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「福岡ビル」(2019年閉館)、「天神コア」(2020年閉館)、「天神ビブレ」(2020年閉館)があった場所にオープンした「ワンビル」。天神地区の歴史を作ってきたとも言えるこの広大な土地には、知られざるひみつがたくさん隠れている。
今回はワンビルの新旧トリビアをピックアップ。【懐かしのレガシー】編と【未来に伝えたいレガシー】編の2本立てでご紹介。ワンビルに行って探してみよう!
ワンビル開業前にこの地で営業し、2020年3月末に閉館した商業施設「天神コア」。ワンビル2階の南西側には、「天神コア」のロゴをモチーフにした照明が飾られ、床にも「天神コア」を彷彿(ほうふつ)とさせる柄を採用。「天神コア」のこのロゴは見覚えがある方も多いのでは??
2019年に閉館した「福岡ビル」で営業していた「NIC」は総合インテリアショップ。西鉄と岩田屋の合同出資によって設立され、1966年から1999年までの約30年間営業を続けていた。
カフェサロンやギャラリー、デザインセンターも併設し、国内外の最先端のデザインや伝統工芸を扱っていたNIC。そのシンボルとなっていたのが、パッケージに採用されていたシマウマの柄だ。
その当時、NICに勤務していたのがアーティスト・造形作家の鹿児島睦さん。西鉄はワンビル開業にあたり鹿児島さんに館内壁面アートの制作を依頼したのだった。
そしてついに、鹿児島さんのデザインによってNICのシマウマが帰ってきた! 地下2階から地上4階までのエスカレーター横の壁面で、鹿児島さんが描いた海や陸上の生き物たちが楽しげに出迎える。
シマウマがどこにいるか、ぜひ探してみてください!
赤れんがが採用された地下1~2階の商業・飲食フロアの床と外壁に注目を。この赤れんが、実は2020年に閉館した「天神ビブレ」でも採用されていた。
深みのある赤色に紫を混ぜたようなこの色は「想紅(おもいくれない)」と呼ばれる色で、情熱や大地、安定、伝統、信頼などを表している。
「福ビル」と言えば、屋上にあった芝生のビアガーデンを思い出す人もきっとたくさんいるはず。また、さらにその昔、ビル竣工当時は遊覧目的のヘリポートがあったというから驚きだ。
そうした建物の記憶を、ワンビルの最上階19階にある「ONE FUKUOKA HOTEL」のカフェ&サンセットバー「THE ROOF」のルーフトップテラスが継承。天神さま(菅原道真公)が自身の姿を映したと言われる「水鏡」をモチーフにした「大水盤」が設置されている。
日中は透明な水面が、夕方には西へ沈む夕日で茜色に。その美しい光景を眺めながら、天神のまちを感じてみては。
1962年、福岡ビル内に「ロイヤル福岡ビル店」がオープン。その後、名称および業態を変更しながら2000年まで営業を続けたが、2006年に近くの博多大丸東館5階に移転することになった。
その「コンチネンタルカフェロイヤル」は2024年2月に閉店。そして今回、ワンビル開業とともに、「THE CONINENTAL ROYAL & Goh」として新たな歴史を歩みはじめた。
ここで提供されるのは、世界的シェフである福山剛さんとのタッグで生まれた新しいロイヤルの味。ロイヤルが守り続けてきた伝統的な味を福山さんが監修し、進化したメニューの数々が楽しめる。
創業時の社名ロゴが店舗アイコンに。また、創業時をオマージュした店内装飾のほか、コース前菜には、大丸福岡天神店で営業していた際の食器で料理を提供する。かつて通ったファンはきっとなつかしさを感じるはず!
「天神コア」の前身であり、1949年に開業した「西鉄商店街」。1954年に出店した「如水庵」(当時は「五十二萬石」)は、博多地区から満を持して天神地区へ。そしておよそ70年ぶりに、ワンビル地下2階に戻ってきた。
また、ワンビル開業にあわせて、「五十二萬石」時代も販売していたお菓子「殿様最中」の復刻版を限定販売(2025年4月24日~なくなり次第終了※)。福岡を代表する老舗「如水庵」の歴史は「殿様最中」にあった!
※ご好評につき販売終了
福ビル開業時から地下にあった「喫茶 門(もん)」は、天神で働く人々を支えてきた思い出深い名店のひとつ。西鉄社員に「天神の名物メニューで復活して欲しい味」について尋ねたところ、「喫茶 門」の「ミックスジュース」にかなり多くの票が集まったという。
「ミックスジュース」復活に向けて、具体的に動き出したワンビルチーム。ワンビル5階「天神福食堂」の運営にあたる「リングラッツェ」の代表・田村浩治さん(リングラッツェ代表)への依頼のもと、「ミックスジュース」復刻に向けて走り出したのだった。
天神福食堂のコンセプトから大きくはずれることなく、当時の味と価格とのバランスにも配慮しなければならないうえに、レシピもない。「喫茶 門」の水口邦弘さんは記憶を頼りに、田村さんと協力しながら何度も試作を重ねた。
そして試飲を重ねて2時間後、ついに当時の味に近いミックスジュースが完成!
その味は「天神福食堂」でぜひ。
19階の大水盤をはじめ、ワンビル館内ではさまざまな場所で「天神さま」を感じることができる。
天神交差点のランドマークとなる北西側広場では、ニコライ・バーグマン氏による壁面緑化アート「Future Bloom」が登場。約12メートル×約8メートルの大規模な作品で、福岡・天神にゆかりのある大小さまざまな梅の花が、ステンレスでモダンに表現されている。
また、世界で活躍する現代美術家・舘鼻則孝さんによるアート約80点がワンビルに登場。「稲妻」をモチーフとした絵画作品シリーズを中心に、全作を新作として制作した。
古くから伝統絵画や神社仏閣でも見ることができる「雷雲」をモチーフとした絵画作品で、魔除けを隠喩するもの。形が定まっていない雷雲のシルエットを描いたマグカップは購入することもできる。
ワンビル南西側広場にある木に近づいてみると、その異変に気付く。実はこの木、本物ではなくアート作品。ピクセル型の葉で構成された木を模したインスタレーションなのだ。
作品名は「Pixel Tree」。「現実の自然界」と「身の回りに存在するバーチャル」を組み合わせた作品で知られる、レアンドロ・エルリッヒさんが制作した。
ちなみに、葉の部分はステンレスとアルミ製。幹はアルミの鋳物でリアルに表現されている。キューブの数は合計2,000個、総重量はなんと約2.7トン!
ワンビルを訪れた際は、話題の木と一緒にぜひ写真を撮ってみてください!
ワンビルの館内BGMを手掛けるのは、音楽と映像の制作会社「音と映像」の井上啓輔さんと、音楽家糸山晃司さん。糸山さんが制作した環境音楽は「天神」をテーマに、水鏡天満宮、雑踏の中や警固公園、高架下など、天神のあらゆる場所でフィールドレコーディングを実施した。なかにはワンビル建設中の金属音や天神上空を飛ぶ飛行機の音もあるとか!
19階のレストランフロアでは、「音の仕立て屋」をコンセプトに活動する「SOUND COUTURE」とコラボし、篠栗九大の森、大濠公園の池、奈多海岸など、「福岡の自然が奏でる“本物のサウンド“」をフィールドレコーディング。さらに、西鉄電車のレールから抽出した涼やかで澄んだ響きも音源として使用し、アーバンな立地にありながら自然を感じる、アーバンオアシスを演出する100%オリジナルのサウンドデザインを実現した。
また、オフィスエントランスやコワーキングスペース、カフェなどがある6階「スカイロビー」では、ワンビルの魅力を五感で楽しんで。
7階に入居する「CIC Fukuoka」は、スタートアップ向けのオフィススペースを中心としたイノベーションキャンパスだ。国内では東京に次ぎ2拠点目。アジアにも近い福岡において、多様な出会いを創出する場となりそうだ。
ユニークなのが、16室ある会議室の名前。「鱗」や「雪」など雲をモチーフとした名前が付けられている。
また、アーティストが描き下ろしたアート作品もお目見え。他にはないクリエイティブな空間で、たくさんの刺激をもらえそう!
5階の「天神福食堂」では、開業を記念してオリジナルビール「ONE craft(ワンクラフト)」が提供される。西鉄のワンビル開発チームが天神で働くワーカーたちに独自でアンケートを実施。集まった意見やアイデアをもとに、数々のコンペティションで入賞の実績を持つ「あおぞらブルワリー」(福岡市博多区店屋町)の醸造責任者・渡邊雄介さんがワンビルのオリジナルビールを開発した。
この「ONE craft(ワンクラフト)」は、2025年2月に実施された日本最大のクラフトビアコンテスト「ジャパン・グレートビア・アワーズ(略:JGBA)2025」のセッション・インディア・ペールエール部門では栄えある金賞を受賞。仕事終わりの乾杯は、ぜひ「ワンクラフト」で。
※再販は6月上旬から期間限定でなくなり次第終了。飲みたい人はお早めに!
地下2階、因幡町通り地下通路の東側外壁面には「天神歴史年表」が設置されている。年表を監修したのは、近現代史研究家の益田啓一郎さん。福岡のまちの歴史の達人だ。年表を読めば、今まで知らなかった新旧トリビアに出会えるかも!
地下3階の防災備蓄倉庫には、災害時の備えとして一時帰宅困難者の受け入れに約1,110㎡のスペースを確保し、555人分の食料や水、防災用品が備蓄されている。アレルギー対応やハラール認証食材も完備。
また、停電時でも72時間稼働可能なバックアップ電源を確保。防災トイレも設置し、いざという場合にも対応できるよう万全の備えを期している。
まだまだたくさんある旧福ビル&ワンビルの知られざるひみつ。
ぜひ現地で確かめてみてください!
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