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西鉄電車と言えば、福岡の多くの人が連想するのが「アイスグリーン」カラーの5000形車両。そんな福岡県民に馴染み深い5000形が、2025年10月にデビュー50周年を迎える。西鉄天神大牟田線を毎日走る5000形は、なぜあの色になったのか?
メモリアルイヤーを記念して実施されている「西鉄電車アイスグリーン50周年企画」では、福岡県久留米市のシューズメーカー「ムーンスター」とのコラボスニーカーや貝塚線600形の復刻塗装など、たくさんの企画が進行中。「アイスグリーン」カラーのひみつや周年企画について、鉄道事業本部の江頭美緒子さんに教えてもらった。
西鉄天神大牟田線の主力車両である「5000形」は、1975年のデビュー以来、50年もの間、福岡のまちを走り続けている。車体を彩るのは、「アイスグリーン」と呼ばれる塗装色。ボディの赤いラインは「ボンレッド」と呼ばれるカラーで、明るいアイスグリーンをより際立たせている。
この「アイスグリーン」は、1975年のデビュー当時はかなり斬新なカラーリングだったそう。今までにないこの色が採用された理由は何だったのか? 鉄道事業本部営業部営業課の江頭美緒子さんに話を聞いた。
なぜアイスグリーン色に?
天神大牟田線の沿線は田畑が広がる景色が多いので、空や緑に映える色として選ばれたのが「アイスグリーン」でした。ボンレッドのラインを加えることで視認性も高まり、線路作業員が接近する電車を見分けやすいことも決め手であったと聞いています。今でこそ当たり前のように受け取られているカラーリングですが、当時の人々にとってはかなり新鮮な光景だったようです。
一方、西鉄電車の色と言えば、貝塚線を走る600形の黄色いカラーを思い浮かべる人も多いかもしれない。この色は「オキサイドイエロー」と呼ばれている。
600形(2代目)は大牟田線(現・天神大牟田線)の車両として1962年に初登場した、西鉄現役最古の車両だ。大牟田線の主力車両として活躍を続けた後、1990年代に入って宮地岳線(現・貝塚線)へ。この時にアイスグリーンからオキサイドイエローに塗り替えられた。かつて天神大牟田線で使用されていた「2000形」に似たカラーリングとなっている。
昨年2024年には、天神大牟田線と貝塚線の開業100周年に合わせて西鉄電車公式キャラクター「ガタンコ」と「ゴトンコ」が登場した。
「ガタンコ」は天神大牟田線を走るアイスグリーンを、「ゴトンコ」は貝塚線を走るオキサイドイエローをイメージカラーにデザインされている。
アイスグリーンとオキサイドイエローを、単なる「車両の色」ではなく人々の暮らしとつながった「まちの色」として、これからも大事にしていきたい。「ガタンコ」と「ゴトンコ」には、そうした西鉄の想いが込められています。
西鉄電車5000形のメモリアルイヤーを記念するプロジェクトとして、今年2025年にスタートした「西鉄電車アイスグリーン50周年企画」も進行中だ。特徴的な色を前面に押し出した企画は、どのように誕生したのだろうか?
50年の歴史がある西鉄電車のアイスグリーン色。西鉄電車といえば「あの色!」と思い浮かべてくださる方も多いのではないでしょうか。だからこそ、今回の企画は「電車」ではなく「色」に着目しました。「色」をテーマにした企画は西鉄としても、また全国的にも珍しいので、ぜひ実現したいと思ったんです。
今回の企画の目玉のひとつが、天神大牟田線の沿線、久留米市に本社・工場を構えるシューズメーカー「ムーンスター」とのコラボスニーカーだ。
限定500足で販売したコラボスニーカーは、2025年5月2日の予約スタートからわずか1週間で完売。予想以上の反響に西鉄の社内でも驚きの声が上がったという。実は、西鉄が「靴」を企画制作・販売するのは今回が初めてのこと。
ムーンスターは天神大牟田線の沿線に本社を構え、100年以上の歴史をもつ企業です。西鉄電車とは長いご縁があります。さらに、電車と靴には「人々の移動を支える」という目的で、共通点があります。こうした発想から生まれたのが、今回のコラボスニーカーです。
開発を進めていく中で、最後まで悩んだのが「靴ひも」の色。実はこのキナリの他に、赤色なども候補になっていたんです。最終的に普段履きもしやすい今のカラーに落ち着き、社内外とわず好評を得ています。
ちなみに、スニーカーが収められているパッケージは特別仕様で、組み立てるとフォトフレームになります。鉄道ファンの方の中には写真を撮られる方も多くいらっしゃるので、お気に入りのアイスグリーンの写真を飾っていただけたらうれしいですね。
また、ペンケースや文房具などのグッズも販売されています。雑貨館インキューブ天神店や駅窓口などで、子どもから大人まで幅広いファンの方々に手に取っていただいています。
また、10月19日に開催する「にしてつ電車まつり」では、新商品も販売する予定です。さらに、5000形オリジナルサンバイザーも無料配布しますので、ぜひ足を運んでくださいね。
そして、もうひとつの大きな目玉が、貝塚線600形の復刻塗装だ。かつて天神大牟田線を走っていた600形は、現在は貝塚線を運行中。通算およそ70年も活躍してきたベテラン車両である。老朽化により順次引退が予定されているが、その一部車両を往年の「アイスグリーン」カラーに塗装し、2027年の8月(予定)まで運行することが決まった。
「もう一度アイスグリーン色の600形が見たい!」という多くの声を受けて実現しました。SNS上ではありし日の姿を懐かしむ声やハッシュタグを使った応援メッセージ、鉄道ファンの方の「今、ここを走っているよ!」といった実況投稿など、600形への愛着を感じるコメントがたくさん届いています。復刻塗装された車両内には、600形のアーカイブ写真を掲示しています。乗車中に西鉄の歴史を感じるのもまたおもしろいですよ。
ちなみに貝塚線600形の復刻塗装は、福岡市東区貝塚にある多々良工場でおこなわれました。車両の塗装は、工場の技術員さんがスプレーを使って手作業でおこなわれました。実は私も作業風景を見るのは初めてで、きれいに塗装されていく様子に感動しました。
さらに、道路ではアイスグリーンのラッピングバスも運行中です。このバスは天神大牟田線の近くを走るので、運が良ければダブルの「アイスグリーン」に出会えますよ。すでにSNSではいくつも素敵な写真がアップされていて、うれしい反響をいただいています。
今回の50周年企画は、西鉄電車にとって新たな可能性を広げるきっかけになったと話す江頭さん。
ムーンスターさんとのコラボスニーカーがかなり好評だったので、「次はオキサイドイエローをテーマにした子ども靴もいいよね」なんて話が社内で出たこともありました。そんなふうに、西鉄電車の未来につながる企画になったと実感しています。
アイスグリーンやオキサイドイエローは、西鉄で働く私たちにとっては当たり前の色ですが、まだ馴染みのない方もいらっしゃると感じています。さまざまな企画やグッズ販売、公式キャラクターをきっかけに、西鉄電車にもっと親しんでもらえたらと考えています。
今後も新しい企画が生まれそう?
地域とのつながりという点では、朝どれの野菜や新鮮な果物を生産地から運ぶプロジェクトや、駅舎の空きスペースの利活用を進めています。こうした事例はほんの一例ですが、グループの総力を生かしながら、さまざまなプロジェクトにチャレンジしていきたいと考えています。
電車は単なる移動手段ではなく、人々の暮らしに寄り添い、人とまちを結ぶ大切な役割を担っている。だからこそ、地域とのつながりが大切であり、西鉄が担う沿線のにぎわいづくりがまちの未来に大きく影響を与えるのだ。
沿線の企業や学校、地域の方々とのつながりが育まれ、次の50年も「アイスグリーン」がまちの風景の一部としてあり続けますように。これからも、西鉄のシンボルであるアイスグリーン色の西鉄電車をよろしくお願いします!
西日本鉄道株式会社
鉄道事業本部営業部 営業課
2021年西日本鉄道株式会社入社。
鉄道事業本部計画部業務課に配属され、鉄道乗務員の採用を担当。
2024年度より、営業課にて企画乗車券やイベント企画を担当。
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