この記事が「面白かった」「役に立った」と思ったら♡をクリックしてください。
西鉄バスの運転士は日々どんなふうに働いているのだろう。仕事の内容、労働時間、職場の環境、メリット・デメリット。そもそも、「どうやったらバス運転士になれるのか」も気になる。そこで今回は「西鉄バス運転士のリアル」に迫るため、現役の西鉄バス運転士である中原浩努さんと、古賀也尚斗さんに話を聞いてみた。
西鉄バスの運転士の乗務スケジュール「勤務輪番(シフト表)」のイメージを実際に見てみよう。
早番や遅番があり、労働時間がかなり幅広いため、「毎日、同じリズムで働く人々」とは異なるライフスタイルを求められるが、古賀さんは、こうした変動的なシフトをうまく活用しているという。
出勤が遅い日には子どもを幼稚園に送ってから、衣類の洗濯をしたり、逆に退勤が早い日には幼稚園に迎えに行って、子どもと一緒にお風呂に入ったりと、家族との時間や家事のためには、かえってこういうシフトが私にはあっています。とくに子どもとの触れ合いは私にとって大切な時間。バス運転士の仕事は勤務時間の変動が大きく休日も固定ではありませんが、利点にすることもできるんですよ。
どのシフトで働くときもバス運転士の1日は、出勤時のアルコールチェックから始まり「車両点検」「出庫点呼」「運行業務」「車両点検」「帰庫点呼」の流れが基本となる。もちろん、運行業務の合間には適宜休憩を取ることができる。その日の勤務を終えて「本日も無事故でおつかれさまでした」の言葉を交わすときは、バス運転士として充実感に満たされる瞬間だ。
休憩で営業所に戻ると、運転を終えた運転士たちが憩いの時を過ごしています。乗務中はひとりで緊張感をもって仕事に取り組んでいるので、営業所に着くと、ほっと一息つける。バス運転士にとって営業所はホームなんです。
営業所の中は、いつもワイワイしていますよ。私が21才でアイランドシティ営業所に配属されたときも、親子くらい年の離れた先輩方からも、とても親切にしてもらえました。新人でも溶け込みやすい環境だと思います。
毎日のようにバスを運転し、安全な運行を心がけている2人の目から見て、バス運転士に「向き・不向き」はあるのだろうか。中原さんは次のように話してくれた。
向いているのは、「責任感をもって1日を過ごせる人」ですね。乗務中は運転士ひとり。安全確認、一時停止、ひとつひとつ手を抜かずに乗務することが、最終的に自分を守ることにもつながります。あとは、朝に強い人。私自身、バス運転士となって大変さを感じたのは、業務スケジュールに慣れることでした。
例えば今、私が勤めている営業所の始発は5時20分なので、早い日には3時30分に起きて4時30分に出社しています。
一方の古賀さんは、実体験とサービスマンの視点から「向き・不向き」を話す。
私は接客業務が好きな人がバス運転士に向いていると思います。運行中にはそれぞれに事情を抱えた多くのお客さまをお乗せするので、心地よくバスを利用してもらうためには細かな心遣いがとても大切なんです。それでも、ときには「なぜこんなに遅れるのか」とお叱りを受けることだってあります。言葉ひとつの間違いが大きな問題に発展することも。接客は楽しくもあり、厳しい面もある。だから、お客さまとの交流に喜びを感じられない人には難しいかもしれません。
応募資格は次の3つ。西鉄バス運転士の採用には、西鉄バス運転士採用公式ホームページからいつでも応募することができる。
<応募資格>
・学歴経歴不問
・65才未満
・普通免許取得1年以上※(過去1年以内に免停がなく、累積点数が4点以下の方)
資格を満たした応募者は、採用試験へと進む。「学科試験」「適性検査」「面接」「健康診断」に合格すれば、晴れて西鉄バスの運転士として採用内定だ。大型二種免許を保有していない場合は、採用内定後に自動車学校に通い始め、大型二種免許を取得後入社となる。その際に要した費用はほぼ全額会社が負担する体制が整っているため、安心してチャレンジすることが可能だ。(保有免許がAT限定の場合は、大型二種免許取得前にAT限定解除(自費)の必要がある。)
また、西鉄では中途採用だけでなく、高校新卒者が最短でバス運転士を目指せる「養成自動車運転士」制度にも力を入れている。「養成自動車運転士」は入社から大型二種免許を取得するまでの期間、西鉄天神高速バスターミナル等のバス関連施設で接客業務・事務業務等に従事しながら、バス事業に関する知識・経験を積み、大型二種免許が取得可能なタイミングになると、大型二種免許の取得・バスの運転に関する研修を行い、研修修了後、晴れてバス運転士としてデビューできる制度だ。
私も「養成自動車運転士」の制度を利用して入社した1人です。10年前の入社時には21才(普通免許取得から3年経過後)からしか大型二種免許を取得できませんでしたが、令和4年に法改正があって、今では特例教習を受ければ最短19才で取得できるようになりました。働きながら大型二種免許を取得できるのは大きなメリットだと思います。
バス運転士の仕事には運転技術だけでなく、接客・コミュニケーション能力が不可欠。それだけに、国内最大級のバスターミナルで西鉄バスの路線についての知識を蓄え、接客を実践的に学べる「養成運転士制度」はメリットが大きい。
西鉄では入社からバス運転士として働くまでに大きく2つの研修を踏む。
いずれの研修においても、ベテラン指導員による丁寧な指導を受けられるので、安心してスキルアップに取り組める。施設の面でも「西鉄バス研修センター」はバス専用の広大なコースを有しており、実際の路面と同じスケールで実践的な研修を受けられる。
営業所配属後研修は2段階あります。お客さまを乗せずに実際の路線を走る「空車教習」と、お客さまを乗せて実際のルートを運行する「ツーマン教習」です。いずれも指導員が付き添い、的確なサポートを受けられます。私の場合はもともと運転が得意だったこともあって、免許取得や研修でつまずくことはほとんどありませんでした。
始発や最終バスの運行を任されることもあるのがバス運転士。そこで気になるのは通勤に関わる住まいの事情だろう。西鉄の住宅に関する支援制度について、自動車事業本部・人財戦略推進室の採用担当、渡辺雅仁さんと松野菜々子さんは次のように説明する。
西鉄ではバス運転士が営業所の近くに住めるよう、「寮・社宅制度」を用意しています。この制度を利用すれば、単身向けの社有寮なら賃料8,000円、扶養家族がある人向けにはUR物件などの借上げ社宅に割安の賃料で入居が可能です。
さらに入居者には10万円を上限として転居支援金を支給しています。県外から入社する方にとって、こうした受け入れ態勢の有無が背中を推してくれることもあるでしょう。そのため、西鉄は「寮・社宅制度」に会社として力を入れているんです。
私は現在、家族4人で2LDKの住宅に住んでいますが、賃料は社宅制度を利用してかなり割安な賃料で生活できています。割安で通勤に便利な場所に住める「寮・社宅制度」は、西鉄バス運転士が受けられる大きなメリットです。
これだけ充実した制度が整えられているのであれば、毎日の通勤も安心だ。年々家賃が上昇している福岡においては、家計の面でも「寮・社宅制度」のインパクトは大きい。
さらに、こうした住宅関連の支援制度のほかにも、生活に寄り添った「優待制度」があると渡辺さんは話す。
福利厚生の一環として用意しているのが、西鉄グループ各社で利用できる優待制度です。西鉄ストア、インキューブ西鉄、西鉄ホテルズ、西鉄不動産ほか、西鉄が展開するさまざまな施設や店舗で優待を受けることができます。
現場の声に耳を傾けて、従業員の暮らしの向上に繋げる。こうした取り組みは、働き手としては心強い。実際に古賀さんは昨年、水族館「マリンワールド海の中道」の割引を利用して家族に喜ばれたという。
西鉄が子育て中の運転士のために力を注いでいるのが、休暇制度の整備だ。有給休暇の消化率はほぼ100%であるうえ、育児休業や子の看護休暇、介護休暇、子の看護等休暇の制度を設けている。さらに育児中の従業員のための時短勤務「育児支援ダイヤ」を用意しているので、運転士は家族のサポートにも柔軟な対応が可能だ。
「育児支援ダイヤ」は、男性の運転士さんにも利用されています。運転士それぞれが自身にとっての最適なライフワークバランスを実現することができるため、ライフステージが変わっても、安心して運転士を続けることが可能です。
女性運転士に向けては、産前産後休暇、つわり休暇、生理休暇、通院休暇制度を完備しています。育児と仕事を両立したい女性の運転士さんからは「どちらも頑張れる」という声をいただいています。また、制度面だけでなく、営業所内に女性専用の休憩室を設けるなど、施設面でも働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
昨年、私も2人目の子どもの誕生に合わせて半年間の育児休業を取得しました。上の子どもの世話をしながら妻をサポートできたのはいい経験です。
2014年に22才で入社したという中原さん。街中を走るバスの後部に貼られた「バス運転士募集」の広告を見て応募を決めたのだそう。実際に運転士になってよかったことについて次のように話してくれた。
バス運転士になってよかったのは、運転に対する意識が変わったことです。プライベートでの走行中にも異変や危険を敏感に察知できるようになりました。交通事故のリスクが減ったと感じています。もうひとつ、西鉄は就業規則がしっかりしているので、規定時間を超えた労働はきちんとお給料としていただけます。コンプライアンスがしっかりしている点に、大きな安心感を得ています。
一方の古賀さんは生まれも育ちも福岡で、物心ついた頃から西鉄バスの大ファン。そんな古賀さんが「バス運転士になってよかった」と感じたのは、家族や友人を乗せたときに「かっこいい」と言ってもらえた瞬間だった。その日の喜びを胸に、毎日誇りを持って乗務していると語ってくれた。
「マリンメッセ福岡」や「みずほPayPayドーム福岡」でのイベント時に運行する臨時便を運転していると、まるで自分も参加しているようで嬉しい気持ちになります。私の好きなアーティストのコンサートの臨時便の車内で「私もファンです」とアナウンスしたときには「この運転手さんも好きなんだ!」と、バスの中に一体感が生まれました。
乗客との心の触れ合いを大切にしていると話す古賀さん。日々の乗務でもアナウンスに工夫を重ね、乗客との間に温かい交流を生んでいるようだ。
私は降車するお客さまに対しての「ありがとうございました」を自分の言葉で伝えるようにしています。朝のラッシュ時には学校や職場に向かうお客さまの気持ちを汲んで、「今日も1日大変かと思いますが、お仕事、学校頑張ってください」「お気をつけていってらっしゃいませ」。夕方や夜は、お疲れの様子の方が多いので「今日も1日、夜遅くまでお疲れ様でした」「お気をつけてお帰りください」といったふうに。
すると、降車するお客さまから「運転士さんもお疲れさま」「背中を押してくれてありがとう」と、温かい言葉をいただけることがあります。バスで心が通じ合う瞬間は、私にとって大きな働きがいです。
一方の中原さんは「運転スキルの向上」にやりがいを見出していると話す。
私は去年から連節バス「BRT」の乗務を任せてもらえるようになりました。自分の運転スキルの向上が目に見えて実感できるのは素直に嬉しいです。運転技術を磨けば、より難易度の高い車両の運転にチャレンジできる。西鉄バス運転士ならではのやりがいではないでしょうか。
BRTの運転には高度な運転技術が必要で、面接と研修に進むためには5年間無事故で実務経験を積み、所長推薦を受ける必要がある。
そして、なんと古賀さんもBRTの面接に合格し、これから教習を受けるという。バス運転のエキスパートBRT運転士への道を拓いた2人は「BRTはたまらない」と口を揃える。やっぱりプロの運転士から見てもBRTはかっこいいのだ。
西鉄バス運転士のキャリアステップは大きく2つに分かれる。毎日のバスの運行を支える運行管理業務を担い、営業所の運転士たちを束ねる「管理者を目指す」道と、多様なバスを乗りこなし、次世代を担う若手を育てるために「運転を極める」道だ。2人の展望を率直に聞いた。
日々の運行を安全に、事故なく、運転士としての1日を終えることが何より大事だと考えています。私は運転が好きなので、これからも現場で運転士として働いていきたいです。
まずはBRTを安全に運行して経験を積むことが目標。いずれは高速バスや夜行バスなど、いろんな車両の運転を任されるようになって最終的に管理職になりたいと考えています。
バス運転士として自分らしく生きていく――真摯な表情で語られる2人の言葉からは西鉄の未来を支えていく瑞々しい力が感じられた。
西日本鉄道株式会社
愛宕浜自動車営業所 助役兼自動車運転士
西日本鉄道株式会社
アイランドシティ自動車営業所 自動車運転士
西日本鉄道株式会社
自動車事業本部 人財戦略推進室
2016年入社
西日本鉄道株式会社
自動車事業本部 人財戦略推進室
2019年入社
この記事が「面白かった」「役に立った」と思ったら♡をクリックしてください。