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台湾の高級魚・龍虎ハタ
日本初輸入を国際物流事業本部がリード
西鉄グループの総力で成功へと導く

台湾の高級魚・龍虎ハタ 日本初輸入を国際物流事業本部がリード 西鉄グループの総力で成功へと導く

「NNR GLOBAL LOGISTICS(以下、NNR)」のブランド名で知られ、26カ国・地域、117都市(2025年4月時点)にグローバルネットワークを広げる西鉄の国際物流事業本部。2025年2月には、日本で初めて台湾の高級魚・龍虎ハタの輸入に成功。同年3月には西鉄が本社を構える福岡で販売キャンペーンを実施し、国家規模のプロジェクトとして国内外で大きなニュースとなった。輸入成功の背景と要因に迫る!

目次

台湾の高級魚・龍虎ハタとは?

2025年2月、台湾・高雄港より高級魚「台湾龍虎ハタ」が福岡・博多港に向けて出荷された。現地では高級魚として知られ、お祝いの席などに用いられている「台湾龍虎ハタ」。外見は……ちょっぴりこわい雰囲気だが、肉厚な身と上品な味わいを持ち、高級料理店で重宝されている。

高級魚・台湾龍虎ハタ。
日本ではハタの仲間であるマハタやアカハタが広く食されるほか、高級魚・クエもハタの一種

西鉄の観光列車やホテル、スーパーなどで提供

西鉄天神大牟田線を走る観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」では、料理監修者の一人である「Restaurant Sola」の吉武広樹シェフが、台湾龍虎ハタを使った特別メニューを考案。「台湾龍虎ハタと春野菜のパイ柑橘のソース」として、2025年3月6日から6月1日まで、春のコースの一皿として乗客にふるまわれた。

「台湾龍虎ハタと春野菜のパイ柑橘のソース」。
ソテーした台湾龍虎ハタを香ばしいパイにのせ、芽キャベツやそら豆などの春野菜を添えて。
柑橘の爽やかなソースが食材の味を引き立てる

また、にしてつストア、レガネット、スピナ全28店舗では、2025年3月8日から3月23日まで、台湾龍虎ハタを使った弁当や総菜、切り身を製造・販売。売り場にはPOPが立てられ、多くの人が購入してその魅力を味わった。

弁当販売の様子(「レガネットマルシェ薬院」にて撮影)
切り身の状態での販売の様子(「レガネット大橋」にて撮影)
「台湾龍虎ハタの野菜あんかけ弁当」(537.84円)

さらにホテルでは、以下各店の料理長がオリジナルメニューを考案。和洋さまざまなアレンジで、朝食やランチビュッフェ、ランチコースなどにて提供された。

【提供場所および店舗名】

  • 西鉄グランドホテル(グランカフェ・松風・桃林)
  • ソラリア西鉄ホテル福岡(レッドフランマ・浅黄)
  • ソラリア西鉄ホテル札幌(ソルヴェール)
  • ソラリア西鉄ホテル京都プレミア 三条鴨川(翠京)
  • 台湾龍虎ハタの黒トリュフマスタードパン粉焼き
  • 台湾龍虎ハタを使ったコトリアード翠京スタイル
  • 台湾龍虎ハタの豊年揚げと春野菜の炊き合わせ

「台湾龍虎ハタ」を日本で初めて輸入

西鉄の国際物流事業本部が舵を取り、NNR台湾社と協力して輸入された「台湾龍虎ハタ」。観光列車やスーパーマーケット、ホテルなどで販売され、まさに西鉄グループの総力をあげた事業となった。

そもそもなぜ、西鉄の国際物流事業本部が取り扱うことになったのか?輸入の背景や経緯、流通に至るまでの想いを、西鉄の国際物流事業本部・営業企画部の待鳥象道さんを中心とした担当チームに聞いた。

(写真左から)待鳥さん、池田さん、石田さん、車田さん

「台湾龍虎ハタ」とは?

待鳥さん
待鳥さん

現地では高級魚として広く知られていましたが、日本では流通していませんでした。2024年10月、日本の厚生労働省が安全性を認め、国内輸入が解禁となりました。

なぜ西鉄の国際物流事業本部が輸入することに?

待鳥さん
待鳥さん

台湾政府が九州を視察で訪れた際にご縁を賜り、台湾南部に位置する屏東(ピンドン)県ならびに農業部(※日本における農林水産省に相当)から、お声がけいただきました。屏東県は約30年前に台湾龍虎ハタの養殖をスタートした一大産地で、台湾全体の約55%にあたる年間7,206トンを生産しています。

国際物流事業本部の輸出入の実績と、国内外で幅広い事業を展開する西鉄の総合力を高く評価いただいたことが要因だったと伺っています。私たちは、食品物流の取り扱い増を目指して、2021年半ばから本格的に活動を開始。私自身、2019年から2024年まで「食品担当」として、食品の案件は基本的に何にでも関わってきました。私たちの生業となる物流ビジネスはもちろん、今回のような食品のイベントや展示会出展など、数々のプロジェクトも積極的に推進してきました。

2024年東京ビッグサイトで行われた食品展示会の様子

これまで、台湾との食品輸出入の実績は?

待鳥さん
待鳥さん

いろいろな食品の取り扱い実績がありますよ。例えば青果類で、台湾のパイナップルやライチの取り扱いがありますが、これらの青果は輸入に認可が必要で、かつマイナス20度以下の冷凍状態で運ばなければならず、高い管理技術が求められます。そうした確かな実績があったことも、台湾側からの信頼につながったと思います。

待鳥さんが身に付けていた、台湾龍虎ハタとパイナップルのピンバッジ

プロジェクトをリードした国際物流事業本部の活躍

無事に輸入ができたとしても台湾政府にとっても重要なのは、どのように市場に流通させ、人々のもとに届けるかだ。西鉄グループでは、そのスケールを発揮して、観光列車やスーパーマーケット、ホテルなどと連携して台湾龍虎ハタを国内流通させていった。その舵取り役をになった国際物流事業本部は、どのように調整を進めたのか。

各所との打ち合わせはどのように?

待鳥さん
待鳥さん

プロジェクトを進めるにあたり、まずは各部各社への打診からスタートしました。同じグループとはいえ、面識がある方もいれば、そうでない担当者もいます。協力先の皆さんの要望を実現し、絶対に成功させたいという事業への想いをお話しするとともに、ご協力をお願いしました。

西鉄グループの多くは福岡を拠点としていますが、私たち国際物流事業本部の主な活動拠点は東京なので、グループ内の打ち合わせはオンライン主体で進めていきました。各担当者にヒアリングしたところ、何と言ってもまずは調理のイメージを持つために「実物を入手したい」とのことだったので、まずはサンプルとして輸入し、それぞれお届けすることになりました。2024年秋ごろのことです。

日本初の取り組みかつ、国家規模の一大プロジェクト。すごく大変だったのでは?

待鳥さん
待鳥さん

引き受けたのは良いですが、今までのイベントとはやはりスケールが異なります。関係各所、日々の業務があるなかで、それぞれの会社の看板を掲げて参加する決断をしていただくには、我々から十分なご説明をしなければ賛同してもらえないと、十分理解していました。

そのため、食への意識やおいしさの追求、西鉄ブランドに寄せられる信頼感や期待感を認識しながら、関係各社のご要望にお応えして、納得いただける物をご提供できるよう真摯に向き合い準備を進めていきました。

スムーズに進みましたか?

待鳥さん
待鳥さん

大変なことは、いろいろありましたよ(笑)。最初は冷凍の状態でハタを仕入れ、観光列車のキッチンやホテルなどの現場で解凍して調理してもらったのですが、「ドリップ(食品中の組織液が滲み出たもの)が多くて使いづらい」との声が届きまして……。

「うまくいかないのか?」と絶望しかけたのですが、ここで諦める訳にもいかず、台湾側へ状況を説明したところ、極力ドリップを閉じ込めた冷凍方法を考えていただき再度サンプルを送ってもらうことが出来ました。

また、切り身のサイズをいかに調整するかという問題もあったのですが、これも台湾側との調整を重ね、何とかクリアできました。

輸入後はうまく保管・配送できた?

待鳥さん
待鳥さん

はい。予定通りNNR台湾社で手配したリーファーコンテナは、無事博多港へ到着することができました。

搭載された冷凍切身を一旦冷凍倉庫に保管後、冷凍車で各所へ配達するのですが、そこでまた西鉄グループのシナジー効果を発揮することができました。西鉄ストアとお取引のある運送会社さんが冷凍車の手配を行っていることが分かり、冷凍切身のスムーズな輸送をお願いすることができたのです。

プロジェクトの反響と成功の要因

プロジェクト実施後、反響や手応えはありましたか?

待鳥さん
待鳥さん

「日本初の輸入解禁」の事例を担当できたのはすごく大きかったですね。台湾や日本のニュースでかなり頻繁に取り上げられたので、国内外へのPRになったと実感しています。

輸入後、台湾政府やその関係者、メディア各社が視察に訪れ、記者会見が開かれました。視察の際は、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」に乗って柳川まで行き、「レガネット柳川」で販売の様子も見学してきました。宿泊先の手配や移動の列車、タクシーと、すべての工程で西鉄グループの総力を活用して(笑)。こうした大きなプロジェクトを西鉄グループ内で動かし、完結できてよかったなと。幅広い事業を手掛けている西鉄グループならではのことだと、シナジーを実感できました。

視察の様子
待鳥さん
待鳥さん

また、輸送面では、鮮魚の切り身を冷凍状態で輸送する機会はそう多くないので、貴重な実績となりました。

全体を振り返ってみていかがですか。

待鳥さん
待鳥さん

イベント開始は3月でしたが、その前月はほぼ毎日ハタのことばかり。ハタのポスター、ハタのお弁当、デザイン、発注数などなど。いつもハタのことを考えながら眠りにつき、夢に出るほどでした(笑)。本番が近づくと、気付けばグループ一体となり、まさに「ONE西鉄」になれたと感じています。

不安になったことは?

待鳥さん
待鳥さん

準備に取り掛かった当初は「これはなかなかタフなプロジェクトだな」と思いながらも、心のどこかでは「できる」と、根拠のない自信が心の片隅にはありました。過去のイベントをリードした経験からかもしれませんが、それ以上に一番大きかったのは、同じ西鉄グループの仲間で取り組めることへの「信頼」と「安心」があったからです。グループの総力をあげてプロジェクトに臨めたからこそ、成功につながったのだと実感しています。

今後も同様のプロジェクトが生まれるかも?!

待鳥さん
待鳥さん

今回の経験を糧に、台湾との関係を引き続き継続できればと考えています。また、国内では、「国内初」の事例を生かして食品輸送取り扱いの拡大に努めていきたいと思います。西鉄グループの一員としても、これからさまざまなプロジェクトの可能性が見えてきた気がします。実際に、「西鉄と連携して福岡でイベントを実施したい」という台湾からの問い合わせがすでに入っているんですよ。

西鉄グループの総合力によりに日本へ初輸入され、国内で流通した台湾龍虎ハタ。Taiwan MOA・農業部國際事務司國際行銷科-技正 侯昇諭さんは、台湾龍虎ハタの日本市場への進出成功について、以下のように話してくれた。

Taiwan MOA・農業部國際事務司國際行銷科-技正 侯昇諭
侯さん
侯さん

台湾龍虎ハタが日本市場への進出に成功した背景には、西鉄グループの重要な後押しがありました。福岡を拠点とする影響力ある企業として、西鉄グループは観光列車、ホテル、スーパーマーケットなど多岐にわたるチャネルを活用し、台湾産ハタ製品を全方位で導入。さらにミシュランシェフを招き、専用メニューを開発することで、ブランド価値と市場での注目度を高めています。

観光列車内でのグルメ体験やスーパーでの弁当販売を通じ、日本の消費者は旅先や日常生活の中で台湾産ハタの美味しさを直接味わうことができるようになりました。台湾農業部と西鉄グループとの国境を越えた連携は、互いの高品質な製品とマーケティングチャネルを融合させ、日本市場における台湾産水産物の認知度と受容性を急速に高め、双方にとってWin-Winの成功モデルを築いています。

今後も引き続き、西鉄グループのチャネルと影響力をお借りし、日本の消費者により多く、より良質な台湾産の農産物・水産物・畜産物をお届けしていきたいと考えています。

待鳥さんを中心に、部門ならびにNNR台湾、西鉄グループの総力をあげて一大プロジェクトを進めてきた国際物流事業本部。同部署の池田浩子さん、車田哲朗さん、台湾駐在経験を持つ石田忠さんもまた、プロジェクト成功のカギを語ってくれた。

石田さん
石田さん

本プロジェクトは、台湾で日本との懸け橋になってくれたNNR台湾の存在がかなり大きかったと思います。

車田さん
車田さん

特に、童甲平 (STELLA TUNG)さん、陳思翰(RON CHEN)さんの協力なしには成功できませんでした。彼らの強力なサポートおよび、台湾の関係者のみなさまに心から感謝いたします。

池田さん
池田さん

チームの結束力と対応力が見事に発揮され、“台湾龍虎ハタプロジェクト”が成功しました。プロジェクトチームの努力と情熱に心から感謝しています。

NNR台湾社の童甲平(STELLA TUNG)さん、陳思翰(RON CHEN)さんも想いを語ってくれた。

(写真左から)NNR台湾・童甲平(STELLA TUNG)、有限会社エージェー マーケティング開発部長の朱敏蓉さん、
NNR台湾・陳思翰(RON CHEN)さん。レガネット柳川にて撮影
STELLAさん
STELLAさん

企画の立ち上げから日本市場への商品到着まで、簡単な道のりではありませんでしたが、一つ一つの工程で台湾と日本チームのプロ意識と連携力を実感しました。日本の消費者から台湾産龍虎ハタへのご支持と好評の声をいただけたことにも感動しています。

RONさん
RONさん

プロジェクトに参加できたことは、非常に貴重な経験です。すべてのプロセスが挑戦でしたが、それ以上に多くの学びと喜びがありました。お互いのチームが同じ方向を向いている時、どんな困難も乗り越えられると実感しました。

西鉄・国際物流事業本部のリードによって、見事に成功を収めた台湾龍虎ハタの日本進出。世界に広がる「NNR」のグローバルネットワークを活用すれば、今後も新たな事業が生まれそうだ。

  • 待鳥 象道 さん
    待鳥 象道 さん

    1992年入社。
    2016年アメリカ駐在から帰国、輸入部署を経て2018年から営業企画部へ。
    品目戦略では食品を担当し、国内外の食品展示会で出展をリード、また
    アドバイザーとして参加。今年度よりイスタンブール担当として活動。

  • 石田 忠 さん
    石田 忠 さん

    2001年入社。上海研修、台湾、香港の駐在を経て2023年に帰国、現在は営業企画部、営業木企画担当として、アジア・オセアニア圏を担当しながら、国内外のプロジェクトにも参画。

  • 車田 哲朗 さん
    車田 哲朗 さん

    2001年入社。台湾研修、北京の駐在を経て2023年に帰国、現在は営業企画部、グループ戦略推進担当として、主に品目戦略の推進に取り組んでいる。

  • 池田 浩子 さん
    池田 浩子 さん

    1994年入社。英国研修、アメリカ駐在などを経て、2024年営業企画部へ。
    営業企画部は国際物流事業部と主管グループ会社全体の営業や計画等を総合的にまとめ、国内外の部門と連携しながら施策をリードしている。

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