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太宰府梅サイダーとは?
年間4万本のヒットを生んだ
福岡農業高校との開発秘話

太宰府梅サイダーとは? 年間4万本のヒットを生んだ 福岡農業高校との開発秘話

太宰府みやげの新定番『太宰府梅サイダー』。9年目となる今年は、実に4万本を販売するヒット商品となっている。実はこの梅サイダー、太宰府市と地元の高校、そして西鉄による産学官連携によって開発・製造されたもの。一挙両得、いや三得も、四得もあるプロジェクトなのです!

目次

「太宰府梅サイダー」とは?

「太宰府梅サイダー」は、太宰府市内で収穫した梅を加工したシロップをもとに製造している、太宰府名物の新定番商品。梅と氷砂糖だけのシンプルなシロップの味を活かし、酸味と甘味が調和したすっきりとした味わいが特徴だ。

価格は1本(200ml)260円(税込)で、太宰府天満宮参道内の各店舗やにしてつストア レガネット 太宰府店、西鉄福岡(天神)駅のアンテナショップ「にしてつ縁線駅みやげ」などで購入できる。
※現在の販売状況は各店舗にお問い合わせください。

市のプロジェクトに西鉄が賛同

太宰府天満宮にまつられている学問の神様、菅原道真公。権力争いに敗れ、遠く太宰府へ左遷されることになった道真が、いつも愛でていた梅の木に別れの歌を読むと、京都の邸内の梅の木が太宰府へ飛んで移った——。

そんな「飛梅伝説」をはじめ、市の花、そして元号「令和」の由縁となった梅花の宴など、太宰府は梅と深いつながりを持っています。

しかし一方で、文化財保護の観点から、史跡地の梅は商業利用が制限されていました。そこで太宰府市は国に働き掛け、資源として活用できるように規制緩和を実施。これを機に、スイーツやご当地グルメ、ふるさと納税など幅広い側面で梅を活用し、「令和の都だざいふ『梅』プロジェクト」としてブランディングと産業化を進めてきました。

西鉄もこのプロジェクトに賛同。西鉄のまちづくり・交通・観光推進部の王鼎さんは、こう説明します。

王さん
王さん

西鉄はまちづくりに取り組む企業として、沿線の地域と連携して地域の活性化に取り組むことを目的に、独自に『縁線プロジェクト』を推進してきました。その取り組みの一つとして、2016年、福岡県立福岡農業高等学校(以下、福農)の生徒さんが収穫、加工したシロップをもとに商品化したのが『太宰府梅サイダー』です。

王さん
王さん

そもそも、福農には授業でつくった梅シロップがあったのですが、使い道が決まっていませんでした。商品化について相談を受けた西鉄は品質の高さはもちろん、政庁跡の梅、将来の農業を担う高校生がつくっているというストーリー性もあることから、商品化可能と判断。縁線プロジェクトのコンセプトから、福岡もしくは九州で製造できるところを探し、佐賀の会社「友枡飲料」に行き着きます。小ロットでの商品開発ができるところは少なく、友枡飲料は全国から依頼がくるような会社でした。

王さん
王さん

そこからは試作、試飲を繰り返し、シロップとサイダーのベストな配合を見極めていきました。また、農業高校でつくられるシロップの量から製造できる本数は限られていたので、太宰府の「梅」ブランドと地域の価値を高めるための販売戦略として、場所を限定して販売することにしました。大量生産品とは違う販売戦略を理解してもらうのが大変で、チームメンバーが自ら何度も販売店を訪れて説得したそうです。

農業高校と地域に対する貢献として、売上の一部を寄付するスキームを構築したことも注目されました。

王さん
王さん

寄付をする際には農業高校の生徒さんと一緒に市長に寄付を渡しに行っていました。生徒さんには、店舗や電車内での販売をしてもらうなど、学校ではできない経験をしてもらえたのではないかと思っています。現在は企業版ふるさと納税として寄附を続けています。

2016年の初年度は約12,000本を製造。3月にリリースしたところ、8月までには全て売れてしまい、欠品状態になるほどの人気に。そこから製造本数を段階的に増加していき、2024年はなんと4万本を出荷。今や押しも押されもせぬロングセラー、太宰府みやげの新しい定番商品です。

この『太宰府梅サイダー』の味と香りのベースになるのは、なんと言っても高校生が作る「梅シロップ」。実際の製造現場を見るために、太宰府市の福農に伺いました。

高校生たちが生み出す梅シロップ

今回、お話を聞かせてくれたのは、「梅研究班」担当の古賀正輝先生、班長の佐藤結希さん、副班長の浅倉月海(つくみ)さん、書記の中嶋俊介さんの4人。

「梅研究班」はどんな活動を?

古賀先生
古賀先生

3年生が取り組む類型活動です。1クラスは40人。3つの類型に分かれて、そのひとつがこの「梅研究班」で、11人で組織しています。活動は太宰府の梅を使っての商品開発で、様々な企業と協業しています。西鉄さんには、毎年、梅研究班が加工した梅シロップを納品しています。活動は週に4時間。それだけで終わらない場合は放課後に活動することもあります。3年生になる少し前の3月の半ばから準備を始めて、4月に本格スタート。翌年の1月末で班としての活動を終えます。

なぜ、「梅研究班」を選んだんですか。

佐藤さん
佐藤さん

将来は食品の商品開発に携わりたいと考えていたので、実際に携わって、大変さや楽しさを知りたいと思ったからです。

浅倉さん
浅倉さん

私も佐藤さんと似ていて食品関連の会社に就職したいと思っています。だから、いろんな企業の方と一緒に商品開発に取り組めるこの班を選びました。

中嶋さん
中嶋さん

入学する前から福農で行われている商品開発に興味がありました。ただ、2人と違うのは、ぼくは将来、管理栄養士の資格を取得して保育園や病院で人々に食の大切さを伝えていきたいと考えています。

梅シロップはどんな工程で作るのでしょうか。

佐藤さん
佐藤さん

太宰府政庁跡など、主に太宰府市内の史跡で梅を収穫します。棒で枝を叩いて、梅の実を落として集めるんです。この収穫は楽しいですよ。

浅倉さん
浅倉さん

学校に持ち帰って、まずはきれいに洗います。水につけて、悪い梅や枝などを取り除きながら、ていねいに洗っていくんです。その後、専用の樽に梅を入れて、その梅が見えなくなるくらい氷砂糖を入れて、その上にまた梅を並べていく。この作業を繰り返して、8層から9層で、樽がいっぱいになります。

中嶋さん
中嶋さん

そのまま1カ月ほど熟成させると、氷砂糖が溶けて、梅からエキスが出てきます。全体を網で漉して、液体だけを集めたものが梅シロップの完成品。配送業者さんにお願いして出荷します。2024年は4万本分、約200リットルのシロップを作りました。

実際に出来上がった梅サイダーを見て、飲んで、どう思いましたか。

中嶋さん
中嶋さん

普通の高校生にはできない体験をしている実感がありました。両親が喜んでくれたのもうれしかったですね。

浅倉さん
浅倉さん

単純に「おいしそう!」と思いました(笑)。

佐藤さん
佐藤さん

たぶん、他の人以上においしく感じたと思います。

商品から観光に繋ぐ

あたたかいネットワークで生み出され、作り続けられている『太宰府梅サイダー』。太宰府市としては梅の有効活用と、観光の魅力アップに。将来的に農産業の活性化につながることも期待できます。

さらに、販売業者には売り上げアップに。高校生にとっては学びの場を提供するという、様々な好影響を生み出しているのです。また、前述の通り、西鉄は売上金の一部を太宰府市が取り組む企業版ふるさと納税を活用して寄附することで、「令和の都だざいふ『梅』プロジェクト」のさらなる推進に貢献しています。実に多くの“果実”を生み出している。

地域の農産品を活用した新しいブランドづくりは、西鉄にとって実はこれが初めてではありません。西鉄縁線プロジェクトの第一弾は2013年に誕生した「あまおうプレミアムスパークリングワイン」です。JA柳川のあまおうを使用し、田主丸の巨峰ワイナリーで加工、西鉄グループが販売やPRを手がけました。

ルビーのような色合いと、あまおうの甘美な味と香り、1本に約55粒のあまおうが使用されているという贅沢感が支持され、福岡だけでなく、成城石井などでも販売されるなど、東京でも根強いファンが生まれています。

王さん
王さん

今後も地域のみなさまと連携して商品を通じて生産地の魅力を多くに人に伝え、沿線を盛り上げたい。まずは沿線の魅力を知ってもらい、将来的には現地を訪れていただきたいというのが私たちの願いです。第3弾、第4弾にも期待してください!

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