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ベトナムなど海外5カ国で展開
西鉄・海外不動産開発事業の
最前線を現地で取材!

ベトナムなど海外5カ国で展開 西鉄・海外不動産開発事業の 最前線を現地で取材!

2015年のベトナム進出以来、西鉄はインドネシア(2016年)、アメリカ(2018年)、タイ(2018年)、フィリピン(2022年)と海外5カ国で不動産開発を進めてきた。現在は18のプロジェクトが進行中。海外進出の基盤となったベトナムでの事業について詳しく聞くために、ホーチミンに駐在するスタッフを現地で取材した。

目次

ベトナムで手掛けた大規模プロジェクト

これまで西鉄は8件のプロジェクトを手掛けてきた。そのうち、早い段階で開発に着手した「アンダオ」「フジ」「キキョウ」はすでに販売・引渡しが完了。現在は「ミズキ」「アカリ」「ウォーターポイント」「ハイフォン」「パラゴン」のプロジェクトが進行中だ。

中心部から約10km(車で20~30分)の場所にある「アンダオ」。分譲マンション500戸、敷地面積約11,000㎡、住戸面積54~67㎡。価格帯は550~1,060万円(現時点レート)で、2015~16年で販売が終了した。
中心部より約12km(車で約30分)の場所にある「フジ」。敷地面積は約53,000㎡。分譲マンションは781戸、住戸面積54~67㎡、650~1,090万円(現時点レート)の価格帯で販売。戸建ては81戸、住戸面積169~358㎡、3,400~6,500万円(現時点レート)の価格帯で販売。
中心部より約12km(車で約30分)の場所にある「キキョウ」。敷地面積は約5,000㎡と他のプロジェクトに比べて規模は小さめ。分譲マンション224戸、住戸面積51~67㎡、730~1,020万円(現時点レート)の価格帯で販売。戸建ては110戸、住戸面積162~327㎡、3,500~6,500万円(現時点レート)の価格帯で販売。

ベトナムと日本の開発の違いは?

「ウォーターポイント」の戸建てのショールーム前に立つ辰巳さん

海外開発事業本部の辰巳奏介さんは、現在27歳。入社4年目で現在の部署へ配属となり、福岡とベトナムを行き来しながら事業を進めている。ベトナムと日本のプロジェクトの違いを、辰巳さんに教えてもらった。

ポイント①開発規模

辰巳さん
辰巳さん

最も違う点は、開発規模の大きさです。国内の数十倍を超える広大な土地が対象となるケースも多く、投資規模や開発期間もけた違い。国内では体験できない大規模な開発に携わることができます。

また、広大な敷地内に異なるモデルの住宅を置くこともあり、マンションや戸建てが一緒に建てられることもある。

辰巳さん
辰巳さん

共用部は、無料で使えるクラブハウスやラウンジ、プール、ジム、公園だけではなく、幼稚園やインターナショナルスクール、バスターミナルといった公共施設が置かれるのもめずらしくありません。現在販売中の「ウォーターポイント」は、開発が完了すればフェーズ1だけで最終的には居住人口約5万人のまちになる見込みです。

「ウォーターポイント」のバスターミナル
中心部より約8km(車で約30分)の場所にある「ミズキ」の共用部。遊具付きの公園や芝生広場、バーベキュースペースもある。その他、敷地内ではカフェやコンビニも営業中。

ポイント②好まれる立地

「ミズキ」内に流れる川
辰巳さん
辰巳さん

ベトナムでは水辺の物件が好まれています。見晴らしがいいのはもちろんのこと、最も大きな理由はベトナムの風水では「川沿いは縁起が良い」とされているから。当然、販売価格は上がりますが、川沿いに住むことがステータスでもあります。
また、共用部にプールがあるのも日本との大きな違い。1年を通して温暖な気候のベトナムでは、プールは欠かせない設備です。

ポイント③間取り

「ウォーターポイント」の分譲マンションのショールーム
辰巳さん
辰巳さん

間取りは、日本と同じようにLDKで考えられていますが、ベトナムでは特にリビングに重点が置かれ、家族が集まる大事な場所になっています。そのため、玄関とリビングは扉で区切られたりせず、家に入るとすぐに大きなリビングが配置されていることが多いと思います。

「ウォーターポイント」の戸建てのショールーム。2階にあるベッドルーム
「ウォーターポイント」の戸建てのショールーム。2階にあるバスルーム。写真右手にシャワールームもある。
辰巳さん
辰巳さん

その他、共用のものとは別にマスターベッドルームにはシャワーやバスルームをつけており、一つの家に複数の浴室が設置されていることが一般的です。これはベトナムに限らず、ほかの東南アジア諸国でも見られる特徴です。

住宅購入者インタビュー

西鉄が手掛けた住宅は、現地の人々にどのように受け入れられているのか。「ミズキ」を購入し、家族で暮らしているリエンさんに住み心地について尋ねた。

リエンさん(37歳)、夫のトゥアンさん(35歳)、お子さんのバックくん(1歳)、母ランさん(64歳)

リエンさんは、最初のフェーズで完成した住宅に2022年に入居。出産をきっかけに、以前の住宅より敷地面積が広い今の家に移り住んだ。

リエンさんの自宅は全体で79㎡。リビングのほか1ベッドルームがある
リエンさん
リエンさん

重視したポイントは通勤距離(車で30分)と価格感。いずれもちょうどよく、住み替えも視野に入れた上で購入を決めました。その後、2023年3月に同じ「ミズキ」内で現在の住宅を購入。販売価格が手ごろで条件が良く、金利も良かったタイミングで住み替えを決めました。
ホーチミン市郊外では、近年不動産の価値が上がっています。また、開発が段階的に進むことが多いので、物件が購入時より高く売れれば同じエリア内で住み替えるパターンはめずらしくありません。

ベランダからの眺望
リエンさん
リエンさん

部屋は西向きで風通しが良く、川もよく見える12階。ベランダでは野菜を育てています。周囲に公園や遊歩道があり、子どもと散歩する場所がたくさんあるのが気に入っています。

「自分の家を持つのが夢だった」と話すリエンさん。住宅購入の際に不安はなかったのか?

リエンさん
リエンさん

購入から引き渡しまで、一連の流れの対応や進め方がていねいで、信頼できたので最後まで不安なく購入できました。

お気に入りの場所はキッチン。収納スペースが充実した住宅はベトナムでは少ないので、こうした細やかな点は、日本企業らしいデザイン視点なのかもしれませんね。ゆったりと広い玄関やシューズボックスがあるのも助かっています。

料理が趣味のリエンさん
シューズボックスがある玄関

別の視点から見た「西鉄」の姿

■阪急阪神不動産の内田悠介さん

ベトナムでは、現地大手デベロッパーのナムロン社と阪急阪神不動産を合わせた3社で事業を進めている。2020年11月からベトナムへ赴任、西鉄の共同事業パートナーである阪急阪神不動産㈱の内田悠介さんに、西鉄との協業について話を聞いた。

内田さん
内田さん

同じ私鉄系企業ということで、西鉄さんとは企業文化や事業の進め方など共通点がたくさんあると感じています。特にベトナム現地の考え方を尊重しながら課題を整理し、協議を重ねてプロジェクトを進めていく点は大きな共通点だと思います。
日本のノウハウや日本の商品、企画を無理にベトナムの事業に取り入れるのではなく、あくまでもベトナムでの課題や、顧客の需要に対して、どう応えていくのか。その過程で日本のノウハウが活きることもありますが、主眼はあくまでも現地の課題や需要に置いて、事業を進めていく点は両社とも共通しています。
こうした向き合い方をベースに約10年間、一緒に仕事をしてきたからこそ、3社でいい関係性が築けているのだと思います。

自社との違いはありますか?

内田さん
内田さん

現地にいらっしゃるお二人が海外事業の経験が豊富で、ポイントを抑えてすぐに判断・対応できる点だと思います。
責任が伴うものの、打合せや会議で、その場でスピーディーに判断・対応できると、パートナーからの信頼も得られやすく、スピード感をもって事業を進めやすいので、その点で西鉄さんのスピード感は素晴らしいと思います。

御社と西鉄、ナムロン社の間ではどのように業務分担を?

内田さん
内田さん

特段、細かな規定を作っているわけではありません。

端的に言うと、ナムロン社の主な役割はプロジェクトの推進実務で西鉄さんと弊社はそれらを事業会社・投資家の立場で管理、監督しています。
そういうと仰々しく聞こえてしまいますが、実際には開発計画や、設計、販売など、プロジェクト推進に係る多岐にわたる内容について、ナムロン社の作成する検討案を基に3社で協議をしながら進めていますので、管理・監督するというよりは一緒に進めているという感覚の方が強いです。

別の企業に属していながらも、それぞれの距離感は近く、こうして深く付き合えるのは限られた人数で事業を進めている海外ならではなのだと思います。

ベトナムの住宅開発の「今」

現地では不動産に対する考え方やルールが日本とは異なり、開発を進めるうえでさまざまな壁に直面することもある。

辰巳さん
辰巳さん

2020年からはコロナ禍に突入。また、金利が高騰して住宅の買い控えが広がるなか、2022年には不動産大手3社の上層部が詐欺・資産横領容疑で相次いで逮捕されるなど不動産業界への疑念が広がり、販売にきびしい状況が長らく続いていました。

その一方で、クリーンなデベロッパーへの評判は上がりました。ナムロン社もそのうちの一社です。コロナ禍が終息した昨年秋以降は、金利も落ち着いて住宅が買いやすくなり、徐々に販売実績が伸びてきています。

こうしたベトナムでの西鉄の事業のカギとなるのが、2019年から販売がスタートした「ウォーターポイント」だ。

「ウォーターポイント」のセールスギャラリーに立つ、海外開発事業部の西村さん(左)、春山さん(中央)、辰巳さん(右)

ホーチミン市中心街から車で約50分。近年開発が進む新興エリアからも車で40分とアクセスの良い場所にあり、分譲・戸建てを合わせた総戸数は約8,000戸超、敷地面積は約355ha(うち投資対象は約165ha),(現時点での計画)と、ベトナムでも大規模な開発地となっている。

住宅の建設・販売は区画ごとに進んでいて、最も早い区画は2019年から販売がスタート。その後、エリアごとに開発を進めてきたが、大きな課題に直面していた。

辰巳さん
辰巳さん

すでに引き渡しが完了している区画では投資目的での購入が多く、スケルトンのまま誰も住んでいない戸建て住宅がたくさんある状態です。私たちのミッションは、実際にここで生活する人を増やしていくこと。住民が増えて初めて「まちづくり」がスタートすると考えています。

「ウォーターポイント」内の戸建てエリア。現地では竣工後、スケルトンの状態で購入者に引き渡すのが一般的だ。
バスターミナルの一画。現在はコンビニやカフェが営業中。今後さらにテナントが増える予定。

たくさんの人々に魅力を感じてもらい、ここに住んでもらうには、共用施設の拡充やテナント誘致が必要不可欠です。しかし、人口が少ない開発地にテナントを呼び込むのはそう簡単ではありません。

こうした課題を抱えながらも、また別の区画ではこれから販売が進んでいきます。将来、ここに住む何万人もの人々が幸せに暮らしている姿を想像しながら、ゼロからまちをつくる大変さを実感しながら奮闘する日々です。

「ウォーターポイント」と市街地を結ぶバスターミナル。1日6便(3往復)の運行があり、住民は通勤や通学に利用できる
メインのクラブハウス。区画ごとにこうした共用施設が設けられている
クラブハウス内のプール。レストランやジムなども併設されている
分譲マンション

ベトナム駐在所長を勤め、東南アジアでの事業を統括する海外事業本部の春山幸嗣さんは、「ウォーターポイント」の開発が西鉄にとって重要なカギになると考えている。

春山さん
春山さん

新興エリアからのアクセスが良く、水辺に位置する「ウォーターポイント」は高いポテンシャルを持つ場所。これから大きな成長が期待されるなか、私たちがどんな社会的価値や経済的価値を提供できるか考え続ける必要があります。

開発にゴールの指標があるとすれば、私たちが提供するサービスが違和感なくまちに溶け込み、機能している状態になること。何万人もの人々がここで暮らしている未来を思い描きながら働けるのは、大規模な不動産開発に携われる海外事業の醍醐味だと思います。

これから住宅の建設が進む区画。スケールが大きい!
  • 辰巳 奏介さん
    辰巳 奏介さん

    西日本鉄道株式会社 海外開発事業部

    2020年4月に入社。2023年から海外開発事業部へ。福岡とベトナムを行き来しながら複数のプロジェクトを進行中。

  • 西村 晋二さん
    西村 晋二さん

    西日本鉄道株式会社 海外開発事業部 係長

    私鉄系企業で都市開発や海外事業に携わり、2023年1月に西鉄に入社。パートナー企業とともにベトナム・ホーチミンで進行中の複数のプロジェクトを進めている。

  • 春山 幸嗣 さん
    春山 幸嗣 さん

    西日本鉄道株式会社 海外開発事業部
    ベトナム駐在所長 兼 アセアン事業統括

    私鉄系企業で都市開発や海外事業に携わり、2022年1月に入社。3月にベトナムに渡り、現地の駐在所長を務めている。ベトナムを中心にアセアンにて同時進行する複数のプロジェクトマネジメントを担う。

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