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西鉄バス運転士の人生が
学生たちの手でボードゲームに!
西鉄×九州産業大学のコラボ授業

西鉄バス運転士の人生が 学生たちの手でボードゲームに! 西鉄×九州産業大学のコラボ授業

出た目に合わせてマス目を進んでいけば、西鉄バス運転士のキャリアステップが学べる「西鉄バス運転士すごろく」が誕生。いったい誰が何のため作ったのか?
制作の背景を取材した。

目次

西鉄バス運転士のキャリアがすごろくに

ここに、ちょっと変わったすごろくがある。
プレイヤーは、なんと西鉄バス運転士!
そのキャリアが一枚のボードゲームとなり、みんなで遊ぶことができるのだ。

いわゆる「人生ゲーム」の西鉄バス運転士バージョン。最初に手持ち金30万円を配り、あとは順番にさいころを振るだけ。出た目の数だけ西鉄バスを模した(手作りの)コマを進めながら、節目となる試験をパスしてキャリアを描いていく。

左から九州産業大学・地域共創学部の角本優希さん、西鉄の自動車事業本部・人財戦略推進室の渡辺雅仁さん、九州産業大学・地域共創学部の永渕凌太さん、永芳知明さん、荒木心伶さん

まずは、集まったメンバーで試しに遊んでみることに。
プレイするのは西鉄の自動車事業本部・人財戦略推進室の渡辺雅仁さん(写真左から2番目)、九州産業大学・地域共創学部の永渕凌太さん(左から3番目)、永芳知明さん(右から2番目)。角本優希さん(左端)と荒木心伶さん(右)はお金やカードの出納係&審判を担当!

西鉄バスを模したコマも手作り

全員“運転士のタマゴ”からスタート。
最初にさいころを振るのは永渕さん。

3の目が出て、「乗車券窓口で高速バス乗車券を販売する」(+3,000円)のマスへ。

永渕さん
永渕さん

すべり出しは順調ですね!

次は西鉄・渡辺さん。出た目は6と大きかったが、マス目はなんと「カフェでフラペチーノを飲んで楽しい休日を過ごす」(1回休み)。

渡辺さん
渡辺さん

さっそく1回休みか(笑)。うん、休息も必要だよね。

続く永芳さんも3の目が出て永渕さんと同じマスに。

2巡目、永渕さん。5の目が出て「迷っているお客様に声をかけて、乗り場まで案内する」(+5,000円)。所持金アップ!

渡辺さんは1回休みだったので永芳さんがさいころを振り、4が出て次のマスへ「バスから無線が!!上手くバスを乗り場まで誘導する」(+3,000円)。さらに、赤いマスの「給料日」で18万円が支給された!

渡辺さん
渡辺さん

金額がリアルだね。

3巡目の永渕さんは「給料日」のマスでストップ。続く渡辺さんは、「元気な挨拶と丁寧な接客をお客様に褒められた」(+5,000円)。

永渕さん
永渕さん

ゲームだけど、プラスのマスは本当にうれしい気分!

そして、最初にくる大きな関門が、西鉄バス運転士への第一歩となる「西鉄自動車学校」への入校だ。

最初の関門となる「卒業検定」
※学生が作成したすごろくのため、マスの内容は一部事実とことなるものもございます。

4・5・6の目が出たら合格だが、全員1回目は1・2・3の目でかんたんには前に進めない展開に。

永渕さん
永渕さん

2分の1の確率ですけど、意外と思うようにいかないものですね!

永芳さんは2巡目のチャレンジで「合格」へ。残る2人は3巡目のチャレンジで「合格」することができた。その後、大型二種免許取得を経てようやく1人前の運転士になれるのだ。

プラスのマス目に止まった西鉄・渡辺さん(写真中央)。お札の束を手にしてうれしそう!

大型二種免許を取得し、必要な研修を受けた後はついに「運転士デビュー」。一人前になった後は、乗務に関するマスが増え、働く様子が克明に描かれていく。

渡辺さん
渡辺さん

あっ、業務では実際にお金がもらえたりマイナスになったりするわけじゃないですよ! お金のやりとりはあくまでゲームの中だけです。

実際にマス目を見てみると……

「道路交通法とコンプライアンスについて勉強する」(+5,000円)
「休憩中にnimocaカードで昼食を買った」(-1,000円)
「休日に家族で仲良くキャンプに出かける」(1回休み)

など、書かれている内容がものすごくリアル!

制作したのはいったい誰……?

すごろく制作の背景とねらい

九州産業大学(福岡市東区)では、学生が地域の課題を発見し、自身のアイデアを解決に生かす「課題解決型学習(PBL)」の授業がカリキュラムに加えられている。地域共創学部の地域づくり学科と観光学科の3年生20名が受講するこの授業では、西鉄の抱える課題をテーマに学生たちが議論を交わしている。

授業を担当する地域共創学部・地域づくり学科の佐藤忠文先生。通年計28コマ(1コマ100分)

学生たちは、西鉄の公共交通や暮らしに関わる地域課題について考えていく。その取り組みのひとつとして生まれたのが、この西鉄バス運転士すごろくなのだ。
制作したのは「チーム170」の4人。

左から、永渕凌太さん、荒木心伶さん、角本優希さん、永芳知明さん

なぜこのすごろくを作ることに?

ゲーム中の様子
渡辺さん
渡辺さん

西鉄バス運転士の採用は、大きく「中途採用」と「新卒高卒採用」の2つに分かれています。「新卒高卒採用」対象者は「養成自動車運転士」とも呼ばれていて、チーム170のみなさんが作ってくれたすごろくにはそのキャリアステップが詳しく描かれています。

永芳さん
永芳さん

普段何気なく利用している西鉄バスですが、運転士不足や運転士の高齢化が課題になっていることを授業で学びました。西鉄広報課や自動車事業本部のみなさんにお話を聞きながら課題解決のアイデアを考えるにあたり、まずは「西鉄バスの運転士」に対して関心を持ってもらうことが大切なのではと考えました。
以前「人狼ゲーム」をした体験を思い出し、遊びを交えて楽しみながら西鉄バス運転士の仕事について知ってもらうのが効果的だな、と。それで思いついたのが、このすごろくでした。「養成自動車運転士」のキャリアステップを表現したのは、中学生や高校生にバス運転士に関心を持ってほしいと考えたからです。

制作はどのように?

角本さん
角本さん

授業で配布していただいた採用パンフレットをもとに、まずは業務内容やキャリアステップについて理解を深めていきました。そして、運転士のみなさんが歩む道のりをみんなでふせんに書き出していき、内容や順番を調整して1枚にまとめました。

すぐにできた?

角本さん
角本さん

最初はなかなか細かいところまで思いつかなくて……。話を聞いたり調べたり、フィールドワークで西鉄自動車学校の見学に行ったときに学んだことを思い出しながら、内容を詰めていきました。

お気に入りのマス目はありますか?

永渕さん
永渕さん

ぼくのお気に入りは「お客様にバスの行先を教え『ありがとう』と言われた」(+3,000円)。運転士さんに仕事のやりがいをインタビューしたときに聞いたエピソードだったので、ぜひ取り入れたいと思って採用しました。

荒木さん
荒木さん

実際に現場に行かないとわからなかったこともたくさんありました。運転士の業務内容について教えてもらうほか、バスの運転席に実際に座らせてもらったり、運転を体験した人もいたりしたからこそ、けっこうリアルな内容になったんじゃないかと思います。

角本さん
角本さん

「死角体験をして安全に運転するための知識を得る」(+5,000円)は、まさしく体験から生まれたマス目。バスからだと想像以上に道路脇が見えにくく、身をもって安全確認の重要性を実感できました。

永芳さん
永芳さん

キャリアの分岐点があるのもポイントです。管理職を目指したいのか、運転を極めたいのか。西鉄バス運転士にはさまざまなキャリアがあるのを、授業を通して初めて知ることができました。

授業を通して学んだことは?

授業を受けて印象に残っていることや考えたことは?

クイズが出題されるマスも。もちろんクイズも手作り!
角本さん
角本さん

BRT(連節バス)や高速バスなどを運転する際に試験があることは、授業で初めて知りました。普段利用しているだけだとわからないことですよね。無事故でキャリアを重ねていくことでステップアップでき、それが働きがいにつながるのではないかと感じました。いつも通学で使っている西鉄バス。運転士さんへの感謝の心が深まりました。

  • フィールドワークの様子
永芳さん
永芳さん

フィールドワークで運転士や指導員のみなさんを見て感じた印象は「笑顔が多い」ということ。研修時や運転時はもちろん真剣そのものですが、和やかな雰囲気が伝わってきました。

nimocaカードもオリジナル
荒木さん
荒木さん

すごろくを制作するうちに、西鉄や西鉄バスについてどんどん詳しくなっていきました。公共交通以外の業務内容についても知ることができ、あらためて西鉄の存在の大きさを感じ、また、企業への興味も深まりました。
バスの運転士不足や高齢化については、福岡だけではなく日本全国の問題でもあります。地域課題を広い視点で捉えることで、共通の解決策が見つかればいいのですが。

永渕さん
永渕さん

みんなで地域課題について考えることができ、そのアイデアをこうして形にできたので達成感がありました。運転士不足や高齢化はぼくたちが思っていた以上に深刻な課題ですが、このすごろくがそうした地域の現状を知ってもらうきっかけになればと思います。

広報課とともに、一部の授業に参加した自動車事業本部・人財戦略推進室の渡辺雅仁さん。西鉄バス運転士の採用を担当する立場として、今後このすごろくを活用したいと考えている。

渡辺さん
渡辺さん

完成したすごろくを見たときに、チーム170のみなさんが西鉄バス運転士の業務を深く理解してくれたことがわかり、うれしく思いました。キャリアアップのステップまでわかりやすくまとめてくれて。これなら誰でも簡単に遊べるし、就職後のリアルなイメージが描きやすいですよね。

渡辺さん
渡辺さん

西鉄には自動車学校があり、しっかりとした研修制度が用意されているので初心者でも安心してバス運転士を目指せます。今後、高校や専門学校でのリクルート活動や説明会などでこのすごろくを活用し、就活世代を中心に少しでも多くの人に西鉄バス運転士に興味をもってもらえたらと考えています。

近い将来、採用活動でこのすごろくを知って入社した西鉄バス運転士が誕生するかも!? その際はぜひ「エヌカケル」で取材したいと思います!

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