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ヒノマル株式会社とは? 
西鉄グループの新たな一員
「総合力」で九州の農業を支える

ヒノマル株式会社とは? 西鉄グループの新たな一員 「総合力」で九州の農業を支える

2025年10月1日、西鉄グループに新しい仲間が加わった。熊本県熊本市に本社を置く、ヒノマル株式会社(以下、ヒノマル)だ。農業用の肥料や資材などを扱い、農家をトータルでサポートする卸売商社であるヒノマルは、どのような経緯で西鉄グループの一員となったのか?その背景とこれからの展開について取材した。

目次

ヒノマルグループとは?

ヒノマルグループの中核会社であるヒノマル株式会社は、熊本県熊本市に本社を構える農業用製品の卸売商社だ。戦後間もない1947(昭和22)年に創業した肥料販売会社が前身、その後、農業関連事業の全般を取り扱うアグリ事業、インフラ事業、食品容器の成型品事業と事業範囲を拡大してきた。2020(令和2)年8月にはアグリ事業部門が独立。新生ヒノマル株式会社として新しい一歩を踏み出したばかりだった。

そして、2025年10月1日、ヒノマル株式会社を核とするヒノマルグループが西鉄グループに参画。現在、ヒノマル株式会社の従業員数は98名(2025年3月末時点)。2025年3月期の売上高は約128億4900万円。熊本本社のほか、福岡、長崎、鹿児島、宮崎、大分、八代、大阪などに拠点があり、地域に密着した広範なネットワークを持っている。

事業では、肥料、植薬(農薬)、資材、施設工事の4分野で、生産者のニーズにワンストップでサポートしている。近年はスマート農業への取り組みを一段と加速させており、ドローンや土壌診断、環境センシングなどの最新技術を活用し、効率化や品質向上、省力化を目指した総合的な農業支援を進めている。

ヒノマルの強みは「総合力」

肥料や農薬の販売にとどまらず、栽培管理や土壌の分析、圃場改良、施肥設計、防除提案など、生産者の農業経営をトータルで支援する提案型営業が特徴のヒノマル。最大の強みは、肥料・農薬・資材・施設工事という農業に必要な複数分野をワンストップで提供できる「総合力」だ。

各事業分野では複数の競合他社が存在するが、それらのサービスを総合的に、かつこれだけ手広く柔軟に提供できる点はヒノマルの大きな優位性だ。取引先となるメーカーや商品供給網は約600社にものぼる。抜きん出た「総合力」という強みを生かすことで、生産者の多様なニーズに柔軟かつ迅速に応えることが可能となる。

また、九州全域に複数の営業所を持っている点もヒノマルの強みだ。地域ごとの農業形態や気候、土壌条件を理解したうえで、きめ細かく対応するネットワークと地元密着を長年かけて築き上げてきた。メーカーや商品供給網との数ある取引実績をもとに、生産者にとって最適な商品や資材、技術を提案できる体制が整っているのだ。

なぜ農業の総合商社が西鉄グループに?

では、なぜ農業関連商社であるヒノマルが、「西鉄グループ」に参画したのか。その理由は、2022年に西鉄グループが発表した、2035年までの長期ビジョンを描いた「にしてつグループまち夢ビジョン2035」にあった。

「にしてつグループまち夢ビジョン2035」で「食のビジネスで地域産業の活性化とブランド化」を掲げる西鉄。「食」や「農業」は次の10年に向けた事業計画の重要なキーワードとなっている。2015年に設立された「NJアグリサポート」をはじめ、すでにいくつかの事業が走り出しているなか、ビジョンの実現に向けて取り組みを進めている。

キーワードは「人」と「九州」

「総合力」で九州の農業をサポートしてきたヒノマル。その地元に根付いた事業展開は、西鉄グループとも共通するところだ。今回の西鉄グループへの参画について、ヒノマルの代表取締役社長を務める安武広信さんに話を聞いた。

西鉄グループに参画された今の心境は?

安武社長
安武社長

ひと言で言うと、うれしいですね。九州において「西鉄」さんの存在はすごく大きいので、グループの一員になれたのは光栄なことです。私たちは熊本を拠点としているので、福岡に本社を置く西鉄に親近感を持っていました。地元である九州のビジネスの「肌感」もよくご存知でしょう。ともに成長できればと思います。

最初に話を聞いた時はどのように感じられましたか?

安武社長
安武社長

ファーストコンタクトで林田社長と直接お会いして、長期ビジョンのことなどこれからの事業展開についてお話を伺いました。また、林田社長も同じ九州の長崎のご出身で、幼いころから農業に親しんでいらした。だからでしょう、「地元である九州に貢献したい」との言葉がすっと心に入ってきて、心強く感じました。「こんなに丁寧にお話しいただけるんだ」と感動したのを覚えています。

周囲の反応はいかがでしたか?

安武社長
安武社長

家族は「おめでとう、よかったね」と歓迎してくれました。また、以前は投資ファンドの傘下にあったので、ヒノマルが今後どうなるのか業界内では注目を集めていました。西鉄グループへの参入の情報は伝わるのが実に早く、記者会見の当日中に知った同業者もたくさんいたようです。福岡勤務の経験もある北海道・旭川の取引先からは、当日に「あの西鉄さんのグループに!」と、驚いた様子で電話がありました。それほど、特に九州を知る人にとってはインパクトが大きかったのだと思います。

仕事において大事にしている信条は?

安武社長
安武社長

「誠実さ」です。どんな商売も信用関係で成り立っていて、関係性が築き上げられると、スムーズにビジネスが進みます。ですから、大事なのは「人となり」ですね。社会人になってからずっと大切にしてきました。

ヒノマルの魅力は?

安武社長
安武社長

第一に、九州の隅々にまで根を張り、地道に営業を続けてきたことです。本社がある熊本市内ではもちろん、山間部でも農業従事者の方とお話しをしていると「ああ、ヒノマルさんね」と返してくれるんです。それだけ私たちの先輩方が九州中を歩き回り、信頼関係を築いてきた証だと思います。

最大の魅力は、やはり「人」でしょうね。うちは商社なので製造設備はなく、研究機能もありません。だからこそ「人」が宝なんです。社員は年齢に関係なくみんな勤勉で、モチベーションが高いんですよ。定年が近い50代の社員たちもパワフルで、みんなアクセルを踏む勢いで精力的に業務に励んでいます。

また、仕入先・販売先・ヒノマルの3者が一体となって組織する「日扇会(にっせんかい)」も、ヒノマルを支えてきた揺るぎない基盤です。九州全域から108社が結集し、設立から30年、立場を超えた強固なネットワークを築いてきました。同業者の垣根を越え、情報交換をしたり食事を共にしたり。こんな会はなかなかないですよ。

時代の変化に応じたサービスを

「人」こそ最大の魅力だと語る安武社長。ヒノマルでは98名の社員のうち、その約半数が営業部に所属している。熊本営業所の課長を務める渡和也さんに話を聞くと、ここ近年の効率化や省力化の流れで、農家に提供するサービスも大きく変化しているという。

渡さん
渡さん

今までの農業は、農家の経験や勘に頼るものでしたが、ここ数年はデータを重視したスマート農業やドローンの導入など、生産効率化と省力化が積極的に進んでいます。農家の方々の意識もかなり変わってきていると感じています。

九州の農家が今一番求めていることは?

渡さん
渡さん

「情報」です。農家のみなさんも日々いろんな情報を得ながら試行錯誤していらっしゃるので、私たちもより良い提案ができるよう、もっと勉強する必要があると痛感しています。一方で、そこでこそヒノマルの強みである「総合力」が発揮できると思うんです。取引先から得た情報を農家の方々に還元できるよう、意識しながら動いています。

同僚どうしの連携もその分強いのでしょうか?

渡さん
渡さん

電話やチャットグループでの連絡、少人数での会議などで定期的に情報の共有をしています。また、社内で共有される「週報」では、各担当がどういう動きをしているのか細かくわかるので、気になったら電話して直接詳細を聞くこともあります。良い事例を知れば自分も取り入れることができますから、社内での情報共有は今後より重要になってくると考えています。

農業の現場を知る渡さん。営業の観点からヒノマルの強みを語ってもらった。

渡さん
渡さん

ヒノマルにはいくつかのPB製品(※)があり、自社の大きな強みとなっています。市場の資材をリサーチした上で開発されているので、まさに現場生まれ。こうした商品が少しずつ増えていったらといいなと考えています。
(※)プライベートブランド

渡さん
渡さん

最近のトピックとしては、独自製品である「ヒノマルアミノ酸入り液肥」が30年ぶりにリニューアルしました。このように、商材を改良して新しく販売している製品もいくつかあります。

「太陽の雫 アミノ酸入り液肥」。肥料効果の優れたアミノ酸が入っているので、色つや、旨みがアップ。さらに収穫量アップにも
「均一チューブ」。100 m先まで均一に散水できるチューブ。水やりの省力化に寄与する
渡さん
渡さん

農家の方々に求められるものを提供することは、総合商社である私たちだからできるサービスでもあります。さらに、悩みやお困りごとを聞けばいろんな視点から解決策をご提案できるのも、総合商社であるヒノマルの大きな強みです。これからも地域密着の姿勢は変わることなく、総合力を生かした提案を続けたいと思っています。

九州の農業の未来のために

農薬のことを「植物への薬=植薬」と表現し、環境や社会との共生を大切にしてきたヒノマル。現代の農業が抱える環境問題のほか、農業の衰退や生産者の高齢化、労働負荷の過重といった業界全体の課題や、地域特有の課題にも長年向き合ってきた。

さまざまな事業を率いる総合商社である点。「人」が魅力である点。これらのポイントは、多様な事業を展開し、「人のにしてつ」と言われる西鉄グループとの共通点でもある。

長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」で〈環境資源〉〈農水産〉〈ウェルネス〉〈地域ソリューション〉の4つの新領域への挑戦を掲げた西鉄グループ。農水産の可能性を模索しながら、今回のヒノマルとの事業を形にしてきた西鉄の新領域事業開発部の原田友翔さんは、M&Aの流れを次のように振り返った。

原田さん
原田さん

今回のM&Aは、西鉄本社主導では十数年ぶりで過去最大規模。かつ農水産という未踏領域。それでも林田社長の即断によってスムーズに進み、この“決断の早さ”は社内に新しい雰囲気を生みました。『挑戦していいんだ』と思ってほしいですね。

ヒノマルのオフィスで執務をしながら対話する新領域事業開発部の原田さん

ヒノマルをグループに迎えたこれからは、どんなシナジーが生まれていくのだろうか。

安武社長
安武社長

人口減少を続ける日本の農業には課題もたくさんありますが、その一方で、海外に目を向ければ、人口は増え続けています。西鉄には国際物流の部門があるので、例えば海外のマーケットに向けたルートを作れないかなど、海外での事業展開への可能性を感じています。

今後の展望は?

安武社長
安武社長

私たちが目指すビジョンとして、「持続可能な農業」という言葉をよく使っています。これだけ農業従事者が少なくなっている今、作業を効率化するしかない。いかに少ない人数で効率的に作物を作るか。それにはスマート農業の活用が欠かせません。

農業がこれからも継続できるようにテクノロジーで省力化を補い、九州の、そして日本の農業を支えていくことが私たちの使命だと考えています。九州の農業や農作物に興味を持つ方が増えることを願っています。

ドローンなどを用いたスマート農業を5年前に立ち上げたヒノマル。2名の技術スタッフが九州エリアのドローン操作指導にあたっている

メーカーと農家をつなぎ、サステナブルな関係を築いてきたヒノマル。九州の地から農業を支え、日本の農業を次世代に伝える役割は、今後ますます重要性が高まるに違いない。

そして、九州の農業を知り尽くしたヒノマルを迎えた西鉄グループ。長期ビジョンの実現に向けた今後の展開が楽しみだ。

  • 安武 広信 さん
    安武 広信 さん

    ヒノマル株式会社
    代表取締役社長

    熊本市出身。1985年に入社。アグリ事業の営業畑を歩き、熊本支店アグリ営業部長、福岡本社アグリ第二事業部長、鹿児島支店長、熊本支店長、福岡本社アグリ事業部長、取締役を経て、2020年6月より現職。

  • 渡 和也 さん
    渡 和也 さん

    ヒノマル株式会社
    熊本営業所 課長

    福岡県古賀市出身。2007年入社。八代営業所、大分営業所を経て2018年より熊本営業所に所属。植薬部門の営業を統括している。

  • 原田 友翔 さん
    原田 友翔 さん

    西日本鉄道株式会社
    新領域事業開発部 係長
    2014年入社。鉄道事業本部、経営企画部を経て、2025年4月より新領域事業開発部。スタートアップ企業等との共創による新規事業開発に従事するとともに、ヒノマルグループのM&Aを担当。

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