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西鉄電車が博多駅に停車?!福岡開催の
バーチャルマーケット2023で
西鉄とJR九州のコラボが実現

西鉄電車が博多駅に停車?!福岡開催の バーチャルマーケット2023で 西鉄とJR九州のコラボが実現

西鉄とJR九州のコラボイベントが実現する——。

舞台となるのは、今年2023年に開催される世界最大級のVRイベント『バーチャルマーケット2023 Summer』の会場となる福岡のまち。地元の公共交通を担う2社のコラボで、いったいどんな体験ができるのか? 

目次

西鉄のメタバース「にしてつバース」とは?

西鉄が今年2023年2月末にオープンした仮想空間「にしてつバース」。その第1弾として2月末に公開されたのがメタバース版の「電車・バスミュージアム」だ。

ここではアバターがミュージアムをまわりながら、3D車両や各種展示などを鑑賞できる。また、電車やバスの車両運転席でのスイッチ操作体験など、仮想空間ならではの疑似体験できるのだ。

「にしてつバース」オープンから数カ月。仮想空間を訪れる利用者は延べ数万人に上る。

「当初想定したアクセス数をはるかに上回り、リピーターも多く反響の大きさを感じている。」と、事業を推進する西日本鉄道株式会社DX・ICT推進部 デジタル企画担当の遠井夢希さんは話す。

VRイベント『バーチャルマーケット2023 Summer』とは?

そうしたなか、次の仕掛けとして明らかになったのが、VRイベント『バーチャルマーケット2023 Summer』への出展だ。

『バーチャルマーケット』とは、バーチャル空間上にある会場で、アバターなどのさまざまな3Dアイテムやリアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできるVRイベント。商品売買の他にもバーチャル空間内で乗り物に乗るなどの“体験”や、来場者間でのコミュニケーションにより現実世界で街を回っているような臨場感が感じられる。

2023年7月に開催される『バーチャルマーケット2023 Summer』では世界3都市が“会場”として選出され、そのひとつが福岡となる。

舞台は、福岡のまちを模したバーチャルの世界「パラリアル福岡」。

「パラリアル福岡会場」では、中洲・天神や糸島、太宰府などさまざまな福岡県各地の観光スポットを再現。地域の魅力を伝える企業ブースが各所に並び、最終地点にはJR博多駅を再現した「バーチャル博多駅」が現れる。これらのエリア間の移動手段として選ばれたのが「西鉄バス」だった。

そして、「博多駅」もまた「パラリアル福岡」のメイン会場に決定。西鉄は、博多駅を基点に置くJR九州とバーチャルマーケットでのコラボ企画を推進することになった。

西鉄×JR九州 コラボレーションプラン詳細

今、世界的に注目を集めている『バーチャルマーケット2023 Summer』で、西鉄とJR九州のコラボが実現する?! いったいどんなプランなのか、九州旅客鉄道株式会社事業開発本部デジタル事業創造部の山口健一さんに聞いた。

山口さん
山口さん

「メタバース」という、まだ一般的とまではいかない世界でのコラボということもあり、バーチャルの中で楽しんでいただける企画はもちろんですが、「リアル×バーチャル」を意識した現実世界を絡めた企画もプランニングしています。

一般の参加者はバーチャルマーケットにどうやって参加できるんですか?

山口さん
山口さん

楽しみ方は2つです。ひとつは、スマホやパソコンを使ってブラウザ上で楽しむWebメタバース「Vket Cloud」を利用する方法。もうひとつは、VRゴーグル・ゲーミングPCから利用する「VRChat」です。

前者の方法であれば、スマホやパソコンがあればOKです。専用のゴーグルを持っていなくても、気軽にコンテンツを楽しめます。

■コラボ実施プラン①-1博多駅ホームでの“夢の列車コラボ”

ひとつ目の実施案は、「バーチャル博多駅」内のホームにおける“夢の列車コラボ”だ。メタバース内の博多駅のホームでは、西鉄のシンボルとも言える5000形車両を、JR線を走るD&S(デザインアンドストーリー)列車の対面ホームに留置。(VRゴーグル・ゲーミングPCにて閲覧可能)

山口さん
山口さん

2024年3月に運行を終える人気観光列車「SL人吉」は、D&S列車のなかでも特に人気で、引退を目前に注目が集まっています。

鉄道に詳しい人なら、”夢の列車コラボ“と表現した理由に気づくだろう。

というのも、5000形が走る西鉄天神大牟田線とJR九州在来線では線路幅が異なるため(※)、2社の車両が同じ線路上を走ることなど、現実ではあり得ない光景なのだ。
(※西鉄天神大牟田線の線路幅は1435mm、JR九州在来線は1067mm)

山口さん
山口さん

現実ではかなわない光景が見られるのがバーチャルの魅力です。社内でもそうした前向きな考えで、このコラボを楽しみにしています。

■コラボ実施プラン①-2博多駅コンコースにて車両トレインヘッド展示

また、「バーチャル博多駅」コンコースでのトレインヘッドの展示も計画されている。(スマホ・パソコンにて閲覧可能)

トレインヘッドの展示は、「にしてつバース」内でもおなじみの企画。
今回展示されるのは各社2車両ずつの予定。

■コラボ実施プラン②博多駅内にブース設置

ふたつ目のコラボ実施案として企画されているのは、「バーチャル博多駅」内コンコースに設置されるPRブースの活用だ。PRブースは「バーチャル博多駅」を訪れる多くのお客さまに自社の情報を自由に発信するための場所。

限られた数のブースのひとつに西鉄も出店し、資料の展示や「にしてつバース」の紹介などを行う。(※「にしてつバース」の告知は「Vket Cloud」のみ)

■コラボ実施案③リアル×バーチャル 「九州乗り物スタンプラリー」

バーチャルマーケットがオープンする7月15日(土)から30日(日)の間、リアルの世界でも西鉄×JR九州のコラボイベントが開催される。

リアルとバーチャルを行き来する仕掛けは「今回必ず取り入れたい仕掛けだった」と口をそろえる山口さん、遠井さん。

参加者はスマホを使って、ブラウザ上に表示されるヒントをもとに、天神エリアと博多エリアにある「チェックポイント」を捜索。ポイント付近にある「乗り物」を見つけたらそこにあるQRコードを読み込んで、デジタルスタンプを集めていく。すべてのミッションをクリアすると賞品がもらえるスタンプラリーだ。ミッションクリアのためには「バーチャル博多駅」「にしてつバース」に設置されたヒントも見てもらう仕掛けにすることで、リアルイベントの参加者にもバーチャル空間を体験してもらうことにつなげる。

西鉄×JR九州「バーチャルマーケット」コラボのきっかけは?

地元福岡の交通網を支える西鉄とJR九州。
なぜこうしたコラボが実現したのか? きっかけは、国内最注目のメタバースベンチャーであり、世界最大級のVRイベントを主催する「HIKKY」だ。

天神や博多を中心に、百道や糸島などまで広がるバーチャル世界に「西鉄バスを走らせてほしい」と、西鉄はHIKKY側から提案を受けた。

同時に、JR九州も博多駅や列車を構築する検討を行っていると知った西鉄DX・ICT推進部は、他部署を通じてJR九州の担当部署にアプローチ。今回のコラボが実現した。

遠井さん
遠井さん

2社が別々にイベントに参加することもできたと思いますが、同じ福岡に拠点を構える企業として手を組めば、1社だけで進めるよりもっとおもしろいことが実現できると考えました。

「にしてつバース」がオープンして数カ月。現在は国内からのお客様がメインですが、より大規模なバーチャルイベントに西鉄が参加することで、世界的な認知の機会や話題づくりになれば。

山口さん
山口さん

同じ鉄道の会社であっても、異なる企業文化をもつ2社。発見や気づきもあり、刺激を受けています。情報交換の場としても良い機会で、両社が手を組めば話題性にもつながり、協業の可能性も広がると感じています。

お客さまとの関係性を強化し、次世代の顧客の獲得を図りたい。そうしたねらいが西鉄さんと一致したことも、コラボ実現の原動力になったと思います。

JR九州としては、メタバースへの取り組みは今回が初めて。新たな取り組みをアピールするきっかけにしたいと考えています。今回のコラボが成功して良い事例ができれば、次の動きも見えてくるはずです。

西鉄とJR九州が考える、まちづくりのこれから

福岡の公共交通網を支える西鉄とJR九州。その先に思い描くのは、快適な移動と暮らしが実現する「まちづくり」だという点も両社の共通点だ。

山口さん
山口さん

コロナ禍の経験を経て、私たちはお客さまの価値観の変化を感じています。現代で求められているのは、時代の変化と顧客のニーズをとらえた複合的なまちづくり。「住みたい、働きたい、訪れたい」まちをつくるべく、多くの事業者さまと連携しながら豊かな生活の実現を目指したいと考えています。

今回のバーチャルマーケットへの出展についても、メタバースに参入することが目的ではなく、「まち」を知る・体験することが「(電車に)乗ってみよう」「行ってみよう」という実際の移動につながるのか・つなげることができそうなのかという将来の可能性や、どんなサービスが暮らしを豊かにするのかといったアイデア探しの観点からも意味があると捉えています。

遠井さん
遠井さん

バーチャルの世界は、そう遠くない未来に私たちの仕事においても無視できない存在になってくると考えています。ただその一方で、西鉄グループにとってリアルの世界が大切であることは変わりありません。バーチャルとリアルを掛け合わせることでどのような可能性が広がり、お客様に満足いただけるサービスとなるのか。目の前の状況を見ながら、強く柔軟に事業を推進したいと考えています。

西鉄のメタバース「にしてつバース」の未来は?

2023年2月のオープン以来、予想を上回る来場者が訪れる「にしてつバース」。メタバース事業への進出をねらう同業他社のヒアリング依頼も急増中だ。

遠井さん
遠井さん

想定以上のアクセス数は「うれしい誤算」でした。今後の成長については、いかに利用者の方に満足いただけるコンテンツを、継続的に提供できるかがカギ。ユーザーに楽しみを提供しつづけることが重要なので、これからが本番です。

NFTは想定よりは売れましたが、反省点もありました。これをベースにブラッシュアップを続け、お客さまに満足してもらえる商品づくりを展開していきたいと思います。

今後は「にしてつバース」の英語版も展開する予定とのこと。鉄道ファンの多い海外でのNFT販売も、事業がスケールするための大きなステップだ。

世界進出への重要な一歩となる、今回のJR九州とのバーチャルマーケットコラボ。詳細は西鉄やJR九州のホームページ、各SNSなどでチェック!

  • 山口 健一 さん
    山口 健一 さん

    九州旅客鉄道株式会社
    事業開発本部デジタル事業創造部
    デジタル・データ分析担当
    2019年九州旅客鉄道株式会社入社。駅員・乗務員を経験した後、クレジットカード会社へ出向。2023年から九州旅客鉄道株式会社に戻り、事業開発本部 デジタル事業創造部にてメタバース事業やデジタルデータ分析を担当。

  • 遠井 夢希 さん
    遠井 夢希 さん

    西日本鉄道株式会社
    DX・ICT推進部 デジタル企画担当
    2019年にIT業界から転職して入社。入社以来DX・ICT推進部でデジタル企画に関する業務に携わる。デジタル戦略推進委員会での新しい観光推進に関する取り組みや新技術を活用した取り組みを担当。

にしてつバース│西鉄のメタバースミュージアム
https://nishitetsu-museum.com/

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