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Good Local 九州とは?
異業種5社が連携して挑む
持続可能なまちづくり

Good Local 九州とは? 異業種5社が連携して挑む 持続可能なまちづくり

福岡・太宰府天満宮の参道近くに2025年11月に誕生した「ビームスジャパン太宰府」。九州の伝統や文化を新たな価値として発信するこの話題の店舗を運営しているのは、西鉄をはじめ、ふくおかフィナンシャルグループ、NTT西日本、三菱地所、ラブエフエム国際放送の5社が設立した「Good Local九州」だ。

異業種がそれぞれの強みを持ち寄り、地域課題の解決とにぎわいの創出に挑む新たなまちづくり。その取り組みと、地域の未来にかける思いを取材した。

目次

「ビームスジャパン太宰府」が開店

福岡県・太宰府天満宮の参道を横断する路地に、あざやかなのれんが揺れている。2025年11月にオープンした「ビームスジャパン太宰府」だ。

古民家を改修した趣のある店舗

九州初進出、全国で10店舗目となるこの拠点には、平日・休日を問わず多くの観光客や地元の方々が足を運んでいる。店内をのぞくと、全国の銘品に混ざり、久留米絣のポーチや大木町のい草を使ったアイテムなど、福岡の伝統が新しいセンスで昇華された、ビームスジャパン太宰府限定商品がずらりと並んでいる。

「ビームスジャパン太宰府」店内の様子

この話題のスポットを仕掛け、フランチャイズとして店舗を直接運営しているのが、福岡を拠点とする「株式会社 Good Local九州」だ。一見、アパレルブランドの直営店に見える拠点の裏側には、交通インフラを担う西鉄をはじめ、異業種5社が手を取り合い、本気で九州のローカルに希望を灯そうとする新しいまちづくりの姿があった。

「Good Local 九州」とは?

株式会社Good Local九州は、2025年4月1日に設立された。同社に出資するのは、西鉄、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)、NTT西日本、三菱地所、そしてラブエフエム国際放送(以下、LOVE FM)という、各分野で九州のインフラや経済、カルチャーを支えてきた強力な5社だ。

設立の背景にあるのは、地方が直面している人口減少と、それに伴う地域社会・産業の急速な衰退という切実な課題だ。これまでも各社は個別に地域活性化に取り組んできたが、一社だけの力では限界があった。

創業のきっかけは、日ごろから地域活性化の議論を重ねていた西鉄とFFGで「まちづくりのために協業できないか」というアイデアが立ち上がったことだった。ここに、自治体との深いつながりを持ち、ICTによる地域課題解決を進めるNTT西日本、都心部の先進的なまちづくりノウハウを活かし、天神エリアと地域の相乗効果を創出したい三菱地所、プロモーションや情報発信のノウハウを持つLOVE FMが加わり、5社による協業体制が生まれたのだ。

「ひとと、まちとともに、希望が生まれ続ける地元をつくる。」をパーパスとして掲げる「Good Local九州」。事業内容は、ハード面を担う「拠点運営事業」と、ソフト面を支える「交流創出事業」の2つの車輪で構成されている。この双方が連動し、相乗効果を生み出すことこそが最大の強みだ。

詳しい事業内容や設立からこれまでの実績について、「株式会社Good Local九州」取締役拠点運営事業部長の日宇悟史さん、ディレクターの山下祐紀さん、プランナーの朝川貴浩さん、髙村光司郎さんに話を聞いた。

(写真左から)「株式会社Good Local九州」取締役拠点運営事業部長の日宇悟史さん、プランナーの朝川貴浩さん、ディレクターの山下祐紀さん、プランナーの髙村光司郎さん

地域の課題解決を図る「交流創出事業」

「Good Local九州」が実践する「交流創出事業」は、単なるアイデア出しのコンサルティングにとどまらない。自治体や地域のプレイヤーに徹底的に寄り添い、現状分析から計画策定、イベントの実証、効果検証までを一気通貫でサポートする「伴走支援」が特徴だ。

代表的な事例が、福岡・筑後地方の伝統工芸品「八女提灯」のリブランディングへの取り組み。お盆文化の衰退やライフスタイルの変化により、盆提灯の市場規模は縮小し、担い手不足や事業承継が大きな課題となっていた。八女提灯協同組合から「ただ提灯を展示するだけでは、日常のなかに文化が残っていかない」という相談を受けた同社は、解決策を共に探り始めた。

単年度の限られた予算だけではできることに限りがあるため、国(観光庁)の補助事業「地域観光魅力向上事業」の獲得を提案。企画立案から申請、事業運営までを全面的に担った。

さらに、若い世代に提灯の魅力を知ってもらうため、九州産業大学と連携。現役大学生やデザイナーが描いたモダンなデザインの提灯を試作し、伝統的な技術を守りつつ、現代のインテリアに馴染むお土産品の開発に乗り出した。実際に、八女福島地区で開催したモニターイベント「幻灯夜」では、絵付け体験やミニランプシェード作りを実施し、大きな反響を得ることに成功した。

企画したモニターイベントの告知ポスター

絵付け体験などの観光コンテンツ企画や体験モニターイベントの実施、お土産品の開発、SNSマーケティング支援、パンフレットの制作など、支援業務は多岐にわたる。

この事例以外にも、各社の強みを活かした多様なプロジェクトを同時並行で動かしている。持続可能で質の高い地域公共交通の実現に向けた「MaaSを活用した観光客周遊促進支援業務」や、遊休農地の課題解決を図る「福岡市農地活用促進プロジェクト」など、Good Local九州を支える各社の強みを生かしながら事業を手掛けている。

地域に深く根差す「拠点運営事業」

もう一方の軸である「拠点運営事業」の第1号として結実したのが、地域共創型の店舗「ビームスジャパン太宰府」だ。太宰府は年間約1,000万人もの参拝客が訪れる九州屈指の観光地だが、その多くが参拝後にそのまま帰ってしまう「通過型観光」が長年の課題だった。㈱ビームスが地域共創型のフランチャイズ展開を検討していたタイミングとGood Local九州の設立時期が合致し、太宰府に少しでも長く滞在し、回遊してもらうためのコンテンツとして、プロジェクトが始動した。

日宇さん
日宇さん

オープンまでの道のりは極めてタイトでした。現在の店舗となる古民家の内覧を最初にしたのが2025年5月。そこから、物件のオーナー様との交渉や設計、9月の解体工事着工を経て、11月28日のプレオープンまで、わずか数カ月という驚異的なスピードでオープニングを迎えました。

店頭に並ぶオリジナル商品は、太宰府にちなんで、菅原道真公が愛した梅の木を連想させる「紅梅色」がテーマカラーになっている。

「ビームスジャパン太宰府」限定の〈ビームスジャパン〉オリジナルアイテム

さらに、福岡・久留米のシューズメーカー「MOONSTAR(ムーンスター)」のスニーカー端材を活用したラバーだるまや、大木町の老舗い草メーカー「イケヒコ・コーポレーション」が手がける梅紋模様のござなど、地域の素晴らしいものづくり技術がBEAMS JAPANのフィルターを通して、日常を彩るプロダクトとして店頭に並ぶ。

久留米で創業し、今や日本の老舗シューズ製造会社であるシューズメーカー「MOONSTAR」に別注依頼したラバーだるま。スニーカーを製作する際に生じた端材を再利用する
1886年からい草製品や畳の製造販売を行う老舗「イケヒコ・コーポレーション」とのコラボアイテム

インバウンドをはじめとする国内外の来客で、店舗は連日にぎわいを見せている。来店客数は、当初計画を大きく上回るペースで推移しているという。

朝川さん
朝川さん

私自身、スタッフとして店頭に立つこともあるんです。お店にいると、看板を見て誘い込まれるように入店するお客さまが多くいらっしゃることから、BEAMS JAPANのブランド力の強さを実感しています。

異業種だからこそ生まれる化学反応

これほど幅広く、時にスピード感を求められる事業を、現場で動かしているのはどんな面々なのだろうか。Good Local九州の実務を担うメンバーは、西鉄や福岡銀行など、多様なバックグラウンドを持つ人員で構成されている。

異なる事業分野でキャリアを積み上げてきたメンバーが、地域への想いを共有しながら課題解決へと向かう日々。現場ではそれぞれがどのような役割を担い、どんな思いで業務を担っているのか。

日宇さん
日宇さん

私は長い間まちづくりに関わる部署に所属していましたが、「Good Local九州」の設立と同時に同社担当となり、「ビームスジャパン太宰府」の物件交渉や施工スケジュールの管理、店舗運営などを手探りで進めてきました。

太宰府は古くからの歴史や参道の老舗が多く、最初は不安もありましたが、今では周りの方からも温かい声をかけてもらえるようになりました。

山下さん
山下さん

私は現在、福岡銀行から西鉄に出向という形で事業に参画しています。福岡銀行では、地方創生や地域の官民学連携に関わる仕事を経験してきました。福岡銀行は県内の各地に支店を構えているので、地域の方々の切実な課題をたくさん聞いてきました。ただ、かつては、課題を把握しても金融以外のソリューションを持ちあわせておらず、寄り添うお手伝いはできても、最終的には自社以外に任せざるを得ないジレンマがあったんです。

そうしたなか、この「Good Local九州」というチームができたことで、解決のアイデアを出すだけでなく、自前のネットワークで『ビームスジャパン』のような強力な販路や拠点と直接結びつけられるようになりました。これは地域の方々にとっても、私たちにとっても非常に大きな進歩だと感じています。

民間企業の立場から「Good Local九州」に携わる日宇さん、山下さんのほか、同社には行政から西鉄への出向者も業務に携わっている。それぞれが持つ「強み」や異なる業種の協業によるシナジーについて、どのように捉えているのだろうか。

山下さん
山下さん

福岡銀行はあらゆる産業の成長を支えており、信頼に基づく金融と地域ネットワークという強みで九州全体を支えています。一方で、西鉄は生活インフラを中心に街を創っており、生活基盤から福岡を牽引し、まちをデザインしていく力を持っています。この双方の力が一つになったことが、この組織の一番の強みだと感じています。

日宇さん
日宇さん

まさにその通りです。Good Local九州には、各社が持っているアセット(資産)が惜しみなく投入されています。「ビームスジャパン太宰府」の立ち上げ時、お店を運営する上で一番大切になるのは、単に英語が話せる等のスキルではなく、『おもてなしの心(ホスピタリティ)』だとBEAMSさんから伺いました。それならと、西鉄グループの『西鉄ホテルズ』に相談し、ホテルで経験を積まれた方を店長として出向してもらったんです。急な打診だったにもかかわらず快く応じてくださり、店長もホテルでの経験を活かし現場を引っ張って素晴らしい店舗を作ってくれています。こうしたグループシナジーを発揮できるのは西鉄の強みですね。

朝川さん
朝川さん

私は太宰府市役所で10年間、教育委員会や水道局、児童福祉関連の部署を経験してきました。まちづくりや開発の経験はゼロの状態で、このGood Local九州に携わらせていただいていますが、最初は、民間企業の仕事の進め方や意思決定のスピード感、各社の多様なあり方や業務を覚えるだけで必死の1年でした。メンバー間では驚くほど意思疎通が活発で、全員が同じ目的に向かって建設的に話し合いを重ねています。民間企業がこれほどの熱量とスピードで地域を変えていく姿を間近で体験できることは、本当に大きな刺激になっています。

髙村さん
髙村さん

私は宗像市役所で7年間、観光振興や世界遺産の教育プロジェクトなど、まさに地域づくりの文脈に携わってきました。今年4月に「Good Local九州」に来て一番衝撃だったのは、「民間企業がここまで真剣に地域のことを考えているのか」ということでした。行政が自ら担当する地域のことを考えるのは当たり前なのですが、民間企業のみなさんが柳川や太宰府の魅力を自分ごととして語り、どうすればもっと良くできるかを日々ディスカッションしている。その当事者意識の高さにはっとさせられました。

山下さん
山下さん

5社が集まって一つのプロジェクトを進めるのは、目線合わせや意思統一、それぞれの社内調整など、もちろん大変な面もあります。しかし、社風がまるで違うメンバーが集まるからこそ、一つの物事に対して多様な角度からアイデアが生まれます。また、西鉄の中にいて改めて感じるのは、縦の関係が非常にフラットで、若い社員の意見をしっかり許容する風土があるということです。だからこそ、こうした新しい挑戦に対してもフットワーク軽く、イノベーションを起こし続けられているのだと思います。

日宇さん
日宇さん

「Good Local九州」という組織ができたことで、西鉄は今まで以上に機動力をもって、多様な選択肢を用意して地域に貢献できる姿を示せるようになったと感じています。私たちの事業がうまくいけばいくほど、西鉄グループ全体にも良い波及効果がもたらされるのではないでしょうか。

次なる挑戦は水都・柳川のにぎわい創出

福岡・太宰府に続くGood Local九州の拠点運営事業として、現在大きなプロジェクトが進行している。2027年6月に開業予定の西鉄柳川駅前「にぎわい交流施設」(仮称)だ。西鉄柳川駅西口周辺に整備する施設で、延床面積は1,500㎡。1階には観光案内所やレストラン・カフェ、地域物産店舗。2階には宿泊施設が入居する予定となっている。

山下さん
山下さん

地方の銀行である福岡銀行にとっては、地域産業の衰退によって人がいなくなれば、銀行としての基盤そのものが揺らいでしまう。だからこそ、今ここで地域に寄り添い、一緒に汗を流して産業を活性化させることが、将来の融資や新しい工場の建設、雇用の創出という形で「本業の価値」に還ってくるはずです。

日宇さん
日宇さん

交通インフラや不動産、商業施設を手掛ける西鉄にとっても同じことですね。まちの魅力を高め、訪れる人や住む人の日常を豊かにすることは、西鉄沿線のにぎわいを高めるシナジーとなって、グループ全体に還元されると考えています。

現在は福岡のみで事業を展開していますが、将来的には九州全域も視野に入れています。ただ、拠点数を増やすよりも、地域に深く入り、その地域の人々との関係性を大切にしながら、地域に根差して事業を展開していくことが私たちのミッションだと考えています。

「Good Local九州」の挑戦は、目先の利益を追うだけのビジネスではない。「希望が生まれ続ける地元」をつくること。異業種のプロフェッショナルたちが同じ熱量で地域の想いに伴走するこのチャレンジは、これからの福岡の、そして九州のローカルを、もっと新しく、おもしろくしていくに違いない。

  • 日宇 悟史 さん
    日宇 悟史 さん

    西日本鉄道株式会社
    まちづくり事業本部 企画開発二部 課長
    株式会社Good Local 九州 取締役拠点運営事業部長

    2006年入社。経理部配属。2010年より都市開発部門に異動し、計画、ビル管理業務に従事したのち、2014年より開発担当として、エリマネ団体事務局、開発プロジェクトを担当。2022年より天神開発本部福ビル街区開発部へ。2025年4月より現職。

  • 山下 祐紀 さん
    山下 祐紀 さん

    西日本鉄道株式会社
    まちづくり事業本部 企画開発二部(出向)
    株式会社Good Local 九州 ディレクター

    2012年福岡銀行入行、2018年に福岡県庁への出向を経て、2020年より福岡銀行地域共創部で公務・地方創生関連事業を担当。2025年西鉄出向・現職。

  • 朝川 貴浩 さん
    朝川 貴浩 さん

    西日本鉄道株式会社
    まちづくり事業本部 企画開発二部(出向)
    株式会社Good Local 九州 プランナー

    2015年太宰府市役所入庁。
    学校教育課、上下水道課、保育児童課を経て、2025年より西鉄出向・現職。 

  • 髙村 光司郎 さん
    髙村 光司郎 さん

    西日本鉄道株式会社
    まちづくり事業本部 企画開発二部(出向)
    株式会社Good Local 九州 プランナー

    2019年宗像市役所入庁。
    商工観光課、世界遺産課、人事課を経て、2026年より西鉄出向・現職。

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