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支援から“活躍する人財”へ
西鉄グループ・ウィルアクト
働く喜びを、もっと自然に

支援から“活躍する人財”へ 西鉄グループ・ウィルアクト 働く喜びを、もっと自然に

「障がい者雇用」という言葉から、どんな職場を思い浮かべるだろうか。支援を受けながら働く場所というイメージを持つ人も少なくないだろう。しかし、西鉄ウィルアクトのスタッフたちの働きぶりに触れると印象は大きく変わる。そこにあるのは多種多様な仕事を通して、一人ひとりが成長し活躍していく姿。仕事を任され、期待され、応えていく「働く人」たちだ。

目次

広報・CS推進部の課題となっていた業務を一気に軽減

西鉄が本社を構える「ONE FUKUOKA BLDG.」(以下、ワンビル)。そのオフィス階の倉庫で、ウィルアクトの社員たちは、発注書を見ながら、必要なノベルティグッズをピックアップしていく。指示された個数を受注ごとに分けてまとめたら、向かうのは執務エリア内の引き渡し場所だ。

引き渡し場所で、発注した西鉄の社員と、間違いがないか、点検。「はい、ばっちりですね」「ありがとうございます」。リーダーの山口さん(写真中央)が笑顔で会釈する。テキパキとした自然な仕事の流れだ。広報・CS推進部の関さんはこう語る。

関さん
関さん

お願いしている仕事は従来、広報・CS推進部の社員が担っていました。ノベルティグッズの運用業務はシンプルな業務である一方、工数が多く、他業務が中断されるなど本来注力するべき業務に影響を及ぼしていました。仕事の手を止めて、倉庫まで行き、受注ごとにまとめ、引き渡しを行う。月に約20件、ノベルティグッズ約15,000個分。実はかなりの業務負担になっていたんです。ウィルアクトさんに依頼したことで、本来注力するべき業務に集中できて、本当に助かっています。

ワンビル最大の飲食店を支えるサポーター

同じくワンビル商業フロア5階にある『天神福食堂』。ウィルアクトのスタッフたちが、黙々と開店準備を進めていた。テーブルのガタツキがないか確かめる人、カトラリーをチェックする人、清掃の最終確認をする人……それぞれが集中して与えられた仕事をこなしていく。

いよいよ開店。入口に立った相田さんは「いらっしゃいませ!」とお客さまに声をかけ、食券機の前で迷っている人がいれば、笑顔で席に案内する。管理担当の沿線プロパティマネジメント本部 ONE FUKUOKA BLDG.部の加茂さんは彼らの働きぶりが、店内運営において、非常に助かっているという。

加茂さん
加茂さん

当初、客席には店舗スタッフは配置していなかったのですが、入口に人が立つかどうかで、来店の流れが大きく変わることがわかりました。また、スマホひとつで注文から支払いまでできるシステムを、すぐに使いこなせない方もいらっしゃいます。想像よりも、説明・案内する人員が必要だったんです。

そこでウィルアクトに白羽の矢が立った。その働きぶりは「想像以上だった」と加茂さん。お客さまにも喜んでいただけた。

加茂さん
加茂さん

「すぐに『若いスタッフの対応が気持ちよかった』といったレビューをいただけるようになりました。当初は入口の案内だけの依頼でしたが、今では開店前からランチのピーク時に2~3人の方にサポートしてもらっています。」

入口に立ってお客さまの案内をする相田さん

「障がい者雇用の会社」では終わらない

西鉄ウィルアクトが設立されたのは2011年。西鉄グループの特例子会社として誕生した。特例子会社とは、障がい者の雇用の促進及び安定を図るため、障がい者の雇用に特別の配慮をした子会社である。

西鉄グループの障がい者雇用は、76名にのぼる。そのうち34名がウィルアクトに在籍し、残りは西鉄本社側に在籍する。採用の多くをウィルアクトが担いながら、西鉄本体と一体となってグループの障がい者雇用を進めている。その中心にいるのが、ウィルアクトだ。

ただ、「障がい者雇用」という言葉だけでは、この会社を説明できない。現在、社員たちは事務業務、ホテル業務、住宅清掃、オフィスサポート、印刷・製本加工など、西鉄グループ各社から依頼された幅広い仕事を担っているからだ。

ウィルアクトの取締役事業部長・塩塚さんは、設立当初の様子をこう振り返る。

塩塚さん
塩塚さん

これは今もそうなんですが、設立当初の5名の在籍者はすべてが試行錯誤だったと聞いています。『西鉄グループの中で、どんな仕事なら任せてもらえるだろう』と考え、アプローチし、本当にできるかを検証しつつ、教育を進めていくことの繰り返しだったそうです。

給与明細書の折り作業、社内便の配送、オフィス共用部の清掃、住宅清掃――小さな実績を積み重ね、やがて新たな部署からも仕事を任されるようになっていった。

「仕事を切り出す」という発想

多くの関連会社とともに、多様な事業を展開している西鉄グループ。ただ、受注を獲得するのは、それほど容易なことではない。ウィルアクトの事業部雇用推進担当・片岡さんは「大切なのは仕事を『切り出す』ことだと語る。

片岡さん
片岡さん

たとえばホテル業務。客室の作業は、いくつもの工程に分かれています。ベッドメイキングそのものは、専門のキーパーが担う高度な作業ですが、その前後には、切り出せる工程があるんです。

西鉄ホテルズが運営する「西鉄イン」ではスタッフが客室に入って使用済みのシーツを部屋の前に出す。ウィルアクトの社員は、それを一枚ずつ広げて振り、お客さまの忘れ物が巻き込まれていないかを確認する。白いシーツの上に、白いイヤホンケースやモバイルバッテリーが紛れていることもあるという。確認し、分別し、カートに載せ、忘れ物があれば報告する。

「ソラリア西鉄ホテル」では、チェッカーが先に客室に入り、ウィルアクトのスタッフが部屋に入ってよいか確認する。インバウンド客やファミリー層のお客さまも多く、チップや貴重品が残っている場合もあるためだ。確認後、リネンを振り分け、リネン庫で部屋のベッドにあわせたシーツをそろえ部屋に運ぶところまでが彼らの仕事となる。

片岡さん
片岡さん

ホテルの現場では働く高齢の方や女性スタッフにとってリネンを階の端から端まで運ぶだけでも大きな負担です。ウィルアクトの社員は現在18歳から36歳までの若いスタッフが中心なので、そうした作業を切り出して担うことができます。仕事を分けて見ていくと、ここなら私たちができる、という部分が必ずあります。

「仕事を切り出す」という考え方は、ホテル業務だけにとどまらない。ウィルアクトが受託している仕事を見渡すと、その多くが「現場の負担になっている仕事」を細かく分析し、一部を切り出したものだ。

現場を理解し、仕事全体の流れを把握していなければできない発想。この「仕事づくり」そのものが、ウィルアクトの大きな強みだ。

ウィルアクトが採用で心がけているポイント

仕事は確実に増えてきた。簡単ではないが「仕事を切り出す」流れもつかめてきた。一方でそれらを担う社員の採用が必須だ。

ウィルアクトでは入社の応募があった際には、まずは見学で職場を知ってもらう。次は2週間の実習。

片岡さん
片岡さん

最初の1週間は、ほとんどの方がただただ緊張で終わります。2週目になってようやく仕事の流れを理解してもらえます。

その2週間の中で、少しでも伸びる可能性が見えれば、2回目の実習を提案。この期間で本格的にマッチングがうまくいくかを見極め、選考に通過した人は採用試験と面接に進むことになる。

ここまでおよそ2カ月半から3カ月。

片岡さん
片岡さん

大切なのは、今できるかどうかではありません。この先、伸びていくかどうかなんです。だからこそ、重要なのが定着支援です。月に1回、支援員の方が来社して社員に対して困りごとがないか、会社に言いづらいことがないかを確認してくれる定着支援の制度も利用しながら、長く勤めてもらえる職場づくりを常に意識しています。

「労働者」として、向き合う

ウィルアクトの雇用形態には、パート社員、契約社員、正社員という3つの区分がある。パート社員は時給制で、福岡県の最低賃金に応じてスライドしていく。そこから契約社員、正社員へとステップを踏むこともできる。

正社員になると、さらにチーフ、コーチという役割が用意されている。チーフまでは7時間勤務、コーチになると8時間勤務となり、後輩の指導や業務の采配も担う。仕事の評価があり、昇給や賞与の規定もある。

塩塚さん
塩塚さん

私たちは、障がいのある方を『労働者』として雇用しています。労働に対する対価を、きちんと支払う。配慮は必要ですが、基本は労働者として接する。そこは大切にしています。

「雇用される」だけで終わらず、役割を広げ、成長していける仕組みが、ここにはきちんと用意されているのだ。

「ありがとう」が、仕事のやりがいに

山口さんはウィルアクトのホープだ。

山口さん
山口さん

2020年入社で、今は6年目です。最初に担当したのは、福利厚生に関する給与明細の事務と給与明細書の三折り作業でした。社内便・連絡便の配送業務、住宅の清掃業務も担当しました。

山口さん
山口さん

現在は、ワンビルでの業務を担当しています。主な仕事は、給茶器の清掃、コピー用紙の補充、ドリンク冷蔵庫の補充、毎週水曜日の文具補充などで、広報・CS推進部のノベルティグッズの運用業務にも関わっています。

山口さん
山口さん

毎日の仕事はとても楽しいし、やりがいを感じています。ワンビルでの仕事は、最初は本当に試行錯誤の連続でした。メンバー同士で意見を出し合い、小さなところから改善点を見つけ、最大限の成果を出せるように取り組んできました。1年ほど経って、だいぶ慣れてきました。お互いに確認しながら進められるようになり、仕事にも前向きに取り組めるようになっています。

山口さんにとって最高のやりがいとはなにか。

山口さん
山口さん

西鉄の皆さんから『いつもありがとうございます』と声をかけられることがあります。それがとてもうれしいです。ウィルアクトの一員として、常に丁寧に振る舞うことを心がけています。

片岡さん
片岡さん

山口さんには後輩の指導も担ってもらっています。窓清掃については、もう完璧。指導員がいなくても任せられるほどです。教え方も優しく、的確で、言葉数は少ないけれど、とてもわかりやすい。効率もいいんです。

アビリンピックをモチベーション向上に

ウィルアクトが大切にしている考え方の中に「自分で挑戦する」がある。その象徴が、アビリンピックへの参加である。

アビリンピックは、障がいのある人たちが技能を競い合う大会だ。競技種目は、ワードプロセッサやデータ入力、表計算といったパソコン競技から、喫茶サービス、ビルクリーニング、製品パッキングまで幅広い。仕事で培った技能を競い合う場であると同時に、自分の可能性を広げる場でもある。しかし、ウィルアクトがアビリンピックに取り組む理由は、メダルだけではない。

片岡さん
片岡さん

仕事だけだと、どうしてもモチベーションが下がる時があるんです。毎日同じ仕事を丁寧に続けることは大切ですが、人は目標があるから成長する。その目標の一つが、アビリンピックだったんです。

社員の勤務は、午後5時まで。その後、希望者が残り、午後6時まで練習を行う。もちろん残業ではなく、自主参加である。その光景はどこか、学校の部活動を思わせる。社員たちの練習に指導員や大会に出場しない社員が「お手伝い」として加わることもあるという。

片岡さん
片岡さん

応援する人がいるから、挑戦する人も頑張れるんです。

競技に出るのは一人でも、挑戦しているのは会社全体。そんな空気ができあがっている。

ウィルアクトがアビリンピックに挑戦し始めた2019年当時、社員たちが普段取り組んでいた仕事は、事務作業や清掃が中心だった。最初に挑戦した競技も、ワードプロセッサやデータ入力など、オフィスアシスタントのみで日常業務に近い種目だったという。

しかし、そこで一つの壁にぶつかる。普段の職場では十分に力を発揮している社員でも、競技になると結果が出ないことがあったのだ。日々の仕事はチームで進める。正確さを大切にしながら、互いに助け合うこともできる。ところが競技は違う。制限時間内にスピーディに作業を終えなければ得点にならない。普段は仲間と協力しながら着実に仕事を進めている社員ほど、「競技では自分は向いていない」と感じてしまう場面もあった。

片岡さん
片岡さん

それなら、その人たちが力を発揮できる種目は何だろう、と。たどり着いた答えが、『喫茶サービス』でした。当時のウィルアクトには、接客業務は一つもなかったんです(笑)。ただ、西鉄グループは、お客さまを大切にする会社です。接客を学ぶことには、必ず意味があると思いました。

「喫茶サービス」競技の様子

結果、初年度に「努力賞」を獲得。少しずつ経験を積み重ねていったその先で、思いもよらない展開が待っていた。2025年4月にワンビルが開業し、冒頭で紹介した「天神福食堂」からの受注があったのだ。競技への挑戦が仕事になったのである。

積み重ねてきた確かな成果

アビリンピックでのウィルアクト社員の活躍は目覚ましい。現在、7種目に挑戦。実績も着実に積み重ねてきた。

2026年7月に開催された福岡県大会ではオフィスアシスタントで金賞、ビルクリーニングでは銀賞、表計算では銅賞、そして喫茶サービスではなんと金賞と銅賞を獲得し、日頃の天神福食堂での業務の成果が現れた。

片岡さん
片岡さん

金賞受賞は全国大会に出場できる可能性があり、オフィスアシスタントと喫茶サービスの金賞受賞者は、2026年12月に愛知県で開催される全国大会に福岡県代表として派遣される予定です。先輩がメダルを取ると、後輩たちにも『自分もできるかもしれない』『自分も挑戦したい』という気持ちが生まれます。世界大会も、決して夢ではない。

アビリンピックへの挑戦が組織に好循環を生み出した。
ただ、ウィルアクトの“ホープ”の一人である山口さんは、アビリンピックには参加していない。それには理由がある。

山口さんは毎日の仕事を終えると、必ずプールに向かい、どれだけ疲れていても、毎日5キロ以上を泳ぐ。実は山口さん、福岡県のパラアスリート育成・発掘プロジェクトの登録選手でもあるのだ。今年10月には、青森で開催される全国障害者スポーツ大会に、福岡市代表として出場する予定だ。

山口さん
山口さん

仕事も、水泳も、続けることが一番大事だと思っています。

「戦力」を育てる会社

ウィルアクトがつくっているのは、「働く人が力を発揮できる環境」そのものだ。

仕事を細かく見つめ直し、一人ひとりの特性に合わせて役割を組み立てる。挑戦したいという気持ちが芽生えれば、その背中をそっと押す。入社した後も長く働き続けられるよう、出身校や支援機関とも連携しながら見守り続ける。その積み重ねが、社員一人ひとりを「職場を支える人」へと育ててきた。

興味深いのは、その担い手である指導員も、必ずしも福祉の専門家ばかりではないということだ。入社後、仕事を覚え、社員と接しながら、少しずつ一人前の指導員になっていく。

塩塚さん
塩塚さん

福祉の専門家ではないからこそ、先入観なく、目の前の一人と向き合う。できないと決めつけず、できる仕事を一緒に探す。『仕事を切り出す』という発想も、突き詰めれば、この姿勢から生まれています。

塩塚さん
塩塚さん

一人ひとりが長く働き続けられる会社でありたい。そのために、これからも仕事をつくり、人を育てていきたいと思っています。

「支援ではなく、活躍する人財へ」。仕事を切り出し、一人ひとりの可能性を見つけ、一人ひとりが自分らしく働ける場所をつくる。

ウィルアクトが育てているのは、西鉄グループを支え、地域を支え、誰かの「ありがとう」を生み出す、かけがえのない人財なのである。

  • 塩塚さん
    塩塚さん

    西鉄ウィルアクト株式会社
    取締役事業部長

    1994年に西日本鉄道入社。鉄道事業本部に配属され主に営業、駅業務関係の業務を担当、その後コンプライアンス窓口、監査部等を経て、2024年から現職(西日本鉄道人事部付グループ障がい者雇用対策担当を兼務)

  • 片岡さん
    片岡さん

    西鉄ウィルアクト株式会社
    事業部雇用推進担当マネージャー

    2018年に西鉄ウィルアクトに入社。障がい者スタッフの業務指導と並行して企業在籍型ジョブコーチの資格を取得。現在は障がい者スタッフの採用活動に従事。特別支援学校や就労支援機関等と連携し、職場見学や実習生の受入れを担当している。

  • 山口さん
    山口さん

    西鉄ウィルアクト株式会社
    事業部業務担当

    2020年に西鉄ウィルアクトに入社。学生時代から多数の水泳競技大会で実績を残し、現在は日々の業務に取組みながら各地の水泳競技大会に出場している。

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