Nishitetsu Online Magazine

福岡空港が一つの“街”に
なっていく――。30年先の
未来図までを徹底取材!

福岡空港が一つの“街”に なっていく――。30年先の 未来図までを徹底取材!

久しぶりの出張。チェックインまでの時間、福岡空港を歩くと、おしゃれな土産店や魅力的な飲食店がぐんと増えていた。

国内線旅客ターミナルビル3階
「HIGHTIDE STORE」

国内線旅客ターミナルビル2階
「エニタイムフィットネス」

国内線旅客ターミナルビル3階
「TSUTAYA BOOKSTORE内コワーキングスペース」

福岡空港ビアマルシェ「SORAGAMIAIR (ソラガ ミエール)」

3階のTSUTAYA奥にはコワーキングスペースがある。24時間営業のフィットネスジムや大きなスクリーンのあるビアガーデン――これってもう、ちょっとした街だ。なんだか福岡空港って本当に変わった。これからどうなるんだろう? キーマンに話を聞いた。

目次

  • 宮原 大樹 さん
    宮原 大樹 さん

    福岡国際空港株式会社
    経営企画本部 経営企画部 経営戦略課長

    2006年、西日本鉄道株式会社に入社。
    都市開発事業本部 企画開発部に配属となり、2008年より「西鉄香椎花園(かしいかえんシルバニアガーデン)」のリニューアル担当を務める。
    2016年7月から福岡空港の民間委託(空港コンセッション)に伴う入札段階からプロジェクトに参画し、2018年7月より「福岡国際空港株式会社」に出向。
    現在、経営戦略課長として事業計画の策定・進捗管理、計数管理等に携わる。

空港が街になる「エアポートシティ計画」?

なんだか福岡空港、ずいぶん進化しましたよね!ショッピングやグルメが楽しめる、小さな街みたいになってきたな、と思うんですが。

宮原さん
宮原さん

おお、それはうれしい感想ですね。というのも、私たちが進めているのが、まさに「エアポートシティ」という計画だからです。

へえ、やっぱり、そうだったんだ!で、どんな計画なんですか。

宮原さん
宮原さん

福岡空港は都心部から地下鉄で5分と街中に位置し、利便性の高い空港です。そんな空港をただの交通拠点として捉えるのではなく、滞在する場所として施設を充実させていくことです。飛行機に乗る用事がなくても遊びに行く場所として認識してもらえるように、段階的にプロジェクトを進めています。空港をより身近に感じて、空港の良さや特徴を知っていただけたらと考えています。

2016年からの6年でこんなに変わった!

だから飲食店やジム、コワーキングスペースが増えているんですね。

宮原さん
宮原さん

私たちが運営に携わる以前の2016年には全国の名店が集まる「ラーメン滑走路」や、新しい福岡グルメを提案していくフードホール「the foodtimes」がオープンしました。

何を食べるのか、選択肢が一気に増えて、いつもすごく迷っています。

宮原さん
宮原さん

ああ、よくわかります。その後、2019年には地下2階の地下鉄改札口から地上2階の国内線出発ロビーを直通のエスカレーターで結ぶアクセスホールの利用が始まりました。この改装によって地下鉄から出発ロビーへのアクセスは約3分に短縮できたんですよ。

ただでさえ近い空港が、さらに近くなりました。

宮原さん
宮原さん

2020年の夏にオープンした「エニタイムフィットネス福岡空港店」は飛行機の離着陸を間近に見ながらトレーニングができる絶景のワークアウトスペースです。飛行機の待ち時間を有効活用して、気軽にビジター利用していただけるとうれしいです。

空港で体を鍛えるって、新しいですね。

宮原さん
宮原さん

同じく2020年の9月には、国内線旅客ターミナルビルの1階にあった「TSUTAYA BOOKSTORE福岡空港」が3階に移転して、リニューアルオープンしました。店内の雑誌や書籍を読みながら、仕事をしながらでも、フリードリンク&フリースナックを楽しめむことができるのが魅力です。

こうして最近の変化を並べてみただけでも、すでに利用目的が飛行機に乗ることだけではなくなっているんだなと実感しますね。

結婚式も試写会も、スポーツ観戦もできる

フォトウェディングもできると聞きました。

宮原さん
宮原さん

ええ。開放感ある旅客ターミナルや、普段は立ち入ることができないエリアで迫力ある旅客機などを背景に撮影ができます。昨年末に1日1組限定(5組10名)募集したのですが、30組を超えるお客さまから応募が集まり抽選になるほど好評でした。その後も全国から問い合わせが届き、今年4月には第2弾が開催されました。

フォトウェディングの撮影イメージ
宮原さん
宮原さん

その他にも、今年2月、コロナ禍で影響を受けている大学生・専門学校生を対象として、飛行機が離着陸する滑走路が見えるロビーを会場に上映会を開催しました。今回の上映会のために特別にスクリーンを設置して日本で初めて空港のロビーを利用しました。約100名のお客さまにお越しいただき、特別な空間・時間を提供できました!

国際線ターミナルビル内で実施した上映会の様子

空港というロケーションを使い倒してますね!

宮原さん
宮原さん

2021年には西鉄が運行するオープントップバスで「ビューんとツアー」を始めました。通常は入れないエリアにある搭乗橋の下をぎりぎりで通過したり、飛行機が間近で見られたりと非日常が味わえるバスツアーです。

「福岡空港ビューんとツアー」の様子

なるほど、福岡空港、地元の人にとって、お出かけスポットになってきているのか。

宮原さん
宮原さん

考えてみてください。福岡空港は天神から11分くらい、博多駅からならばわずか5分で到着しますから、天神・博多に続く「街」として捉えてもらえたら嬉しいですね。

すごいホテルや飲食、ショップが来るらしい!

いやあ、「エアポートシティ計画」すごいです。

宮原さん
宮原さん

2018年からスタートしましたが、実は本番はこれから。福岡空港は今まで以上に変わりますよ。

今以上に?

「梓設計・隈研吾建築都市設計事務所・西日本技術開発共同企業体」
宮原さん
宮原さん

まず、国内線の立体駐車場を建て替えて、商業施設・ホテル・バスターミナルの機能を備えた複合施設が誕生します。バスやタクシーでのアクセスがもっとスムーズになるのはもちろんですが、ホテルや飲食店、いろんなショップが入った複合施設としても賑わいます。現在、基本設計中で2025年度にはグランドオープンの予定ですよ。

3年後か。もうすぐですね!

宮原さん
宮原さん

2019年4月の福岡空港運営開始のタイミングで、5年間の中期事業計画と、30年後の将来構想を公表しました。コロナ禍の影響で開発計画が後ろ倒しになったものもありますが、国による滑走路の増設工事も着実に進んでおり、新しい就航路線を開拓するエアライン誘致や国際線旅客ターミナルビル増改築工事を推進しています。

無理を承知で聞きますが、どういう施設やショップを誘致しようとしているのか。ヒントでもいいので……。

宮原さん
宮原さん

国内線側については、既存の旅客ターミナルビルと密接し、お客さまの回遊性・利便性が高く見込める計画であるため、現在の駐車場を取り壊さなければならないものの、この形で作っていきたいと考えています。
立地としては、福岡市営地下鉄も乗り入れており、かなり都心からも近いため、空港の魅力を最大限活かし広範囲のエリアから空港に「気軽に遊びにいける」施設を目指し、計画を立案しているところです。

福岡空港が国から民間委託されたって知ってた?

ところで、現在の宮原さんの肩書きは福岡国際空港株式会社の課長さんですが、西鉄からの出向だと伺いました。

宮原さん
宮原さん

ええ。2016年に異動して以来、福岡空港の民間委託(空港コンセッション)に伴う入札から携わっています。

民間委託(空港コンセッション)……。

宮原さん
宮原さん

空港のコンセッションとは、滑走路等の航空系事業とターミナルなどの非航空系事業について、民間による一体経営を実現し、着陸料等の柔軟な設定等を通じた航空ネットワークの充実、内外の交流人口拡大等による地域活性化に取組むものとされています。国管理空港の民間委託(空港コンセッション)は仙台、高松に続いて3例目。他にも北海道7空港や広島、熊本にもコンセッションの仕組みが活用されています。

民間委託(空港コンセッション)することでどんなメリットがあるんでしょう?

宮原さん
宮原さん

もともと、福岡空港はターミナルビルと滑走路の運営が分かれていました。民間委託(空港コンセッション)後はそれを一体化することで、例えば旅客ターミナルビルで稼いだ収益によって滑走路の使用料である着陸料などを引き下げることができます。そうすることで福岡空港に新たな路線就航を呼び込み、福岡・九州・西日本の玄関港として、幅広い世界との国内外の交流人口を増やすことで、福岡市の地域活性化に貢献できると考えています。

なるほど!入札に関わる裏話なんて聞いてもいいですか?

宮原さん
宮原さん

ちょうど私が異動になったのが、福岡空港の民間委託(空港コンセッション)の話が出始めていた頃でした。空港事業の実施方針が公表されたのが2017年3月で、募集要項が公表されたのはそれから2カ月後です。募集要項を読み込みながら一次提案から、2018年3月の二次提案までチームで議論を重ねていました。

チームというのは?

宮原さん
宮原さん

主なメンバーとしては西鉄のほかに九州電力と三菱商事、そしてシンガポールのチャンギ空港です。チャンギ空港はこれまでの開発で獲得した知見と、世界20カ国以上での空港運営の経験、ノウハウを持っています。今回、一緒にプロジェクトを進められたのは大きかったですね。

何人くらいのメンバーが?

宮原さん
宮原さん

30~40人です。大勢が集まって一つの提案をつくり上げていくので意見がぶつかることももちろんありました。福岡空港という地域の重要な交通インフラの運営を担えるよう、地域を知っている企業、海外での空港運営の経験を有する企業が集まり、それぞれの得意分野の力を発揮することで、何としても運営権を勝ち取りたいという強い想いで取組みました。
今では、従前、旅客ターミナルビルを運営していた福岡空港ビルディングのノウハウに加えて、株主各社の有する知見、経験を活かし、安全・安心な空港運営、さらには利便性の向上と魅力あふれる施設づくりに努めています。

東・東南アジアでナンバーワンの国際空港に!

今後のビジョンは?

宮原さん
宮原さん

「東南アジアで選ばれるトップクラスの空港を目指す」というミッションを掲げています。福岡・九州・西日本の玄関港として、福岡空港を選んでもらって一番になれるように、と。

プランを実現するために必要なことは?

宮原さん
宮原さん

福岡空港の民間委託が始まって積極的に動いているのはエアライン誘致ですね。各国のエアラインに向けて福岡空港の魅力をPRし、就航しやすい料金体系、福岡空港に飛行機を飛ばすことでどういったメリットがあるのか等のビジネスプラン提案などをプレゼンテーションしています。さらには、インバウンドの需要喚起に向けて、中国現地の旅行会社に対する認知度向上を目的に、福岡・九州の魅力や観光資源、日本及び福岡の感染状況を伝えるためのwebセミナーを開催しています。

旅行会社のお仕事みたいですね!

宮原さん
宮原さん

海外のお客さまに「福岡に行きたい!」「九州へ行ってみたい!」と思ってもらわなくてはいけませんから。福岡市の人口増や天神ビッグバンなど経済状況もアピールしますよ。

どんな国に向けてPRされるんですか?

宮原さん
宮原さん

東・東南アジアが中心ですね。中国、韓国、台湾、香港。コロナ禍以前から8割がこのエリアのお客さまでした。シンガポール、インドネシア、ベトナム、タイにも広げていきたいと思っています。

海外への就航となると、コロナ禍で予定が変わった部分もあるのでは?

宮原さん
宮原さん

そうですね。国際線の就航本数は激減していますが、それでも30年後のマスタープランに向けて全力で計画を進めていますよ。

目指せ旅客数3500万人!

「梓設計・HOK・西日本技術開発協同企業体」

どんな計画があるんでしょう?話せる範囲で教えてください!

宮原さん
宮原さん

分かりました(笑)。数字で言うと「14カ国・地域、51路線」、「航空旅客3500万人」を目指しています。国際線旅客ターミナルビル増改築については、自動チェックイン機の増設や、国が行っている入国・出国手続きのエリアを拡張することによる、出発手続きの短縮・旅客利便性向上を考えています。さらには福岡空港を最後まで楽しんでいただけるよう免税店の面積を約4倍に拡張し、展開するブランド数も増えて商環境の充実を図りたいと思います。

空港が変わることで福岡の街にはどんなことが起きるんでしょう?

宮原さん
宮原さん

福岡空港はアジアのゲートウェイになります。福岡・九州・西日本の玄関港として多くのお客さまを受け入れ、福岡の街には交流人口が増えていくでしょうね。

今まで以上にいろんな国の方が訪れるようになるんですね!

宮原さん
宮原さん

ええ、きっと。福岡空港は福岡だけでなく九州・西日本全体の玄関港でもあるんです。高速バス・観光バスを使って空港からダイレクトに観光地にアクセスできれば、九州全体を周遊するインバウンド客も増えるでしょう。株主である西鉄の協力のもと、従来の別府・湯布院といった高速バス路線に加えて、民間委託開始以降に下関・大分・高千穂・延岡との運行も始まりました。今後も南九州や中国地方の居住者向けの高速バスの拡充、博多駅の結節強化を実現できたらと考えています。

人の流れが変わりそうですね。

宮原さん
宮原さん

空港の外だけでなく、空港内のアクセスも便利になりますよ。2021年4月20日より、国内線・国際線のターミナル間の移動時間短縮に加え、将来的な旅客需要の回復を見据え、連節バスを導入しました。高齢者や障がいをお持ちの方、大きな荷物をお持ちのお客さまにも配慮した造りになっており、また、輸送力が2倍となり立ち席スペースも多く設けておりまして、更なる利便性向上に努めています。
さらには、現在、連節バスが通行する道路の専用道化に向けた工事を進めていて、将来的に15分ほどかかっていたのが5分に短縮できます。この計画は2025年度の達成に向けて進めているところです。

それは嬉しい!最後に今後の目標を教えてください。

宮原さん
宮原さん

西鉄の得意分野である交通や商業施設の開発・運営などの事業を通して、福岡空港とこの街を盛り上げることです。貨物も関われば国際物流、就航先のホテル事業ともリンクします。まさに私たち西鉄の理念「まちに夢を描こう」を体現しているプロジェクトですから。個人的には、2025年3月末に供用する新滑走路を飛行機がせわしなく飛び交っている様子を早く見たいですね。

未来の福岡空港がとても楽しみになりました!

Related article