3月23日、西鉄の新しい「中期経営計画」が発表された。これから3年間、西鉄グループがどんなプロジェクトを展開しようとしているのか。その全てが書き記された、いわば「予言の書」だ。とはいえ、量は膨大。重要なところ、おもしろそうなところをピックアップして、ご紹介!
今回発表された中期経営計画を正確に言うと「第16次中期経営計画2023〜2025」。2022年11月に公表された長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン 2035『濃やかに、共に、創り支える』」を実現するための第一ステップとして、より具体的な方針、方策が描かれた、西鉄グループの今後3年間を示す道標だ。
では、ジャンルごとに「ちょっと先の未来」を見ていこう。
まずは「モビリティサービス」。「九州広域MaaS」をはじめとしたMaaSの取り組みを進めていく。MaaSとは「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略称で、ICT(情報通信技術)も利用しながら、事業者の垣根を越えて公共交通機関・移動手段をシームレスにつなぐ次世代の交通サービスを指す概念だ。
また、バス事業のサステナビリティ(持続性)を見据えた取り組みとして「自動運転バス」が目に止まる。これまでも福岡空港等で自動運転バスの実証実験を行なっているが、西鉄の自動運転がどこまで進んでいくのか。結果を楽しみに待ちたい。
また、「国内外の観光・MICE需要の獲得・受入環境の整備」を目的とした取り組みとしてタッチ決済・QRコード決済の導入による決済手段の拡大」が挙げられている。
「インバウンドへの対応」が目的で、福岡を訪れる外国人のみなさんが西鉄電車やバスを便利に乗りこなしてくれるようになるならば、なんだかちょっとうれしい。
バスではAI活用型オンデマンドバス「のるーと」の全国各地への導入拡大も未来を感じさせるプロジェクトだ。直近では宇美町でLINEでの配車予約が可能となるなど、進化を遂げている「のるーと」の、今後の成長がますます楽しみだ。
さらに今年2月にオープンしたメタバース「にしてつバース」に象徴される新しいチャレンジを継続する。デジタルの世界で何が展開されるかにも注目だ。
次は「リアルな場」提供サービスだ。グループが提供するオフィス、ショッピングセンター、住宅、ホテル、レジャーがここに入る。
最注目は天神に建設中の「ワンビル(旧福ビル)」だろう。開業が2025年春だから、今回の計画の最終年に運営がスタートすることになる。コンセプトは「創造交差点」だ。
昨年7月にはCIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のイノベーションキャンパスを創設するための検討の着手を発表。ワンビル(旧福ビル)にスタートアップを中心に国内外のさまざまな企業等が集まるオフィススペースを開設する計画が明らかになった。
また、最上層の18、19階には人や人との出会いや交流といった体験そのものが、ホテルを訪れる目的となる「ライフスタイル型ホテル」を計画。福岡市で「ウィズ・ザ・スタイル」や「ザ・ルイガンズ」ブランドのホテルを展開する「Plan・Do・See」を運営パートナーに迎える。
まちづくりに興味がある方には、ぜひ今回の中期経営計画に目を通していただきたい。西鉄の事業は複合商業施設、ホテル、マンション、シニアマンション、戸建て、ホール運営など実に多岐にわたって、人々の暮らしと様々に関わっていることがよくわかる。
さらには天神の大型開発プロジェクト、連立高架事業による周辺開発・店舗開発(桜並木駅、春日原駅、白木原駅、高架下)、太宰府、柳川における観光まちづくりの推進、西鉄久留米駅ビルのリニューアルなど西鉄らしい事業が各所で進められている。
ホテル部門は今年4月、福岡市祇園に「西鉄ホテルクルーム博多祇園」がオープン。海外では今夏に台北西門、24年夏にはバンコク2号店が開業する計画だ。
「BtoC物販サービス」は西鉄ストアやレガネットのスーパー、生活雑貨を取り扱う「インキューブ」、飲食店などのフード事業が属するカテゴリーだ。
楽しみなのは「雑貨館インキューブ天神店のリニューアル」だ。「新天神店」はどんな新しい表情を見せてくれるだろうか。
スーパーは福岡県春日市春日原への新規出店をはじめ、西鉄沿線などへの出店を予定している。また、M&Aも積極的に進めていく方針だ。フード事業では総菜などの中食や、外食店舗の強化を進める。
「BtoB 物流サービス」は国際物流と国内物流。この物流事業は直近の決算の営業収益で西鉄の50%弱に達する、まさに「稼ぎ頭」である。
国際物流は営業、運営、サポートのそれぞれでDXを推進する。また、海外ネットワークの拡大を目指す。
国内では「福岡ロジスティクスセンターを活用した九州内の輸送サービスの充実」と「半導体産業の集積が進む熊本地区における事業拡大」を図る。また、関東におけるロジスティクス拠点となる「関東ロジスティクスセンター」の設⽴を計画している。
「新領域事業への挑戦」では環境資源、農水産、ウェルネス、地域ソリューションの4分野の計画が明示されている。
目玉は「エネルギー領域における事業拡大」だ。関連会社である西鉄自然電力による再エネ電源開発事業を着実に推進することで再生可能エネルギー電源開発事業の拡大を図る。
再生可能エネルギーを起点とした沿線自治体との連携も進める。すでに八女市、うきは市との連携が進んでいる。
農水産ではグループのNJアグリサポートで農場を経営し、トマトやイチゴを生産しているが、今後は農産品目の拡大や、その他の農水産物領域における事業拡大を図る。
イントレプレナー(社内起業家)による新事業の創出も本格化する。「デジタルプラットフォーム活用による事業創出」として、音楽愛好家向けプラットフォームの市場実証に向けて開発に着手する他、いくつかのプロジェクトが事業化に向けて動き出している。
同時にスタートアップ企業との連携を促進。アライアンスだけでなく、M&Aも視野に入れる。スタートアップのアイデアと技術、インフラ企業である西鉄のリソースがかみ合えば、劇的な成長を実現する事業の創出も決して夢ではない。
最後に「人財・組織」と「財務・資本」をチェックしておこう。
事業拡大を見据えた多様な人財の確保として掲げるのが、「賃金を含めた労働諸条件の見直し」「多様な価値観、ライフステージに寄り添った施策の拡充」「ジョブ型制度の導入等による高度専門人財の獲得・育成」の3つだ。
これを見る限り、これまで以上に多様な働き方が選択できる組織への変化を目指していることがわかる。さらにユニークで、専門的で、高度な人材が集まってきそうだ。
もちろん、同時にサステナブルな成長を支える人財力の強化を図る。
「自己啓発支援とタレントマネジメントの導入」「グローバル人財の確保・育成」を進めるほか、若手社員の横断組織「未来Lab」を発足し、社内外の討議を重ねていくことでイノベーション人財の育成を図っていく。
こうした施策を通して、社員エンゲージメントの向上を図っていくようだ。
財務・資本では「サステナブル」がキーワードになりそうだ。サステナビリティと資本効率での最適なバランスを意識したポートフォリオマネジメントを実施。また、投資家・株主への開示の充実にもしっかり取り組んでいく。
本メディア「エヌカケル」ではこれまで、今回の中期経営計画に関連した記事をアップしてきた。興味があるトピックをより深く知るために参照してほしい。
AI活用バスがもたらす変容する福岡の暮らし
https://nnr-nx.jp/article/detail/8
いよいよ動き出す西鉄のメタバースへの挑戦「にしてつバース」とは?
https://nnr-nx.jp/article/detail/47
2025年春開業ワンビル(旧福ビル)再開発の裏側を探る!開発担当者が語る天神の未来
https://nnr-nx.jp/article/detail/15
世界トップクラスのイノベーションキャンパスCICが福岡から世界を変える
https://nnr-nx.jp/article/detail/10
ワンビル(旧福ビル)再開発の裏側キーパーソンに聞く・vol.1 中村拓志&NAP建築設計事務所
https://nnr-nx.jp/article/detail/55
西鉄天神大牟田線高架化でまちはどう変わる?工事担当者が語る計画の裏側
https://nnr-nx.jp/article/detail/18
2023年以降に博多祇園・台湾・タイで開業!西鉄のホテル開発事業の最前線
https://nnr-nx.jp/article/detail/17
にしてつストア&レガネットで全国お弁当・お惣菜大賞2023の受賞メニューをテイクアウト!
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「博多やりうどん」メニューの魅力とは?32cmのごぼ天もスープも店内手仕込みだった
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「雑貨館 インキューブ」の バイヤーが選ぶ! 文房具おすすめ4選
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「雑貨館 インキューブ」の バイヤーが選ぶ! 美容グッズおすすめ3選
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男性も育休取得! 夫婦で交互に 子育てを。向井夫婦の働き方と 西鉄のダイバーシティ
https://nnr-nx.jp/article/detail/45
■西鉄グループ第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)の策定について
■にしてつグループまち夢ビジョンについて