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グランドハンドリングとは?
大会で世界一に輝いた
西鉄エアサービスの仕事内容

グランドハンドリングとは? 大会で世界一に輝いた 西鉄エアサービスの仕事内容

日本航空が就航している全世界の空港スタッフを対象に開催された「JAL空港本部主催コンテスト」。グランドハンドリング(飛行機への搭載・貨物の搬送)に関する知識・判断・発想力を競って世界中から参加者が集う大舞台で、西鉄エアサービスは世界1位と2位に輝いた。世界2位に輝いたペアに会いに、山口宇部空港まで行ってきた。

目次

  • 梶原 寛基さん
    梶原 寛基さん

    西鉄エアサービス株式会社
    山口宇部空港所在籍

    2008年7月1日入社

  • 宗廣 多聞さん
    宗廣 多聞さん

    西鉄エアサービス株式会社
    山口宇部空港所在籍

    2020年4月1日入社

そもそも、グランドハンドリングって?

「グランドハンドリング」とは、飛行機の到着および出発にともなう地上作業のこと。飛行機に搭乗した際や着陸の後、飛行機が止まっている駐機場で、手荷物や貨物を積み降ろしする、あのかっこいい人たち……。そう、彼らこそがグランドハンドリングを担う精鋭なのだ!

PBB(旅客搭乗橋)が設置された状態の飛行機

飛行機の着陸後、滑走路から駐機場に飛行機を誘導するのも彼らの仕事。私たちが搭乗ゲートから飛行機に乗り降りする際に使う「PBB(旅客搭乗橋)」を操作するのも、機内清掃をするのも、すべてグランドハンドリングのスタッフの役割なのだ。
何となくはイメージできる。しかし、専門外の私たちが業務内容を想像するのは、正直なところなかなか難しい。そこで、まずは梶原さんと宗廣さんの業務の様子を見学させてもらった。

グランドハンドリング業務
ブリーフィング~機体到着まで

■ブリーフィング

到着約20分前、事務所でブリーフィング。対象の飛行機の業務にあたるメンバーが集合し、積み込む貨物の個数や重量、配置を入念に確認する。

ある1日のタイムスケジュール

■貨物の輸送

カウンターに預けられた貨物(手荷物)を、トーイングトラクターに積み込む。この時、優先度の高いタグ付きの荷物を漏れなくチェック。貨物室に運ぶ際はドア近くに配置し、到着後にスムーズにお客さまへ届くよう扱われる。

■トーイングトラクターで貨物室まで

貨物を搭載したトーイングトラクター

トーイングトラクターで、飛行機が到着する場所の最寄りまで手荷物・貨物を運んでおく。

グランドハンドリング業務
マーシャリング~貨物の積み降ろし

■マーシャリング

業務にあたる梶原さん(左)と宗廣さん(右)。後ろ姿がかっこいい!

駐機位置へ安全に飛行機を誘導する「マーシャリング」や、飛行機が自走できる位置まで移動させる「プッシュバック」や「トーイング」、「PBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)」と呼ばれる搭乗橋の着脱など、機体の移動に関わる業務は「ランプハンドリング」と呼ばれている。

あわせて、貨物の搭降載や搬送、仕分けなど、荷物に関わる業務も担当する。

飛行が停止したら、車輪止めを設置。

到着後、すぐに積み降ろしの業務が始まった。

トーイングトラクターを誘導するのは、この便のLM(ロードマスター:搭載監督者)を務めた市川さん。

■荷物の積み降ろし

貨物は可動式のベルトローダー(写真)に乗せられて貨物室へと運び込まれる

梶原さん・宗廣さんが業務を担当する後部座席側へ。トーイングトラクターからベルトローダーに貨物を降ろす人と、貨物室で受け取る人に分かれて業務にあたる。

声を掛け合いながら、また時折、手を使ったサインでコミュニケーションを取りながら、スイスイと仕事を進める二人。

貨物をしっかりと固定する宗廣さん。一度固定した場所を何度も確認し、チェックする姿が印象的だった。

それにしても、貨物室は天井が低いので、中に入るとずっと中腰の姿勢をとらなければならない。地上は夏は暑く、冬は寒い。その上、重たい貨物を素手で扱い、中腰でフル稼働。これはかなりハードな仕事だ……。

宗廣さんはそのまま前方のトーイングトラクターを運転して事務所のほうへ。

積み降ろしはいったん終わったかと思ったが、梶原さんが最後の貨物をのせて、機体前方へ戻って来た。

貨物を運ぶ梶原さん(左)と宗廣さん(右)

運転、誘導、運搬とさまざまな業務を臨機応変にこなしていく様はスムーズで見事だ。しかし、一人ひとりの動きが100%決まっているわけではないと、梶原さんが教えてくれた。

梶原さん
梶原さん

現場では想定外のことも起こり得ると、いつも意識しておく必要があります。全体を監督するLM(ロードマスター)がバランスをみて人員を配置していますが、現場では想定外も起こり得る。それぞれがまわりを見て臨機応変に動けることが、チームにとって重要なんです。

グランドハンドリング業務
飛行機のプッシュバック~離陸

■飛行機のプッシュバック

特殊車両を接続して、飛行機を後方へ移動させる「プッシュバック」準備の様子。

接続完了の合図をする宗廣さん。

プッシュバックが完了すると、いよいよ離陸までもうすぐだ。

宗廣さん
宗廣さん

こうして無事に見送れるとほっとします。小さい子が手を振ってくれる姿を見ると、特にうれしくなりますね。

私たちが機内からよく見るこの風景。短い時間の中であんなにハードな仕事を終えた人たちが、こうして笑顔で手を振っていてくれていたなんて……。なんだか感慨深い。

グランドハンドリングは、正確さ・スピード・柔軟性が求められる仕事

一連の仕事を目にして、グランドハンドリングの仕事をより具体的に理解することができた。搭乗客の裏側で、こんなにすごい仕事を担うスペシャリストがいるなんて! さらに興味が湧いてきたところで、業務について詳しくインタビューした。

山口宇部空港では何名のスタッフが勤務しているんですか?

梶原さん
梶原さん

カウンター業務や離発着作業の管理者を合わせて35人のスタッフが在籍しています。私たちのようにランプハンドリング業務や貨物ハンドリング業務に携わるのはそのうち15人です。

貨物ハンドリングとは?

梶原さん
梶原さん

カウンターでの手荷物(貨物)の引き受けや荷姿の確認と計量、情報入力、搭載する貨物室の調整など、お客さまからお預かりした貨物を、飛行機へ積み込む業務のことです。到着した飛行機から貨物を降ろし、お客さまに引き渡す業務も同様です。

1便あたり何名で業務にあたるんですか?

宗廣さん
宗廣さん

山口宇部空港の場合は1便あたり5~6人で業務にあたります。搭乗口と飛行機を結ぶ通路「PBB」の操作や機内の清掃を担当するPBB担当者、搭載全体を監督するLM(ロードマスター)を合わせると6~7人ですね。

LM(ロードマスター)! リーダーのような役割でしょうか?

梶原さん
梶原さん

私たちスタッフは、入社したら順を追って業務を覚え、資格を取得しながらスキルアップをする仕組みなんです。いくつものステップをクリアして任せられる業務が増えたら、最終的には「LM(ロードマスター)と呼ばれる搭載監督者のポジションにつきます。

宗廣さん
宗廣さん

山口宇部空港所属のメンバーには4名のLM(ロードマスター)がいて、梶原さんもその一人です。

すごい! 入社3年目の宗廣さんは、いくつの資格を持っているんですか?

宗廣さん
宗廣さん

7つです。

梶原さん
梶原さん

宗廣さんは早いほうですよ。資格試験に挑戦するタイミングは、直属の先輩の判断次第なんです。「そろそろ大丈夫かな」と思ったら声をかけて、指定の便でテストをする。なので、人によって資格取得のタイミングもスピードも全然違います。

宗廣さん
宗廣さん

仕事を覚えるのに時間がかかるタイプなので、人一倍意識して、一つひとつ確実に習得するよう心掛けています。

1日何便を担当するのでしょうか?

宗廣さん
宗廣さん

私たちはJALの定期就航便を担当しているので、1日4便が基本です。チャーター便などがあれば、その都度業務にあたっています。

1日の動きはどんな感じ?

トーイングトラクターで手荷物や貨物を運ぶ様子
梶原さん
梶原さん

飛行機の到着前から手荷物の受託が始まります。飛行機が到着したらその便の貨物を素早く降ろし、同時にこれから出発するお客さまの荷物を貨物室に運びます。到着から離陸まで、作業に使える時間は35分がベースです。

35分!

宗廣さん
宗廣さん

その間に機内清掃も済ませる必要があるので、まさに時間との勝負ですよ。

その他、業務ではどんな能力が求められるのでしょうか。

梶原さん
梶原さん

一つのミスがお客さまの命につながるので、責任感をもって業務にあたることが求められます。また、どんな貨物であっても限られた時間内に業務を遂行する必要があるので、スピードや正確性、柔軟な対応力も大切です。チームで最善のパフォーマンスを発揮するには、コミュニケーション力も欠かせません。

顧客が違えば貨物も違う。ひとつとして同じ便はないなか定時運航が実現できるのは、こうした影の立役者たちのおかげなのだ。

JAL主催のグランドハンドリング競技大会で世界上位を独占!

日本航空が就航している全世界の空港スタッフを対象に実施された、「JAL空港本部主催コンテスト」。エントリーは2名1組のチーム制で、西鉄エアサービスからは5空港所6チームが参加した。

コロナ禍の影響で、コンテストはzoomでの開催となり実技はナシ。グランドハンドリングに関する知識を問う設問が出題され、4つの中から正解を選んでフリップを上げて正答数を競った。

出場したうち西鉄エアサービスからは2チームが予選大会を勝ち抜き、国内13チーム、海外8チームが参加する本選大会へ。山口宇部空港に所属する梶原さんと宗廣さんは、世界2位の好成績を残した。

2020年入社の宗廣さんは、今回が初めての参加。昨年先輩が出場していた様子をzoomで見学したのをきっかけに、自ら出場を志願したという。

3年目での挑戦。いかがでしたか?

宗廣さん
宗廣さん

出題される設問の出典は、1冊200ページ以上の専門技術書。膨大な情報量なのですべてを覚えるのは大変ですが、普段仕事で使う知識ばかりなので、覚えているべきなんです。コロナ禍で就航の便数が減った期間、空き時間を見つけて勉強しました。

時間の有効活用ですね! すごい。梶原さんはいかがでしたか?

梶原さん
梶原さん

実は私は、北九州空港勤務時代に出場したことがあって。2016年度グランドハンドリングコンテストで審査員特別賞を受賞しました。当時は羽田空港で開催されていて、実技試験もありました。

今回はzoom開催でしたが、アジアやアメリカなど世界中の参加者とつないだライブ形式だったので、これまでとは違った緊張感がありました。フリップを出すまでの制限時間は1問につき15秒。「もう少し時間があれば……」という問題もありましたが、正答数は数えていたので、正直手応えは感じていました。

グランドハンドリングの魅力と働きがい

梶原さんと宗廣さんの仕事の様子を見学して、グランドハンドリングの仕事のおもしろさがいっそう理解できた気がした。日ごろの業務について、その魅力と働きがいについて聞いてみた。

仕事の魅力やおもしろいと思う点は?

宗廣さん
宗廣さん

決められたプラン通りに貨物を積み込むのが原則ですが、便によって内容は全然違う。積み方の勉強に終わりはありません。バランスよく均等に配置するほか、積荷の高さも厳密に決められています。日々経験を積んで、知識を増やしていくしかないですね。

先輩方の仕事を見て、日々感じることはありますか?

宗廣さん
宗廣さん

積み下ろしが速い先輩がいて、未だに敵いません。体力的な違いもあるかと思いますが、それだけではない。判断の速さが違うんです。貨物室で積荷を受け取る時は、ベルトローダーから次に何が流れてくるのか予想できないことがあります。そんな時でもスペースを計算しながら素早く判断しているから、仕事の速さにつながるのだと思います。

梶原さん
梶原さん

宗廣さんの言う通り、判断力はかなり重要です。役割が決められていても、その場の状況次第で動き方は変わるので、常に「次何をしようか」と考える必要があります。

さらに、搭載を監督するLM(ロードマスター)の立場になると、人員配置がいちばんのポイントであり、仕事の要でもあります。一度全体が見えるようになると、今度は全体を見ながらチームに加わることができます。

それができるようになると、他の人がLM(ロードマスター)を務める場合に全体を見ながら動けるようになるので、リーダーを助ける動きができるようになる。私の場合は、今そこに仕事のおもしろさを感じますね。

今後の目標は?

宗廣さん
宗廣さん

コンテストに関しては満点を目指したいのですが、それだけで満足せず、日々勉強を積み重ねていきたいですね。必要な知識は膨大なので、一つひとつ着実に身につけて、実践に移したいと考えています。

山口宇部空港には入社年が同じ同期がたくさんいるので、将来は同世代のメンバーが中心となって山口宇部空港を動かすのが夢です!

梶原さん
梶原さん

業務の内容は同じでも、手荷物や貨物、働くメンバーやお客さま、それを取り巻く天気などの条件はいつも違っている。その変化を日々楽しみたいと思っています。安全で正確な運航と、安心で快適な移動をサポートするために、これからもチームみんなで技術力を磨いていきます。

梶原さん、宗廣さんの仕事に密着して、グランドハンドリングの仕事について理解を深められた今回の取材。安全・安心の定時運航が彼らのようなプロによって守られているのだと知ることができた。

飛行機で離陸する際、西鉄エアサービスの制服を着たスタッフを見つけたら、ぜひ手を振ってみてください!

◆西鉄エアサービスについて
https://nnr-airservice.jp/

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