緑の多い恵まれた自然環境のなか、東京都心まで約1時間でアクセスでき、利便性の高い暮らしが実現できる茨城県つくば市。そのエリア内で最大級の新築分譲マンションプロジェクトとなったのが「つくばウェルビーイングプロジェクト」だ。
約2.3ヘクタールの緑あふれる敷地に、分譲マンション569戸。コワーキングエリアに各種ラウンジ、キッズ&パーティールームにサウナまで……!まさに「ウェルビーイング」と言えるが、どのように実現させたのか。 開発を手掛けた西日本鉄道株式会社首都圏開発事業部の事業推進担当・牧口航輔さんと同・山田竜太郎さんに話を聞いた。
西鉄の首都圏開発事業部が直近で手掛けている代表的な物件が、569戸の分譲マンションを新築した「つくばウェルビーイングプロジェクト」だ。
東京・秋葉原まで約1時間、つくばエクスプレス直通でアクセスできる「つくば」駅が最寄り。駅直結のショッピングモールがあり、自然や教育環境にも恵まれた次世代のベッドタウンとして人気が上昇しているエリアだ。
四季の美しさを感じることのできる、約2.3ヘクタールの緑あふれる敷地。木々のトンネルを抜けるように設えられた階段の先にはメインエントランスがあり、大きな森にヴィラが佇んでいるような光景が広がっている。
木造共用棟にはワークライフバランスを整える「コワーキングエリア」やゆったりとした時間が過ごせる「アクアラウンジ」「フォレストラウンジ」の2種類のラウンジがあり、次世代の暮らし方・働き方が実現できる。
多目的スペースとして使える「マルチスタジオ」やリフレッシュに最適な「リトリートスパ(サウナ)」も設置。
来客用の「ゲストルーム」や子どもと一緒に過ごせる「キッズ&パーティールーム」などもあり、「ウェルビーイング(well-being)」な暮らしが楽しめる。
「ウェルビーイング」というコンセプトが生まれるきっかけは何だったのか。事業推進担当の牧口航輔さんに話を聞いた。
企画が動き出したのは、コロナ禍に入ったばかりのタイミングでした。ライフスタイルが急激に変わり、不安を抱えながら過ごしていた時期。都会から自然を求める志向が高まっていました。
そこで設定したのが「ウェルビーイング」というコンセプトだった。アフターコロナの価値観をいち早く打ち出すことで感度の高い顧客にアプローチでき、他社との差別化にもつながると考えたのだった。
この物件は、仕事と生活のバランスが変化したコロナ禍があったからこそ生まれたと言えます。私たちが販売しているのは、「空間」だけではなく「暮らし方」なんだと強く意識しながら、プロジェクトを進めてきました。
ひと口に「ウェルビーイング」と言っても、人によってさまざまな解釈がある。そこで牧口さんらプロジェクトメンバーは、ウェルビーイング研究の第一人者である、予防医学研究者で医学博士の石川善樹氏にインタビュー。「ウェルビーイング」の考え方を紐解いて理解を深めたうえで、事業を進めていった。
長い時間、人工的な空間内にいると感性が麻痺するそうです。五感に刺激を与える自然が身近にあること。つくばのような大いなる自然のなかで暮らすこともそうですが、それが人間にとってウェルビーイングをもたらすと石川先生はおっしゃっていました。
本プロジェクトでは、二つのガーデンで身近に自然と触れあうことができ、ウェルビーイングを高めるランドスケープを計画しています。
「ウェルビーイング」にふさわしいデザインと言えば、「幸せの国」と言われるデンマーク。デンマーク・コペンハーゲンを拠点として世界中で活躍するデザインエージェンシー「OEO STUDIO」にデザインを依頼した。
OEO STUDIOは、「コモンヴィラ」(木造共用棟)のインテリアおよびアートデザイン、モデルルームのコーディネートを担当。北欧の精神を体現したプロダクトやインテリアデザインに定評がある世界のトップチームを迎え、「つくばウェルビーイングプロジェクト」に上質な空間が誕生した。
北欧には、「Less is More(少ないほうが豊かだ)」というデザインの考え方があります。「OEO STUDIO」はまさにその言葉を表現してくれるデザインチーム。オンラインで毎週ミーティングを重ねながら、本計画にウェルビーイングのエッセンスを取り入れていきました。
こうした戦略が功を奏し、第1期100戸契約達成。予想以上の反響を得ることができました。
福岡が本社の西鉄には、東京にも支社を置く部署がいくつかある。そのひとつが、東京・日本橋に拠点を構える、西鉄の「首都圏開発事業部」だ。
「首都圏開発事業部」は、東京・日本橋人形町を拠点に住宅事業を展開している。もとは「住宅事業本部」のうちの一部門として、2013年に本事業所を立ち上げ、2名の人員から事業をスタート。年々実績を伸ばし、2022年度から独立して「首都圏開発事業部」となった。
関東の1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)を中心に、分譲・賃貸マンションの開発および販売を進めるほか、その他物流施設やオフィス、商業施設などの住宅以外の開発も検討中だ。
首都開発事業部に所属する18名(2022年度末)は、以下の3つのチームに分かれている。
①用地・計画……事業用地の仕入を担当。
②事業推進……物件の商品企画・販売を担当。
③品質管理……現場管理や品質管理を担当。
①用地計画
担当者は、月に平均して50~60物件の情報に目を通す。場所や広さ、価格などの情報を書類で確認し、魅力的な物件があれば現場まで足を運ぶ。
魅力的な物件があれば、迷わず取得に向けて動くそうだ。
首都圏には多数の電車の路線が走っています。そのため、どの沿線上にあり、どの駅の最寄りかが最も重要です。それから、駅までの距離や土地の広さなどが、最初に見るべき判断基準となります。
また、現地へ足を運ぶ過程も欠かせません。例えば、「駅から徒歩10分」と書かれていても、歩いてみると「実際かかる時間より長く感じるな」とか、「坂がこんなに多いのか!」など、現場でないと体感できないこともたくさんあります。
現場を確認した後、取得の検討を進める場合は、マーケティングのもと、どんな建物が建てられるのか、どのような価格帯であれば、事業性があるのか検討していく。事業性が高いことを確認できた物件については、その後社内会議にかけて無事承認された物件について取得を進める流れだ。
取得に際しては、一対一であることもあれば、入札となるケースもある。この一連の検討から取得までにかかる期間は、通常数カ月から半年ほど。条件やタイミングによっては2、3カ月で取得に至ることもある。毎週開催される会議にて、役員から担当までフラットな意見交換を行い、検討を進めている。
②事業推進
取得した土地をどのように売るのか、企画や販促戦略を立てるのが、事業推進担当の仕事だ。現在、牧口さんと山田さんはこの領域を担当している。
企画にあたり、大事なポイントは?
マーケティングは徹底的に。企画はターゲットを明確に。この2つは絶対に欠かせません。また、立地はかなり大事です。駅とその土地の動線を見るために、実際に駅から歩いて周囲の環境をチェックします。
土地の向きやランドスケープも、コンセプトを決めるための重要なポイントだ。その土地に合わせてターゲットの年齢や職業、属性を絞り込み、商品販売のためのコンセプトを企画。広告などの販売戦略も進めていく。
いずれにしても、最後にはどれだけ売れたのか結果が見えます。事業規模が大きく、責任感もあってドキドキする仕事ではありますが、「ひとつのまちをつくっているんだ」と実感でき、やりがいを感じます。
③品質管理
品質管理のチームは、工事計画や品質管理などを担当する。工事現場には、元請け業者であるゼネコンやサブコン、その他の施工業者など、段階ごとにさまざまな職人が携わる。
工事計画や品質のチェックをする時は、現場に出向いて状態を確認する。計画書に沿って適切に工事が進んでいるのか、建物が完成するまで現場で見届ける役割だ。
福岡でも住宅事業を展開する西鉄。福岡と首都圏の違いについて尋ねてみた。
私が感じた違いは、市場規模の大きさです。人口の多さに加えて、エリアも広いうえ、エリア毎の特性も異なるため、エリア毎の市場の見極めが非常に大事だと考えています。また、投資規模・戸数が大きなプロジェクトに携わる機会が多い所も違いかと思います。
戸数の大きなプロジェクトは、共用部の充実・ソフトサービスの導入などスケールメリットを活かした商品企画ができるため、そのような経験ができる機会を大事にしたいです。
生活や働き方の面ではいかがですか?
私は大学が東京だったので、そのまま東京に残って就職する選択肢もありました。西鉄に入社後は福岡勤務でしたが、若いうちに東京でも働くことができてラッキーです。
地元である福岡に貢献したいと思いで入社していますが、私は大学も福岡だったので、「少しくらい外に出て、福岡以外のエリアも知ってみたい」という思いもありましたので、家族といっしょに引っ越してきました。ディズニーランドが近くなったので、子どもは大喜びです(笑)。首都圏事業部は事業規模が拡大してきており、やりがいもその分大きいなと日々感じています。
東京で仕事をして感じる西鉄の強みは?
会社の知名度は福岡に比べて低いですが、鉄道会社のインフラ企業ということが安心につながっているので、これからは「西鉄だから買う」というブランド化を強化したいですね。そうしたなかでも、この10年で、現在は進行中のプロジェクトが24、売上は160億円まで成長できました。これは、福岡で築いてきたノウハウがあったからだと実感しています。
2023年3月には、「サンリヤン練馬北町」への入居がスタートする。「東武練馬」駅から徒歩7分。池袋までは17分と交通の便が良く、昔ながらの雰囲気も残る場所に、1LDKから4LDKまで南西向き中心の約90戸を建設した。
交通アクセスが良く、利便性も高い立地から、単身や高齢者など幅広い世代がターゲットになると考え、どのニーズにも適応できるように間取りを設定し、商品企画を行った。販売を開始してみると、想定通り単身や高齢者など幅広い属性のお客さまからの問い合わせが集まるなど、現時点では販売は上々のスタートをきっている。
進行中の物件と言えば……。実は今、1都3県だけじゃなくて、岐阜にもマンションを建設中なんですよ。
えっ、岐阜?!
良い物件があれば全国どこへでも。前向きな考えが私たちの強みです(笑)。進行中のプロジェクトなので詳しいことはまだ発表できないのですが、これまでにないおもしろいマンションが近い将来完成します。
今後、担当したい場所はありますか?
私が憧れるのは、やはり23区の中心です。港区や中央区など、年収が高い顧客層を狙った物件を、いつかは手掛けてみたいですね。
競合他社の勢力に負けないよう、私たち自身もブランド力や知名度を磨き、マンションデベロッパーとしての地位を確立したいと考えています。
私は札幌や仙台ですね。このような各エリアの中核都市にいいお話があれば、検討していきたいです。
最後に、これからのビジョンを教えてください。
2022年度に「首都圏開発事業部」として独立したこともあり、オフィスやその他の不動産など、マンション以外の物件も手掛けていきたいと考えています。
福岡で培ったノウハウを基に事業展開を続けてきましたが、今後は首都圏で得たノウハウを福岡にも還元しながら、福岡と首都圏、それぞれで成長していければ、もっと強い組織に成長できると思います。そうした動きが海外の住宅事業にも波及すれば、さらに「西鉄」の価値が高まり、事業にも広がりが出そうですね。
西日本鉄道株式会社
首都圏開発事業部 事業推進担当 係長
2013年入社。住宅事業本部マンション事業部分譲マンションの商品企画・戸建の用地買収を担当。広報課を経て、2021年度より、首都圏開発事業部。分譲マンションの商品企画から販売管理・賃貸マンションの商品企画および販売を担当。
西日本鉄道株式会社
首都圏開発事業部 事業推進担当
2017年入社。住宅事業本部マンション事業部販売課、マンション用地課を経て、2021年度より、首都圏開発事業部。分譲マンションの商品企画から販売管理・賃貸マンションの商品企画および販売を担当。