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西鉄グループ第17次中期経営計画
次々に実現する夢と
新しいまちの姿

西鉄グループ第17次中期経営計画 次々に実現する夢と 新しいまちの姿

このほど西鉄グループから最新の経営計画が発表された。2035年を見据えた長期ビジョン。その実現に向けて、今後3年間、西鉄グループはどのような取り組みを進めていくのか――その全体像をダイジェストで紹介する。

2026年3月19日リリース『「にしてつグループ 第17次中期経営計画」の策定』
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/news/news20260319/main/0/link/25_122.pdf

「まち夢ビジョン 2035」へのセカンドステップ

今回、発表されたのは「にしてつグループ第17次中期経営計画」。2026~2028年度までの3年間が対象で、2022年11月に公表した長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン 2035」の実現に向けたセカンドステップだ。

これまでの成果―第16次中期経営計画の振り返り

2023~2025年度の「第16次中期経営計画」では、「沿線価値の向上」と「事業領域の拡張」を軸に、都市開発と交通、生活サービスを一体化した成長戦略を推進してきた。

特に福岡都心部では、福ビル街区建替えプロジェクトなど天神エリアを中心とした再開発が進展し、西鉄の開発力を改めて示す取り組みとなった。

2025年4月に開業した「ONE FUKUOKA BLDG.」

沿線においては、住宅や商業施設の開発を通じて居住·交流人口の拡大を図るなど、モビリティと不動産·流通が連動した「まちづくり」を推進した。

一方で、海外事業の拡大や新領域への挑戦も進み、事業ポートフォリオの多様化が加速した。
こうした第16次中期経営計画期間の成果と課題を踏まえ、今回の新たな中期経営計画は、「まちづくり企業」としての進化をより明確に打ち出している。

事業環境の変化

西鉄グループを取り巻く環境は、いま大きな転換点にある。
人口減少だけでなく、世界的なインフレ、地政学リスクの高まりや、サイバー攻撃の高度化など、西鉄グループを取り巻くリスクはその影響度や複雑性が増している。
一方で追い風もある。インバウンドの回復、半導体関連産業の集積といった社会全体の動きが、九州·福岡の存在感を押し上げている。

福岡市の入込観光客数

「まち夢ビジョン」をバージョンアップ

「第17次中期経営計画」の策定にあたって、「まち夢ビジョン2035」に掲げる「出逢いをつくり、期待をはこぶ」事業の進化と新領域への挑戦を描いた「ビジネスモデル変革ストーリー」を基盤としながら、新たにグループの強みを活かした3つの「成長機会獲得ストーリー」を追加した。

ビジネスモデル変革ストーリー

まずは「沿線まちづくりの推進と深化」。最重要経営基盤である沿線地域の活性化と持続可能性の向上に向け、生活者需要と観光·インバウンド需要の深耕を図りながら、「沿線まちづくり」を一層推進する。

つぎに「まちづくりソリューションの域外展開」。これまで培ってきたノウハウを国内外へ展開し、そこで獲得した収益や知見を、沿線·九州へと還元する好循環を生み出していく。

そして「産業サポート分野の事業拡大」。西鉄グループのブランド力や事業の特性·競争力を活かして、沿線·九州に限らず、全国·海外でも産業サポートを展開していく。

成長機会獲得ストーリー

「成長機会獲得ストーリー」の推進により、にしてつグループの強みである「公共交通・まちづくりのノウハウ」「沿線での幅広い事業を通じた顧客接点」これらにより築かれた「信頼のブランド力」と「グループシナジー」を最大限に発揮していく。

「移動」を超えて価値を生むモビリティへ

モビリティ分野では、「安全·信頼を最優先としたモビリティサービスの提供」と「持続可能なモビリティネットワークの構築」を軸に、収益拡大とサービス高度化を進めていく。

高速バスや空港関連路線バスの増強に加え、一般路線·高速路線ともにインバウンド·観光の移動需要を捉えた輸送強化を図るほか、オープントップバスを北九州、別府エリアでも展開し、観光コンテンツとしての価値を高めていく。

KITAKYUSHU OPEN TOP BUS

モビリティネットワークの面では、西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の直通運転の実現に向けた検討を進めるとともに、総合交通体系の推進に向けた自治体との連携を強化する。

持続可能な総合交通体系の構築(イメージ出典:福岡市都市交通基本計画「2025年5月策定」)

さらに、西鉄エアサービスによる空港関連業務の拡大も進める。関西国際空港での業務を開始し、国際線業務受託やVIPサービス、GSA(General Sales Agent)事業などを通じて、航空分野での事業領域を広げていく。

移動サービスの枠を超え、都市·観光·産業を支える総合モビリティ企業として進化する。

「創造交差点・天神」から始まるまちの進化

福岡市都心部では、天神エリアを中心に「賑わい·魅力創出」と都市機能の高度化を一体的に進めていく。
その象徴が、「ONE FUKUOKA BLDG.」を核としたまちづくりだ。開発コンセプトである「創造交差点」の実現に向け、企業や大学、周辺施設と連携した共創施策を展開。スポーツイベント、子ども向けワークショップ、パブリックビューイングなど、多様な交流機会を創出し、ONE FUKUOKA BLDG.のブランド価値を向上させる。

REC COFFEE×九大生·子ども向け「コーヒークレヨンワークショップ」の様子

さらに、公共空間を活用した集客イベントを積極的に展開する。「天神集客プロジェクト」によりにぎわい創出を推進し、2026年7月開通予定の因幡町通りでは、歩行者専用道路として憩いの空間を整備する。ストリートファニチャーやワゴン式売店の設置などにより、日常的な滞在価値を高めていく。

「因幡町通り」の完成イメージ

地権者との共働による大規模開発も進行中だ。福岡家庭裁判所跡地の複合開発、天神二丁目南ブロック駅前東西街区、天神一丁目15·16番街区に加え、福岡の未来を左右するビッグプロジェクトとして位置付けられる「九州大学箱崎キャンパス跡地の土地利用事業」といった複数のプロジェクトが同時進行している。

「アジアで最も創造的なまち」の実現に向け、福岡のまちづくりを牽引していく。

沿線―ウェルビーイングなまちづくり

「沿線開発」では、不動産事業を通じて「持続可能でウェルビーイングなまちづくり」に貢献し、沿線価値の向上を図る。沿線は最も重要な経営基盤であり、日常の暮らしそのものの質を高める取り組みを各地で具体化していく。

都心部では、福岡三越のリモデルに合わせた改修を実施。来街者を施設内へ引き込み、回遊性を高めるデザインへリニューアルする。

ライオン広場入口イメージ

高宮駅では「オアシス·ハブ·ステーション」をコンセプトに、鉄道·バス利用者と周辺住民を取り込みながら、テナントの誘致や施設のリフレッシュを推進する。また、白木原~下大利間の高架下開発では、空間活用により交流人口を増加させ賑わいを創出する。

さらに、春日原駅に直結する商業施設「レイリア春日原」や、西鉄柳川駅前の「にぎわい交流施設」では、利便性と非日常性を融合させた新たな生活拠点を創出する。観光と日常の双方を取り込むことで、地域の魅力を高めていく。

西鉄柳川駅前にぎわい交流施設 完成イメージ

「住宅事業」では、久留米エリア最大·最高層となる分譲マンション「久留米ザ·タワーレジデンシャル」を他社と共同開発し、地域の居住価値を高める。

久留米ザ·タワーレジデンシャル(343戸、地上36階)

沿線を単なる通過点ではなく、「暮らしの価値を生み出す舞台」として再定義し、沿線地域の持続的な発展を実現する。

沿線の力を外へ―関西圏・首都圏・海外の不動産戦略

域外では沿線まちづくりで培ったノウハウを活用し、国内外での開発およびソリューション事業を展開することで、収益基盤の拡大を図る。沿線にとどまらず、域外へと価値創出のフィールドを広げていく。

国内では、安定的かつ効率的な利益確保に向けて住宅開発を推進。関西では「サンリヤン堺」、首都圏では「サンリヤン横浜二俣川」といった分譲住宅を展開するほか、熊本市において物流施設開発を進め、地域分散による収益の安定化と新たな市場の取り込みを図る。

あわせて、「不動産ソリューション事業」も強化する。私募REIT(特定の投資家だけが参加できる、非公開の不動産投資信託)を活用した不動産アセットマネジメント事業の拡大だけでなく、テナント対応や収益管理を担うプロパティマネジメント事業と、設備管理や清掃·保守を行うビルマネジメント事業との連携を強化し、自社物件に限らず、外部のオーナーが保有する不動産の管理も積極的に受託することで、収益力の向上を図る。
また、デジタル技術の活用(DX)によって業務の効率化とコスト削減を図り、競争力を強化する。

海外ではパートナーと協働した不動産事業を通じて、収益基盤の構築と西鉄ブランドの浸透を図る。

各国での不動産開発戦略

滞在価値を高めるホテル・レジャー事業

「ホテル事業」では、新規出店計画を着実に進めるとともに、サービスアパートメントホテルなどの新たな業態への参入を図る。

ソラリア西鉄ホテル大阪本町(仮称)完成イメージ

「レジャー・旅行事業」では、福岡·九州の魅力を活かした観光需要の取り込みを強化する。観光列車のリニューアル、大都市圏でのインバウンド·富裕層向け施策の実施など多角的に集客を図る。

また、西鉄旅行によるスポーツ関連ビジネスも拡大し、スポーツツーリズムの強化を進める。

THE RAIL KITCHEN CHIKUGO (ザ レールキッチン チクゴ)

日常を楽しくする流通・外食事業の進化

スーパーマーケット事業では、新規出店と既存店舗の収益改善を推進する。2026年2月に「レイリア春日原」内に「レガネット春日原」を出店するなど、沿線生活の利便性向上に取り組む。収益改善においては惣菜事業の強化や生産性の大幅な向上が重要な柱となる。

レガネット春日原店
「インキューブ」リニューアル後のイメージ

「生活雑貨販売事業」では、「インキューブ」が新規出店と既存店のリニューアルを進める。年1店舗の出店を目標に中型店を拡大しつつ、外観·内装の刷新によって来店時の期待感やわくわく感を高め、データドリブン(勘や経験ではなく、収集したデータに基づいて判断を下すこと)な店舗運営による収益拡大を図る。

「外食事業」では、2025年に開業した「天神福食堂」において自治体や企業とのコラボレーションを展開。地域の食材や文化を発信する場として活用し、地域の取り組み支援や魅力発信を推進する。太宰府市との連携による「梅メニュー」提供など、食を通じた地域連携の具体例も生まれている。

日常の消費シーンそのものに新たな価値を付加し、沿線に暮らす人々の満足度を高めていく。

専門性で拡張する物流事業の高度化戦略

「物流事業」では、GSP(Global Sales & Procurement)の拡充や重点品目ごとの販売戦略により取扱重量を拡大するとともに、サービスの高品質化・高付加価値化を進め、業界内でのプレゼンス向上を図る。また、海外ネットワークの拡充とグローバル戦略の推進により、きめ細やかなロジスティクス事業の展開を目指す。

「取扱重量の拡大」に向けては、品目の選択と集中を図り、戦略的に取り扱いを伸ばしていく。

「海外ネットワーク」については、市場拡大を目的としたM&Aの推進に加え、駐在員事務所の現地法人化や新規拠点の展開を進め、グローバルな物流網の拡充を図る。

専門性の高度化にも注力する。AOG(航空機部品の緊急輸送)貨物への対応として24時間365日のサービス体制構築や、半導体専業課の拡充、自動車専業課の設置によって、分野別のサポート体制を強化していく。

これらの取り組みにより、西鉄グループは物流事業において「量」と「質」を強化し、グローバル市場での競争力・存在感を一層高めていく。

都市と産業を支えるビジネスサポートの拡張

「資源エネルギー関連事業」では、再生可能エネルギー事業の拡大と「西鉄メタル」のASR(廃自動車破砕残渣)再資源化事業を強化する。

西鉄メタル株式会社のASR再資源化施設

また、自治体と連携した太陽光発電事業や脱炭素コンサル事業の拡大、蓄電池併設や系統用蓄電所の増設など、電源開発の高度化にも取り組む。

「建設関連事業」では総合建設会社としての体制構築を進める。大規模物件や非住宅木造建築物の受注強化に加え、協力会社とのパートナーシップを構築することで、受注規模と事業領域の拡大を図る。

「ITサービス関連事業」では交通系ICカード「nimoca」の利便性向上のため、窓口機能のアプリ化を推進し、チャージや定期購入手続きのデジタル化を進める。また、外部パートナーとの連携による決済関連新規事業の検討·実施を通じて収益機会の創出を図る。

ポイント交換機・チャージ機

「農業関連事業」では2025年よりグループ企業となったヒノマルグループを中心に市場シェアを拡大し、収益力強化を図るとともに、販路拡大支援やスマート農業の展開、M&Aの推進により、九州農業の持続的発展を支えるビジネスモデルを構築していく。

攻めと守りを高度化―DX・AXの推進と安全・あんしんの追求

福岡空港国内線·国際線連絡バス走行空間が専用化される機会を活かし、自動運転車の導入を目指す。また、一般路線および非予約高速バスにクレジットタッチ決済を順次導入する。

さらに、地震·豪雨を想定した訓練による有事の対応力向上や、お客さま·歩行者·自転車の安全をリアルタイムで監視し事故を防止するAIカメラの導入を推進するなど、「安全·あんしん」を追求していく。
また、安全対策だけでなく、西鉄グループを取り巻くあらゆるリスクに対応するための基盤づくりにも取り組む。

戦略を動かす人的資本経営の進化

人的資本経営では、「まち夢ビジョン2035」の実現に向け、戦略を担う人財の確保·育成と、個々の能力を最大限に引き出す環境整備を進める。サクセッションプランの推進や人財ポートフォリオの策定、高度専門人財の確保を通じて、将来の成長を支える基盤を強化する。

人財と組織のパフォーマンスを最大化し、企業の持続的成長と「まち夢ビジョン2035」を実現していく。

「まち夢ビジョン2035」とサステナブル経営

今回の「第17次中期経営計画」を通して見えてくるのは、「まち夢ビジョン2035」とサステナブル経営を一体のものとして進めようとしている姿だ。

その中核にあるのは「『まち』の価値を高めることが、企業としての持続的な成長そのものにつながる」という考え方である。

西鉄グループのサステナブル経営とは、環境対応だけでなく、安全·あんしんの強化、ガバナンスの高度化、人的資本への投資、地域社会との共創などを通じて、地域の持続的な発展に貢献していくことである。

今回の計画では、その持続可能性が守りの発想にとどまらず、3つの「成長機会獲得ストーリー」を打ち出したことで、西鉄グループの「地域の外にも価値を展開できる企業」への進化を示している。地域で培った知見を外へ広げ、外で得た収益や知見を再び地域へ還元する。この循環こそが、「まち夢ビジョン2035」とサステナブル経営を結びつける大きな構造だ。

VUCA時代(先行きが不透明で、予測が極めて困難な現代の状態)において、企業に求められるのは、社会とともに成長し、その成長をまた社会へ返していく仕組みを実装することだ。今回の「第17次中期経営計画」は、まさにその実装に向けた羅針盤と言える。

「まち夢ビジョン2035」が描くのは、未来の都市像であり、企業像でもある。西鉄グループはこれから、まちを育て、産業を支え、人を育てる企業として、その姿をさらに鮮明にしていく。今回の計画は、西鉄グループが描く未来へと向かう道筋を、具体的に描き出したものだ。

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