2024年7月10日、北九州市八幡東区に商業施設「皿倉テラス」がオープンした。開発・運営を担うのは、にしてつのグループ会社である株式会社スピナ。来年以降は戸建住宅エリア「SOLANOHA」の分譲開始を控える、商業×住宅の複合施設。商業エリア「皿倉テラス」の魅力や、八幡東区を拠点に幅広い事業を展開するスピナについて深堀りした!
北九州市八幡東区・平野地区にオープンした「皿倉テラス」は、商業と住宅を掛け合わせた複合施設。日本新三大夜景として知られる皿倉山を背景に、開放的でくつろげる空間となった。
ショッピングやグルメが楽しめる商業エリアのテナントは、2024年7月10日から順次オープン。8月26日には郵便局が開業し、13店舗すべてのテナントが出そろった。
日常使いしやすい親しみのあるテナントが並ぶなか、オープン前は「スターバックスコーヒー」や北九州市初出店の「ワークマンプラスⅡ」などが話題に。オープン当日には地元北九州で多くのファンを持つ精肉店「エザキ」や青果店「穂の果」、鮮魚店「さかなの新鮮組森虎」、北海道発の「ペンギンベーカリー」にも長蛇の列が!
こども服「バースデイ」や「しまむら」も多くの人々が詰めかけた。
オープンの2日間は天気が良くなかったにも関わらず、たくさんの方にお越しいただきました。初日以降もメディア関係者にも予想以上の反響があり、報道番組などで数多く取り上げていただきました。地元の皆さまの注目度と期待度の高さを実感しています!
と、開発を担当した株式会社スピナまちづくり推進本部の永吉洸介さん。
「皿倉テラス」開発の裏側について詳しく教えてもらった。
施設周辺はどんな環境?
平野地区はJR八幡駅から約1kmの場所に位置し、アクセスの良い幹線道路(山手通り)に面しています。開発当該地の周辺には住宅や教育・文化施設などがあり、若い世代から高齢者まで地域の方々の往来が日常的に多いと言えます。皿倉テラスはスピナの本社や「スピナマート」から徒歩約5分の場所にありますので、私たちにとっては特に親しみのある場所です。
そもそも、なぜこの場所で開発を?
ここは元々スピナの保有地で、ゴルフ場などの施設が建てられていました。2008年、計画用地に存在したテナントビルのテナント退去が決定し、解体に向けて「今後この地をどう活用するか」という検討がスタートしたのですが、開発に着手するまではさまざまな苦労があったと聞いています。
詳しく聞かせてください。
当初は、住宅型老人ホームなど介護系の施設の建設が計画されたのですが、諸事情で実現せず、しばらくは検討そのものがストップしていました。その後、2020年9月から再び計画の検討を開始しました。
コロナ渦の真っただ中で、事業の見通しが困難だったこの時期。私たちは今一度、周辺地域のニーズを検討し、「地元のお客さまが本当に必要としているものは何なのか?」をあらためて考えました。そして、議論を重ねた結果、より幅広い年代のニーズを満たすことができる商業施設を軸とした計画を進めることに決まりました。
テナントのリーシングは順調でしたか?
私は2022年4月からプロジェクトに参画したのですが、当初からコロナ禍が続き、テナントが集まらない状況でした。試行錯誤しながらも、状況が好転することを願うばかりでしたね。
困難続きだったんですね……。
ところが、困難な状況のなか、出店を希望する大型テナントが見つかりました。まさに希望の光です!
出店の決め手は何だったのでしょうか?
それまで八幡東区は、商業施設の建設が可能なまとまった用地がなく、需要があるにも関わらず供給が間に合っていない状況でした。一方で、周辺に学校や教育関連の施設も多いことから、子どもから高齢者まで幅広い年代が暮らす地域でもありました。そうした地域のポテンシャルに目が留まり、積極的に出店を決めてくださりました。
その後はどのように?
実は、当初の計画ではゴルフ練習場を残す予定でしたが、近隣のニーズを考慮して計画を変更することにしました。住宅需要も高かったことから、商業施設と住宅との複合開発とすることにしたのです。
商業と住宅のエリアを合わせると、開発面積は35,217㎡(10,653坪)。スピナとしては過去最大規模の開発面積で、商業と住宅の複合施設開発は初めての取り組みでした。
以降は順調に……?
進みだしたのは何よりだったのですが、建設費の高騰や資材・人材調達の影響で、費用の調整が必要となりました。何とか実施段階に漕ぎつけ、いざ工事に取り掛かると、予期せぬ湧水や地下埋設物により工期を取られましたが、施工会社様の努力により、影響は最小限に抑えることができました。
いろいろと困難はありましたが、無事にオープンを迎えることができてほっとしましたし、想いが詰まった場所なので本当にうれしいですね。オープン後約1カ月の来客数は高い目標値を設定していたにも関わらずおおむね想定通りに推移しています。
商業エリアのコンセプトは、「日々の生活の中で楽しさ・美味しさ・くつろぎに出逢える場所」。全国区の大手テナントや地元の人気店が、「親しみ」や「安心」、「快適さ」につながっている。
テナント決定まで、リーシングはどのように?
コンセプトをもとに、普段使いできる店舗を集めたいと考えていました。地元の方々から最も要望が多かったのは「カフェ」。近隣には大学など人が集まる場所がたくさんあるのにもかかわらず、気軽にお茶できる場所が足りていなかったのです。
「カフェ」にあたるのは「スターバックス」さん。北九州市内にはすでに数店舗ありますし、出店場所は先方で主導的に選出されていると思い、出店意向についてはさほど大きな期待はしていなかったのですが……。ご相談をしたところ、立地に大変興味を持っていただき、出店が決定しました。
永吉さんの推しポイントは?
今回カギになったのは、何といっても地元の人気店の出店だと感じています。特に「エザキ」さんは地元で有名な食肉総合卸売会社で、北九州では根強い人気があります。
そのエザキさんが出店を決めてくださり、青果店「穂の果」さん、鮮魚店「さかなの新鮮組森虎」さんと、買い回りが便利な生鮮エリアが生まれました。この3店舗が並ぶ建物は「mog2荘」(もぐもぐ荘)と名付けました!
現在建設中の住宅エリア「SOLANOHA」は、「皿倉テラス」に隣接する戸建て全72区画のビッグタウン。皿倉山のふもとの緩やかな平坦地に住宅が広がり、「皿倉テラス」までは徒歩ですぐにアクセスできる利便性の高い立地だ。住宅販売はにしてつホームが担当するなど、グループ一体となって実現したプランだと言える。
施工やデザインに関してさらに詳しく知りたい場合は、「SOLANOHA」ホームページから資料請求が可能。「コットンヒルズ鞘ヶ谷」や「コットンヒルズ戸畑夜宮」、「コットンヒルズ八幡東天神」など、近隣の物件は見学も可能だ。
大規模な開発に欠かせないのが、地域の人々との相互理解。開発にあたり、どのようにコミュニケーションを取りながら進めたのだろうか。
まずは、平野地区にお住まいの方々のニーズを集めていきました。また、自治会長さまにもご協力いただき、地域の声を直接聞く機会も得ることができました。
実は、テナントのひとつに郵便局が入ったのは、地域のみなさまのニーズを反映させた結果です。日常的に足を運ぶ機会が多い郵便局があれば、お客さまの利便性も向上すると考え、さらには集客にもつながるということで入居が決まりました。
「皿倉テラス」オープン後、来場者の反応はいかがでしたか?
近隣住民の方からは、「近所に好きなテナントができてうれしい」「ずっとできて欲しかったカフェができた」「野菜や肉、スイーツなどの買い回りできて便利で楽しい」といった声が届きました。
また、自治会長さまからはまちがにぎわうことへの喜びや、市全体の人口が減少傾向にあるなか、住宅販売により住民が増えることを喜んでくださいました。
こうした地域密着型の開発スタイルは、地元北九州で長く開発を続けてきたスピナの伝統的なスタイルです。利益だけに囚われず地域密着型の開発を続けてきたことが「信頼」や「安心」につながっているのだと感じました。
今後、地域と関わるイベントなどは企画していますか?
オープン1周年などのタイミングで実施できればと考えています。過去に既存施設「ショッピングパーク鞘ヶ谷」で開催した縁日のイベントやイルミネーションなど、近隣の方々に気軽に足を運んでもらえる催しを企画したいと思います。
「皿倉テラス」の生みの親である株式会社スピナ(北九州市八幡東区)。そもそもどんな会社なのだろうか?
1952年に設立された八幡製鐵ビルディング株式会社が前身で、1986年に株式会社テツビルに社名変更後、1993年に株式会社スピナとなり、2006年からにしてつグループの傘下となりました。
事業内容は?
北九州市を中心に商業施設の開発・運営を手掛けるほか、ビルメンテナンスや住宅外構・造園、太陽光発電設備工事や設備保守、「くろがね堅パン」の製造販売など、さまざまな事業部があります。
今後もさらに開発案件が?
北九州市をメインに今後も地元密着型のスタイルで事業を展開したいと考えています。
「皿倉テラス」と「SOLANOHA」の今後の動きは?
「SOLANOHA」の戸建竣工は2025年5月ごろで、同年6月から販売開始予定です。その頃には「皿倉テラス」で地域の方々に向けたイベントを開催するなど、さらにまちににぎわいを創り出せたら。地元に限らず市外・県外のみなさまにもぜひ気軽に足を運んでもらいたいと思います。
株式会社スピナ
まちづくり推進本部 開発担当
2019年入社。現まちづくり推進本部営業課に配属され、建物管理などの業務に携わったのち、2022年4月から現在の開発担当に異動となり、皿倉テラスプロジェクトに携わる。宅地建物取引士の資格を持つ。