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「まち夢ビジョン2035」とは?策定メンバーが語る未来長期ビジョン連載記事 vol.1

「まち夢ビジョン2035」とは? 策定メンバーが語る未来 長期ビジョン連載記事 vol.1

2022年11月、西鉄の長期ビジョン「まち夢ビジョン2035」が公表された。まちづくりや物流など、多岐にわたる事業を通じて社会に貢献する西鉄だからこそ、ビジョンの内容も膨大だ。そこで、今回のビジョン策定に関わった各部署の代表6名より座談会形式で話を聞き「まち夢ビジョン2035」の全貌を探った。

目次

「まち夢ビジョン2035」とはどんなもの?

西鉄の長期ビジョン「まち夢ビジョン2035」には、そもそもどんな内容が書かれているのか。

「まち夢ビジョン2035」の策定に携わったメンバー6名との座談会で、いったい「まち夢ビジョン2035」とは何なのか、直接教えてもらうことにした。

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  • 角銅 理帆 さん
    角銅 理帆 さん

    自動車事業本部計画部
    グループ事業担当

  • 安丸 勝晃さん
    安丸 勝晃さん

    都市開発事業本部営業部
    営業統括担当 課長

  • 秋永 順子さん
    秋永 順子さん

    (株)インキューブ西鉄
    天神店 店長

  • 伊藤 正信さん
    伊藤 正信さん

    国際物流事業本部東日本営業部
    関東第二営業所 所長

  • 平野 真孝さん
    平野 真孝さん

    新領域事業開発部 係長

  • 和田 未来さん
    和田 未来さん

    人事部人事課 係長

まず「まち夢ビジョン2035」って、どういうものでしょうか??簡単に教えてほしいです!

角銅さん
角銅さん

ビジョンを作成するにあたって、私たちは「2050年」という大きく先の未来から描いていくことを始めました。

2050年!? なぜそんな先のことまで描いているんですか。

安丸さん
安丸さん

まず2050年までの未来像を描き、その未来像を実現するための道筋を逆算するバックキャストという手法で、2035年という目的地を描きました。今の世の中って、目まぐるしく変化していて、不確実性が高いじゃないですか。

たしかに……。変化への対応が求められることが多くなりました。

角銅さん
角銅さん

西鉄も持続可能な企業として存在していくためには、これまでの事業モデルの延長では難しいと考えました。これから未来や社会、かかわる地域がどうなっていくのかということを2050年という大きく先の未来の姿から社会の変化を導き出し、2035年時点では西鉄としてどうありたいのか、どういう価値を提供していきたいのか。2035年までにどのようなことをしていくのか。提供していたい価値を形にしたのが今回のビジョンではないかと思っています。

安丸さん
安丸さん

2050年の未来なんて普段考えないじゃないですか。僕らがどこに行けばいいかわからなくならないように「まち夢ビジョン2035」という道しるべがあります。

平野さん
平野さん

西鉄らしく電車で言うと、2035年までのレールを敷いておこうかみたいな感じですかね。

なるほど。では、今回の「まち夢ビジョン2035」のポイントを簡単に教えてください。

角銅さん
角銅さん

にしてつグループでは、2035年に「居心地よい幸福感あふれる社会」への貢献 を実現したいと考えています。

「居心地よい幸福感あふれる社会」って、いいですね。実現のためには、どんなことをしていきますか。

角銅さん
角銅さん

お客さま、地域・社会、従業員の皆さん、取引先、株主・投資家の皆さん一人ひとりと向き合うことですね。その上で、にしてつグループとして、各ステークホルダーに対して、価値を提供していきます。

なるほど。「まち夢ビジョン2035」を読むと、理想的だけど、ちゃんと現実的なんですよね。自分にも関わる、まちの未来像がたくさん詰まっていると思いました。

幅広い年次、事業部、グループ会社の社員が一緒になってビジョンを作成

ちょっと気になったことがあるんですが……。

角銅さん
角銅さん

なんでしょう?

あの、こういう全社レベルの「長期目標」って、役員の方が集まってつくるものではないのかな、と思うんですが……。結構、若い方が多いような。

和田さん
和田さん

はい、役員の方々ももちろんですが、「まち夢ビジョン2035」に関しては、実際に実務に取り組んでいる若手を含めた幅広い年次、事業部門、グループ会社のメンバーで作ることを大切にしていました。

角銅さん
角銅さん

にしてつグループが未来へ大きく成長していくためには、まずは自社の現状をしっかりと把握しないといけないので。

たしかに。自社の現状を知るためには、実際に事業に取り組む、多くの人の声が生かされることが重要ですよね。

和田さん
和田さん

自社の現状を把握してから、社会の未来像を描いていきました。そこから、実現のために必要な施策を考えていっています。

具体的には、どのような手順でビジョンを作っていったのでしょうか?

角銅さん
角銅さん

横断プロジェクトメンバーにて、以下の手順でビジョン草案を作成していきました。

部署を横断するプロジェクトで、話し合うのもなかなか大変だったのでは……?

和田さん
和田さん

コロナ禍の状況ではありましたが、オンラインディスカッションを中心に、1年を通して検討を行っていきました。

期待と不安が入り混じる中で「まち夢ビジョン2035」がスタート

「まち夢ビジョン2035」の草案が策定され、各セグメントのワークプロジェクトが始まったということですね。大役ですし、不安な気持ちがあったんじゃ……。

和田さん
和田さん

「自分にできるのかな」という不安はありましたね。会社が求めるものとか、世間が求めるものに自分が応えられるのか、というところはすごく不安でした。

平野さん
平野さん

わかります。私も「自分の能力が足りるのか」という部分が不安でした。「ゼロからスタートする」ということ自体の責任の大きさに、不安を感じていたのかも。

秋永さん
秋永さん

私も最初に聞いた時に「結構、重大な話だから」とか言われて、「何〜!?」って、思いました。策定メンバーに決まったことを聞いても「私についていけるのかな」と心配でした。

やっぱり、大役ですからね……。

伊藤さん
伊藤さん

私も不安が大きかったですね。2050年の未来って、なかなかイメージできなくて。人口問題とか、環境エネルギー問題とか。将来確実に起こる問題でも、今、既に起こっているものと実際に対峙してみると「まずいぞ」とやっぱり思います。

現実的な問題に向き合うことで、現状に不安を感じることもありますよね。

角銅さん
角銅さん

検討時期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出制限があったということもあり、在宅勤務ばかりでバスにも電車にも人がいなくて、街にも人がいない。「うちの会社、どうなっちゃうんだろう」とマイナスな気持ちになっていました。ただ、そのようなときにこのビジョン策定の話を聞いたので、期待も大きかったです。

確かに、コロナ禍の状況から考えると、未来を良くするためのポジティブな内容ですからね。

安丸さん
安丸さん

私は期待が大きかったですね。以前、福ビル街区の開発に携わったことがあって、その時に福岡、天神について研究して「ポテンシャルの塊」だと思ったことがあったんですよ。それで、当初から未来のことを考えるのは楽しみだと感じましたね。

なるほど。それぞれで期待と不安が入り混じる感情を持って、ビジョン策定がスタートしたんですね。

「まち夢ビジョン2035」の主な内容とは?

伊藤さん
伊藤さん

まず、にしてつグループが大切にしたい4つの基本スタンス(具体的な行動)を定めました。それがこちらです。

この基本スタンスをもとに、各部門でどのように戦略を策定していったのでしょうか?

角銅さん
角銅さん

モビリティ、不動産、流通、物流、新領域、人財・組織戦略という領域に整理して、各領域に携わるメンバーで自部門に関わるビジョンや戦略を策定しました。「居心地よい幸福感あふれる社会」への貢献を実現するために、以下のような方針を策定しました。

少しずつ、具体的になってきましたね。
「濃やか」というのは、どういう意味なんでしょう?

和田さん
和田さん

心を込めた、情が厚い行動という意味です。地域や人々が抱える課題を自分事として受け止め、行動していこうという気持ちを込めて、この言葉を選びました。

角銅さん
角銅さん

社員一人一人の思いから出てきた言葉で、大切にしていきたいという気持ちも込められています。

このような指針をもとに、各分野で様々な取り組みを行っているということですね。それぞれのお話をうかがいたいです。まずは、モビリティサービスの分野を担当されている角銅さん。

角銅さん
角銅さん

私はいろいろありますが、一番は地域特性に応じたモビリティサービスですね。例としては、AIを活用したオンデマンドバス「のるーと」や、マルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」です。従来のバス、鉄道だけでは継続的に公共交通を守っていくのは難しいという認識が、より強くなりました。それぞれの地域にあった形のモビリティサービスを形にしていきたいです。

平野さん
平野さん

私も以前モビリティに携わってましたが、地域の方や自治体と連携して、それぞれの地域にあったモビリティサービスは何かを一緒に考えていきたいですよね。

もっと便利になりそうで、楽しみです。まちづくりの分野の安丸さんは、どのような取り組みを行っていますか?

安丸さん
安丸さん

天神のまちづくりから、様々なビジネスチャンスを創造したいと考えています。たとえば、天神ビッグバンの中でも中心地である福ビル街区の開発。「つくって終わり」ではないと思うんです。

伊藤さん
伊藤さん

開発後の活用が重要になってきますよね。

安丸さん
安丸さん

そうです。福ビル街区で多種多様な人たちを呼び込もうとする動きや、「創造交差点」というコンセプトをいかに天神の街に広げていくかということが、非常に大事だと思います。

これからの天神も面白くなりそう。流通分野の秋永さんはいかがでしょうか?

秋永さん
秋永さん

私はインキューブ天神店で、「体験の場づくり」にすでに取り掛かっています。小売店とECサイトとの違いは、やっぱり「リアルに体験できること」かなと思いまして……。

たしかに。実際に触れて選びたいときには、ECサイトがあっても、店舗に足を運びますよね。

秋永さん
秋永さん

先日も「文具王」という方に来ていただいて、文具の説明をしながら、お客さまに商品に触れていただきました。五感を使った、ご家族でも楽しめるような企画を行い、体験型店舗を目指したいと思います。

体験型店舗という視点は面白いですね。物流分野においては、いかがでしょうか?

伊藤さん
伊藤さん

プロジェクトに対応した人財募集を行い、自由に国内の社員が参画できる「プロジェクト型業務」を始めました。かなり大きめのプロジェクトなんですけど、実際に募集をかけてみると、若手社員の応募が多数集まりました。

安丸さん
安丸さん

それは意欲のある人がチャンスを掴めるし、プロジェクトにとっても、熱意のある人に取り組んでもらえるので、活気が出そうですね。

伊藤さん
伊藤さん

初めての試みだったんですが、有意義だったと思います。これまでは、人事異動ありきだったので。とっても新しい感覚で物事がスタートしました。

やりたいプロジェクトがやれるんだから、嬉しいですもんね。新領域の分野の取り組みについても教えてください。

平野さん
平野さん

新領域分野においては、他社と共同して行なっている、エネルギーマネジメントに注目してほしいですね。2022年春に、西鉄でもエネルギー事業が立ち上がりました。その中で「今後、エネルギーは循環すべきもの」と考えているんです。

伊藤さん
伊藤さん

「エネルギーの循環」は重要な問題ですよね。

平野さん
平野さん

はい。2035年頃には、きっとEV(電気自動車)が道路を行き交っていると思うんですよね。その時に「電力の供給」が問題にならないように、再生可能エネルギーでエネルギーを循環させる必要があります。そこで、「EVバス」の取り組みも始めています。

西鉄がそんなところまで、エネルギー分野で挑戦をしているとは知りませんでした。まさに新領域ですね。最後に、人財分野ではいかがでしょう?

和田さん
和田さん

人財分野に関しては、組織と従業員がともに成長して貢献し合う「エンゲージメントの高い組織」にするということですね。ひとつは「人財情報プラットフォーム」を導入することです。グループ全体の人財情報を一元化することで、パフォーマンスを最大化します。

安丸さん
安丸さん

西鉄グループ全体の人財情報を一括管理って、けっこう膨大ですよね。それがプラットフォームで解決できるのは、大きな影響がありそうです。

和田さん
和田さん

さらに一人一人が自律的にキャリア形成ができるようにサポートし、資格取得支援や副業解禁など、リスキリングも支援します。

秋永さん
秋永さん

いいですね。働きがいや満足度があがって、もっといきいきと働ける環境になりそうです。

未来への期待と責任の重みを感じながら前進する

みなさんが「まち夢ビジョン2035」に向かった取り組みについて語っている表情をみると、もう不安はあまり感じないんですが……。

和田さん
和田さん

作っている最中に、だんだん不安は感じなくなっていきました。いろんな意見が活発に出る中で、自分の意見も反映されているなと感じるようになったことが大きな要因です。

角銅さん
角銅さん

私もそうですね。皆さんとディスカッションを重ねるにつれ、不安が薄れて、期待が大きくなっていきました。

伊藤さん
伊藤さん

私も期待が大きくなってますね。国際物流のフィールドは日本全体や世界であり、法人が顧客ですので、ビジョン策定中は苦労がありました。ですが、「お客さまと寄り添うという会社のベクトルがプロジェクト参加者によって作られていったので、同じ西鉄の中でも事業間の乖離はないと確認でき、期待が増していきました。

平野さん
平野さん

私も実際にエネルギー事業が走り出してからは、期待が大きくなっています。「まち夢ビジョン2035」の方向性に向かって突き進んでいるんだな、と実感できて、自信にもつながっていますね。

たしかに、具体的になっていくことで、期待感は増しますよね。

安丸さん
安丸さん

「まち夢ビジョン2035」も、けっこう具体的なところまで落とし込めたと思っているので。「何をすればいい」っていうのがわかると、進めやすいですよね。

秋永さん
秋永さん

そうですね。私も出した意見が反映されていて嬉しいと思い、期待の方が強くなりました。今は不安というより、この目標を伝える責任、巻き込む責任を強く感じています。

角銅さん
角銅さん

たしかに、今は不安ではなく「責任」を感じてますね。期待と責任という感じですかね。

「まち夢ビジョン2035」が達成された後の社会はどうなる?

最後に「まち夢ビジョン2035」が達成された、2035年はどうなっていると思うのかを教えてください。

和田さん
和田さん

私は、みんな一人ひとりが輝ける幸せな世界ができているんじゃないかなと思います。

平野さん
平野さん

あ、私も同じです。幸福感あふれる世界になっているんじゃないかなと思いました。ウェルネス領域に関わっていて、健康であり続けることと幸せが直結するなとも思っていて。まずは西鉄で働く人たちが、心身ともに健康であってほしいと思います。

和田さん
和田さん

そうですね。私は人事として、今以上に社員のみなさんが毎日楽しく働いてもらえることが、一番かなと思います。

秋永さん
秋永さん

私は、また次の未来や夢に進んでいくんじゃないかと思います。「まち夢ビジョン2035」を実現したということを自信にして、また次の夢を描くんじゃないかなと。

安丸さん
安丸さん

達成できて、また夢が膨らむって事ですよね。素敵ですね。

伊藤さん
伊藤さん

私は西鉄の良さって「人の良さ」だと思うので、その部分と何かを掛け合わせた、さらに良いものが生まれるんじゃないかなと思っています。

角銅さん
角銅さん

私も、これから先も西鉄がかかわる人々が居心地よく幸福感を持って暮らせるよう、お客さまに寄り添っている会社でありたいと考えています。ビジョン策定の時も話しましたが、西鉄の良さとして「人の優しさ」「温かみ」という部分は重要ですよね。

安丸さん
安丸さん

西鉄はいろんなサービスが提供できますもんね。いろんな人がいるし、いろんな事業があるから、みんなで横に手を繋いだら、もっとすごいことができるんじゃないかと思います。

平野さん
平野さん

その点はもっともっと活かしていけそうですよね。ちなみに安丸さんは、どう考えていますか?

安丸さん
安丸さん

私は、よりオンリーワンになると思います。「まち夢ビジョン2035」を実現した西鉄はきっと他社にはできないような挑戦をたくさんやって、力を発揮しているはずです。天神の街においても、ミニ東京にはなりたくないと思っています。

天神もまた、オンリーワンな地域になるということですね。

安丸さん
安丸さん

天神にただ大きな建物ができるだけではなく、小さな路地裏があったり、歴史があったり。そういった部分で人を惹きつけていると思います。西鉄においても社員一人ひとりが誇りを持って働いて、自分たちにしかできない仕事をすれば、オンリーワンの魅力が高まると思います。

秋永さん
秋永さん

いいですね! こういった渦中にいることを、みんなで楽しみたいですよね。

きっと2035年まで、西鉄の皆さんは新たな挑戦をしつつも、楽しく、軽やかに前へ進んでいくんでしょうね。楽しみです!!

未来への不安を期待に変える「まち夢ビジョン2035」

「未来のことを深く考えると、不安が高まる」とばかり思っていた。だから、あまり未来のことなんて、考えようとしていなかった。

しかし、熱く夢を語る西鉄社員の姿を見ていると、「期待できる未来がある」と気付かされる。課題を具体化し、挑戦する内容を決めることで、不安は期待に変わるのだ。「まち夢ビジョン2035」には、そんな期待が詰まっている。期待を胸に、私たちはまた前を向いて、歩んでいかなければならない。

「濃やかに、共に、創り支える 〜Grow in harmony with you〜」

これは「まち夢ビジョン2035」の基本スタンスである。西鉄は2035年に「居心地良い幸福感あふれる社会」への貢献を果たすために、さまざまな未来を描いている。

先が見えず、不確実性が増す時代の中で、暗闇から懸命に先を見据える。今日もまた各部署で、2035年に向けた着実な新しい一歩を歩んでいるはずだ。

今後は各分野ごとの詳しい話もインタビューしていくので、そちらも楽しみだ。

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