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国内だけにとどまらず、海外6カ国で30の不動産開発プロジェクトを手掛けている(進行中も含む・2026年4月末時点)西鉄。中でも、フィリピン・マニラ郊外で進行中の住宅開発プロジェクトでは、西鉄の社員が現地に駐在し、「技術支援」という立場で現地のパートナー企業と伴走しながらプロジェクトに参画している。「安全・安心」の西鉄の技術力は、海外ではどのような形で発揮されているのだろうか。

若年層の人口割合が高く、アジアにおいて堅調な成長を続けているフィリピン。経済の中心であるマニラには数多くの高層ビルが立ち並ぶ一方で、郊外には未開発地が依然として残されている。

フィリピンで西鉄が住宅開発を手掛けているのも、そんなマニラ郊外の土地。マニラ中心部から車で60分~90分圏内のいくつかのベッドタウンで、複数の開発プロジェクトが進行中だ。本プロジェクトを遂行するにあたり、2名の担当者が現地に駐在し、国内のチームと連携しながら現地のパートナー企業との調整やプロジェクトの進行管理を実施している。


現場に立ち汗を流す、海外開発事業本部の寺園光輝さん。工事の品質管理やデザイン面の提案を行っている。パートナー企業の担当者とともに月に数度現地へ足を運び、プロジェクトの状況を把握しながら品質向上に向けて協働している。
言葉はもちろん、建築基準も工事の進め方も日本とは異なる点が多くある。国内の基準では通用しない海の向こうの現場に、寺園さんは日々奮闘を続けている。
西鉄グループの海外開発事業は2015年にベトナムからスタートした。その後、インドネシア、タイ、アメリカ、フィリピンと事業エリアを拡大し、2025年にはインドでは初となるプロジェクトがスタート。

フィリピンでの住宅開発に参入したのは2022年。大手デベロッパーであるAXEIA DEVELOPMENT CORPORATION(以下、AXEIA社)と共同で事業を進めている。「Midori Terraces(ミドリテラス)」、「Tanauan Park Place Phase4(タナウアンパークプレイス)」、「Richdale West Residences(リッチデールウエストレジデンス)」の既存3案件はすでに販売・建設・引き渡しが進行していて、いずれの物件も順調に実績を伸ばしている。

加えて、2026年から新しく2案件の分譲住宅開発プロジェクトが始動。フィリピンでは計5案件の開発が進行中だ。
国内で数々の住宅開発を手掛けてきた西鉄。その技術やノウハウを生かし、海外でも安全・安心な住宅開発やまちづくりを目指して、海外での技術支援がスタートした。また、海外で学んだ知見を国内へ持ち帰り、より良いまちづくりにつなげることも目的とする。
フィリピンで寺園さんが担う業務は、大きく分けて2つある。
ひとつは、共用施設に関する計画・デザイン・発注・施工の「管理業務」。住宅開発地に関する共用施設の提案をして、承認を得て実行に移していく。入社以来15年以上住宅開発の現場に携わってきた寺園さん。これまで培った経験とノウハウを生かし、計画及び設計から工事まで広範囲の提案ができるのが強みだ。

もうひとつの業務は「品質管理業務」。現場の品質を監督・改善するため、AXEIA社の品質管理エンジニアと一緒に定期的な検査を行い、必要に応じて適切な対応を取っています。




建物の構造や壁面の仕上げ、コンクリートの打ち方など、日本の住宅建築と技術的に異なる面も多いフィリピンの現場。現地での従来の建築方法を尊重しながら、より安全や安心につながる要素があれば提案する。現地の慣習や文化から学びつつ、現場に合った「最善のやり方」の構築と絶対に守るべき「安全・安心」を現地チームと共に追求していくのが寺園さんの役割だ。

私たちの技術やノウハウを共有し、「安全・安心」につなげることが最重要です。駐在して現場に何度も足を運ぶうちに、確認すべきポイントが見えてきました。少しずつ確実に安全性を高められるよう、建物の基礎となる構造部は特に重点的に確認しています。


更なる品質向上を目指して、2025年度には、現地の工事請負会社向けの品質管理ワークショップを2回実施した。2025年10月にフィリピン第3号案件となる「リッチデールウエストレジデンス」にて開いた際には20社の職長(Foreman)が参加。不整合の発生しやすい箇所や品質向上のための手順をスライドを使ってわかりやすく共有した。


いずれの業務も、西鉄が国内で培ってきた住宅建築の技術を生かし、フィリピンでも「安全・安心」の住宅づくり・まちづくりにつながるよう実施されている。
ともにプロジェクトを進めるエンジニアのMarkさんは、寺園さんとの仕事を高く評価する。

寺園さんは、品質管理業務を通じて、現場責任者や担当者そして施工会社間の連携を強化し、品質に関する懸念事項を効率的に解決できるようにしてくれました。また、建設作業中の気づきをワークショップで共有し、体系的な検査を行う重要性も強調してくれました。これにより、チーム全体が現場での経験から学ぶことができています。
こうした取り組みは、建設品質の向上やリスクの軽減だけにとどまらず、現場での「品質と責任」の文化をより強固にし、今後のプロジェクトにポジティブな影響を与えると期待できます。寺園さんがいることで、プロジェクトチームが高い基準を維持する大きな助けとなっていますね。

2025年10月から現地に駐在している寺園さん。現地での仕事について、いくつかのエピソードをうかがった。
日本とは異なる環境の中、正直、苦労することもあるのでは?

私たちが普段当たり前としている安全の基準は、国や地域によって違います。基本的な技術は共通していても、工事の進め方や安全意識などは異なるため、互いのやり方や考え方を理解し、尊重しながら進めることが大切だと実感しています。単に「こうしてください」と伝えるのではなく、みんなでチームとしてより良い仕事にしていくことが大事ですよね。
「言葉」の面でも苦労はあります。現地の母語はタガログ語。ビジネスシーンではほぼ英語を使いますが、建設現場では専門用語もたくさんあり、スムーズに通じないこともあって苦労しています。英語も現地の建設技術についても、まだまだ勉強中です。

これまでの業務でうれしかったことは?

技術面では、お互いのコミュニケーションが深まり、我々がチームとして目指す品質や仕上がりの基準を、現場全体で共有できるようになってきたことです。「こういう造り方をしよう」と共有してきた理想的な仕上がりに近づいていると、やりがいを感じますね。また、デザイン面では自分の提案を採用していただけることが何よりの喜びです。
デザインの提案は、例えばどんな部分に反映されていますか?

リッチデールウエストレジデンスの敷地内にフルーツガゼボ(屋外に設置される東屋)を設置する提案が採用されました。フィリピンの方は写真を撮るのが好きな国民性だと聞いていたので、撮影スポットとしても楽しんでもらえたら嬉しいですね。



また、同じリッチデールウエストレジデンスの敷地を囲う壁面には、アートを取り入れました。これも私たちの提案で、AXEIA社と西鉄それぞれが持ち寄った写真やイラストが使われています。


このほか、第1号案件の「ミドリテラス」では、ドッグパークや足水をつくる提案を採用してもらいました。完成が楽しみです。
業務で特に気を付けていることはありますか?

造り方や進め方などが異なる中で共に事業を進めるには、やはり現地の国の文化や考えを知ることが第一歩。相手が重視していることを理解し、コミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めるようにしています。
フィリピン(海外)に来たからこそ経験できたことは?

現地の人の価値観や文化、考えに触れ、日本との、そして自分との「違い」を感じますが、それを理解し視野が広がった点です。
働く環境の変化で、身に付いた能力は?

例えば、提案資料を簡潔にまとめる力が伸びたと感じています。いろんな情報を盛り込みすぎるとうまく伝わらないので、要点だけをシンプルにまとめるようになりました。見た目のわかりやすさも重視していますね。話す時も同じで、伝えたいことをなるべく簡潔に、ストレートに表現する大切さを日々実感しています。
こうした寺園さんの仕事を、AXEIA社はどのよう評価しているのか。技術・企画・設計チームをまとめるマネージャーであるエンジニアのAlbertさん、建築家のAngeloさん、事業開発部長を務めるエンジニアのCheryllさん、Daisyさんは次のようにコメントを送ってくれた。寺園さんは、AXEIA社の開発チーム内では「Tera-san」と呼ばれている。


Tera-sanの存在は、私たちにとって大きな助けになっています。Tera-sanは施工管理の俯瞰的な視点を持ちながら、細かい技術面についても詳しい。コストの視点を踏まえた上で、効率的なプランを考えてくれるのでありがたいですね。「ミドリテラス」のドッグパークや足水、「リッチデールウエストレジデンス」のフルーツガゼボなど、私たちにとって斬新なアイデアがたくさん得られました。Tera-san、そして西鉄チームのアイデアによって、プロジェクトの価値が高まったと感じています。

デザイン面では、同じメンバーで考えているとアイデアが凝り固まりがちなのですが、Tera-sanがいることで、新たな視点が得られます。そのことが、経済的で安全性も担保されたデザインにつながっています。また、建設全体の進捗を見ながら品質管理まで務めてくれるTera-sanがいることで、安心してデザインを進めることができます。


特に「ミドリテラス」の設備はTera-sanのおかげで随分と充実しました。ドッグパークやクラブハウスなどの共用部が新たな価値となり、ミドリテラスの魅力に加わったのはTera-sanのおかげですね。

この十数年で着実に実績を伸ばし、エリア拡大を続けている西鉄グループの海外開発事業。今後はどのように事業が発展していくのか、技術の視点から語ってもらった。

今は定型のアフォーダブル住宅がメインですが、注文住宅など多様な形態がある日本の建築・デザインの技術とノウハウをさらに活かせるように尽力したいと考えています。今後は他国でも私と同じ技術職が派遣される予定なので、各国で蓄積した情報やノウハウの共有も、今後の事業成長には欠かせません。
最後に、技術職の魅力とは?

これまでに培った経験を生かしながら、安全・安心のための品質管理や施工管理にさまざまな場所で携われることです。また、現在の業務で言うと、提案に直接関われることですね。責任重大な業務ですが、デザインの意図やそこに込める想いを表現し、直接伝えられることが、やりがいにつながっています。

経済成長を続けるフィリピンの住宅開発現場で、日々奮闘中の寺園さん。「安全・安心」の西鉄の技術とノウハウは、海を越えてたくさんの人々の幸せの“種”となり世界中へ広がり続けている。

西日本鉄道株式会社
海外開発事業本部
2009年4月に入社。技術職員として国内の住宅開発に従事。2023年4月に海外開発事業部(現・海外開発事業本部)へ移り、2025年10月からフィリピンに駐在。AXEIA社と連携を取りながら、開発現場でのデザイン提案や品質管理を担っている。
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