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なぜ店内にメリーゴーランド?
ミスタードーナツ大濠ショップで
日本で唯一回り続けている理由

なぜ店内にメリーゴーランド? ミスタードーナツ大濠ショップで 日本で唯一回り続けている理由

「ミスタードーナツ大濠ショップ」は、今や日本のチェーンでたった1つしか残っていない“日本最後”のメリーゴーランドがある店舗として、全国からたくさんのファンが訪れている。

「ミスタードーナツ」といえば、甘いドーナツの香りに満たされた人気のドーナツチェーン店。定番の「オールドファッション」や「エンゼルフレンチ」、大ヒットした「ポン・デ・リング」、おかわり自由のコーヒーなど、きっと誰もが「ミスド」の思い出を持っているはず。

その唯一メリーゴーランドが残っている「ミスタードーナツ大濠ショップ」を創業当時から運営しているのは、福岡県をメインに100店舗以上のスーパーマーケットや飲食店を運営する西鉄ストアだ。この店舗にメリーゴーランドが設置された背景から、今後も存続し続けるのか・・・!?担当者に話を聞いた。

目次

大濠ショップで人気の“日本最後 ”のメリーゴーランド

福岡市中央区にある市民のオアシス、大濠公園。

そのすぐ北側にある「ミスタードーナツ大濠ショップ」の中央に、きらきらと光るメリーゴーランドがある。

営業時間にはライトがつき、上下に動きながらゆっくりと回り続けている。中央にあるメリーゴーランドを囲むように配置された客席。お店にいると、どこの席にいてもこのかわいいシンボルが視界に入る!

昨今の「昭和レトロ」ブームもあり、このメリーゴーランドが「かわいい」「レトロ感がある」と、数年前からInstagramやTikTokなどのSNSで話題に。メリーゴーランドを目的に来店する10代や20代の若者も増えているようだ。

福岡市民にとっては、当たり前の光景かもしれない。

けど、よく考えると、なぜここにメリーゴーランドが……?!

なぜミスタードーナツにメリーゴーランドが?

アメリカ発祥のドーナツチェーン店「ミスタードーナツ」。日本国内での店舗運営は、実は株式会社ダスキンだ。そう、清掃用具のレンタル事業などで知られる、あのダスキンだ。

では、なぜミスタードーナツ大濠ショップにはメリーゴーランドがあるのか? ダスキンの本部担当者に聞いてみたところ……

「1980年代、日本のミスタードーナツでは、21世紀に向けて『21型』と呼ばれる新たなデザインを導入しはじめました。この当時、国内ではまだ『アメリカへの憧れ』があったことから、メリーゴーランドに限らず、ネオンサインやジュークボックスなど、1950年代のアメリカを象徴とするデザインを取り入れていました」

店舗数の推移は定かではないが、アメリカ調のデザインを導入した1986年当時、希望する日本国内のミスタードーナツショップが「21型」の店舗にシフトチェンジ。アメリカ調ミスタードーナツが誕生した。

大濠ショップにあるアメリカ調のインテリア
千鳥模様のフロア

それから約40年。2000年代に入り、改装や閉店によって21型の店舗は減少。2010年代後半になると、「大濠ショップ」を含む3店舗だけとなった。

その後、大濠ショップ以外の2店舗については、改装を機にメリーゴーランド本体はなくなり、一部を展示するのみになった。

こうして、大濠ショップのメリーゴーランドが、日本の ミスタードーナツに現存する最後のメリーゴーランドになってしまったのだ……!

大濠ショップに残る貴重なアメリカ調デザイン

ミスタードーナツのFC加盟店として、福岡県で7店舗の運営を担っている株式会社西鉄ストア。ミスタードーナツ大濠ショップは、オープンした1975年当初から現在に至るまでの約50年間、同じ場所で営業を続けている。

昔の大濠ショップ(撮影年月不明)

西鉄ストアのフード事業部の中でも、「ミスタードーナツ」の運営・管理を担当する営業第二課の課長・原田淳司さんに詳しい話を聞いた。

入社約20年の原田さん。大濠ショップの店主を務めた経験もある

大濠ショップにあるメリーゴーランド。これっていつからお店にあるんですか?

原田さん
原田さん

1989年の6月からです。

そんなに前から!

2000年始めごろと思われる大濠ショップの店内

そもそも、本体はどこで作られたものなのでしょうか?

原田さん
原田さん

店舗のデザインテーマは「アメリカ」ですが、大濠ショップにあるメリーゴーランドは名古屋で作られたと聞いています。

名古屋! 外国製じゃなかったんですね。

創業から今まで、修理やメンテナンスはどのくらい?

原田さん
原田さん

電球の取り換えや細かい補修は何度かあったと思いますが、カルーセル本体はほぼ当時のままですよ。あっ、私たちの間では、「メリーゴーランド」ではなく「カルーセル」(「回転木馬」という意味)と呼んでいます。

「カルーセル」。なんだか、かっこいい……!

原田さん
原田さん

カルーセル以外にも、店内の至るところにアメリカ調のデザインが採用されています。入口2カ所にあるこのマークは、カルーセルが設置された店舗であることを表しているんですよ。

原田さん
原田さん

このジュークボックスもなかなか貴重です。これほど良い状態で残っているものはなかなか少なく、これも“日本最後”だと思います。

大濠ショップにあるジュークボックス。中のレコードは針を落とせば今でも聴くことができる

ほんとに、きれいな状態で残っていますね。

多くの方がメリーゴーランドを目的に来店

今から約10年前、約2年間大濠ショップの店主として勤務したことのある原田さん。お店に立っていた当時のことを聞いてみた。

お客さまの反応は?

原田さん
原田さん

このカルーセルを目当てに来店される方はたくさんいらっしゃいますよ。外からも見えるので、通りがかりにカルーセルを見つけて入って来られる方もめずらしくありません。

原田さん
原田さん

お子さまには特に人気で、カルーセルの周りの席から埋まっていきます。最近はSNSに投稿してくださる方もたくさんいらっしゃいますね。ドーナツと絡めると“映える”写真がたくさん撮れるので、ぜひ試してほしいと思います。

メリーゴーランドは今後もなくならない?

ミスタードーナツのショップでは日本最後になった、大濠ショップのメリーゴーランド。これからもずっとお店に残り続けてほしいけど……。

正直、メンテナンスが大変だったり、コストがかかったり、店舗にとってマイナス面はないんですか?

原田さん
原田さん

実はメンテナンスはすごく簡単で、日ごろの業務内では軽く拭き掃除をするくらいなんですよ。電球が切れたら交換する必要があり、以前はけっこう大変だったのですが、この前の改装でLED電球に入れ替えたので管理しやすくなりました。

ON/OFFも簡単に?

原田さん
原田さん

ええ、スイッチひとつで動くので、営業前に電源を入れて、終業時にオフにすればOKです。

それなら営業にも負担にならず、安心ですね。

原田さん
原田さん

でも、実は、今までに何度かメリーゴーランドが撤去されるかもしれない危機はあったんですよ。

ええっ?!

原田さん
原田さん

2023年の8月に店内を改装した際、カルーセルを残すべきかどうかは大きなテーマでした。経年による傷みも出てくるし、維持するのにコストもかかります。「その分のスペースを座席にしたほうが、店舗効率が上がるのでは?」という意見も出ました。

それでも、私たちはこれからもカルーセルを守り続けていくと固く決意しました。

大濠ショップだけでなく他のショップにも、このカルーセルに思い入れがあるスタッフがたくさんいます。

さらに、全国の運営責任者が集まるオーナー会でも、他店舗のオーナーさまから「このカルーセルは絶対に残してほしい!」という意見をたくさんいただきました。大濠ショップが「カルーセルのあるお店」として認識されていることは、すごくうれしく感じました。

全国にファンがいて、愛されているんですね。

原田さん
原田さん

私自身も、店長として勤務していた時に、大濠ショップでお子さまが喜ぶ姿やお客さまが笑顔になる様子を見てきたので、この光景がずっと残っていくよう、大切に守っていきたいと思っています。

「このカルーセルはお客さまに長年愛されている。文化遺産としても貴重なので、絶対にお店に残すべきだ」という、社長の言葉も大きかったと思います。

「遺産」 。まさしくその通りですね!

もうすぐ創業50年になる大濠ショップ。50周年を迎えた店舗は本部から表彰してもらえるようで、大濠ショップにとっては2025年が大きな節目となりそうだ。

学生時代のなつかしい思い出とともに、あるいは家族や大切な人と一緒に、ミスタードーナツ大濠ショップへメリーゴーランドを見に来てください!

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