での経験に基づく意見を通わせ、現代のベトナムの人々が求めるよりよい住宅を供給できるよう3社で日々力を合わせています。

ウォーターポイントPJの開発現場を訪れる春山さん。ナムロンの会長および建設チームと工事進捗の確認中。

西鉄に求められるノウハウとは何でしょうか?

春山さん
春山さん

1,000戸売りに出せば1,500件の予約が入るほど需要が高かったベトナムの住宅事情は転換期を迎えています。
以前のように出せば売れるという状況は終わり、これから先はより価値を求められる時期がやってきます。開発の現場でも、スマートシティやエコシステム開発、ソーラーパネルの設置、循環システムの構築など、日本でも欠かせない条件になりつつある住宅開発の技術や知識が話題に上ることが増えています。
私たちがそのような新しい技術をどこまで提供できるのかが、今後の検討課題だと感じています。

久野さん
久野さん

ベトナムではここ十数年程度で住宅開発が一気に進んだこともあり、現地のディベロッパーは未経験な部分も多くあります。そのような時に、私たちが積み重ねた経験や知識の提供が喜ばれていると感じます。起こりうるトラブルの予想にはじまり、使いやすい間取りや素材の提案などこまごましたところまで、多岐にわたるアドバイスを行っています。

住宅設備の要望はベトナムならではのものがありそうですが。

春山さん
春山さん

私たちが重点的に開発を進めているベトナム南部の都市・ホーチミンは一年を通して真夏の気候です。ガラスひとつをとっても遮光性があるものや、雨季に合わせた換気循環システムなどを考慮せねばなりません。

そういったベトナムの方々の要望を聞き、他社がまだ行っていないことやものを取り入れて住宅に価値を持たせることができれば、より選ばれる住宅を提供できるのではないかと感じています。日本にあるものや我々がいいと思ったものをただ押し付けるのではなく、現地ニーズに合わせた必要とされる住宅を作っていきたいですね。

ウォーターポイントPJ内に設けられているモデルハウスの現場確認の様子。

海外で事業を行う苦労はありますか?

春山さん
春山さん

現地のパートナー企業はまだ『作れば売れるプロダクトアウト』という意識がまだ強く、我々が進めたい『お客さまの意見を取り入れていいものを作るマーケットイン』というロジックをなかなか理解してもらえないのが苦労している点です。
しかしお互いをリスペクトして何度もフィールドワーク・ブレスト・ディスカッションを通して最適解を見つけていくところが海外企業とのパートナーシップやベトナムという国のダイナミズムを感じられる時でもあります。

久野さん
久野さん

アフターセールスに苦労しています。初めて家をもつ人が多いベトナムでは、住宅を購入した後の管理に関する文化が根付いていません。日本では当たり前となっている管理費や修繕積立金を払ってメンテナンスを行い、資産価値を保つということを理解してもらえず、その費用が集まらないのです。

私たちの案件だけでなく、他社でも同様の問題が起きているようで、管理が行き届かず建物の質が落ちているという話を聞くことも。どのようにすれば私たちの経験を活かせるのか、パートナー企業と協議をしながら様々な試みを行っています。

最近の日本人とベトナム人のスタッフでの懇親会の様子。

逆に、海外で働く面白さを感じることは?

春山さん
春山さん

実際に現地に行き、その国を肌で感じられることです。赴任して半年ほどですが、ベトナムの人たちと出会って、仕事をして気づいたのは、とても勤勉で、与えられたタスクに対しての責任感は時に日本人よりも強いと感じます。そういった環境下に身を置くことにより更なるモチベーションにつながっています。
こういった国民性もベトナムの躍進の一因となのだろうと感じています。

特に、一緒に働くことで気づくことも多いのでしょうね。久野さんはいかがですか?

久野さん
久野さん

経済発展の途中にあるので、街もビジネスもダイナミックに動いていて、その中で働けるのが楽しいです。
ホーチミンも最初に訪れた頃に比べてどんどん高層ビルが増え、街の風景が変わりましたね。そして、若い人たちが『未来はよくなる』と信じていてとてもエネルギッシュ。トライ&エラーの精神で失敗を恐れず積極的に新しいものにチャレンジする姿勢に刺激を受ける毎日です。このような経験がベトナムで働く醍醐味だと思います。

ホーチミンの駐在員事務所からの風景

大規模住宅開発「AKARI CITY (アカリシティ)プロジェクト」の全貌に迫る!

夜のアカリシティ(イメージ)(AKARI CITYのHPより)

現在、開発を行っている「AKARI CITY」はどんな住宅ですか?

稲益さん
稲益さん

ベトナムで手がける5案件目となるプロジェクトで、5,200戸からなる大規模の分譲マンション事業です。
2018年に事業参画し、2019年から販売を開始しました。1~3期に分けて開発が進み、1期はすでに竣工・完売し、多くの方が暮らしています。現在は2期の工事が行われています。

5,200戸!? 家族が住むと考えると小さな町のような規模になりそうですね。

久野さん
久野さん

マンションの1階部分には生活する人が必要とするスーパーやコンビニ、フィットネスジムなどがあり、今後は薬局や幼稚園などもできる予定です。常夏のホーチミンに欠かせない大きなプールやベトナムの方たちが大好きなカフェはよく賑わっています。すべて完成した後は、AKARI CITY内で暮らしのことは事足りるような充実した設備になると思います。

子どもから大人までが利用する大きなプール。(AKARI CITYのHPより)

「AKARI CITY」はホーチミンのどんな場所にあるのですか?

久野さん
久野さん

ホーチミンの中心地である1区の隣、準都心としての開発がめざましいビンタン区に位置しています。
すぐそばには無料のハイウェイがあり、中心地まで約30分でアクセスができるので、共働き中心のベトナムの夫婦に好評です。飲食店や商業施設が集まる5区や、2016年に開業したイオンモール・ビンタンにも近く、生活に不便のない場所です。

中心地に向かうハイウェイのそばに立地する「AKARI CITY」(AKARI CITYのHPより)

暮らしに便利な場所なんですね。どういった層がターゲットですか?

久野さん
久野さん

住宅購入のメインターゲットである20~40代、子育て世代の夫婦を想定しています。住宅の価格も上昇傾向なので、平均所得よりも少し高い、上位中間層の方々が検討されることが多いようです。

これまで手がけてきた住宅との違いはありますか?

久野さん
久野さん

ホーチミンでの移動手段といえば、バイクが中心。これまでは1家に2台の駐輪場が必須で、必要とされる駐車場数は少なかったんです。
ところがここ数年で自動車をもつ人が増え、駐車場の利用率も上がっています。このようなところにもベトナムの発展を感じますね。

バイクが列をなす、ベトナムではおなじみの通勤風景。交通渋滞も多い。

これからめざす海外開発事業とは

海外開発事業部の今後の展望は?

稲益さん
稲益さん

まずは、現在開発を行っている5カ国での住宅事業をもっと推進していきたいですね。しっかりと実績を作ってきちんとノウハウを身につける。それを繰り返しながら着実に事業を拡大していくことができれば、わたしたちの目標に近づけると思います。
同時に、住宅事業以外のオフィスや物流施設などの開発も手がけ、海外でも西鉄の存在感を増していきたいですね。

ありがとうございました!

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