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いま、福岡のうどんが注目を集めている。地元で愛される人気チェーン店が東京へ進出するなど、「やわい」うどんの存在はもはや全国区になった。
そんななか、西鉄ストアが展開する「博多やりうどん」は、海を越えて香港へ出店。いったいなぜ海外へ?そして、福岡のうどんは現地の人にどう映るのか? 関係者に詳しい話を聞いた。

福岡県を拠点に展開する「博多やりうどん」が2025年10月25日(土)、香港・尖沙咀(チムサーチョイ)地区に初の海外店舗となる「博多やりうどん香港店」をグランドオープンした。場所は尖沙咀の目抜き通り「ネイザンロード(彌敦道)」沿いにある商業施設「Mira Place1」の2階。昼からお酒も楽しめる「うどん居酒屋」として営業する。



北九州生まれの「資さんうどん」や福岡「因幡うどん」の東京進出など、福岡発の大手うどんチェーンへの注目が高まっている昨今。「博多やりうどん」もまた、海外進出という攻めの一手に講じたのだった。
昭和42年に折尾駅で開業した「博多やりうどん」。現在は西鉄福岡(天神)駅にある福岡店、福岡空港国内線ターミナルにある別邸(空港店)、西鉄久留米駅にある久留米店の3店舗を展開する。


槍に見立てた棒状の「ごぼう天」がインパクト大。柔らかなめんと作りたての出汁が特徴だ。福岡県産の小麦粉で作られためんは、つるりとなめらかでもっちり。香港でもこの食感はそのままだ。
また、その日に使うだしを毎朝店内で取るスタイルも踏襲。料理長と店舗責任者が福岡で調理研修を受け、本場・福岡の味を再現している。

看板メニューの「やりうどん」は、長さ32 cmのごぼう天と丸天をトッピングした豪快な一杯で、ごぼう天が槍に見立てられており、見た目のインパクトと香ばしさ、食感のアクセントが楽しめる。
こうして徹底的に「現地の味」を追究した香港店は、「うどん居酒屋」として繁華街にオープン。ランチのみならず、昼・夜ともにアルコールと一品料理も提供する。


福岡県内で根強いファンを持ち、「次は県外進出か?」との呼び声が高かった「博多やりうどん」。今回はFC(フランチャイズ)展開というかたちで海外進出が実現した。
県外初となる出店が関西や関東ではなく、海外となったのはなぜだったのか。香港店出店の経緯を、西鉄ストアの平木貴之さん(新領域事業開発部・フード事業部・商事部・酒販事業部担当新領域事業開発部長兼海外事業担当課長)をはじめ、関係者にインタビューした。

出店の経緯を教えてください。

今回コーディネーター兼通訳を務めてくださったJAPOUSの小林さんのご紹介で、FC契約を結んだC.L.Group Cuisine Company Limitedオーナーのドミニクさん、同じく酒事変のスンさんとご縁をいただきました。ドミニクさんから「『博多やりうどん』の味や歴史に魅力を感じたので、ぜひ香港に出店したい」とリクエストをいただきました。どんな形式で展開できるのか検討を重ねた結果、FC(フランチャイズ)契約を結んで出店することが決まりました。
また、その小林さんとのご縁も、西鉄の国際物流事業本部からのご紹介でした。西鉄グループのさまざまな事業の人の縁がつながったからこそ、今回の出店が実現したと実感しています。


もとより日本食が好きで、日本にも何度も訪れたことがありました。福岡にももちろん。西鉄のことも知っていましたし、「博多やりうどん」を食べておいしいと思ったので、ぜひ香港に出店するべきだと思ったんです。
出店にあたり難しかった点はありますか?

県外初出店が海外であり、しかもFC形態も初めて。何もかもが「初」という状況のなか準備を進めてきました。フランチャイジーとなった経験は過去にもありますが、今度は看板を預ける立場です。どのように進めるべきなのか、お付き合いのあるフランチャイザーにヒアリングしながら1から勉強し、ポイントを押さえていきました。
準備はスムーズに進みましたか?


もっとも苦労したのは、海外ならではのビジネスのスピード感です。日本では大きな契約を伴うビジネスでは確認や検討にしっかりと時間をかけますが、香港では意志決定や展開がかなり速く、仕事の進め方の違いを目の当たりにしました。
美食家であるオーナーのドミニクさんは、日本食が大好きだと話す。また、パートナー企業・酒事変のスンさんとシシさんは、地元の食に通じた飲食関係者であり、シビアな目をもつ経営者。香港で日本酒を扱う飲食店を経営し、スンさんは日本の歴史にも詳しいという。そんなプロたちの目に、「博多やりうどん」はどう映ったのか。
数ある日本食の中で、なぜ「博多やりうどん」を選ばれたのですか?

香港では日本文化が好きな方が多く、日本を代表するメニューのひとつとして、「うどん」は広く認知されています。私自身も日本食が好きで、福岡で実際に博多やりうどんを食べてみたところ、おいしくて感動しました。その後、すぐにでも香港に店を構えたいと思い、フランチャイズ契約のご相談を持ち掛けたのでした。
スンさんとシシさんは、別のプロジェクトでもいっしょに仕事をしている旧知の仲で、飲食、特に日本酒にかけては香港指折りのプロフェッショナル。パートナーとして手を組めるならきっとうまくいくと確信しました。

「博多やりうどん」を食べて魅力を感じたポイントは?

香港のうどんのめんは固めのものが多いのですが、博多やりうどんは口当たりが良くて食べやすく、新鮮な食感だと感じました。また、出汁が抜群においしいのも魅力です。そして、何より、あの「ごぼう天」はインパクトが大きいですよね。ごぼうを天ぷらで味わうのは香港では珍しく、今までにないと思いました。


どの要素においても九州の食材のポテンシャルが詰まっていて、本物の味を感じることができます。香港の人々は「本物志向」が強いので、「博多やりうどん」はきっと人々に愛されると考えました。
「博多やりうどん」の由来はご存知でしたか?

実は私、日本の歴史が大好きなんです。もちろん「博多やりうどん」の由来や歴史的なストーリーも元から知っていましたし、戦国時代の福岡藩の話など歴史的な縁も理解しています。こうした文化的・歴史的なストーリーをお客さまに伝えられる点も魅力のひとつですよね。ブランドとしての価値も上がります。

競合店舗と比較して、「博多やりうどん」の強みは?

尖沙咀地区でうどんが味わえるお店は、「博多やりうどん」以外に数軒あります。そのなかで、一番のポイントになるのは「口当たりの良さ」です。つるつるとしためんの食感は他店と比べて特別であり、本物志向のお客さまに受け入れられると見ています。
出店場所の強みはありますか?

「Mira Place」は香港・尖沙咀地区の繁華街の中心に位置し、地下鉄の駅からのアクセスも良好です。施設内には日本のアパレルブランドもあり、香港の中でもトレンドに敏感な若者やオフィスワーカーが集まります。周辺にはオフィスがたくさんあるので、ランチや宴会の需要も見込めます。

店舗作りのポイントは?

「福岡空港店」をモデルに、和風で落ち着いた空間を理想としてデザインしました。テーブル席がメインで、一品料理が数品並んでもゆったり使えるよう、テーブル幅はしっかりと広めに。居心地の良さを感じていただきながら、ゆっくり食事を楽しんでいただけると思います。

一品料理や日本酒は、香港で人気がでそうでしょうか?

香港店で提供するメニューでは、特に焼き鳥が人気になりそうですね。福岡の食の魅力を伝えていけたらと思っています。


また、香港にはすでにたくさんの居酒屋があり、お酒好きの間では日本酒を飲む文化もかなり浸透しています。甘口の日本酒が人気なのですが、辛口の魅力をもっと知ってもらいたいので、今回は辛口を中心に提供する予定です。うどんとも合わせて楽しんでいただけたらうれしいですね。

メニュー構成のポイントは?

香港は国際的なまちで、異なるジャンルの料理の要素を掛け合わせたフュージョン料理や辛みがある料理が好まれます。日本料理も現地向けにアレンジすると受け入れられやすいので、福岡のうどんを届ける「本物志向」を大切にしながら香港の要素も取り入れています。

一品料理にも力を入れていますよ。福岡の店舗にないオリジナルのメニューもたくさんご用意しています。また、価格面では、気軽に食べてもらえるよう比較的リーズナブルに設定しました。

最後に、西鉄との協業について尋ねると、ドミニクさんは以下のように話してくれた。

西鉄は幅広い事業を手掛けるグローバル企業であり、規模も雰囲気も素晴らしいと、以前福岡の本社を訪問した際に感じました。また、どの事業も堅実に実績を積み上げており、安心感と信頼感がありました。今回のチームメンバーもみなさん親切で協力的な方ばかりです。パートナーとして一緒にビジネスを進めやすいと感じています。

一方、初めての海外進出で無事にグランドオープンを迎えることができた平木さんに、「博多やりうどん」の次の展開について尋ねてみた。
新たな挑戦をするなかで、西鉄の強みはどこにあると思いますか?

第一に、グループ内に国際物流の部門があることですね。今回の出店にあたっても、市場調査や現地での商談などさまざまな面で、NNR GLOBAL LOGISTICS香港社のみなさんにお世話になりました。食の事業を展開する上で、物流のノウハウを得られるのは大きなアドバンテージであり、西鉄ならではの強みだと思います。これからも協力して戦える、心強いパートナーができました。

香港店の出店で、国内の店舗や事業へ還元されるメリットは?

香港の食材や食文化を知ることで、国内の商品開発部にとっては大きな刺激になりました。また、福岡の店舗で限定メニューを提供することもでき、お客さまに新しい体験や価値を届けられたと感じています。
さらに、香港店の出店を機に、これまでご縁のあった取引先さまから新たな情報を得たり、新規の相談を受けたりすることも増えました。これまでにはなかったビジネスチャンスにもつながり、手応えを実感しています。
今後の出店計画について教えてください。

まずは香港店での事業を成功させることに集中しますが、引き続きアジア圏を中心に出店を計画しております。また、西鉄ストアは酒販専門店「あんくるふじや」の強みも生かして、日本酒を海外に輸出・販売する新規事業も計画中です。
その基盤となるのは、長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」で描かれている「食」の未来です。今回の出店を足掛かりに、日本の食文化や飲食店の魅力を世界へ伝えていきたいと考えています。
西鉄ストアが培ってきたノウハウや人脈を生かして、新しいビジネスにも積極的にチャレンジしたいですね。
新たな海外出店も視野に入れていることが明らかになった「博多やりうどん」。世界各地にある国際物流の拠点と連携しながら、これから精力的に出店を進めていくのか?!「博多やりうどん」からますます目が離せなくなりそうだ。

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