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「あおぞらブルワリー」と共同開発!
福岡・ワンビルで限定販売される
オリジナルクラフトビール開発秘話

「あおぞらブルワリー」と共同開発! 福岡・ワンビルで限定販売される オリジナルクラフトビール開発秘話

2025年4月24日に開業予定の「ONE FUKUOKA BLDG.(以下、ワンビル)」。開業記念にあわせて、入居予定の企業のワーカーたちや地元のブルワリーと共同でオリジナルクラフトビールを制作。開発ストーリーを取材した。

目次

開業記念オリジナルクラフトビールが誕生

2025年4月24日に開業予定の「ワンビル」。開業記念に作られるオリジナルクラフトビールは、5階に開設する「天神福食堂」をはじめ、入居する一部の飲食テナントでも提供する予定となっている。

その名は「ONE craft(ワンクラフト)」!

アルコール度数が控えめでライトボディな「SESSION IPA(セッションアイピーエー)」というビアスタイル。軽やかな飲み口や複雑な香り、キレの良い味わいが特徴で、飲むと一気に気分がリフレッシュできる。

西鉄×ブルワリー×ワーカーの共創

オリジナルクラフトビールの開発に際して、西鉄はワンビルに入居する企業で働く人々約300名にアンケートを実施。その後、試飲会も開催して最終的な味を決めた。

ワンビルで働くワーカーたちとの共創から生まれた「ワンクラフト」。醸造を手掛けた「あおぞらブルワリー」(福岡市博多区店屋町)の醸造責任者・渡邊雄介さんと西鉄・天神開発本部福ビル街区開発部の徳久愛子さんに、開発までのストーリーをインタビューした。

あおぞらブルワリー・渡邊雄介さん(左)と西鉄・徳久愛子さん(右)。あおぞらブルワリーにて撮影

そもそも、なぜビールを作ろうと?

徳久さん
徳久さん

ワンビルのコンセプトである「創造交差点」に合うように、人・モノ・コトの交流を促進してくれる仕掛けをつくりたいと最初に考えていました。

どんなことをするか検討していくうちに、開業準備に携わるメンバーの中から「オリジナルビール」のアイデアが。「食」は福岡の魅力的なコンテンツのひとつですし、みんなで「乾杯!」をしてひとつになれるものがあればいいな、と話が進んでいきました。

西鉄は、入居が決まっている企業で働く20代から60代のワーカー男女300名を対象にアンケートを実施した。

お酒を飲む頻度やクラフトビールは好きかどうか、「天神」を味覚に当てはめるとどんなイメージか、「天神」や「創造交差点」のイメージに合うビールの色など、ビールづくりの材料となる意見を収集。これらの情報をもとに「オリジナルビール」の完成形を具体化していったのだ。

徳久さん
徳久さん

新ビル開業となると、当事者(ワンビルの場合は西鉄)ばかりが注目されて“主語”になりがちだと思うのですが、本当はワンビルを利用してくださるみなさんが主役ですよね。なので、入居が決まっている企業さまにご協力いただき、働く方々と共創するかたちを取りました。

西鉄が共同開発を依頼したのは、福岡市博多区店屋町にある「あおぞらブルワリー」。数々のコンペティションで入賞の実績を持つ醸造責任者・渡邊雄介さんが味づくりをリードすることになった。

あおぞらブルワリー店内。カウンター席とテーブル席のほか、店内に醸造所もある
あおぞらブルワリーのオリジナル缶。ラベルのデザインも豊富で眺めるのも楽しい!渡邊さん自身がデザインを手掛けることもあるとか
渡邊さんがコンペティションで入賞した際のメダル。国際コンペでも数々の快挙を達成

なぜ「あおぞらブルワリー」に依頼を?

徳久さん
徳久さん

当初は複数の企業さまにご相談していたのですが、渡邊さんにお会いしてお話しを聞いて、「ぜひお願いしたい!」と思ったんです。

どんなお話を?

徳久さん
徳久さん

お店のことや福岡のクラフトビール業界のこと、いろんな対話を通して、「地元を盛り上げたい」という共通の想いがあることがわかりました。私たち西鉄も、交通や商業、暮らしなどさまざまな方面から地域活性化に貢献したいと考えているので、ぜひ一緒にお仕事したいなって。

渡邊さん
渡邊さん

最初はびっくりしましたよ。規模の小さな飲食店さまや企業さまとのコラボレーションは経験があったのですが、西鉄さんほどの大手との協業は初めてで(笑)。その分プレッシャーも感じましたが、ワーカーのみなさんとの共創という点もおもしろいなと感じました。

あおぞらブルワリーとの協業が決まったのが2024年6月。その後、実施されたアンケートの結果をもとに、どんなオリジナルビールを作るのか、より具体的な議論を進めていった。

アンケート結果はいかがでしたか?

徳久さん
徳久さん

渡邊さん、結果を見ると、けっこう意見が分かれていましたよね。

渡邊さん
渡邊さん

そうですね。例えば「『天神』を味覚に当てはめるとどういうイメージですか」(複数回答可)という質問に対しては「濃厚」「キレのある」「香ばしい」「フルーティ」「さわやか」「パンチがある」「甘酸っぱい」「芳醇」など、実に多様なイメージがあることがわかりました。

徳久さん
徳久さん

結局、画一的な答えにまとまらなかったこと自体が「天神らしさ」なのかも、とも(笑)。その多様性や複雑性、カオス感も都市の魅力だと捉えることもできますよね。その結果をもとに設定したコンセプトが「街も人も混ざり合って進化する『はじまりのクラフト』」。このコンセプトのみ渡邊さんにお伝えして味づくりのイメージを膨らませる作業を進めていただきました。

多様な意見をひとつのビールにまとめるのは大変だったのでは?

渡邊さん
渡邊さん

いろいろ考えましたよ(笑)。味わいや香り、色などビールにはさまざまな要素があるので、どこでそのエッセンスを取るかという選択でした。アンケートで出てきたイメージをもとに大まかなイメージをつくりあげ、最終的には10月に実施した試飲会で方向を固めていきました。

入居企業のワーカーを招いて開催された試飲会

2024年10月30日、西鉄本社をはじめ、ワンビルに入居が決まっている企業のワーカーたちを招いた試飲会が「あおぞらブルワリー」にて開催された。

種類が異なるあおぞらブルワリーのオリジナルビール
飲み比べた感想をアンケートに記入

参加者は5種類のクラフトビールを飲み比べ、アンケートに回答。「はじまりのクラフト」に見合う味や香りの印象やネーミング案に対する意見などを記入した。

試飲会でビールを注ぐ渡邊さん
渡邊さん
渡邊さん

試飲会ではみなさんがカジュアルに楽しんでいる様子が印象的でしたね。仕事の試飲会というより、リアルな飲み会のような空気で。

徳久さん
徳久さん

想像していたよりも盛り上がったと私たちも感じました。同じビールでも感じ方は人それぞれだし、いろんな表現がある。ビールを囲んでワイワイと盛り上がる様子は、まさに私たちが望んでいたワンビル開業後の光景でした。

株式会社九電工のみなさん

いち早く入居が決まった九電工のみなさんは「アンケートや試飲会はおもしろい」「現在の自社ビルから天神中心部へ移るのは大きな変化。新しい環境と出会いがとても楽しみ」「人脈やビジネスチャンスが広がりそう」と期待の声を寄せてくれた。

底地に特化した不動産投資事業を展開する地主株式会社のみなさん。「どんなオリジナルビールになるのかワクワクします」「天神の中心部という刺激的な環境。開業が楽しみ!」とコメントを寄せてくれた。
西鉄の共創プロジェクトメンバー
西鉄の共創プロジェクトメンバー
徳久さん
徳久さん

ビールはみんなの真ん中で、人と人をつなぐコミュニケーションツールになる。そのことが確認でき、また「開業後もきっと盛り上がるはず!」と確信できた試飲会となりました。

「ワンクラフト」に込められた期待と想い

渡邊さん
渡邊さん

試飲会後、さらにいろんな意見が出ましたよね。

徳久さん
徳久さん

そうそう。唯一まとまっていたのはネーミングです。「ONE craft」「TENJIN BREW」「テンジン・ホップ-Tenjin Hop-」の3候補がありましたが、圧倒的に「ONE craft」が支持されていました。

試飲会で配られたアンケート
徳久さん
徳久さん

一方、味わいや香りについては意見がバラバラで……。これを渡邊さんはどうやってまとめていくんだろう、と思いましたよ(笑)。でも、心配無用でした。およそ1週間後に渡邊さんから届いたメモを見て「まさにこれだよね!」と。

【渡邊さんから届いたメモ】
NISHITETSU ONE CRAFT
スタイル:SESSION IPA
アルコール分:4.5%
IBU(苦味値):35
コメント:
SESSION IPA(セッションアイピーエー)はアルコール度数が低めのライトボディが特徴のビアスタイル。
産地やキャラクターの異なる5種類のホップを使用し、それぞれが持つ柑橘の様な香り、フローラル、ハーバルな香りなど
様々なアロマが複雑に入り混じるSESSION IPAです。
色は琥珀色で、キレがありながらもモルトの風味、香ばしさを感じることができます。
低アルコールで軽やかな味わいの『ONE CRAFT』は
仕事終わりに一息つき、誰かと会話をしながら飲むのに丁度いい一杯。
アンケートや試飲会では味わいに対しては「キレがある」という意見が多く
また「複雑さ」というキーワードも印象的でした。
これらのことから味わいには軽やかさを、香りには複雑さを持たせることで
創造交差点を表現した『ONE CRAFT』を作り上げました。
徳久さん
徳久さん

コンセプトにもしっかり合っていて、かつみなさんの意見も反映されている。「渡邊さん、すごすぎる!」と部署内でメモを回覧すると、全員が「これこれ!」と納得して。まだ飲んでもいないのに、もう完成品を飲んだ気分になっちゃいました。

渡邊さん
渡邊さん

うれしいですね。アンケートや試飲会の結果から、味わいには軽やかさを、香りには複雑さを持たせることで「創造交差点」を表現できたらと考えました。

悩んだ点はありましたか?

渡邊さん
渡邊さん

色合いはちょっと迷いましたね。最初はもう少し明るめの色だったのですが、白を基調にした缶のデザインやアンケート、試飲会の結果を見て最終的には薄いオレンジ色に調整しました。

徳久さん
徳久さん

缶のデザインやラベルの色にもいろんな想いが詰まっています。四角い形はワンビルを模っていて、その中のカラーは「多様性」や「交差」を表しています。「ONE craft」の「craft」の文字が四角のふちにかかっているのは、「枠にとらわれない」ことのメッセージ。明るい印象を与える白は「余白」や「未来への期待感」に結びつきます。

「ワンクラフト」はいつどこで飲める?

試飲会後に製造に入った「ワンクラフト」は、2024年12月に一部が完成。2025年1月17日にはワンビル開業に先駆けて「あおぞらブルワリー」で飲めるようになる(数量限定販売)。

渡邊さん
渡邊さん

西鉄のみなさんとはフラットな関係で意見交換しながら進めることができ、楽しいプロジェクトになりました。さまざまな部署があるのでいろんな方がいらっしゃるし、若手のみなさんはエネルギーがありますよね。自身にとっても貴重な経験となり、勉強になりました。

徳久さん
徳久さん

渡邊さんのおかげですてきなオリジナルビールが完成しました。ワンクラフトの解禁となる1月17日とワンビル開業日が待ちきれません。

どんな時に飲むのがおすすめですか?

徳久さん
徳久さん

「はじまりのクラフト」にちなんで、何かをはじめる時やスイッチを入れたい時、「1番」を目指して気合いを入れる時などのお供にしてもらえるとうれしいですね。

渡邊さん
渡邊さん

仕事終わりの一杯や誰かと会話をしながらなど、いろんなシーンが想定できますが、いつでもどんな時でもおすすめです。

ワンビルのオリジナルクラフトビール「ONE craft(ワンクラフト)」は、2025年1月17日に「あおぞらブルワリー」にて解禁!売り切れる前に、ぜひ飲みに行ってみてください。ワンビル開業の2025年4月25日以降は、5階の「天神福食堂」など複数の飲食店で味わうことができますが、売り切れ次第終了なのでお早めに!

「ワンクラフト」醸造中のタンク横に立つ渡邊さん
  • 渡邊 雄介 さん
    渡邊 雄介 さん

    あおぞらブルワリー 醸造責任者

    建設業から転職してクラフトビール業界へ。2022年、あおぞらブルワリー開業3カ月で国際コンペ金賞を受賞。

  • 徳久 愛子 さん
    徳久 愛子 さん

    西日本鉄道株式会社
    天神開発本部 福ビル街区開発部 課長

    1999年、西日本鉄道株式会社へ入社。商業施設の開発や運営、広報等に従事。2022年より現部署に着任し、「天神福食堂」の立ち上げを担当。

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