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西鉄バスで行きたくなる!
九州7県の絶景「西鉄カレンダー」
“今年の12枚”が選ばれるまで

西鉄バスで行きたくなる! 九州7県の絶景「西鉄カレンダー」 “今年の12枚”が選ばれるまで

福岡をはじめ、九州に住む人ならきっと一度は見たことのある「西鉄カレンダー」。めくるたびに現れるのは、息をのむように美しい九州7県の四季折々の風景だ。

販売開始は1954年(1955年版)と、実は70年を超えるロングセラー。12枚の写真はどのように選ばれ、撮影されているのか。カレンダーに映る地域の魅力や撮影秘話、アクセス情報を交えながら、制作の裏側に迫る。

目次

九州の絶景をカレンダーに

「西鉄カレンダー」の中面には、各月1枚、計12枚の写真が掲載され、九州全域の名所の四季折々の風景が収められている。

例えば2026年版は、カレンダーをめくるとこんな景色に出会うことができる。今回は、西鉄カレンダーの撮影を担当する風景写真家の川上信也さんに、写真にまつわるエピソードを語ってもらった。カレンダーに映る絶景は、西鉄バスなどを利用してアクセス可能。写真に誘われるまま、その土地の魅力を巡る旅へ出かけてみよう。

【1月 開聞岳の日の出】鹿児島県南九州市頴娃町(番所鼻自然公園)

薩摩半島の南端にそびえる開聞岳。そのなだらかな稜線の先から朝日が昇る。周辺には、番所鼻自然公園から車で15分ほどの「茶ばっけん丘」(高塚丘)という小高い丘がある。鹿児島県はお茶の生産量日本一。この丘から眺める一面のお茶畑と、遠くにそびえる開聞岳の風景も素晴らしい。

川上さん
川上さん

開聞岳の頂を画面の端に置き、そこから延びる美しくなだらかな稜線を画面の中心にして、その稜線の先に昇る太陽を左に置くというシンプルな構図ですが、印象に残った部分を効果的にまとめることができた一枚だと思っています。前景の朝日に輝く波しぶきもいい脇役です。

■交通アクセス:西鉄天神高速バスターミナルから『桜島』号に乗車、「鹿児島中央駅」で下車後、車で約1時間30分。

【3月 坊ガツルのマンサク】大分県竹田市久住町(坊ガツル湿原)

春にまず咲く花ということから「マンサク」と名付けられたという説もあるマンサク。この大きな一本は、くじゅう吉部登山口から1時間半ほど登った場所にあり、多くの登山客に親しまれているスポットとなっている。背景に写るのは、くじゅうの名峰・平治岳だ。

川上さん
川上さん

マンサクと平治岳の両方を画面に大きくまとめるのは、非常に難しいです。カレンダーには両方を大きく入れたかったので、離れた場所からやや望遠気味のレンズを使い、頭の上の木の枝にカメラを置いて撮影し、このアングルにたどり着きました。
周辺では、くじゅう吉部登山口のある飯田高原の「ミルクランドファーム」のアイスクリームがおすすめです。牧場の中の素朴な雰囲気で、くじゅうの山々を眺めながら食べると最高ですよ!

■交通アクセス:西鉄天神高速バスターミナルから『ゆふいん』号に乗車、「由布院駅前バスセンター」で下車後、車と徒歩で約3時間。

【5月 能古島のリビングストンデージー】福岡市西区(のこのしまアイランドパーク)

能古島アイランドパークといえば菜の花やコスモスが有名だが、春に咲くリビングストンデージーも素晴らしい。この花畑からは玄海島を望むことができる。

川上さん
川上さん

定番の構図だと思われがちですが、花々の配置でずいぶんと印象は変わります。さまざまな色の組み合わせによってバランスが崩れてしまったりするので、こうしたおなじみの場所こそカメラマンの腕の見せどころ。右下にやや控えめな黄色を配置し、鮮やかなピンク、紫へと続くこの流れが心地よくなる構図にまとめています。
周辺では、アイランドパーク内にある能古うどんのお店「耕ちゃんうどん」が休憩にぴったりです。港のすぐ目の前には「noconico cafe」という鮮やかな店構えの小さなカフェがあり、島に住む方々もよく利用されるので、お店でのちょっとした交流も魅力になっています。

■交通アクセス:西鉄バス「能古渡船場」で下車後、市営渡船にて能古島へ。「渡船場前」から乗車後、約13分。

【7月 波当津海岸の砂紋】大分県佐伯市蒲江大字波当津浦(波当津海岸)

干潮の際に不思議な砂紋が現れることで、風景写真家たちの間ではよく知られている海岸。周辺では、リアス式海岸で知られる佐伯市の「空の公園」から眺める豊後水道が美しく、6月にはアジサイが咲き誇る。

川上さん
川上さん

どこに美しい模様が現れるのかは、行ってみないと分からない。撮影日は午前中が干潮だったため朝から海岸へ向かい、しばらく海岸を歩き回りました。砂紋に見え隠れする貝殻がちょっとしたポイントになりました。周辺では「道の駅かまえ Buri Laboratory」で食べる海鮮丼がおすすめですよ。

■交通アクセス:西鉄天神高速バスターミナルから『とよのくに』号に乗車、「要町」で下車後、車で約1時間20分。

【9月 若戸大橋と待宵月】北九州市若松区(高塔山公園展望台)

月の出の直後、夕暮れ時に撮影された一枚。赤い若戸大橋は、ライトアップ直前でもよく目立つ。夕暮れ時の街並みと、さりげなく構図に収められた若戸渡船。洞海湾らしい風情が一枚に凝縮されている。若戸大橋のふもと、若松南海岸通りにはレトロな建物が立ち並び、まち歩きも楽しめる。

川上さん
川上さん

夕暮れ時は月の海も表現できるので、秋の夕暮れ時、月の出の時間は特に魅力的です。もっと暗くなると月明りが強くなりすぎてしまいます。洞海湾らしさと夕暮れ時の風情がこの一枚でよく表現できたのではと思っています。

■交通アクセス:西鉄バス「大橋通り」で下車後、徒歩約30分。

【11月 「メタセの杜」の並木道】福岡県築上郡築上町(メタセの杜)

地元で収穫された朝採れ野菜や果物などが並ぶ、福岡県・築上町の「物産館メタセの杜」。その敷地内にはメタセコイアの並木道のほか、遊具広場や芝生公園もあり散策には最適なスポットだ。まるで西洋画のようなメタセコイアの並木道。毎年11月中旬~12月上旬ごろが見頃となっている。

川上さん
川上さん

メタセコイアの紅葉はやや赤っぽいオレンジ色ですが、鮮やかさを強調するために手前に黄色、緑色を取り入れて時間の経過も感じられるようにしました。並木道に落ちる木々のまっすぐな影、ほんのちょっと垣間見える青空もちょっとしたポイントです。撮影した並木道は古くからありますが、最近新しい遊歩道が整備されました。新たな並木道はこのすぐそばにあり、より絵画的な雰囲気が体感できます。さわやかな空気が広がる新緑の季節もおすすめですよ。

■交通アクセス:西鉄天神高速バスターミナルから『津田・苅田・行橋』行に乗車、「行橋駅東口」で下車後、車で約20分。

発売70年以上のロングセラー

西鉄カレンダーの歴史は、意外に長い。販売が始まったのは1954年(1955年版)。実に70年を超えるロングセラーである。

「西鉄カレンダー」1983年版 4月・チューリップの香椎花園(福岡県)1982(昭和57)年撮影 所蔵:西日本鉄道(株)

興味深いのは、鉄道会社のカレンダーでありながら、「車両+風景」という定番の構成を採っていないことだ。主役となるのは、あくまで九州の風景そのもの。雄大な自然や季節の移ろい、その土地ならではの表情が一枚一枚に収められている。

厳選の12枚が決まるまで

1年分のカレンダーができあがるまでには、半年以上の時間が必要だ。4、5月に1年分の有力な画像候補を洗い出し、各月4~5案程度に絞り込んでいく。

その後、6月にはさらに候補を絞り込み、林田社長を含む関係者への確認を経て、ようやく12カ月分のラインナップが決定する。7月には掲載情報の整理とテキストを作成し、デザイン作業を進め、印刷入稿。8月から印刷が始まり、10月以降、順次納品されていく。

掲載写真の大きな選定基準は、「九州の自然が描く、12の彩り」というカレンダーのテーマにふさわしいかどうかだ。九州7県を9エリアに分け、偏りや重複がないかどうか確認しながら調整する。

また、カレンダーが12枚で構成される作品であるため、1年を通した流れも重要なポイントだ。色相や構図、対象物、過去の掲載実績まで踏まえた総合的な判断を経て、さらに画像を絞り込んでいく。つまり、いくら魅力のある写真でも、流れに合致しなければ掲載には至らない。機を逸して掲載できなかった写真も山ほどあるのだ。

35年の歴史を受け継いだ風景写真家

撮影を担当しているのは、風景写真家の川上信也さん。1986年から約40年にわたって撮影を続けてきた松尾悠二郎さんの勇退に伴い、2020年から2年間撮影に参画。2022年版は松尾さんと川上さん二人の作品で構成し、それから現在に至るまでは川上さん1名で撮影を担当している。

1997年、27歳の頃から風景写真を撮り始めた川上さん。くじゅう坊ガツルのすぐそばにある「法華院温泉山荘」で働きながら、山荘周辺に広がるくじゅうの大自然にレンズを向けた。その後、雑誌の仕事で九州各県へ出かける際にも風景を撮り続け、ライフワークとして毎月のように九州各地を巡ってきた。

川上さん
川上さん

西鉄カレンダーの撮影を始める前から長年九州各地を巡っていたので、各県の地理、風景にはかなり詳しくなっていました。その季節ごとに、ここに行けばいい風景と出会える、という情報や知識、感覚が自然と培われていったように思います。この感覚が、毎月の撮影に大いに役立っています。

そんな川上さんに、撮影のコツや撮影時に心掛けていることを教えてもらった。

川上さん
川上さん

その月のカレンダーをめくった時に、「気持ちのいい場所だなぁ、行ってみたい」と多くの方に思っていただけることが一番。僕自身もめくった時に「またここに行きたい」と思える一枚を心がけています。そのために重要なのが、構図がシンプルで分かりやすいこと。そして、パッと見た瞬間にその場の空気感がよみがえること。目の前に広がる風景の中で自分はどの部分に一番ワクワクしているのか、そしてその部分を一枚の写真で効果的に生かすには、どのように構図に取り入れればいいのか。あまり難しくは考えず、自分の心に素直にシンプルに考えていくことがコツだと思います。

一枚の裏側に込められたストーリー

2026年版に掲載された写真にも、それぞれにドラマがある。4月の「桜と根子岳」(熊本県阿蘇郡高森町)は、空の部分の余白が目立つ構図になるため、魅力的な雲が現れるのをひたすら待ち続けた。

12月の「六観音御池雪景」は、さらに忍耐が必要だった。撮影地は宮崎県のえびの高原、二湖パノラマ展望台。午前中に展望台へ到着したものの、あたりはガスに覆われてまったく周囲が見えない。天気予報は晴れ。いずれ晴れるだろうと3時間ほど待機し、ようやく晴れた瞬間に撮影した一枚だ。晴れた直後で上空には雲が多く残り、そのおかげで雲のシルエットが雪景色に面白いアクセントを生んだ。

川上さん
川上さん

待機状態も多い風景撮影ですが、こんなワンシーンと出会える可能性もあるのですから、その待ち時間もまた楽しいものです。

シャッターを切るまでの時間にこそ、風景写真の面白さが詰まっているのだ。

西鉄バスで九州の絶景を見に行こう!

写真を見ていると、「いつかこの景色を自分の目で見てみたい」と思う人もいるだろう。西鉄カレンダーには、撮影地の名称や見どころに加え、西鉄バスなどを利用したアクセス情報も掲載されている。

カレンダーに収められた絶景に心を動かされたら、その場所へ足を運んでみるのも楽しみ方のひとつ。西鉄バスを利用しながら、九州各地の風景やまちの魅力に出会う旅に出かけてみては?

「2027年西鉄カレンダー」は、2026年10月下旬より順次販売中!西鉄の駅窓口をはじめ、にしてつストアや雑貨館インキューブ、主要書店などで購入できる。

▼カレンダーの購入や販売箇所のチェックはこちらから!
https://nag.co.jp/lp/nishitetsu-calendar/
  • 川上 信也 さん
    川上 信也 さん

    写真家

    1971年生まれ。福岡大学工学部建築学科卒。地元の情報誌や雑誌の撮影を中心に九州各地を巡り、風景のみならず自然光を生かした人物、料理撮影などさまざまな撮影を行う。写真講師や写真コンテスト審査員なども務める。2020年より西鉄カレンダー撮影担当。主な出版物に『坊がつる山小屋日記』(海鳥社/2003年)、『くじゅう万象』(海鳥社/2004年)、『福岡の休日』(海鳥社/2006年)、『九州色彩を巡る旅』(花乱社/2014年)、『阿蘇くじゅう 朝の光へドライブ』(花乱社/2016年)。2026年11月上旬には、10年ぶりとなる写真集『九州の朝』を刊行。

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