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天神大牟田線・貝塚線開業100周年
公式キャラ「ガタンコとゴトンコ」
パントビスコさんが語る誕生秘話

天神大牟田線・貝塚線開業100周年 公式キャラ「ガタンコとゴトンコ」 パントビスコさんが語る誕生秘話

2024年4月、西鉄天神大牟田線と西鉄貝塚線が開業100周年を迎えた。これを機に西鉄電車の公式キャラクターが決定。とにかくかわいい双子のキャラを生み出した、SNSフォロワー80万人超えのクリエイター、パントビスコ(Pantovisco)さんに誕生秘話を聞いた。

目次

「ババ・バスオ」に続くキャラを自ら売り込み

西鉄天神大牟田線は 1924年4月12日に福岡~久留米間、西鉄貝塚線は5月22日に新博多~和白間の運行を開始し、2024年に100周年を迎えた。

両路線の100周年を記念して、西鉄は公式キャラクターを発表。電車の吊り革をモチーフにした双子のキャラクター「ガタンコ」と「ゴトンコ」が誕生!

西鉄電車の公式キャラクター「ガタンコ」と「ゴトンコ」は、電車の吊り革がモチーフの双子の妖精で、自分たちのことを「2両編成」と呼ぶ。シフト制でたまに片方がお休みすることもある。

「ガタンコ」は西鉄天神大牟田線を走るアイスグリーンの車両をイメージ。社交的で責任感やリーダーシップがあるしっかり者。

「ゴトンコ」は西鉄貝塚線を走るオキサイドイエローの車両をイメージ。優しくて大人しいのんびり屋。

そのほかの特徴は「時間をきっちり守る」「ホスピタリティ精神が高い」「西鉄天神大牟田線・西鉄貝塚線と同じ100歳の妖精」「急な揺れに強く、吊り革だけにブラブラすることが趣味」「いつも電車の中で『あしたも一緒に進んでこ。』など前向きなメッセージでご乗車のお客さまをこっそり応援している」。

デザインしたのは、西鉄バス公式キャラクター「ババ・バスオ」を手がけたパントビスコさんだ。

パントビスコさん
パントビスコさん

そもそも「ババ・バスオ」はLINEスタンプだけのご依頼だったんです。それが、不思議なご縁や幸運が重なり、西鉄さん社内で評判になって、なんと西鉄バスの公式キャラクターに昇進しました。福岡県出身の私としては、これは本当にうれしいこと、誇らしいことで、また、たくさんの方から応援してもらえるきっかけにもなりました。そこで「じゃあ、次は西鉄電車のキャラクターもつくってみたい!」と考えたわけです。

普段は自ら売り込むことなど一切ないパントビスコさんだが、依頼されていないにも関わらず、キャラクターを創作し、ツテのあった西鉄の鉄道事業本部に「とりあえず描いたんで見てください」と提案に行った。

パントビスコさん
パントビスコさん

お認めになるかどうかは別として、提案はタダ。完全に一方的な、もはや片想いですよね。西鉄さんは戸惑ったんじゃないでしょうか。だって、「どういうキャラが欲しい」とかいった要望さえなかったわけで(笑)。でも、「かわいいですね」と褒めてくださって、「上の者に見せてみます」と。「これはもしかしたら、いいことが起きるかも……」と思いました。

8万人の「後押し」が起こした奇跡

ところがコロナ禍によって足止めに。「どうなりました?」と尋ねることもできなかった。状況が好転してきた頃、パントビスコさんはたまたまネットで天神大牟田線と貝塚線が100周年を迎えるというニュースを目にする。

パントビスコさん
パントビスコさん

これはチャンスかも。もう一回、提案できないかと、キャラクターをかわいく微調整して、再度、見てもらいました。
もともとはちょっとシュールなデザインでしたが、100周年ですし、老若男女に愛されるようにフォルムを中心にブラッシュアップしたんです。

当初のキャラクターデザイン
完成版のキャラクターデザイン

ここで、一つの奇跡が起きる。2024年2月15日、パントビスコさんは公式キャラに起用されることを願い、西鉄に許諾を受けた上で、51.7万人のフォロワーを持つインスタグラムにこう投稿した。

https://www.instagram.com/p/C3XFM1Dytny/?img_index=1

「皆様へ大切なお願い」
このコメント欄を西鉄電車さんに見てもらおうと思っています。私の夢にご賛同頂ける優しい方は、コメ欄に「👏」をお待ちしております。あたたかいリアクションをどうかよろしくお願いいたします。

パントビスコ

この投稿が大反響を呼び起こし、これまでに「いいね」が約8万件、コメントは約1.2万件。

パントビスコさん
パントビスコさん

1万を超えるコメントは、インスタを10年以上続けている私にとっても初めての体験でした。私の夢を応援したいと思ってくださった方、西鉄に「おめでとう」を伝えたい方、ストレートにキャラを「かわいい」と感じてくださった方――思いの色はさまざまだと思うんですが、こんなに賛同してくださる人がいるんだということが、すごくうれしくて。

フォロワーからの絶大な「後押し」をもらったパントビスコさん、そしてキャラクターは、晴れて西鉄電車の公式キャラクターとして発表されることとなった。

キャラクター創作で最も苦労したのは……

苦労したのは……これ、裏話、言っちゃっていいんですかね……実は名前なんです。そもそも電車の擬音からとった「ガタン」と「ゴトン」で進めていて、私も西鉄さんもしっくり来ていたんですが、調べてみるとすでに類似の名前があり・・・。その後、私だけでも200以上の候補を考え、検討していきました。

パントビスコさん
パントビスコさん

たとえば「ポッポー」。「電車じゃなくて汽車になっちゃう」「昔は汽車も走っていたらしい」「うーん、でも、年代的に古すぎるから却下」といった感じです。何度も話し合う中で、「ガタンコ」と「ゴトンコ」に決まりました。今は「逆にオリジナリティが出たな」と気に入っています。

ラッピング電車が運行!

ガタンコとゴトンコの顔の部分の丸は、左側に「1」を加えると、100の「0」になる。100周年を表現するにはぴったりのキャラクターデザインだが……いや、最初に描かれた時点では、西鉄電車が100周年を迎えことを、パントビスコさんは知らなかったはずだ。

パントビスコさん
パントビスコさん

その通り。実は西鉄の広報の方が「左側に1を置くと100周年になりますね」と教えてくれたんです。その時、私は思いました。これは運命だったんだ、と。だって、吊り革じゃなかったら、そして双子じゃなかったら、成立しなかったわけですから。

4月12日には、車体に「ガタンコ」と「ゴトンコ」をデザインしたラッピング電車が運行を開始。その出発式のために、来福したパントビスコさん。

自ら生み出したキャラクターがデザインされた車両を目の当たりにして……。

パントビスコさん
パントビスコさん

夢を見ているようでした。幼い頃から馴染みのある車両なので、余計に不思議な気持ちになったんだと思います。これまでの人生では経験したことのない「鳥肌」でしたね。そして、今日、まさにガタンコとゴトンコがデビューしたんだな、と実感しました。

電車には各駅が描かれていて、パントビスコさんは、自身の出身地である「西鉄久留米」と「花畑」の間に直接サインを。

出発式では、パントビスコさんからヘッドマークと直筆キャンバスアートが進呈された。

ヘッドマークはその場で車両に取り付けられ、直筆キャンバスアートは西鉄久留米駅コンコース内のショーウィンドウに展示される。

パントビスコさん
パントビスコさん

もともと100周年の隅っこに居られれば、と思っていたものが、こんなに大掛かりなことになるなんて! たくさんの方の応援があって実現したこと。あらためて感謝の念を強くしています。そして、これから、たくさんの方が「ガタンコ」と「ゴトンコ」に会ってくださると思うと感無量です。テレビCMも流れますし、キャラクターグッズも次々と販売される予定です。

パントビスコさん
パントビスコさん

これからの100年に向けて新たな歩みを始めた西鉄電車とともに、とにかく地域の方に愛されるキャラに育ってほしい。福岡のみなさんそれぞれの物語が、双子の妖精「ガタンコ」と「ゴトンコ」と一緒に広がってくれたらいいな、と願っています。

  • Pantovisco(パントビスコ)さん
    Pantovisco(パントビスコ)さん

    ババ・バスオの生みの親。インスタグラムでは2014年から毎日投稿を行い、現在の作品点数は1万点以上。 SNS総フォロワー数は約80万人。 著書の出版、メディア出演、雑誌連載や広告制作、キャラクターデザインなど幅広くクリエイティブにまつわる活動に従事している。 2021年12月には地元福岡県久留米市より「くるめふるさと大使」を委嘱される。

    twitter: @pantovisco

    Instagram: @pantovisco

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