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男性も育休取得! 夫婦で交互に
子育てを。向井夫婦の働き方と
西鉄のダイバーシティ

男性も育休取得! 夫婦で交互に 子育てを。向井夫婦の働き方と 西鉄のダイバーシティ

共働きが当たり前になり、女性のキャリアアップや男性の育児休業取得に注目が集まるなか、西鉄では実際にどんな働き方が実現できるのか。

今回は、夫婦で交互に育児休業を取得しながら西鉄で共働きする向井夫婦にインタビュー。リアルな働き方に迫り、育休の取得や育児・家事、キャリアなどについての本音を語ってもらった。

  • 向井 愛海 (なるみ)さん
    向井 愛海 (なるみ)さん

    西日本鉄道株式会社
    自動車事業本部 業務部 業務担当

    2018年入社。運行ダイヤの作成や自治体との調整などの業務を経て、入社4年目からバス部門の人事・労務関係および新型コロナウイルス対策などに従事する。

  • 向井 采夏(あやか)さん
    向井 采夏(あやか)さん

    西日本鉄道株式会社
    広報・CS推進部 広報課

    2018年入社。入社1、2年目は都市開発事業本部でオフィスビルの収支管理業務、3年目は商業施設の統括に従事。入社4年目から広報課へ異動した。

  • 向井 蒼晴(あおは)くん
    向井 蒼晴(あおは)くん

    2022年6月に生まれた向井家の長男。

目次

夫婦で交互に育休を取得する西鉄社員にインタビュー

西鉄には2人で交互に育休を取得することを決めた夫婦がいる。自動車事業本部・業務部業務担当の向井愛海さんと、広報・CS推進部広報課の向井采夏(あやか)さんだ。男性の育休取得はこれまでに前例はあるが、西鉄社員同士で夫婦で数カ月にわたって交互に取得するケースは初めてだという。

向井さん夫婦はともに2018年入社。同期どうしで2021年3月に結婚した。采夏さんの妊娠が判明してから産休・育休について2人で話し合い、周囲にも相談しながら夫婦で育休を取ることを決めたそうだ。

采夏さんは2022年5月から2022年の12月までの8カ月間産休・育休を取得。2022年6月に長男の蒼晴くんを出産し、2023年1月から再び職務に就く。

一方愛海さんは、2022年11月から3月まで育児休業を取得。采夏さんから育児のコツを引き継ぎ、3カ月の間、蒼晴くんと2人で日々を過ごす。

育休取得により育児とキャリアアップの両立を目指す

育休取得にあたり、2人でどのようなことを話し合ったのか。重要なキーワードのひとつに「キャリアプラン」があった。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

育休の取得時期など出産・育児に関することはもちろん、お互いのキャリアプランや働き方についても考えを共有し、どうするか話し合っていきました。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

私も出産・子育てを経ても同期と同じペースでキャリアアップを目指したい、と思っていたので、休職期間についても夫婦で話し合いました。また、西鉄では時短やフレックス制での勤務が認められているので、復帰後の仕事と家庭の両立に関しても心配は無用でした。

夫が育休取得をする決断

社会全体においては男性の育休取得はまだ事例が少ないのが現状だ。そうしたなか、5カ月間にわたって育児休業の取得を決めた愛海さん。決断するまでに、どのようなことを考えたのか。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

せっかく育児休業を取るなら、しっかり家事・育児に向き合いたいと思ったんです。短期間だと、教えてもらって慣れたころに終わっちゃいそうで(笑)。西鉄の先輩には男性で育休を取得した方もいらっしゃるので、特に不安はありませんでした。業務の引き継ぎに関しても滞りなく、周囲の理解と協力のおかげでスムーズに事が運んだと感じています。

愛海さんが円滑に業務を引き継げたポイントは、育休取得を相談したタイミングにあった。2021年11月に子どもができたと判明し、12月には育休取得の意志を上長に伝えた。素早い決断のおかげで業務面の調整期間が確保できたそうだ。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

「私が休む分、周りの人の業務負担が増えるのは申し訳ない」という気持ちもありましたが、「育児に参加したい」という気持ちは固まっていました。社内では4月に人事異動があるので、ギリギリに申し出るよりは早めに相談したほうが、自分にとっても周りや会社にとってもベターだと考えたんです。

私の知らないところで、上司や人事部の方々が綿密に調整してくださったのだと思いますが……。恵まれた環境に感謝しています。

女性として、母として育休取得の「正解」は?

一方、采夏さんは出産後、約半年で業務に戻ると決断した。早期に復職するにあたり不安や心配はなかったのか。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

ごく最近までは、「1歳までは女性が子どもの面倒をみる」という考えが当たり前だったし、今でもその風潮は残っています。だから、「母」としてこの決断で良かったかどうかは今でも自問自答を続けています。

でも、多くの人がこうした固定観念に縛られているから、世の中は変われない。「母」じゃないとできないことばかりでは決してないし、相手を信頼してお願いすればきっとうまくいくはずだと信じて、仕事に戻ることを決めました。

決断に至るまでには、同僚や女性の先輩社員にも相談を重ねたという。西鉄社内には、有志の先輩社員が立ち上げた「育休ママ・パパ応援コミュニティ」があるそうだ。このLINEグループを介して休業中であっても社内の情報が共有されたり、いつでも連絡を取れたりできるようになっている。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

「困ったときに頼れる先輩がいる」とわかっていると、すごく安心できます。

出産や育児の面だけでなく、業務面での疑問も解決できる。こうしたコミュニティの存在は、精神面でも大きな支えとなりそうだ。

夫婦交互での育休取得に対する周囲の反応は?

育児休業を取ることについて、当事者にとって一番気になるのは周囲の反応だ。向井夫婦の場合はどうだったのか?

向井 愛海さん
向井 愛海さん

「育児休業を取得したい」と最初に上司に相談したところ、二つ返事でオーケーしてくださいました。他の先輩方や同僚も同じような反応で、恵まれているなと思いました。

ニュースや他の記事では、周囲から理解を得られなかったり、ネガティブな反応を受けたりすることもあると聞くこともありますが、私の場合はマイナスの反応はまったくありませんでした。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

私もです!これ、私が入社したいちばんの理由でもあるんですけど、西鉄って本当にいい人が多くて。恵まれているなと実感します。

こうした温かい社内の雰囲気は、休業中の社員にとって大きな支えとなる。産休・育休で長期間職場を離れると、「復帰してうまく社内の空気に溶け込めるか」「周りに後れを取らないか」といった不安が生じるものだが……。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

私の場合、休業中も同僚や同期が連絡をくれたり、会いに来てくれたりしていたので、疎外感をまったく感じずに過ごすことができました。前の部署の先輩や後輩からも連絡をもらえるなんて、うれしいですよね。前向きな気持ちのまま復職できたんです。

「産休・育休を取る」こと以上に仕事に「復帰する」ことのほうが、多くのエネルギーを要するのかもしれない。制度面はもちろんのこと、心理的な不安を取り除ける復職への環境づくりが必須だと感じた。

もっと「働きやすい社会」にするには?

現在の西鉄の育休の制度や働き方について、「不満はまったくない」と話す向井夫婦。では、西鉄以外に視点を広げ、世間一般の「子育て」や「働き方」についてはどう感じているのだろうか。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

「育てながら働きたい」と考える人は、これから男女ともに増えていくと思います。その一方で、性別や世代を問わず、固定的な価値観や考えが残っているせいで育休を取りにくいケースもまだ残っているはずです。

子どもが大きくなった時にどう育てるかも課題ですよね。リアルに考えると、仕事の合間にちょっと子どもの様子を見に行ったり、休憩時間に立ち寄ったりできる「社内託児所」のような場所がもっと増えると、子育て世代が働きやすくなると思います。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

そのほか、一般的に育休を取らない理由に、金銭的な理由があると思うんです。休業中は収入が減るうえ、子育てに関わる出費も意外と多いので、「なるべく収入を下げたくない」というのが働く世代の本音ではないでしょうか。

当事者からの意見を踏まえて、西鉄人事部の担当者に聞いてみた。
すると「収入面は大きな懸念点のひとつだと思いますが、社会保険料の免除や社会保険からの給付など、国の制度を正しく理解することで、収入の不安を軽減することができるかもしれません。」とのこと。制度の理解や情報の伝達が進めば、もっと自由な選択ができる人が増えるかもしれない。

育休取得による変化とメリット

出産・育児を夫婦で取ることによって、社員にはどのような変化が起こるのか。考えやモチベーションの変化や仕事へのプラスの影響について話を聞いた。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

育休を取得するまでは、仕事に打ち込みたい!という気持ちが強かったのですが、子どもが生まれてからは「大事なことは仕事以外にもある」と実感しました。

今はどちらも同じくらい大事で、仕事に対しても変わらず意欲を持ち続けています。なので無理はせず、でも後悔はせずに、子育ても仕事も両立していきたいと思っています。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

私自身は、いろんなことを許せるようになり、人として成長できたと思います。また、仕事面で育児の経験が役立つことも多々あるとわかりました。

例えば、「ベビーカーを押してバスに乗る時、ステップがあると乗り降りが大変だな」とか、子育てをしていないと気付けない視点って、まだまだたくさんあると思うんです。

西鉄は交通や商業施設など、子どもから大人まで幅広い人が利用するサービスを支えているので、こうした視点は必ず仕事に活かせるはずです。

向井 愛海さん
向井 愛海さん

子育ては学びの場。2人で家事や育児をシェアすることは、成長するチャンスでもあると思います。

向井 采夏さん
向井 采夏さん

忘れてはいけないのは、私たちの選択が「正しい」のではないということ。育児や働き方に「正解」はありません。当事者や周りのいろんな人々の考えや事情があり、意志がある。多様な考えや働き方が実現できるように、さまざまな選択肢が用意されていればいいなと思っています。

法整備や取得率の目標値といった「目に見える」改善や変化ばかりが取り上げられがちだが、出産や育児にまつわる可視化しにくいプラスの作用についても、もっと注目されるべきだと言える。

一人ひとりの意志が尊重され、多様な考えや決断が認められる環境さえあれば、子育ての時間は当事者にとっても会社にとっても「かけがえのない贈り物」となるはずだ。
今回の取材で、西鉄ではダイバーシティを認める”前向きな働き方”が浸透し、実現できているとわかった。
法律やルールの整備、数字的な目標の達成がゴールではなく、それぞれが「子育て」に向き合う姿勢や価値観そのものが、個人、ひいては会社の成長へのカギとなりそうだ。

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