西鉄グループが運営する水族館「マリンワールド海の中道」(福岡市東区)で楽しめる「夜のすいぞくかん」。
夜間営業で21時まで館内を楽しめるこの期間。特別な催しに向けて、海の生き物たちもスタッフたちも日々準備を続けている。
人気のイルカショーも、この期間に向けて絶賛準備中だ。担当トレーナーたちが構成したシナリオをもとに、イルカたちはプールで練習に励んでいる。そんななか、この夏ショーのデビューを飾るイルカがいるとの情報をゲット!
訓練の様子を見に行ってきた。
「夜のすいぞくかん」とは、水族館「マリンワールド海の中道」の夜間営業のこと。通常17時30分までの開館時間が21時まで延長され、普段は見られない海の生き物たちの姿に出会うことができる。
今年の夏は2023年7月15日(土)~17日(月祝)、7月22日(土)から8月31日(木)の間(毎日)と、9月の土日・祝日に実施される。
曜日や期間によって異なるが、通常1日に3~4回実施されるイルカ&アシカショーは、「夜のすいぞくかん」の期間中、日中の時間帯に加えて19時30分からショーを開催(※イルカショーのみ)。ライトアップされたショープールを自在に泳ぐ、幻想的なイルカの姿が楽しめるのだ。
そして、この夏、初めて「夜のすいぞくかん」でのイルカショーに登場するイルカたちが、デビューに向けて練習を積んでいるという。
現場を訪ねると、さっそく、イルカのトレーナーのリーダーを務める木下克利さんが2頭のイルカを紹介してくれた。
この夏初めてショーに出るのは、バンドウイルカのハルとイブです。ハルはこの水族館で2018年11月8日に生まれた男の子。遊び好きで、やんちゃな性格です。
イブは現在5歳で、2022年11月に「かごしま水族館」からやって来ました。「かごしま水族館」でもショーに出ていたので技ののみ込みが早く、とてもお利口さんです。
ところで、素人にはイルカを見分けるのがなかなか難しいのですが、みなさんはすぐに見分けられるのでしょうか?
ははは! そうですよね。ハルは、くりっとしたつぶらな目が特徴です。イブは色白で細長い“美イルカ”。鼻先がすらりと伸び、全体的にシュッとしています。ほかのイルカと比べると2頭ともやや小柄な体格です。
じっと見ていると、何となく違いがわかってきた……気がします!
今年の「夜のすいぞくかん」では、 12頭のイルカがショーに向けて練習を重ねている。
さて、ハルとイブはどこだ……?
ショーでは2頭のペアで編成を組んで動きます。新入りのハルとイブがコンビを組むのは、経験豊富なベテランイルカたち。ハルは一番奥でハナゴンドウのミルクと、イブは手前から2番目で、同じバンドウイルカのラムとの組み合わせです。
新入りでも、ベテランイルカと一緒に練習できるなら安心ですね!
ハルの練習はどんな様子ですか?
ハルは、まだなかなか動きが落ち着かないことが多いですね・・・。
本来なら、ショーは立ち位置が決まっているので、技を終えたら定位置に戻らなければいけないのですが、ハルはうろうろしてしまうこともあります。
ハルの経験不足ということでしょうか?
そうですね。いたずら好きな性格もあると思いますが、練習もまだまだ必要そうです。
イブの動きはどうですか?
イブはハルより呑み込みが早く落ち着いていますね。お母さんイルカのラムにしっかりとついて行こうとしています。たまに失敗もあるので、まだまだ練習が必要ですね。
トレーナーが2頭の背中に乗って、ショープールをぐるりと回る技の練習。イブとラムのコンビは、1、2回目は失敗だったが、3回目はほとんど成功だった!
成功すればかっこいいんですけどね!
現時点で、練習の出来栄えは100点中何点くらいですか?
う~ん、60点くらいかな……。練習を重ねれば、ハルとイブも、もちろん他のイルカたちも、もっと一つひとつの技を磨けると思います!
そもそも、イルカたちはどうやって技を覚えるんですか?
最初は、先輩イルカたちの真似からスタートします。立ち泳ぎをしたり、軽くジャンプをしたり、シンプルな動きは他のイルカたちを見ながら遊び感覚で覚えているようですね。
さらに段階が上がると、トレーナーたちがエサや道具を使って訓練をします。先端が丸い「ターゲット」と呼ばれる棒で合図をしながら同じ動きを繰り返し、成功したらエサ、つまり報酬を与えます。
良い動きをすれば「エサをもらえる」と条件づけられるので、イルカはその動きをきちんと習得します。これを何度も練習して徐々に難易度を上げていき、技の精度を磨いていきます。
1日にどのくらいの時間練習するんですか?
練習は1回約15~20分で、ショーの後に数回行います。ショーの出演もあるのであまりハードにならないように。集中力をキープできて、ストレスにならないよう気を付けています。
それ以外の時間は、何をしているんですか?
水の中を泳いだり、水面にプカプカと浮かんだり、自由に過ごしています。水面でじっとしている時は、リラックスして寝ているのかもしれませんね。
イルカは1日のうち、何度かに分けて睡眠をとります。トータルで数時間ほどの睡眠なので、朝は早くからプールを泳いでいますね。
食事はいつとるんですか?
1日4、5回に分けてとります。練習の時は、トレーナーが技や動作を指導して、うまくできたら食事を与える。この難易度を少しずつ上げながら、繰り返し練習して技を習得していきます。
担当トレーナー数名がオリジナルで企画しています。今回の見どころは、トレーナーがイルカと一緒にプールに入る「水中種目」。大きなショープールを持つマリンワールドならではの迫力を体感できると思います。
ショーのプログラムは毎年違うんですか?
季節やイベントに合わせて、年に5、6回は入れ替えています。今練習しているのは「夜のすいぞくかん」用の特別プログラム。通常のショーとは異なる魅力がいっぱいですよ!
今回の「夜のすいぞくかん」のプログラム作成をメインで担当したのは、トレーナーの土江純平さん。ショーの見どころについて教えてもらった。
テーマは「ドルフィンフェス2023」。音楽の「フェス」のように、会場全体の一体感をつくれるような演目を盛り込みました。MC用のナレーションや音響、照明までも自分たちで考えて構成しています。今回は12頭のイルカたちがA・B各6頭ずつ、2チームに分かれ、それぞれ決められた演目を担当します。
人気の演目はありますか?
イルカたちがひれを使って水面をたたき、観客席に大量の水をかける「水かけ種目」というものがあります。前方の席はかなりの量の水を浴びることになりますが、「むしろ水を浴びたい!」というお客さまも多く、前方の席はかなり人気です。
そのほか、見どころを教えてください。
特におすすめしたいのは、トレーナーと一緒に演じる水中種目です。トレーナーがイルカの上に乗る「サーフィン」や「胸びれリフト」、イルカの力を借りてトレーナーがジャンプする「ロケット」など、見ごたえのある演目を準備しています。
新入りのハルとイブの見どころはありますか?
今年から初めて挑戦する水中種目では、ハルとイブそれぞれが先輩イルカと共にトレーナーと息を合わせた技を披露します。2頭がそろって演じる演目としては「水平ジャンプ」があります。そのほか、ハルはミルクといっしょに泳ぎながら「横水かけ」を、イブはソロで観客に水を浴びせる「スプラッシュ」を披露する予定なので、ぜひ温かく見守ってください!
イルカショーの観覧席のシートは前方と後方で色が分かれている。前方のオレンジ色の席は、大量の水しぶきを覚悟する特等席。特に、ステージ右手側の前方席は、ショー終了後には水浸しになるほどたくさん水がかかるので、レインコートやビニールシート、着替えを持参して楽しむのがおすすめだ。
「夜のすいぞくかん」期間中はイルカショーのほかにもさまざまな催しが企画されている。イルカのえさやり体験「パクパクイルカ」は、毎日実施。詳しくはホームページをチェックして、必ず事前に申し込みを!
ホームページでは、デジタルチケットを販売中。事前に購入しておけばスムーズに入場できる。
「夜のすいぞくかん」
◆日程
2023年7月15日(土)~7月17日(月祝)、7月22日(土)~8月31日(木)、以降は9月24日までの土日・祝日
◆営業時間
9:30~21:00(最終入館20:00)
※ショーの開始時間はホームページにて確認をお願いいたします。
https://marine-world.jp/general-guide/showtime/
株式会社海の中道海洋生態科学館
運営本部 展示部海洋動物課 副長
1989年3月入社、勤続34年以上のベテラントレーナー。イルカチームの頼れるリーダー。
2013年4月に入社後、一度退職してトレーナーを育成する専門学校で講師として勤務。しかし、再びイルカのトレーナーを志して2022年に再度入社。2023年夏の「夜のすいぞくかん」ではメインでプログラムを企画した。