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福岡を基盤に、関東や関西など日本全国に広がっている西鉄の住宅開発事業。今回は、2022年から事業を進めているフィリピンの現場を取材。進行中のプロジェクトや国内外の開発チームの動きについて話を聞いた。
西鉄の海外開発事業は2015年のベトナムを皮切りにインドネシア、タイ、アメリカ、フィリピンと事業エリアを拡大している。2025年にはインドでは初となるプロジェクトがスタート。現在は海外6カ国で31(※2026年5月時点)の不動産開発プロジェクトを手掛けている(進行中も含む)。





西鉄がフィリピンでの住宅開発に参入したのは2022年。大手デベロッパーであるAXEIA DEVELOPMENT CORPORATION(以下、AXEIA社)と共同で事業を進めている。「Midori Terraces(ミドリテラス)」、「Tanauan Park Place Phase4(タナウアンパークプレイス)」、「Richdale West Residences(リッチデールウエストレジデンス)」の既存3案件はすでに販売・建設・引き渡しが進行していて、いずれの物件も順調に実績を伸ばしている。

加えて、2026年から新しく2案件の分譲住宅開発プロジェクトが始動。フィリピンでは計5案件の開発が進行中だ(地図は、先行して展開している3案件の所在地)。


若年層の人口割合が高く、堅調な経済成長を続けるフィリピンでは近年、20代後半から30代の実需層の住宅需要が上昇。現在は住宅不足の状況のため、スピーディな供給が求められている。
西鉄は、フィリピンの大手デベロッパーであるAXEIA社内に事務所を置き、現地駐在員と国内チームが連携を取りながら、開発を進めている。


現地には海外開発事業本部の2名の担当者が駐在している。企画開発担当者として2023年10月から駐在する稲益晃仁さん。現地パートナー企業と連携し、既存プロジェクトの推進・管理および新規案件の開拓を担う。具体的には、販売・建設・財務等の各分野におけるモニタリングを通じた進捗管理に加え、新規案件参画に伴う事業計画の策定など、多岐にわたる業務を通じて、フィリピン事業の価値最大化を図る。

さらに、2025年10月からは技術員の寺園光輝さんが合流。技術支援として、施設やアメニティに関する計画・デザイン・発注・施工の管理業務や品質管理業務にあたっている。

同部署の諸留寛大さんや山本湧大さんは、国内でプロジェクトを支える企画開発チームのメンバーだ。普段は、海外の駐在員と連絡を取り合いながら現地の情報収集や進捗状況の確認、本社との調整を進めている。毎月1週間程度の出張で駐在チームに合流。現地の進捗状況の把握や現地パートナーであるAXEIA社との月例会議における協議など、対面でコミュニケーションを取っている。


こうした国内外の強い連携があってこそ精力的に進められる海外開発事業。入社数年の若手からマネジメントを担う層など、さまざまな人財が国内外で持ち味を活かして活躍している。

都会的な景観が広がるフィリピンの首都マニラ。しかし、少し郊外へ出れば未開発地が依然として残されている。西鉄が住宅開発を手掛けているのも、そんなマニラ郊外の土地。マニラ中心部から車で60~90分圏内のいくつかのベッドタウンで、複数の開発プロジェクトが進行中だ。
今回は、第1号案件となった「Midori Terraces(ミドリテラス)」と、約3,000戸(予定)の大型プロジェクトとなる第3号案件「Richdale West Residences(リッチデールウエストレジデンス)」の現場を詳しく紹介する。

「ミドリテラス」は、約4万㎡の敷地に、1棟6戸の低層棟で構成された、総戸数462戸の分譲マンション。堅調な不動産市況を追い風に、予想を上回るペースで全戸完売。2026年4月中旬時点で462戸全てが竣工済となり、順次引き渡しを行っている。
丘陵を活用した敷地内に、3階建ての低層マンションのユニットが立ち並ぶ。1室あたりの広さは50㎡で、販売価格はおよそ730万円~910万円(約280万ペソ~350万ペソ※1ペソ=約2.6円換算、2026年5月25日時点)。眺望の良い高台に建つ棟のほうが販売価格は高いが人気があり、いち早く完売した。(※価格は販売当時の資料に基づく)




もとはオーナーの別荘だったクラブハウスは、住民が利用できるコミュニティスペースに。



第3号案件の「リッチデールウエストレジデンス」は、総戸数3000戸(プロジェクト開始当初)の分譲戸建・分譲マンション。約60ヘクタール(東京ドーム約13個分の広さ!)の敷地を複数のフェーズに分けて販売、造成、建設を進めていく予定だ。

ここに建てられるのは主に現地の中間所得層をターゲットにした価格帯である「アフォーダブル住宅」と呼ばれる形態の住宅だ。戸建の「Linnea(リネア)」、「Carnation(カーネーション)」、タウンハウス型の「Jasmine(ジャスミン)」などのタイプがラインナップされている。
戸建タイプの「Linnea(リネア)」は、敷地面積100㎡、延床面積77㎡、価格は約435万ペソ~(約1,130万円~、2026年5月22日時点のAXEIA公式HPより)。※1ペソ=約2.6円換算(2026年5月25日時点)リッチデールウエストレジデンスでは最も高額な住宅タイプだ。

フィリピンの人々はリノベーションやDIYが大好きで、購入後、独自で工事会社を見つけて改装を入れたり自分たちでDIYをしたりして、理想の家を作り上げていくのも一般的だ。そのため、日本のように内装を完璧に仕上げて引き渡すのではなく、躯体が見えるスケルトン(Bare House)の状態で引き渡されることも多い。
モデルハウスと引渡時の室内を比較すると、その違いがよくわかる。



一方、こちらは別の戸建タイプとなる「Carnation(カーネーション)」が建つ区画。

また、これから造成が始まる区画内には、水場を利用した多目的スペースも造られる予定だ。


竹林や緑を生かしたツリーハウスは、住民が自由に楽しめる「集いの場」になる予定です。きれいな水が流れる小川は、住民の皆さんにとって一番心地よい「憩いの場」になってもらいたいです。こうした自然を大胆に生かせるのは海外ならではですよね。


ツリーハウスの周りは、自然の中に溶け込む共用施設を整備する予定です。どんな空間になるのか楽しみです。

こちらは、敷地内に造られた「フルーツガゼボ」(屋外に設置される東屋)。待ち合わせ場所や休憩所としてだけでなく、撮影スポットとして楽しんでもらうのがねらいだ。

さらに、敷地を囲む外壁にはアートを採用。日本らしい和のモチーフやフィリピンの風景、家族だんらんのイメージカットなど、AXEIA社と西鉄の両社が持ち寄った写真やイラストを使用し、両社のアイデアを掛け合わせた共創によって完成した。

奥に森林が広がる第2フェーズの区画は、2025年12月から造成に着手したばかり。南部エリアから順次工事中である。

敷地内には、フィリピン伝統の造り方で建てられたこんな小屋も。こちらは一時的に設置された、現場で働く方の休憩スペース、販売エージェントの待機スペースや商談の場として活用されている。簡単に移設できるBahay Kubo(バハイ・クボ)と呼ばれるものであり、フィリピンの住宅開発地ではよく設置される。週末になると、通りがかる潜在顧客を一人も逃すまいと、スタッフがここに張り付いて熱心に呼び込みを行っている。



販売が伸び悩んだ時期、私と山本さんで週末に現場に張り付き、一体何が起きているのかを調査しました。待機中のスタッフから詳細な状況をヒアリングしたり、エージェントの現場勉強会に同行してどのような営業活動を行っているのか体感したり。ここは心地よい風が吹き抜けて快適なので、合間にパソコンを広げて仕事をするのにも最適なんです。現場でスタッフの生の声を聞き、お客さまの反応を肌で感じることで、販促のヒントを得ることができましたね。
フィリピンに駐在して開発の最前線に立つ稲益さんと、国内と海外を行き来しながらプロジェクトを推進する諸留さん、山本さん。それぞれの立場から、海外での働きがいや感じる文化の違いなどについて語ってもらった。
海外のパートナーとコミュニケーションを取る時に、気を付けていることはありますか?

目的をきちんと伝えることですね。これは国内でも共通して言えることですが、「察してほしい」と期待するよりも、きちんと言語化して要望を伝えられるよう心掛けています。コミュニケーションは量も質も大事にしています。

普段は福岡の本社で勤務していますが、出張でフィリピンを訪れる際には、現地でさまざまな方々と英語でコミュニケーションを取る機会があります。そうした中で、海外事業では、相手や現地への理解を深めながら、自分の考えを伝え、同じゴールに向かって進んでいくことが大切なのだと感じています。相手を知り、事業を知り、信頼関係を築きながら、一歩ずつ前に進めていく。その姿勢を大切にしながら、日々の業務に取り組んでいます。

日本とフィリピンのビジネスシーンで、文化や慣習、進め方の違いは感じますか?

AXEIA社は数多くの販売エージェントと関わっていますが、単なる提携先というより、非常に仲間意識が強いファミリーのような深い絆で結ばれているなと感じます。その象徴が、毎年ホテルで盛大に開催されるセールスパーティーです。一年の努力を全員で称え合い、特にトップセラーは大勢の前で華々しく発表・表彰されます。その晴れ舞台での栄誉と、頑張りに見合った報酬がセットで用意されていることが、皆の大きなモチベーションになっているんです。成果を全員で心から祝い、正当に報いる。こうしたポジティブな文化は、非常に素晴らしい魅力だと、とても感銘を受けています。


フィリピンは明るい国民性で、ポジティブ思考の方が多いですよね。AXEIA社のみなさんは、明るくポジティブなことに加えて真面目でプロフェッショナル。対応のスピードや仕事の精度の面でもとても助けられており、私たちも日々多くのことを学ばせてもらっています。

稲益さんはベトナムでの開発事業にも従事されていました。他の国で培った開発ノウハウは、フィリピンではどのように活かせるのでしょうか。

仕事の基本は日本も海外も変わらないのですが、国ごとに全く環境が異なるため、その国の法律やルール、進め方を詳しく知り、しっかりとプロセスを踏みながら調整していく柔軟性が大切ですね。日ごろからコミュニケーションを密に取りながら議論を重ね、現地パートナーや国内のチームみんなで実績を積むことを目指しています。
今後日本で役立てたいことは?

AXEIA社は、経営陣がマーケットトレンドに敏感で、その詳細まで自ら把握してプロジェクトに落とし込むスピード感があります。そのため意思決定が早く、消費者が求める商品をいち早く市場に供給できるのが大きな強みだと感じています。こうしたプロジェクトの進め方は一緒に仕事をしていて大変勉強になりますし、私たちが日本の事業に取り入れられる部分もたくさんあると思っています。

最も若手の山本さんは、プロジェクトに携わってどのようなやりがいを感じていますか?

私は入社2年目から海外開発に携わっています。もともと海外に関わる仕事がしたいという思いで入社したため、早い段階から海外業務に携わる機会をいただけて、大変ありがたく感じています。一般的に若手のうちから海外事業の実務にこれほど深く関われる機会は決して多くないと感じていますし、日々の業務を通じて、非常に貴重な学びと成長の機会をいただいています。今後も一つひとつの経験を積み重ねながら、日本と海外をつなぐ存在として、双方の成長に貢献し、新たな価値を生み出せるように努めたいと思います。


西鉄の企業イメージは?

日本の大手企業でありながら、とてもオープンな雰囲気を感じます。コミュニケーションが取りやすく、日ごろから率直に意見を交換しあえると感じています。2022年に福岡の本社を訪ねたこともありますよ。電車やバス、ホテル、商業施設など福岡のまちで幅広い事業を展開していることに驚きましたね。

事業では規律に則り、詳細な部分まで計画に落とし込んでいる印象です。堅実な社風であり、安心して協業体制が組めると感じました。おかげで私たちも、データに基づいてより戦略的にプロジェクトを進めるようになりました。

収支はもちろんIR情報なども厳しく整えられていますよね。意思決定の過程も厳密で透明性があり、企業としての信頼性がとても高いと感じます。
西鉄との協業でプラスの変化はありましたか?

「タナウアンパークプレイス」の案件では、和モダンテイストのデザインをモデルユニットに採り入れたことでセールスにポジティブな変化を与えました。また、共用部の使い方などを充実させる提案をいただき、イベントスペースやツリーハウスなどを採用したことで、利用者家族の暮らしがより豊かになると感じました。

特に「ミドリテラス」では、ドッグパークやコミュニティ施設など、技術支援として携わっている寺園さんのアイデアが興味深かったです。

私たちがターゲットとする実需層に対しては、品質と商品価格のコストバランスが最重要であり、その中で最大限の価値を追求しています。西鉄との協業により、技術面での施工品質の確保はもちろんですが、共用施設などに西鉄からの新しいアイデアも組み込んでいくことで、プロジェクト全体の価値を上げられるのではないかと考えています。

確かに、西鉄はより高価格帯のマーケットも視野に入れられる企業ですよね。そんな西鉄との協業で私たちが得られた知見は多く、これから本格的に動き出す新規プロジェクトの展開も楽しみにしています。

2026年から新しく2件のプロジェクトが始動。今後はどんな動きが広がっていくのだろうか。
今後の事業展開の見通しは?

既存3案件は順調に進んでおり、今後も新たなプロジェクトを継続して立ち上げていきたいと考えています。引き続き数字を見ながらまずはアフォーダブル住宅の展開エリアを拡大し、AXEIA社という強力なパートナーとしっかり足元を固めていきたいと考えています。
将来的には、今のターゲット層のお客さまも、より高い品質やデザイン性、洗練された住環境を求めるように価値観が成熟していくはずです。そうした市場の変化が訪れたタイミングで、我々が日本で培ってきた品質管理やデザインのノウハウを、AXEIA社が提供する住宅の『さらなる付加価値』として活かすことができれば嬉しいですね。

ITの普及やAI技術の進歩によって、価値の転換が訪れるスピードは、高度経済成長を経て成熟期を迎えた日本の数十年の歩みよりも、もっと早いはずです。その段階になれば、日本で培ってきた西鉄ならではのノウハウがさらに活かせるのではないでしょうか。
ベトナムから始まり、インドネシア、アメリカ、タイ、フィリピン、インドと順調に開発エリアを広げてきた西鉄の海外開発事業。今後は東南アジア内でのシナジーの高まりも期待できそうだ。
パートナー企業と折衝を進め、開発の最前線に立つ海外チームと、その地盤を固めながら事業を推進している国内チーム。その総力で、次はどんなプロジェクトが生まれていくのか。西鉄ブランドの今後の広がりが楽しみでならない。


西日本鉄道株式会社
海外開発事業本部 企画開発部 課長
2010年入社。国内(福岡・首都圏)にて、住宅の営業から企画、用地取得まで不動産開発の実務に幅広く携わる。2018年より海外事業部(現 海外開発事業本部)へ配属となり、ベトナム、インドネシア、米国などの新規事業組成に従事。2022年よりフィリピン事業の新規立ち上げを担当し、2023年から同国へ駐在。これまでの経験を活かし、現地の最前線で事業の推進に取り組んでいる。

西日本鉄道株式会社
海外開発事業本部 企画開発部 係長
2017年入社。ベトナムの新規事業組成を経験後、首都圏で用地取得から販売までマンション開発の一貫した実務に従事。その後、福岡にて住宅販売戦略の策定や手法の刷新に携わる。2025年より海外開発事業部(現 海外開発事業本部)へ配属となり、福岡を拠点にフィリピン事業を担当。既存プロジェクトの推進と新規事業に取り組んでいる。

西日本鉄道株式会社
海外開発事業本部 企画開発部 技術担当
2009年入社。技術職員として国内の住宅開発に従事。2023年4月から海外開発事業部(現 海外開発事業本部)へ移り、2025年10月からフィリピンに駐在。AXEIA社と連携を取りながら、開発現場でのデザイン提案や品質管理を担っている。

海外開発事業本部 企画開発部 フィリピン担当
2023年入社。住宅事業本部 戸建事業部 用地担当を経て、2024年度より海外開発事業部(現 海外開発事業本部)へ配属、フィリピンを担当。既存案件の推進および新規案件の立案業務を担当。
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