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世界に広がる西鉄のネットワーク
中華圏の中継地となる
NNR香港社の成長を追う

世界に広がる西鉄のネットワーク 中華圏の中継地となる NNR香港社の成長を追う

26カ国・地域、119都市(2025年9月30日時点)に拠点を持つ西鉄の国際物流事業本部。世界中に広がる海外ネットワークのなかでも、2番目に長い歴史を有するのがNNR香港社だ。

今回はNNR香港社の実績を紹介するとともに、中華圏で長年キャリアを積んできた柴倉直樹社長の足跡についてもインタビュー。海外で働くおもしろさや若手社員育成への想いを聞いた。

目次

香港拠点の歴史と位置づけ

世界に広がる西鉄の国際物流拠点のなかで、2番目に歴史のあるNNR香港社。その本社で迎えてくれたのは、NNR香港社の柴倉直樹社長だ。2025年4月の社長就任から、100名を超える従業員をリードする。

本社エントランスに立つ柴倉社長

NNR香港社について教えてください。

柴倉さん
柴倉さん

NNR香港社の前身となる香港地場の物流業者であるSONIC社は、1971年に設立されました。1980年に西鉄が株主となり、以降、西鉄グループとして事業を展開しています。海外現地法人としては、アメリカに次いで2番目に古い海外現地法人です。従業員数は104名(2025年9月末時点)で、うち4名が日本からの出向者です。

柴倉社長が働くオフィス。
日本から出向中の大脊戸真帆さん
日本から出向中の小山和彦さん
柴倉さん
柴倉さん

本社機能やセールス機能、カスタマーサービス機能を持つヘッドオフィス(本社)のほか、航空貨物ハンドリングやクロスボーダートラックの拠点となるロジスティクスセンター「Hutchison Logistics Center(以下HLC)」(所在地:葵涌)と、温度管理を必要とする貨物の保管を担う「GATEWAY」(所在地:青衣)の2拠点があります。

柴倉さん
柴倉さん

本社があるのは九龍というエリアで、MTR(地下鉄)だと「茘枝角(Lai Chi Kok)」駅が最寄りです。お客さまや当社各拠点にアクセスしやすく、また、中心部にも近いという利点があります。昔は卸問屋街やアパレル工場が立ち並ぶ工業地帯でしたが、近年はおしゃれな商業施設やカフェなども増え、ローカルな雰囲気と最新のトレンドが同時に感じられるエリアです。

本社から車で約15分の場所にあるロジスティクスセンター「HLC」。輸入・輸出のための貨物が集まる心臓部のような役割を持つ。

HLCの入り口。エリア全体が大きな倉庫街となっている
HLCの屋上からは九龍半島の市街地を一望できる
NNR香港社の倉庫入口
柴倉さん
柴倉さん

HLCでは、3,087㎡(934坪)の敷地内で荷受や計量、X線検査、空港配送などの輸出入貨物を取り扱っています。ここで働くパートナースタッフは18名。私が全幅の信頼を置くパートナーです。彼らと綿密にコミュニケーションを取ることがサービス向上やお客さまからの信頼につながっています。

X線検査装置
貨物を保管するスペース
出荷前の貨物
香港社マネージャーを務めるレイモンドさん(右)と貨物のハンドリングを担うパートナー会社のエドモンドさん(左)

翌朝には日本着?! 速く届けられる理由とは?

香港の物流環境について教えてください。

柴倉さん
柴倉さん

香港は中国本土と陸続きで、中国とのボーダーまではHLCからたったの30キロほどしかありません。香港は土地が狭く山も多いため、人が住み、働ける場所は限られています。

かつては香港は華南地区の海上貨物を一手に担う拠点でしたが中国の経済成長とともに、物流の中心は深圳や広州にも広がっています。深圳はこの5年で物量が130%に伸び、広州も同様に存在感を増しています。

世界の拠点と比較するといかがでしょうか?

柴倉さん
柴倉さん

2024年の香港空港の航空貨物取扱量は世界第1位。また、同年の海上貨物取扱量は世界第13位となっています。海上貨物の取扱量については、かつては11年連続首位だった香港ですが、現在はトップ10圏外に。コロナ禍において、香港を経由しない物流が定着したことが要因で、現在はトップ10のうち6カ所が中国の港湾に置き換わっています。

そのようななかで、香港社の戦略は?

柴倉さん
柴倉さん

中国本土の港湾機能が強化されるなかで、香港は航空輸送に力を入れています。特に香港から日本へは1日5便以上の貨物便が飛んでおり、香港・日本間の物流は香港にとっても重要な路線。時間的な優位性を活かせる航空輸送は、今後も香港の成長のカギとなる重要な要素だと考えています。

貨物の取扱い実績は?

柴倉さん
柴倉さん

大きく見ると「航空」「海上」「トラック」の輸出入があり、なかでも最も売上げの割合が大きいのが「航空」です。

柴倉さん
柴倉さん

例えば日本向けの航空輸送(輸出)では、成田空港をハブとして日本各地へ配送しています。香港から成田向けの貨物は、最速の手配なら、香港で受領した翌朝には成田空港に到着。同日通関作業を済ませ、その日に納品できる迅速な配送が可能です。

また、航空輸送(輸入)に関しても、香港空港に到着後、最短で翌日には香港内のお客さまに納品が可能です。香港域内のみならず、中国へのクロスボーダートラックも手配できる点もポイントです。

香港と中国本土を行き来するトラックは「クロスボーダートラック」と呼ばれている

なぜそれほど迅速に輸送できるのでしょうか?

柴倉さん
柴倉さん

香港は「フリーポート(自由貿易港)」であるため、ほとんどの品目に関税はかからず、通関手続きが非常に簡素なのが特徴です。細かく言うと、貿易記録を14日以内に登録する必要はあるのですが、通関やその関連作業のないフリーポートだからこそ、これほどスピーディーな輸送ができるんです。倉庫では夕方以降に貨物が届き、早ければ1、2時間ほどでそれらの貨物を送り出すなんてこともあるんですよ。

HLCに届く貨物。到着後すぐに荷捌きされる
柴倉さん
柴倉さん

また、香港は24時間体制のワークスタイルが定着しているので、香港社の倉庫も2交代制で業務にあたっています。香港を発着する貨物便が深夜0時から翌朝3時ごろまでに集中しているので、そのタイミングに合わせるとなると、どうしても夕方以降も忙しくなるんです。それに応じたワークスタイルが可能で、深夜や早朝でも働き手がいることも、スピーディーに貨物を届けることができる要因です。

航空輸送の大半は電気・電子関係の部品。このほか、航空産業が発展している香港ならではの部品などの取扱いも多い。また、海上輸送では、玩具や加工食品などの割合が大きい。さらに、2025年に香港出店を果たした「博多やりうどん香港店」の食材の輸送も香港社が担っている。

海外駐在の経歴と中華圏との関わり

きめ細やかなサービスが世界で評価されている西鉄グループの国際物流。働く「人」の魅力もまた、事業躍進を支える重要な要素だと言える。

中華圏と長年関わりを持つ柴倉さんは、数々の赴任経験を経て2025年4月に香港社の社長に就任。熟練の経験を持つ物流のプロとして、記事の後半ではその足跡にも焦点を当てる。

柴倉さんのご経歴を教えてください。

柴倉さん
柴倉さん

海外勤務に憧れて、1997年4月に西鉄に入社しました。最初は大阪海運営業所に配属され、25歳になった2000年には海外研修生として台北へ。初めての海外赴任が叶い、「自分の夢が実現できた!」とうれしかったのを覚えています。

その後、一度帰国しましたが、2002年には上海駐在員事務所に赴任し、上海社へも出向。当時の人事制度は今と異なり、2004年には上海社蘇州事務所の所長、2013年には上海社の副社長、2017年には外高橋社の社長も兼務し、2020年に帰国するまで約17年の間、中華圏を中心に生活することになりました。日本で過ごした期間は約9年半で、キャリアの大半を海外で過ごしています。

中華圏を志した理由は?

柴倉さん
柴倉さん

理由の一つは、入社当時、英語が得意な先輩社員が周りに多いなかで差別化を図らないといけないと思ったからです。最初は香港映画にハマったからというミーハーなきっかけでしたが、英語以外の語学も身に付ける必要があると実感して、中国語を習得していきました。

本社で打ち合わせをする柴倉さん
柴倉さん
柴倉さん

台湾、上海、香港と赴任するなかで、地域ごとに異なる言語や文化を経験してきました。例えば、中国語と一口に言っても、北京語、広東語、上海語など地域によって大きく異なります。ビジネスシーンでは北京語が共通語として使われることが多いのですが、世代や地域によって理解度には差があります。

語学はどのように習得されたのでしょうか?

柴倉さん
柴倉さん

当時はYouTubeもスマホアプリもなかったので、台湾での研修時代には週末に漫画喫茶に行き、中国語に翻訳された日本の漫画を読んだり、CDに付いている歌詞カードを全て日本語に翻訳したりして学習していました。あとは仕事のなかで現地の方にいろいろと教わり、鍛えられました。

母国語ではない言語を使って仕事をするなかで、気を付けていることはありますか?

柴倉さん
柴倉さん

業務上のコミュニケーションでは、日本語特有の察する文化よりも、目的や結論を明確に伝えることが求められます。メールで伝わりにくい場合は電話や直接話すなど、手段を切り替えながら調整しています。直接会って相手の顔を見ながら対話するほうが思いを伝えやすいというのは、万国共通のコミュニケーションだと感じています。

社長室(個室)は使わず、あえて社員の執務スペースと同じ空間に席を置く柴倉さん。コミュニケーションを重視するスタイルがよくわかる
柴倉さん
柴倉さん

取引先と親しくなるには、とにかく会話を重ね、時には一緒に食事をするなど時間を共にするのが早いかもしれませんね。香港では親しい間柄になると互いの家族の話をするなど、オープンに付き合えるのが魅力ですね。

日本とのビジネススタイルの違いはありますか?

柴倉さん
柴倉さん

日本のビジネスシーンとは異なり、香港をはじめとする中華圏では取引先同士でもストレートに言葉にすることが多いですね。また、日本だと「一度社内で検討します」と答えることも多いと思うのですが、こちらではざっくりとでもいいので口頭ですぐに何らかの返答をすることが重視されます。「その場で答えられないイコール知識を持ち合わせていない、判断できる人間ではない」と思われてしまうんです。ビジネスチャンスを逃さないよう、結論は出せなくても常に何らかの答えを持っておく必要があります。

グループ力を生かした今後の挑戦

柴倉さん
柴倉さん

拠点としての今後の課題は重大で複雑です。国際物流の視点で見ると、香港という都市の重要性が大きく変化している段階です。他の国や地域の存在感がますます強まるなかで、中華圏の中継地であり、フリーポートでもある香港の良さを生かした物流体制をいかに構築できるかが課題だと捉えています。AIや機械化、IT化が進むなか、いかにうまくスピード感をもって香港としての強みを伸ばしていくのか。重要な局面だと感じています。

柴倉さん
柴倉さん

世界中にネットワークを持つ西鉄グループならではの持ち味をもっと生かすこともできると思います。中華圏やアジア圏はもちろん、各国・地域の拠点と連携したサービスをさらに展開して新たな挑戦ができないか、常に模索していく考えです。

ご自身の今後のキャリアプランについてはいかがでしょうか?

柴倉さん
柴倉さん

社長として会社の業績をしっかり考えていく必要がありますし、今後を担っていく若いスタッフの育成も重要だと考えています。香港社にいる今のメンバーが10年後には経営を担う立場になりますので、その時に自分たちが考えてきたことを実行できるよう、後押ししたいと考えています。

マネジメントの立場として、意識していることはありますか?

柴倉さん
柴倉さん

予算とは別に何らかの目標を掲げることにしています。今年度の目標は積極的なコミュニケーション。従来以上に積極的にお客さまや社内、協力業者さまとコミュニケーションを取っていき、案件の新規獲得や社内の業務改善にも繋げていこうという考えです

目標は掲げますが、トップダウンスタイルではなく、現地スタッフも含めてみんなで意見を出して、みんなで考えてもらうことを重視しています。ポイントはしっかりと伝え、若い世代が主役になれるよう後押ししたいと考えています。

柴倉さん
柴倉さん

マネジメントの立場として国際物流の仕事を続けていく上で大切なのは、マニュアルだけではなく、何を見るべきか、どう判断するかといった感覚的な部分を伝えていくことだと感じています。当然、責任も伴いますが、それがやりがいやモチベーションにもつながりますから。

国際物流の仕事に携わる人材に求められることは?

柴倉さん
柴倉さん

語学力やコミュニケーション力が高いことは必須だと思いますが、自分の意見を持ちながら人の意見も聞く力も大切だと考えています。配属先にもよるでしょうが、海外に派遣されると20代でも海外の従業員を率いて業務を推進していかなければならないので、リーダーシップや行動力も求められます。

私自身、若手の頃を思い返せば、2002年に上海社の法人立ち上げを経験したことが大きかったと思います。自分が動かないと何もできないことを肌身で感じ、それが成長するきっかけになりました。

先輩からの教えで、特に印象に残っていることは?

柴倉さん
柴倉さん

沢山あるのですが、今でも心がけている事は「毎日、出荷書類を見ること」です。データでも同じ情報は取れるのですが出荷書類を毎日見ていると、曜日ごとの動きやお客さまの傾向などが感覚的に身に付きます。
あとは、自分のデスクの周囲で勤務されている方が、いま何をしているのか注意を払う事。その中に新しい知識を発見できたりしますし、マネジメントにおける問題解決のヒントが見つかる時もあります。

世界の物流の要であり、ハブとなっている香港の地で活躍する柴倉さん。この道約30年のプロフェッショナルとして数々の実績を積みながらも、気さくで話しやすい雰囲気がとても印象的だった。その人柄や仕事に刺激を受け、後に続こうとしている若手社員も多いに違いない。

香港の市街地を歩く柴倉さん(左)、大脊戸さん(中央)、小山さん(右)

エヌカケル編集部では香港社の今後の成長にも注目しながら、引き続き西鉄のグローバルネットワークの最前線を取材・レポートしていきます!

  • 柴倉 直樹 さん
    柴倉 直樹 さん

    NNR香港社 社長

    1997(平成9)年4月に入社。大阪海運営業所への配属からキャリアをスタートし、大阪、台北、上海、蘇州で勤務。
    2020年に日本へ帰任後、2023年には営業企画部営業企画担当課長。2025年4月より現職。

  • 小山 和彦 さん
    小山 和彦 さん

    NNR香港社 Sales Manager

    2012(平成24年)4月に入社。輸出通関係への配属からキャリアをスタートし、2017年には海外研修生としてインドネシア(ジャカルタ)へ。帰国後、東京地区での営業職を経て2023年4月より香港で勤務

  • 大脊戸 真帆 さん
    大脊戸 真帆 さん

    NNR香港社 Sales Manager

    2015(平成27年)4月に入社。混載営業所への配属からキャリアをスタートし、2019年には海外研修生としてドイツ(フランクフルト)へ。帰国後、営業企画部、東京地区での営業職を経て2024年4月より香港で勤務

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