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「みんなの推しバス!」とは?
公共交通×推し活で実現する
新しいインフラの支え方

「みんなの推しバス!」とは? 公共交通×推し活で実現する 新しいインフラの支え方

アイドルや俳優など、自分の「イチ推し」を応援する「推し活」。その活動は、“推し”の魅力を広めるだけではなく、今や個人の生活を豊かにする現代カルチャーになっている。

そんな潮流の中、西鉄グループが打ち出すのは、なんと福岡の街を走るバスを推す「みんなの推しバス!」。でも、バスを推すって、いったいどういうことなのか?そんな前代未聞のプロジェクトについて、担当者にストレートな疑問をぶつけてみた。

目次

「みんなの推しバス!」プロジェクトとは?

福岡のまちを走り続ける西鉄バス。その「日常の風景」を、熱狂的な「推しの対象」へと変える前代未聞のプロジェクトが動き出している。その名も「みんなの推しバス!」

いったいどんな企画なの?

トップページの「購入はこちら」をクリックすると、「推しバス車両プラン」や「推し車体カスタムプラン」など、4つのプランが並んでいる。

1つ目は、「推しバス車両プラン」。プランを購入すれば、推しのバスの証明書とバス車両に対して「ネーミングライツ(命名権)」を持つことができる。バスの車内に自分の付けた名前が入ったマグネットが貼られ、実際に街を走行する。

また、半年間の契約期間が終われば、世界に一つだけのマグネットと走行距離報告書が手元に届く。

「推しバス走行報告書」と「推しバス証明書」

気になる価格は、半年で59,400円(税込)。月額換算すると、ひと月当たり9,900円(税込)

安いのか高いのか?判断は、受け取る人次第だ。

2つ目の「推し車体カスタムプラン」では、バスのラッピングデザインができる。「フルラッピング·大型·12ヵ月間」で2,585,000円(税込)。ハーフラッピングやネーミングライツのマグネットを通常の4倍の大きさで掲出できるプランまである。

個人で買うのは勇気が必要そうだが、団体で共同購入するのはありかも……?!

マグネットの大きさの比較

3つ目の「推しバス体験プラン」では、例えば新車導入時にナンバープレートの数字を決められる権利や営業所での「初お披露目撮影会」などの特別な体験が商品となる。今後はラインナップを拡大する予定なので、お楽しみに。

4つ目の「推しバスグッズプラン」では、廃車になったバスのパーツを販売している。ラインナップされているのは、方向幕(行き先表示)やバス停の看板、運転士が普段使用する運行表(スターフ)など。数千円から数万円の価格帯だ。これまでは、年に一度の「にしてつ電車まつり」など、イベントでしか買えなかったものがオンラインで購入できるようになった。

商品の一例。「西鉄バス北九州|方向幕(前面)|北九州~福岡線|送料込み」(44,000円(税込))
※本商品は売り切れました。
「西鉄バス北九州|バス停看板(宮の谷)|送料込み」(7,700円(税込))。5,500円(税込)の看板も販売されていた。
※本商品は売り切れました。
「西鉄バス北九州|スターフ(山路·猪倉)|乗番:2T|送料込み」(4,400円(税込))
※本商品は売り切れました。

「みんなの推しバス!」が生まれた経緯

福岡のまちを走る西鉄バスがあるからこそ生まれた「みんなの推しバス!」企画。そもそも、なぜこんな企画が生まれたのか?

プロジェクトを牽引するのは、西鉄バスや駅などの交通広告を企画·展開する西鉄エージェンシーの総合戦略グループに所属する近松大慈朗さんと事業共創グループに所属する辻佳佑さんだ。主担当は近松さん。辻さんほか2名の合計4名で事業を進めている。

辻さん(左)と近松さん(右)

(このまじめそうな人たちから、こんな面白い企画が?)

近松さん、失礼ですが、そもそもなぜこんな企画を?近松さんがバス好きとか?

近松さん
近松さん

いえいえ、私は移動で使うくらいで、一般の方と同じですよ。実は最初は2021年、コロナ禍に生まれたアイデアでした。当時、自動車事業本部は厳しい状況に置かれていました。移動の自粛によってバスの乗車人数が激減。

そんな難しい状況を打破しようと一丸となっていたところ、「移動以外でバスを支えることはできないか」と考え、ひねり出したのがこの『推しバス!』企画でした。しかし、当時は実施が難しいと判断され、一度保留の状態になっていました。

そこから、なぜ実施に至ったのでしょうか?

近松さん
近松さん

推しバス企画が保留になってしばらく経った後、西鉄エージェンシーは「昨日よりも、価値ある未来を、福岡から。」というブランドビジョンを掲げました。このビジョンには、単なる広告代理業に限らず、新しい価値を地域やパートナー企業と共に創る集団になろうという意志が込められています。その一環として立ち上がったのが新規事業チーム「ミライLAB.」でした。2024年の夏ごろ、「あの『推しバス』企画、今ならいけるんじゃないか」と、西鉄バス北九州(通称バス北)との協業で再始動させることになったんです。

なぜ福岡ではなく北九州から?

近松さん
近松さん

バス北は「スマートバス停」を導入するなど、新しいことに積極的に挑戦する環境と風土があり、実施エリアとしても適度な広さだと考えました。

西鉄バス北九州の営業所
近松さん
近松さん

私たちがバス北に話を持ち掛けたところ、たまたま同じような企画を検討されていたタイミングだったそうで、「ぜひ一緒に進めましょう」とスムーズに実施が決まりました。おかげさまで、2025年11月の立ち上げまで、驚くほど円滑に準備が進みました。

発案からローンチまでの裏話

4つのプランの推しポイントを教えてください!

近松さん
近松さん

1つ目の「推しバス車両プラン」の醍醐味は、「自分のバスがまちを支えている」という所有感を持てる点です。名前が書かれたマグネットがたくさんのお客さまの目に触れますので、ちょっとした優越感も生まれますよね。最後には掲出したマグネットと走行距離が書かれた報告書がもらえるので記念にもなると思います。

近松さん
近松さん

2つ目の「推し車体カスタムプラン」は、広告会社としての強みを生かしたプランですね。まちを走るラッピングバスをもっと身近に感じてもらえたらと思って考えました。「いきなりフルラッピングは……」という方には、ハーフラッピングのプランをおすすめしています。団体での購入も可能なので、応援広告などで利用いただくこともできます。

3つ目は?

近松さん
近松さん

3つ目の「推しバス体験プラン」は、バス好きや乗り物好きなら喉から手が出るほどほしい「体験」や「時間」を商品化したプランです。新車ナンバーを決められる商品がありますが、いちばん特別感が強い企画かもしれませんね。ナンバーを決めるということは、つまりバスの「一生」を決めることができるんですよ?納車のタイミングも頻繁にあるわけではないので、かなりレアな体験になるはずです。

ナンバー
近松さん
近松さん

4つ目の「推しバスグッズプラン」は、最もわかりやすい人気コンテンツだと言えるでしょう。めったには出会えない掘り出し物が見つかるかもしれません。

価格はどのように決めたのでしょうか?

近松さん
近松さん

実は、真面目なマーケティング調査に基づいています。

と言いますと?

近松さん
近松さん

制作原価はもちろんですが、「一般的な推し活層が月にいくら使うか」というデータや、某大学の鉄道研究会による鉄道愛好家の消費動向調査まで参照しました。そこから「月額1万円程度なら出せる」という層が多いことがわかり、「推しバス車両プラン」に関しては半年で59,400円(税込)という設定に辿り着いたんです。月額で考えると、そう高くはないでしょう?

近松さん
近松さん

いままでにない商品のため価格設定が難しいですが、決してノリで決めたわけではありませんよ(笑)。

グッズ販売の商品ラインナップは変わるんですか?

近松さん
近松さん

どれも「一点モノ」なので、売れた順になくなっていきます。初回はまとめて商品をアップしたのですが、これが予想以上に好評で。最初にまとめて売りすぎたのかも、とちょっと反省しています。次からは少しずつ商品を追加できるよう対策を考えたいと思います。

それほどたくさん商品があるってこと?

近松さん
近松さん

バス北の営業所の保管室に、宝の山がゴロゴロ転がってます。

じゃあ、まだまだたくさんあるんですね。ちなみに、商品はどのように選ばれているのでしょうか。

近松さん
近松さん

実は、バス北の社員にはバスを愛する猛者がいます。彼がグッズ商品のラインナップや価格の妥当性を監修しています。バス好きの心理を一番理解している彼の存在が、このプロジェクトの心臓部だと言えますね。

地域の公共交通を救う「プラットフォーム」へ

西鉄グループの新しい挑戦とも言える「みんなの推しバス!」企画。
気になるのは、肝心の売れ行きだ。

ずばり、売れ行きはいかがですか?

近松さん
近松さん

バスグッズは想像以上の売れ行きです。サイトオープン後、71点あったグッズが約1週間でほぼ売り切れました。

特に何が人気だったんですか?

近松さん
近松さん

「方向幕」などは秒殺です。方向幕を集めている方もいるくらい、人気があるんですよ。

その他のプランは?

近松さん
近松さん

金額が高価なネーミング系の商品はまだまだこれからですが、伸びしろは十分にあります。手ごろなプランなども試行販売しながら、粘り強くやっていければと思っています。途中で「2ヵ月で1.8万円」というお試しプランも作りましたが、これもなかなか動かなかった。ターゲットとしたバス好き·乗り物好きの方々の好みやツボをつかむのは、想像以上に難しく、奥が深いですね。良いアイデアがあれば社内外を問わず募集しています!

辻さん
辻さん

私は逆に、「良いものは売れる」という手応えを感じました。計画や見込みは立てていたものの、売れる確証はないままスタートした事業だったので、「ある一定の需要が見えた」というのが正直な所感です。一方で、バス好きや自動車好き以外のライト層に対してどうアプローチしていくかはこれからの課題ですね。

企画·構想から数年を経て動き出した「みんなの推しバス!」企画。今後はどのように展開していくのだろうか。

近松さん
近松さん

目標は全国のバス会社が参加できる「プラットフォーム」化です。今、地方のバス会社は、運転士の高齢化や人員不足、燃料の高騰などの問題を抱えながら地域の交通を支えています。路線をいかに維持し、公共交通を守っていくのか。その解決策の一つとして、全国のバス会社が自社のグッズや体験を売れる場所にしたいと考えています。まずは各県1事業者を目途にネットワークを広げていきたいですね。

県外の事業者からの反応は?

近松さん
近松さん

実際に、愛知県や中国·四国地方の事業者の方からも問い合わせが来ていて反応は上々です。

辻さん
辻さん

プランの企画など細かいカスタムには時間がかかるので、一気に増やせませんが、一社ずつ着実に関係性を築いていけたら。協業してくださるパートナーを常に探しています。

最後に、「みんなの推しバス!」を通じて伝えたいメッセージは?

辻さん
辻さん

バスを「移動交通手段」からもっと付加価値のあるものへ変えたいと考えています。実は以前、西鉄本社の自動車事業本部に出向したことがあり、移動データの可視化やAIオンデマンドバスの業務を担当し、乗車率が決して多くない状況の中、地域の方々ために試行錯誤しながら交通網を維持していくことの難しさを実感しました。

『みんなの推しバス!』は一見、突拍子もない企画に見えるかもしれません。でも、その収益はめぐりめぐって、地域の人々の移動課題を解決し、継続可能な地域の交通インフラを支え守る力になるはず。バス好きの方も、ライトなファンも、みんなで楽しくバスを支える。そんな「新しい幸せ」のかたちを、これからも福岡から発信し続けたいと思っています。

近松さん
近松さん

実は「ミライLAB.」では、この「みんなの推しバス!」企画以外にも、いろんな展開を考えていて……。ふふふ。これはまた次の機会にお教えします。

過去の知見やノウハウを、別の事業へ伝え、還元していく。そんなポジティブなサイクルが実現するのは、幅広い事業を展開する西鉄グループならではの利点だ。

西鉄エージェンシーが培ってきた「マーケティング力」と、それを支える「西鉄バスへの愛」。そんな熱い想いから成り立っている「みんなの推しバス!」企画が、福岡や九州のみならず国内のバス業界全体を照らす光になるかもしれない。

次回の推しプラン販売開始は、2026年6月下旬から。あなたの「推しバス」が、まちを走り公共交通を支えていく——。そんな素敵な体験に、ぜひ参加してみませんか?

  • 近松 大慈朗 さん
    近松 大慈朗 さん

    株式会社西鉄エージェンシー
    総合戦略グループ チームリーダー/二級知的財産管理技能士、ブランド・マネージャー

    2008年入社。入社後は営業職としてソラリアプラザの大規模リニューアルなどを担当。2018年より戦略プランナーとして、コンセプトメイクから戦略・戦術までのプランニング業務に従事し、ららぽーと福岡やワンビルの開業・経常販促における戦略立案を担当。

  • 辻 佳佑 さん
    辻 佳佑 さん

    株式会社西鉄エージェンシー
    事業創造グループ チームリーダー/CIC Fukuoka サテライト室室長

    2010年入社。入社後は営業担当として幅広いクライアントの業務を担当。2021年から自動車事業本部の当時の未来モビリティ部に出向。現在はCIC Fukuokaに入居しワンビルのブランディング業務やCICをハブにした共創型ビジネスモデルの構築業務に従事。

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