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西鉄バスが冷蔵庫になった!?
「ららぽーと福岡」のにしてつストア
レガネットで真相を徹底調査

西鉄バスが冷蔵庫になった!? 「ららぽーと福岡」のにしてつストア レガネットで真相を徹底調査

2022年4月にオープンした大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」(以下、「ららぽーと福岡」)。

その館内にある西鉄ストア「レガネット ららぽーと福岡」店は、西鉄ならではの【あるもの】が設置されている。

それは……

なんと、西鉄バス!!!しかも冷蔵庫に大変身を遂げている!

いったい誰がこんなことを考えたのか?! 真相を確かめるために、エヌカケル編集部は現地へ向かった。

目次

「三井ショッピングパーク ららぽーと福岡」とは?

「ららぽーと福岡」は、2022年4月25日に開業した大型複合商業施設。博多区那珂にあった福岡市青果市場跡にオープンした九州初の「ららぽーと」で、約220店のショップが並んでいる。

施設のコンセプトは「出会い×体験の広場~“ふれあい”と“つながり”のまちへ~」。敷地内には多彩なパーク(広場)があり、食やエンターテインメント、スポーツなどさまざまなコンテンツが楽しめるのが魅力だ。

「レガネットららぽーと福岡」の冷蔵庫バス

問題の“冷蔵庫バス”があるのは、「ららぽーと福岡」の1階。ガンダム立像が立つ「フォレストパーク」側の入口から入り、左手の「MARKET351」や「フードマルシェ」の先にあるのが「レガネットららぽーと福岡」だ。

奥へ進むと、姿を現すのは……

なんと、福岡のまちを走っている“おなじみ”西鉄バス!車両の両側面は、ドリンク売り場の陳列棚になっているようだ。

反対側から見るとこんな感じ!

見慣れた行先表示は、ここだけの特別仕様になっている。

ナンバープレートの「1969」と分類番号の部分の「619」は、株式会社西鉄ストアの設立日である1969年6月19日からきている。

通常は営業所名を表記する○囲み内は、レガネットの「レ」の文字が!その横の4桁の数字はバスを識別する管理番号で、「5757」はこのバスが現役として福岡のまちを走っていた時からもっている番号とのこと!

運転席はこんな感じに改装され、誰でも自由に出入りできるようになっている。

しかし、ちょっと待てよ。

いくら西鉄が運営するスーパーだと言っても、バスを売り場に入れるなんてただ事ではないのでは? 飲料が整然と並んでいるのも、冷静に考えるとすごい光景だし。

誰が考えた?! 冷蔵庫バス誕生まで

そもそも、いったいなぜ、この “冷蔵庫バス”は生まれたのか?

「レガネット ららぽーと福岡」を運営する株式会社西鉄ストアの執行役員で、商品開発部長を務める吉松博幸さん(写真右)、店舗開発課課長 兼 施設課課長の石橋幸和さん(写真左)、店長の鈴木健さん(中央)に聞いてみた。

もう、率直に聞きますけど、なんでスーパーにバスを?

吉松さん
吉松さん

西鉄と言えば、やはり「電車」と「バス」でしょ。

とは言え、売り場にバスを持ってきますか?

吉松さん
吉松さん

確かにものすごく大変でした(笑)
実は「ららぽーと」への出店は地場のスーパー4社で競うことになりまして、私たちはあらためて自分たちの「強み」について考え直してみたのです。

それがバスだったと。

吉松さん
吉松さん

だって他社は絶対にできないでしょ。西鉄グループだからできることかなと。

そうだとしても、むちゃな挑戦だとは思わなかったですか??

吉松さん
吉松さん

最初はキッチンカーを置くアイデアもあったのですが、「せっかくなら西鉄バスを使いたいね」という話になり、路線バスとしての役目を終えたバスを再利用して、売り場に入れることにしました。売り場にインパクトも出ますし、お客さまに喜んでもらえたらいいな、と。

売り場にバスを入れたのは、今回が初めてですよね?

吉松さん
吉松さん

はい。前代未聞の試みでした。いざ実現するとなると、本当に大変なことばかりで(笑)。その現場をうまく調整してくれたのが、この石橋さんです。

当時を振り返る吉松さん(右)と石橋さん(左)

開発部に所属し、店舗開発課課長と施設課課長を兼ねる石橋幸和さん。「レガネット ららぽーと福岡」の企画や設計などを主導し、もっとも現場を知り尽くす人物だ。

石橋さん
石橋さん

バスの設置については、グループ会社である西鉄車体技術に相談しながら進めていきました。日頃から車両を扱い慣れている技術者がグループ内にいるって、西鉄ならではの強みですよね。この時あらためて実感しました。

でも、西鉄なら、バスを売り場に置くのなんて楽勝なのでは?

石橋さん
石橋さん

いえいえ、それが全然簡単じゃないんですよ!ここに至るまでは、本当にいろんな課題や問題があったんです。

例えばどんな問題が?

石橋さん
石橋さん

「出入口に段差があるバスをそのまま置いて、安全性に問題はないのか?」「設置後は誰がどのように管理すべきなのか?」「消防法の問題はどうクリアするのか?」など、他にも数え切れないほどありました。壁にぶち当たっては誰かに相談しながらクリアしていく。まさに手探り状態でしたね。

なかでも、いちばん大変だったのは?

石橋さん
石橋さん

問題は、バスの重さと長さでした。

と言うと?

石橋さん
石橋さん

まず、西鉄の通常の路線バスの重さは1台あたり8~10トンあります。1台そのままを中に運び入れると、施設が定める重量基準をオーバーしてしまうんです。
また、計画を進める途中で、従来の西鉄バスのままだと、長さも高さも通路やバックヤードを通れないことがわかったんです。小型のバスはないかと車体技術さんに探してもらったのですが、中古では見つからなくて……。

それでどうしたんですか?

石橋さん
石橋さん

客席がある車両の胴体部分を丸ごと抜いて、前方と後方だけを残すことになりました。

車両後方部

すごい。しかし、発想があまりにも大胆すぎやしませんか?

石橋さん
石橋さん

関係各社といろいろ相談した末の妙案でした。

どうやってここまで運んだのでしょうか?

石橋さん
石橋さん

そこがまさに山場でした。この状態でもギリギリのサイズなので、工事現場を管理する工務店さんや工事にあたる西鉄建設にも協力を仰ぎ、扉の設置前にバスを搬入できるよう調整してもらいました。それでも天井スレスレで……。

じゃあ、施設の外に動かす場合はどうするんですか?

石橋さん
石橋さん

うーん、どうするんでしょうね。入り口を壊さないとバスは外に出ないので、扉を壊すしかないかと(笑)。

西鉄グループの強みを生かした挑戦

冷蔵庫バスが生まれるまでには、「ららぽーと福岡」の建設に関わるさまざまな企業や、西鉄車体技術や西鉄建設といったグループ会社の協力が欠かせなかった。

運転席は、西鉄車体技術により展示用に改装。

運転席に設置されたボタンと連動した行き先表示などには、西鉄バスの整備や車検、ITシステムなどを担う西鉄エム・テックの技術も大いに生かされている。

冷蔵ケースの部分は本物の車両とは別に、内装会社に依頼して新たに造作して車体につなげたという。

石橋さん
石橋さん

こうして売り場にバスを入れることができたのは、グループ内外の関係各社の協力があってこそ。西鉄グループだから実現できたことだと思います。

完成までには、どのくらい時間をかけたんですか?

吉松さん
吉松さん

1年くらいですね。実は、西鉄ストアとして大手のディベロッパーや施工会社とやり取りするのも初めてでした。いつもは開発も施工も西鉄ですから……何もかもが「初めて」尽くしです。

正直、大変でしたよね……?

吉松さん
吉松さん

大変でしたけど……まぁ、楽しかったよね?

石橋さん
石橋さん

楽しかったですよ。初めてのことばかりでしたが、とても良い勉強になりました。こんな経験、めったにできるものじゃないですから。

鈴木さん
鈴木さん

私も同じ想いですね。後から考えると苦労もありましたが、準備中も開業後も「楽しい」の一言に尽きます。まだこれからも、楽しいことを実現していきたいと思っています。

冷蔵庫バス、お客さんの反応は?

開業準備室の一員として、吉松さんと一緒に店舗づくりに奔走した店長の鈴木健さん。冷蔵庫バスのアイデアが出た時は「最高だ!実現するしかない!」と心躍らせ、売り場のイメージを膨らませたそうだ。

オープン後、お客さまの反応はいかがですか?

鈴木さん
鈴木さん

普段からお子さんが楽しんだり、バス好きのファンが記念撮影をしたりと、喜んでいただけているようです。心配だった安全面もクリアでき、これまで事故は一度もありません。

運転席にあるボタンを押せば、前方の行き先表示(Reganetと書かれた部分)を変更することができる。クリスマスやハロウィンなど、シーズンごとにも異なるメッセージがあるそうだ。

バスを利用したサービスや催事などはあるんですか?

鈴木さん
鈴木さん

開業時は、子どもサイズの運転士の制服を無料で貸し出して、撮影サービスを実施しました。すごく好評でしたね。今でも、スタッフにお声掛けいただければ無料で制服を貸し出しています。

鈴木さん
鈴木さん

写真を撮った後、SNSに「#ららぽーとレガネットバス」のハッシュタグを付けて投稿してくださる方もたくさんいらっしゃいます。宣伝効果も大きく、本当に設置して良かったと実感しています。

「レガネット ららぽーと福岡」のコンセプトは?

冷蔵庫バス以外にも、「ららぽーと福岡」の売り場には他の「レガネット」にはないさまざまな仕掛けが隠されている。

石橋さん
石橋さん

実はいちばん最初は、今とは全然違う店舗デザインだったんですよ。当初は「ららぽーと福岡」の側を流れる那珂川をイメージしたデザインを想定していました。水辺や緑があり、自然に囲まれた雰囲気を描こうとしたのですが、最終的には現在のデザインに落ち着きました。

鈴木さん
鈴木さん

新たな場所で、レガネットのイメージを1から作り直して新たな挑戦をしたい。そんな想いを込めて、「Re:」をコンセプトに売り場づくりを進めていきました。

「レガネット」は、「レガーロ(贈り物)」と「プラネット(惑星)」を掛け合わせた造語。そこから、コンセプトとなった「R」と「e」、惑星のイメージから現在のロゴマークが生まれたのだった。

「レガネットららぽーと福岡」の売り場づくり

「レガネット ららぽーと福岡」の魅力のひとつが、一流の味が手ごろな価格で味わえる「CHEF’S CRAFT」コーナーだ。

西鉄グランドホテルから西鉄ストア商品開発部に出向中のシェフが、西鉄ストアの商品開発部と共に総菜やスイーツのメニューを考案。売り場には月に5、6種類の新メニューが登場する。

ほか、総菜売り場には福岡の名店「八仙閣」も出店。人気店による中華総菜やお弁当が手ごろな価格で味わえると、地元客に好評だ。

肉や魚などの生鮮食品売り場には、福岡や九州をメインとした新鮮な食材が並んでいる。いつ行っても活気があり、にぎやか!

その他、「雑貨館インキューブ」とコラボして調理器具や雑貨を販売し(現在は終了)、そこで得たノウハウをもとに幅広いアイテムをそろえるなど、西鉄ならではの売り場づくりを感じることができる。

商品棚を走るデジタルのバスを発見!

西鉄ストアのこれからの展望は?

2035年度を目標として西鉄が発表している長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」では、地域コミュニティのハブとなり、移動販売など様々なコンテンツを通じて、新しい出逢い・購買体験を提供することとしている。また、西鉄ストアビジョン2035を策定し、'らしさ'など実現したい16の未来シーンとして具体的に実行する道しるべを掲げている。

西鉄ストアにとっては、何もかもが「初めて」だった2022年の「レガネット ららぽーと福岡」開業。

その未知なる挑戦を楽しみながら“冷蔵庫バス”を形にする実現力こそ、まちに夢をもたらしてくれるに違いない。

鈴木さん
鈴木さん

たくさんの企業や部署を巻き込みながら、いろんなチャレンジをさせてもらいました。この店舗で実現したことが、他の店舗の売り場づくりにも生かされたらいいなと願っています。

これからは、どんな売り場が生まれ、育っていくんだろう?

まずはみなさん、あらためてまちの近くの「西鉄ストア」に行ってみてください!

  • 吉松 博幸 さん
    吉松 博幸 さん

    株式会社西鉄ストア
    執行役員
    商品開発部・フード事業部担当 商品開発部長

  • 石橋 幸和 さん
    石橋 幸和 さん

    株式会社西鉄ストア
    開発部 店舗開発課課長 兼 施設課課長

  • 鈴木 健 さん
    鈴木 健 さん

    株式会社西鉄ストア
    レガネット ららぽーと福岡 店長

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