イントレプレナー育成に向けて西鉄が推進している新規事業創出プログラム「X-Dream(クロスドリーム)」。2021年の提案後に採択され、事業化を進めてきた「muside(ミューサイド)」は、アマチュア音楽業界を盛り上げるために企画された音楽活動支援プラットフォームだ。
支援活動の一環として、2025年1月13日(月・祝)に福岡市内で「Recens Plenus Fes-FUKUOKA HIGH SCHOOL LIVE-」(通称:RPF)」を開催(福岡県高等学校軽音楽連盟と共催)。実行委員長、出演者、主催者の3者の視点でライブの感想やmusideの可能性について語ってもらった。
音楽活動支援プラットフォーム「muside(ミューサイド)」は、アマチュア音楽業界を盛り上げるために企画され、2021年に始動。2024年2月にアプリをリリースした、西鉄発の新規プロジェクトだ。
アプリでユーザー登録すれば、
■アーティスト →MVの公開やライブの告知、情報発信がスムーズに
■ライブハウスやイベンターなど →アマチュアの発掘や連絡が可能に
■一般ユーザー(観客) →アーティストの情報収集が簡単にできるように
というメリットがあり、それぞれの活動の悩みを解決しつつ、これら3者をつなぐ役割を持っている。
2025年1月13日(月・祝)、福岡市中央区渡辺通にあるライブハウス「BEAT STATION」で、musideと福岡県高等学校軽音楽連盟が共催する「Recens Plenus Fes-FUKUOKA HIGH SCHOOL LIVE-」(通称:RPF)」が開催された。
福岡県の高校で軽音楽部に所属する高校生たちが実行委員となり、イベントを企画・運営。musideのアプリから参加を申し込んだ高校生全32組から選ばれた全12組が、ステージでパフォーマンスを披露した。
実行委員となった高校生たちが中心となり企画・開催されたこのイベント。musideや西鉄エージェンシーのスタッフ、福岡県高等学校軽音楽連盟、軽音楽部の顧問の先生たちがサポートしながら、2024年10月から本格的に準備を進めてきた。
ライブ当日は9時に会場入り。会場準備やリハーサルを経て、14時から17時30分までライブが実施された。
実行委員や出演者の高校生たちの代表として動いていた、実行委員長の赤尾夏志さん。福岡工業高校の2年生で、自身もギターの弾き語りで音楽活動を続けている。「運営側としてライブに携わったのは初めて」と語る赤尾さん。ライブの感想やmusideの活用方法について話を聞いた。
日ごろはmusideをどのように活用していますか?
最初にmusideを教えてくれたのは母でした。「こんなアプリがあるみたいよ」と聞いてスマホにインストールして。ユーザーを登録したところ「ミュージックシティ天神」のmusideステージ出演者募集の案内を見て、アプリを通して応募。大きなステージに立って演奏することができました。
使いやすいと思うところは?
アーティストの情報がひとつにまとまっているので見やすいなと思います。ライブで一緒になるアーティストさんの情報をmusideで調べれば、好きな音楽ジャンルやアーティストもわかるので会話のネタにもなります。初めて会う方でも共通点を見つけられると話も盛り上がるし。
また、自分のような弾き語りのソロが福岡に少ないので、同じスタイルの人がいないか調べたこともあります。同じように活動している方を見つけた時は「自分も頑張ろう!」と活動のモチベーションが上がりました。
今回のライブ、実行委員長は大変だった?
普段は出演者側ですが、運営側としてライブに携わるのは初めてだったので最初は不安もありました。でも、実行委員のみんなともすぐに打ち解けられたし、周りのみんながすごく頼りになったんです。
最初は緊張もあったんですけど、自己紹介で好きな音楽やアーティストの話をすると共通点や話題が見つかって、一気に距離が縮まりました。音楽という共通言語を持ってるのってすごいことですよね。
自分一人が引っ張っていく必要はないし、必要な時に全体をまとめればいい。みんなで頑張ればいいんだって思うようになってからは不安な気持ちはなくなりました。
ライブのポスター案もみんなで作ったと聞きました。
まず、最初のミーティングでライブのテーマを決めました。「やりたいこと全部やっちゃおうぜ! フレッシュで青でTEENなライブ」。高校生らしいでしょ?(笑) そのテーマをもとに、ライブタイトルを「RPF Recens Plenus Fes -FUKUOKA HIGH SCHOOL LIVE-」と決めました。
「recens」はラテン語で「新鮮な、若い」という意味。「plenus」は「充分な、全部そろった、完全な」という意味です。「フレッシュな全部盛りのフェス」っていうイメージです。
運営側としてライブを実施してみて、いかがでしたか?
「BEAT STATION」さんのような規模の空間でライブをするのも初めてでしたし、高校生なのでわからないことも多くて……。会場探しやスタッフさんとの打ち合わせ、PRのために必要なポスター制作など、musideのみなさんや先生方に支えていただくことばかりでした。musideの企画なしでは実現できなかったと思います。
こうして携わってみると、たくさんの方々の協力があってライブが成り立っていることをあらためて実感しました。普段は当たり前だと思っていた準備や声掛けは、必ずしも「当たり前」じゃない。実はそのスタッフさんの気配りだったんだと気付いたり、失礼だったかもしれない自分の言動に気付いたり、日ごろとは違う視点を持つことができました。
運営側として「もし自分がその立場だったら?」「自分が今できることは?」と考える中で必要なことが見えてきて、みんなのために行動できたと思います。
今回の経験は今後生かせそう?
出演側と運営側、どちらの立場も経験できたことは自分にとって大きな財産になりました。ライブ後の帰り道、みんなと歩いている時に「もし今日がなかったら、今隣にいるみんなとも仲良くなってないんだよな」と、ふと頭に浮かんで。高校の垣根を越えてこうして楽しめるって、まさにぼくたちにとって青春そのものだと実感しました。
いっしょにステージを作った仲間やお世話になったスタッフのみなさん、観に来てくださった方々とのすてきな出会いも、musideがなければ得られなかった。この経験がまた次の出会いやステージにつながっていけばうれしいですね。
musideに求める機能はありますか?
高校生はライブ経験が少ないので、ライブハウスの雰囲気やマナーについては知らないことがたくさんあります。例えば、「1ドリンク制」は業界では当たり前のシステムですが、音楽活動を始めたばかりの高校生は知らない人もいて。そもそも、高校生歓迎かどうかもわからなくて問い合わせがしづらいケースもあると思うので、そうした情報もmusideでカバーできれば若い世代のユーザーがすごく助かるはずです。
また、「ミュージックシティ天神」に応募した際はYouTubeのURLを添付するスタイルだったのですが、ぼくはアカウントを持っていなくて自分で作るのも難しかったので親のアカウントを一時的に借りました。muside内の動画やSNSアカウントなどで応募ができれば、もっと応募者が増えて盛り上がりそうです。
今後musideをどう活用したい?
現在、ライブなど活動の告知はインスタがメインなので、musideにも情報を集めてPRに活用していきたいと考えています。musideはミュージシャンやライブハウスの方、イベンターの方など音楽関係者が多く、オーディエンスも「音楽好き」という前提があるのでインスタとは違う層に情報を届けられます。機能や特性を理解したうえで上手に使い分けていけたらと思っています。
1組10分の演奏時間で自分たちのパフォーマンスを披露した12組の出演者。そのなかの一組、福岡県久留米市にある南筑高校軽音部発の4ピースバンド「zoo zoo sea」にライブの感想をインタビューした。
musideのことは以前から知ってた?
どこかの大会でこのロゴマークのステッカーを見かけて、それで覚えてました。
オレンジ色で印象に残りますよね。
アーティスト情報がまとまっているので、知らないアーティストについて1から調べる時は特に見やすいと思いました。
ライブ情報も登録できるし、ネットに載ってない情報もまとめてチェックできるのが便利ですね。
出演者募集で応募をした時もすごく便利だと感じました。あと、イベンターの方と直接つながれるのは大きいですね。高校生だし、普段はなかなかつながれないので。今まではインスタやXのDMで連絡を受けるか、軽音楽部宛に出演の依頼や相談をいただいていましたが、直接つながれるチャンネルが増えるのはありがたいと思います。
ライブを終えた感想は?
久しぶりの「BEAT STATION」。なつかしい~って感じしたね。
前に軽音楽部の県大会で来たのが最後だったよね。
その時とはまた違う雰囲気で演奏できました。大会みたいに固い雰囲気じゃなく。
みんな仲良しで、温かい雰囲気でしたね。
そうそう。違う学校の高校生がこうして集まることはまずないし、にぎやかでめちゃくちゃ楽しかった!
ライブ自体が久しぶりだったから緊張するかなって思ってたけど、案外リラックスしてステージに立てました。大会だと「自分たちの音楽を伝えなきゃ」って真剣になってしまうけど、今日は演奏そのものを楽しめた実感があります。
普段ゆっくり話せなかった人と交流できたのも良かったですね。実行委員も高校生で、出演者も高校生。こんなにたくさん同世代の音楽仲間が集まって、いっぱい話せる機会はめずらしいと思います。
今後もmusideで出演者募集があれば応募したい?
ぜひ! 久留米以外でも演奏する機会を増やしたいので、募集があれば積極的に参加したいと思います。
musideで、他にどんな機能があったら便利?
グッズを販売できるとか。
それは助かるね。バンドで活動するにも資金がないとどこにも行けないので……。どのバンドも大きな悩みだと思います。
あと、チケットは目標の販売数を達成するのがなかなか難しいので、チケット機能を活用していけたらいいな、と。
地元の久留米はいいけど、福岡市とか知らない地域だとお客さんを集めるのが大変なんです。musideでいろんな人に知ってもらって、お客さんが増えたらいいな。
アプリの機能以外でも、musideや西鉄に期待することがあれば教えてください。
ぼく、電車で演奏してみたいです! 通学や外出でいつも西鉄電車を利用していて、走っている電車の車内で演奏できたらいいなって思ってたんですよ。
いいね~。ぜひ実現したいです。
そしたらぼくたちのことを知らない人とか、もっとたくさんの人に聞いてもらう機会になりそうだよね。
趣味として音楽の活動経験を持ち、musideの事業を立ち上げた近藤真由さん。今回のライブを振り返ってもらい、今後の展開についても話を聞いた。
なぜmuside主催でライブを?
musideは、アーティストの中でも特にアマチュアの方々の活動を支援するために生まれたサービスです。その中には高校生など10代のアーティストも多く、高校生たちを支援することで業界全体が盛り上がっていけばいいなと思い、今回のライブを企画しました。彼らにmusideを活用してもらえたら、私たちにとってもプラスになりますし、双方にとって良い機会だとか考えました。
ライブを終えた感想は?
思ったより順調に進行できたのでほっとしています。当日はリハーサルの時間が少し押してしまいましたが、本番はスケジュール通りでした。
企画・運営で心がけていたことは?
今回は、運営も演奏も高校生が主役。いかにしてみんなのモチベーションをもっと上げられるかを考えながらサポートしてきました。実行委員のみんなもそれぞれ音楽活動をしているし、「本当は出演したかったんじゃないかな?」とか。とにかくみんなに楽しんでもらうのが第一でしたね。
また、「リアルな現場を見せること」も意識していました。例えばポスター作り。最初は実行委員のみんなでグループワークをしてもらい、4つのアイデアが集まりました。4つとも採用するわけにはいかないのが難しいところだったのですが……。
ライブの運営もそれに関わる制作も、通常は時間や予算などさまざまな制限の中で調整をしながら進んでいきます。「そうした現場のリアルさやシビアな面も高校生たちに知ってもらいたい」という先生方からの要望もあったので、サポート側もプロとして接するよう心掛けていました。
ポスターに関してはいろんな案があったのですが、みんなに共通していたのはテーマに掲げたフレッシュ感や青さ、さわやかさ、勢いといったイメージでした。各案のアイデアをもらいながら、最終的には西鉄エージェンシーの制作チームがひとつにまとめました。
今後の予定や展望は?
2024年度は福岡市内を中心に音楽関係者とのつながりを広げながら、ライブイベント「風と街音楽祭‘24」(福岡市東区・かしいのはまビレッジ)の企画・運営(共催)や「ミュージックシティ天神」でのステージ枠獲得など、現場に携わる機会が増えてきました。
今回お世話になった福岡県高等学校軽音楽連盟とは、今後も連携しながら高校生のライブ活動をサポートしていきたいと考えています。また、アプリのダウンロード数やユーザー数、ミュージシャンやライブハウスの登録数を増やしていくのも課題です。高校生をはじめ、音楽活動をするたくさんの人の助けになれるよう、今後もmusideの輪を広げていきたいと思います。
福岡工業高校2年生
中1から本格的にギターの演奏を始め、中3で初ステージを経験。ポップス/フォーク/弾き語り/アコースティック/ソロ。「第14回福岡県高等学校軽音楽コンテスト」(2024年7月実施)でグランプリを受賞。musideのアカウント名は「夏志」
(左からGt.彦/Ba.浬輝/Vo.NOA/Dr.日本国有鉄道)
福岡県久留米市・南筑高校軽音部発の4ピースバンド。結成は2023年11月。結成1年目にしてマイナビ主催の10代アーティスト限定音楽フェス「閃光ライオット2024」で3次審査(3078組中38組)まで進出し、全国から注目を浴びる
西日本鉄道株式会社 新領域事業開発部 musideプロジェクトリーダー
「hako(はこ)」の名で活動する現役ミュージシャン。musideのプロジェクトリーダーとして奔走中