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走行時間は約18時間!
福岡市内を走りまわる
西鉄バス車両の長い1日

走行時間は約18時間! 福岡市内を走りまわる 西鉄バス車両の長い1日

天神・博多を中心に郊外まで、福岡市をくまなく走る西鉄バス。車両の保有台数や輸送人員、走行距離においても全国トップクラスだ。県内のさまざまなエリアに張り巡らされた路線は、福岡市民、県民にとって「生活の足」として欠かせない重要な存在である。

そんな西鉄バスの車両、実際にどういう動きをしているのだろうか?

今回は、ある1台の西鉄バス車両になりきって1日の動きをレポートする!

目次

まずは自己紹介

ぼくは西鉄愛宕浜営業所に所属している、車両番号【1103】!
西鉄バスでは、ナンバープレートとは別の車体番号で車両を区別していて、車体の前方や後方など数カ所に番号が書いてあるよ。
今日はぼくのある一日について紹介するね♪

お仕事開始!~営業所から出発まで~

早朝5時30分。

東側の空が明るくなりはじめるころ、ぼくたち西鉄バスはまだ静かに眠っていた。

冬ならまだ真っ暗な時間帯。愛宕浜営業所には約70台の車両が停まっている

営業所内では、ぼくたちのパートナーである運転士さんたちがお客さまに安全に目的地までご乗車いただくため準備を進めている。この後、運転士さんたちがバスに乗り込むとぼくたちの出番!車内の照明をつけたり、エンジンをつけたりと、ちょっとずつ出発の準備を進めていくよ。

この時間は人間だと、布団のなかで寝返りをうちながら体を慣らしていく感じかな?

運転士さんがアルコールチェックなどを済ませてバスに乗り込む
すぐに走り出せるよう、昨夜のうちから手前に停車

さてさて、今日のパートナーである運転士さんをご紹介。15時過ぎまでの通常ダイヤを運転してくれるのは、勤務歴15年のベテラン・手嶋康雄さん。運転が難しいと言われている連節バスの運転資格をもつエースの一人だよ!とても丁寧な運転士さんなんだ。

出発前には、一つひとつ丁寧にぼくの状態をチェックしてもらって、準備を進めていくよ。

点検表の内容に沿って車内も隅々までチェックする
タイヤもしっかり確認
丁寧にチェックしてもらって、ダイヤ番号を入力したら……
最初の行先が表示! 今日は98番から出発だ♪

ぼくの点検が終わった頃、ほかの車両も少しずつ行き先の表示がつきはじめた。出発に間に合うよう、それぞれ運転士さんと一緒に手早く的確に準備を進めていく。

準備にかける時間は、20分くらい。バスのスケジュールは文字通り「分刻み」なんだ!

今日の走行スケジュール

さて、出発できる状態になったところで、今日の走行スケジュールをご紹介!

行先番号【98】能古渡船場-マリナタウン-姪浜駅
6:04 能古渡船場 → 6:17 姪浜駅北口

行先番号【7】姪浜駅-室見-昭代-六本松-天神
6:27 姪浜駅南口 → 7:03 天神北

行先番号【7】天神-六本松-昭代-室見-姪浜駅
7:24 天神ソラリアステージ前 → 7:57 姪浜駅南口

行先番号【1】姪浜駅-藤崎-百道浜-九州医療センター
8:10 姪浜駅南口 → 8:42 九州医療センター

~洗車~

行先番号【300】能古渡船場-名柄団地-よかトピア通り-都市高-天神-博多駅
9:59 能古渡船場 → 10:44 博多駅

行先番号【302】博多-天神-都市高-福岡タワー-マリナタウン-能古渡船場
11:28 博多駅 → 12:13 能古渡船場

行先番号【301】能古渡船場-マリナタウン-よかトピア通り-都市高-天神-博多

12:52 能古渡船場 → 13:39 博多駅


行先番号【312】博多駅-都市高-百道浜-マリナタウン-能古渡船場
14:20 博多バスターミナル → 15:03 能古渡船場

こんなふうに、同じ路線だけではなく、行先番号を変えながら1日のなかでいろんな路線を走っていくよ。どこを走るかは日によって違うから、事前にしっかり確認しておく必要があるんだ。

さらに、今日の夜はドームでプロ野球の交流戦。

「臨時バス」として、野球の試合前と試合後に博多バスターミナルとドームの間を往復しながらお客さまを送る大事な役割が待っている。仕事が終わるのは23時か24時近くになりそうだから、かなりハードな1日だ……。がんばるぞ!

そうこうしていたら、もうそろそろ出発の時間だ。
今日も元気に、行ってきまーす!!(^^)/

他の車両に見送られ出発!

ラッシュの時間帯は西区・早良区をメインに走行

行き先番号98の始発便。6時4分。
最初に到着したのは、営業所横のバス停・能古渡船場。

能古渡船場。通りを渡ればすぐ渡船場がある

道すがら、博多湾にのぼる朝日に照らされて……。少しまぶしいけど、清々しい気持ちになれるな~!

走り出してすぐ、愛宕浜二丁目のバス停で1人目のお客さまが乗車。
おはようございバス!

続くマリナタウン第二では6人、愛宕一丁目では2人と少しずつお客さまが増え、いつの間にか座席は8割ほど埋まった状態に。この辺りは電車が走っていないから、西鉄バスは重要な交通手段。だから早朝からたくさんのお客さまに乗車してもらえるんだ。

6時20分。終点の姪浜駅北口に到着して、お客さまをお見送り。

いってらっしゃいませ!

落ち着いている暇もなく、その後すぐに姪浜駅南口に移動。行先番号は【7】に変わって、今度は室見や別府橋、六本松を通って天神北まで走るよ。

姪浜南口を出発し、室見、弥生を経由して昭代方面へ。この道は通勤や通学をする人が多いから、6時台なのにかなり人通りが多いんだ。注意しながら走らなきゃ。

バス停・昭代三丁目付近

道幅がせまい部分は、運転士さんと一緒に自転車や歩行者、対向車に特に要注意!
この通り、看板すれすれになるほど道幅がせまい。看板までは20センチも離れていなくて、窓側に座ったらきっと驚くはず。

朝7時前。通行人がまばらな朝の天神

別府橋や六本松を通って天神に到着!渡辺通りに出たら、建設中の「ワンビル」が見えた!西鉄の本社が入る予定のビルだね♪

天神北の終点でお客さまを降ろした後は、すぐに那の津口の駐車場へ。

本当はここで少し休憩するけど、朝のこのルートはけっこう混んでいるから、時間通りに到着するのは至難の業。

すぐに、行先を変えて再び天神へGO!
この後7時台から8時台が通勤や通学ラッシュのピークだ。

到着時間の目安を確認しながら運転

さっき通ったのと同じルートで六本松、別府橋、昭代方面へ。
7時半ごろ。自転車の人がかなり増えてきた!

早良区藤崎・新開橋付近

姪浜駅南口でお客さまを降ろしたら、またもや息をつく間もなく別の路線にチェンジ!今度は行先番号【1】。藤崎、福岡タワーを通って九州医療センターまで行くルートだよ。

この日3度目の「姪浜駅南口」
愛宕神社前。バスを降りたらすぐ鳥居

藤崎バスターミナルは降りる人も多かったけど、百道方面に向かう通勤のお客さまがたくさん乗り込んで、車内は満員の状態に!
ううっ、さすがに車内がずっしり重たくなったぞ~。

藤崎バスターミナル、1番乗り場

福岡タワーやドームを眺めながら……

医師会館前のバス停付近
九州医療センターのバス停

終点の九州医療センターに到着!このあとは「回送」に切り替わり、よかトピア通りを通って愛宕浜営業所まで戻るんだ。

愛宕浜営業所に到着。ただいま!

ふー。営業所に戻ってくると安心するな~。約3時間、走り続けたからここでリフレッシュのために……洗車!

洗車機を通ると10分もかからずピカピカに!
洗車後の【1103】。洗車は週に3回程度。運行ルートや車体の状態によってタイミングを合わせて行う

きれいになって気分爽快。手嶋さんが窓やミラーをやさしく拭きあげてくれた。手嶋さんありがとう~!

都市高速で天神・博多まで何度も往復

洗車の後は30分ほど休んでから、次のルートへ!今度は行き先番号【300】になって、ドーム、福浜、伊崎を通って都市高速へ。天神、住吉経由で博多方面へ向かうよ。

よかトピア通りから見たドーム付近の風景。晴れた日の百道浜は、走っててすごく気持ちいいんだよね!

都市高速の入り口。登り坂はちょっと馬力がいるけど、都市高っていつ通ってもワクワクするなぁ~。

ETCレーンを通過
荒津大橋の上を走行中

目の前には博多ポートタワー。坂を下れば天神に到着だ!

天神北で降りる

時間は10時過ぎ。この時間になると、天神は交通量や歩行者が増えて一段とにぎやかになるね♪

天神ソラリアステージ前

柳橋、住吉を過ぎ、西鉄本社前を通って「博多駅西日本シティ銀行前F」に到着!

博多駅西日本シティ銀行前F
博多営業所

表示を回送に変えて、11時前にいったん博多営業所へ。20分ほど休憩して、次は行き先番号【302】に変わって天神、都市高速、百道、福岡タワーを通って能古渡船場まで。そのあとは【301】や【312】になって営業所と天神・博多駅間を2往復するよ。通常ダイヤはラストスパートだ!

方向幕を【312】に切り替え

呉服町ランプから、本日4度目の都市高速へ。

都市高速で百道浜を通過中

ドームやシーホーク、福岡タワーがきれいに見えるこのスポットは「福岡オープントップバス」でも人気! 百道、マリナタウンを通って、ようやく能古渡船場に帰ってきた~。

愛宕浜営業所

通常ダイヤの運行はこれで終了。「お疲れさまでした!」と言いたいところだけど、今日はドームでプロ野球の試合があるから「臨時バス」としてお客さまをお迎えに。

たくさん走ってぼくもおなかがすいてきた!この間に給油タイムだ♪

給油口はけっこう高い位置に。38リットル給油
排気ガスを中和する尿素水も注入する

手嶋さんは報告書をまとめて、ここで乗務終了。ちなみに、早朝からここまでの走行距離は89キロメートルだったよ!手嶋さん、今日もありがとう!ゆっくり休んでね。

プロ野球がある日は「臨時バス」に大変身!

方向幕をチェンジ
臨時用の仕様に

手嶋さんをお見送りしたら、ぼくは15分もしないうちに「臨時バス」仕様に大変身!
15時40分ごろには愛宕浜営業所を回送で出発し、博多方面へ。博多バスターミナルでドーム行きのお客さまをお迎えするよ。

運転士さんは手嶋さんから乗務歴15年の占部さんに交代。占部さん、よろしくお願いします!

16時50分ごろ、バスがドームに到着。お客さまを降ろして、すぐに回送でまた博多へ向かわなきゃいけないから大忙し!

乗降スポットでは社員が誘導
この日は交流戦。交流戦は通常より人出が多い

17時過ぎ。博多バスターミナルに着いて、停車場でしばらく待機。
ぼく以外にも各営業所から数台ずつ臨時バスとして出勤して、お客さまの様子を見ながら順番に出発していくんだ。

博多バスターミナルに待機中

臨時バスでは時刻が決まってる通常ダイヤと違って、詳しい発着時間は決まっていないから、その場の状況次第で指示をもらって臨機応変に働くんだ。出発のタイミングになったら、社員さんが呼びに来てくれるよ。

窓から声をかけてもらったら出発
さらに混みあう博多バスターミナル
6番乗り場からドームへ

立っているお客さまも含めると、1両あたりに乗れるのは立ち席を含めて最大約60名。臨時バスはどの車両もほぼ満員の状態でドームにお客さまを送り届けるんだ。今日は試合前は2往復で送迎終了。

試合の間は愛宕浜営業所に戻って待機して、7回裏ごろにまた出動。今度はドームから博多駅への送迎だ!

ドームのバス乗り場。すごい人

お客さまの動きは試合の運びによって大きく変わるんだ。この日はバスが待機する7回裏の時間帯(20時半ごろ)には帰路につく人が増えてきた。

試合を楽しんだお客さまを無事にお送りするために博多駅へ!

このあともう一度ドームへ戻り、21時過ぎにドームを出発。この2往復目で今日は最後かな。

降車場に停車

博多バスターミナルでお客さまを降ろして、中は空っぽに。あとは回送で愛宕浜営業所に戻るだけだ。

一気に軽くなったぞ!

博多バスターミナルを出て、昭和通りを経由してひたすら西へ。回送の状態で愛宕浜営業所を目指すよ。

西新付近

22時台。平日夜のこのルートはそれほど混まないから、都市高速には乗らず一般道を走る。夜の福岡の道も好きだな~!

そして22時35分、ついに愛宕浜営業所に到着。

お疲れ様でした!明日の準備をしておやすみなさい

真っ暗な愛宕浜営業所

周囲を海に囲まれた愛宕浜営業所は、営業所の明かり以外は真っ暗。「回送」の文字も際立って見えるでしょ?

周囲はしんと静まりかえっていて、今日の空気は、冷たく澄んでいて心地いいなぁ。

忘れ物なし!

エンジンを切って、運転士の占部さんが乗務後の締め作業。一連のチェックを済ませた後、今度こそ本当に今日の仕事は終わり!

すっかり静まりかえった営業所内。ほかのバスたちも順調に仕事を終えたみたいだね。

翌日、始発から動くバスたちは、すでに営業所前にスタンバイ済み!

早朝から深夜まで、稼働した時間は約18時間。
走行距離は
通常ダイヤ89km+臨時85km
=合計174km

今日もたくさん走ったな~!

普段バスに乗っていて車両番号をチェックすることは少ないかもしれないけど、福岡のまちを走っているのは、ぼくのように1台1台個性のある車両たち。機会があったら、ぜひ「車両」に注目してみてね!
もしぼくに会いたい時は、バスナビアプリの「ついせき」機能で「1103」って入れると、どこを走ってるか出てくるよ!

※「臨時バス」以降のスケジュール
15:40ごろ 愛宕浜営業所 発
→試合開始まで博多バスターミナルとドームの間を往復 
20:30ごろ 試合終了前(7回裏)からドームで待機
20:40ごろ ドーム発、博多バスターミナルへ
回送で戻り、もう1往復
21:15ごろ ドーム発、博多バスターミナルへ
21:49ごろ 博多バスターミナル 着
22:00ごろ 博多バスターミナル 発
~回送~
22:35 愛宕浜営業所 着
23:00 営業終了 お疲れさまでした!

  • 車両番号【1103】
    車両番号【1103】

    西日本鉄道株式会社 愛宕浜営業所所属

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