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2026年1月にスタートした「にしてつベジフルTRAIN」。西鉄電車沿線やその近郊で収穫された野菜や果物を西鉄電車に載せて運び、にしてつストアやレガネットの店舗で販売する取り組みだ。福岡県内の農園で採れた商品が週に2回、「レガネット春日原店」と「にしてつストア高宮店」に入荷されている。
野菜や果物が売り場に届くまでを追跡し、取り組みが始まった背景や想いについて、担当者を取材した。
2026年3月某日、朝9時過ぎ。
福岡県筑後市にある「田中農園」で収穫された、イチゴ8パックとスナップエンドウ20袋が、大善寺駅に到着した。
これらの商品は、西鉄電車で春日原駅、高宮駅まで運搬され、店頭で販売される。エヌカケル編集部も電車に同乗して「レガネット春日原店」での商品陳列までの流れを追った。

商品を運ぶのは、青果卸·販売業を営む株式会社イレブンの西山邦弘さん。朝倉など筑後地区の農家と西鉄ストアの橋渡し役として、「にしてつベジフルTRAIN」の取り組みに携わっている。
大善寺駅に到着した西山さんは、商品を持ってそのまま窓口へ。

窓口では、運搬のために必要な「小荷物切符」(670円)を購入し、足早にホームへと急ぐ。

運転士と商品の受け渡しをするため、列車の停車位置の先頭でスタンバイ。9時30分大善寺駅発の西鉄福岡(天神)駅行きの普通列車を待つ。
列車が停車するのは、約1分間。この短時間で確実に商品の受け渡しを済ませる必要があるので、電車が近づいてくると、その場にはちょっとした緊張感が走る。
おっ、列車が来た!

列車が到着すると、先頭車両の乗務員室の扉が開く。西山さんはタイミングを見計らって、慣れた様子で商品を運び入れる。

電車に乗せられた商品はそのまま乗務員室に保管され、各駅停車で春日原駅を目指す。
あっという間の積み込みだった!

10時45分ごろ、商品受け渡しのため、レガネットのスタッフが春日原駅のホームへ移動。先頭車両の停車位置で、商品を載せた列車を待つ。
10時48分、春日原駅に列車が到着。

商品の受け渡しを手早く済ませ、早足で売り場へと向かう。

10時58分。春日原駅1階のレガネット春日原店の売り場に到着。




この日入荷されたのは、イチゴ8パックとスナップエンドウ20袋。あらかじめ決められたスペースに商品が並べられていく。
なんと11時には陳列が完了!
前日の夕方(17時)に収穫されたとすれば、収穫からおよそ18時間後には店頭へ。かなり鮮度が高い状態で食卓に届けられることになる。

採れたての新鮮な野菜や果物を西鉄電車で運び、にしてつストアで販売する——。今回の取り組みは、幅広く事業を手掛ける西鉄グループだからこそ完結できるものだ。
そもそも、なぜこの取り組みが始まったのか。西鉄ストアで青果のチーフバイヤーを務める西村仁宏さんと、西鉄の鉄道事業本部営業部·江頭美緒子さんに話を聞いた。

取り組みが始まったきっかけは?

私たち西鉄ストアは日ごろから、地域の農家さんのさまざまな声を聞いて、良い関係性を構築できるよう努めています。福岡の筑後地方では、高齢化や跡継ぎ不足が特に進んでおり、その現状に危機感を持っていました。
さらに、農家さんたちと話をするなかで、小さな規模の農園は道の駅などの販路の縮小で困っていることがわかりました。都市部で販売するにも、収穫量を考えるとトラックで運搬するのは割に合わず、人手もかかってしまいます。良いものを作っているのに、そうした理由で市場に出ていない農作物がたくさんあり、農家さんたちは「もっと気軽に手に取ってもらえたら」とジレンマを抱えている。そんな現状をどうにかできないかと、私たちも悩んでいました。


そうした中、FM八女でパーソナリティを務める徳永農園の代表·徳永紘一さんが、番組内で「西鉄電車の空きスペースで何か運べたらいいよね」とアイデアをくださったんです。「これはいいね!」と社内で話題となり、さっそく西鉄の鉄道事業本部と調整を進めることになりました。
最初から現在のような形式だったのでしょうか?

まずは貨客混載、つまり通常の乗車スペース内で担当者が付いて運ぶ形はどうかという話になり、2023年9月に第1回目の運搬を実施しました。その時に取り扱った商品は、徳永農園さんで採れたジャガイモとニンニクと空心菜です。西鉄大牟田駅から西鉄福岡(天神)駅まで運びました。



ところが、列車にはお客さまもいらっしゃいますから、貨客混載での運搬の難しさや有人で運ぶコストの問題など、いくつかの課題が出てきました。取り組みを継続するかどうか検討した結果、一旦お休みすることになったのでした。
その後、再開したきっかけは?

西鉄グループである㈱NJアグリサポートが運営する「にしてつ農園」では、福岡県大木町にあるハウスで「あまおう」の栽培を手掛けています。フードロス削減の観点からも、その中で出てくる規格外のイチゴをスーパーで販売できないかという話が上がり、列車での運搬も検討することになりました。話し合いの中で乗務員室を活用することになり、また、コストを抑えるために無人運搬ができないか検証を進めることに。その後、2025年度に数回、試験的に無人運搬を実施しました。
この時は、トウモロコシやナシ、マスカットなどイチゴ以外の商品もたくさん運び、西鉄沿線にあるにしてつストアやレガネットで販売しました。数回継続した結果、お客さまの反応は上々で、運用方法にも見通しがついた。「これなら継続できる」と、2026年から本格的に稼働したという流れです。
「乗務員室を活用した無人運搬」の形が定着した「にしてつベジフルTRAIN」。気になる売れ行きや、購入者の反応はどうだったのか?

お客さまに一番評価してもらえた点は、やはり商品の鮮度と品質です。「にしてつベジフルTRAIN」で運ぶ商品は、そのほとんどが前日の夕方に収穫された採れたてです。見た目も味も、出荷後数日が経過した通常の商品とは比べ物にならないほどフレッシュなんですよ。

「採れたて」とのことですが、通常は出荷前日の夕方までに収穫されるとのこと。朝じゃないんですか?

出荷前日の午後、お昼過ぎから夕方までに収穫します。「朝採れ」という言葉がありますから、そう思いますよね。種類や地域差によって異なりますが、実は多くの野菜や果物がもっともおいしい状態になるのは、日中太陽を浴びてエネルギーをたっぷり蓄えた午後なんです。なので、農家の方には、出荷前日の午後、お昼過ぎから夕方ごろに収穫してもらうようにお願いしています。


そうなんですね!てっきり朝が一番おいしいのかと……。

私たちはプロのバイヤーなので、青果のもっとも良い状態を知り尽くしています。特に福岡や九州の青果には通じていますので、「にしてつベジフルTRAIN」では商品を一番良い状態でお届けしたいと取り組んでいます。
特に人気だった商品は?

6月に運搬·販売したトウモロコシです。福岡では生のトウモロコシを食べる機会がそれほどありませんから、売り場に並んだ途端に飛ぶように売れました。入荷がある曜日を狙って買いに来てくださる固定ファンもついて、「個人的に購入したい」と電話でお問い合わせをいただいたり。反響の大きさに驚きました。

3月ごろ運ぶスナップエンドウも人気です。新鮮なスナップエンドウは鮮やかな緑色で、身がぷっくりとしています。ハリが全然違うでしょう。みずみずしく味が濃いので、シンプルに塩ゆでするだけで十分おいしいんですよ。


一方、鉄道事業本部営業部の江頭さんは、社内の手続きや現場との調整役として本事業に伴走してきた。「にしてつベジフルTRAIN」の話が進む中で、ロゴマークの制作を進めてきたのが江頭さんだった。

昨年試験的に取り組みを進めるなかで、回数を重ねるごとにいろんな課題が見つかりました。中でも、せっかくの商品なのにPRする手段が足りない点は重大な問題でした。農家さんや商品の魅力を紹介する店頭のポップはあるのですが、商品そのものに貼付するツールが必要だと思い、ロゴマークの製作を西村さんにご相談しました。

ロゴマークはどのように制作されたのですか?

西鉄電車のアイコンと言えば、さわやかな「アイスグリーン」のカラーリングです。一目で西鉄だとわかるよう、列車のイラストは必須だと当初から考えていました。


野菜や果物のモチーフを使うかどうかは悩んだのですが、あったほうが青果の印象がつくかな、と。簡単な下書きをデザイナーさんに共有して整えてもらい、このロゴマークが完成しました。親しみのある感じとポップな色合いが気に入っています。


「にしてつベジフルTRAIN」と大きく入れて満足していたのですが、「もし将来的に青果以外のものも運ぶことになったらどうしよう?」と、作った後に気が付きました(笑)。その時は、別の新しい名前とロゴマークが必要ですね。
今年は週に2回、火曜日と金曜日に運搬·販売されている「にしてつベジフルTRAIN」の商品。5月はNJアグリサポートが運営する「にしてつ農園」(福岡県·大木町)で採れた規格外イチゴを輸送·販売中だ。
6月は、昨年も人気だった「杏里ファーム」(福岡県·柳川市)のトウモロコシ、7月は大粒の黒ブドウ、ブラックシードレス、8月はシャインマスカットが販売される予定。秋以降は、いちじくや、「柿の王様」と呼ばれる太秋(たいしゅう)柿なども検討されている。県下でも有数の果物の産地である筑後地方の「旬」を最速で売り場に届けてくれる。

今回、地元のたくさんの農家さんたちのご協力のもと、農家さんたちとの縁をつないでくださった株式会社イレブンの西山さん、西鉄の鉄道事業本部営業部、そして私たち西鉄ストアが連携してこの取り組みを進められたことには大きな意義があると感じています。まずは「にしてつベジフルTRAIN」の認知度を高めることが重要ですね。
今後の展開は?

現在は県南部の筑後地方から北部の福岡市内への上り列車を使った輸送にとどまっていますが、将来的には下り列車の活用にもチャレンジしたいと考えています。西鉄電車に限らず、西鉄バスという可能性もあり得るかもしれません。福岡にはまだたくさん素敵な農家さんがいて、丹精込めて青果を育てていらっしゃるので、私たちのリソースやノウハウを総動員してその魅力を伝えたいと思っています。
こうした広がりが見えてくるのは、交通や小売りなどさまざまな事業を展開する西鉄グループの総力があってこそだと、西村さんは続ける。

グループ内で新しい事業を創出できることは、西鉄グループならではの強みです。失敗を恐れず、横のつながりを最大限に活用しながら「食」に関する事業でシナジーを生み出せたらと考えています。せっかく作ってもらったこのロゴマーク。もっと活用していきましょう。

その通りですね。地域密着で沿線の賑わいをつくっていくのが私たちの使命です。今回の取り組みを営業面でも生かしながら、沿線開発につなげていきたいと思います。

福岡の旬の野菜や果物をのせて走る「にしてつベジフルTRAIN」。今年度は「にしてつストア高宮店(高宮駅1F)」と「レガネット春日原店(春日原駅1F)」で商品を販売予定だ。もし見かけたら、ぜひ手に取ってみてください!
<今後の販売については下記Instagramで発信予定!>
【西鉄電車Instagram公式アカウント】
https://www.instagram.com/nishitetsudensha/
【西鉄ストアInstagram公式アカウント】
https://www.instagram.com/nishitetsu_store/

株式会社西鉄ストア
第一販売部福岡地区兼第三販売部北九州地区 青果スーパーバイザー
2000年株式会社西鉄ストア入社。
店舗青果部門に配属後、業務構築・改善部署、店舗管理者を経て2022年より青果チーフバイヤーを担当。
2026年度より第一販売部福岡地区兼第三販売部北九州地区青果スーパーバイザーに着任。

西日本鉄道株式会社
鉄道事業本部営業部 営業課
2021年西日本鉄道株式会社入社。
鉄道事業本部計画部業務課に配属され、鉄道乗務員の採用を担当。
2024年度より、営業課にて企画乗車券やイベント企画を担当。
※本記事の内容は取材当時のものです。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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