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イラストレーターwaccaさんが描く
西鉄のCMイラストを徹底解剖!
シーンに描かれたストーリーとは

イラストレーターwaccaさんが描く 西鉄のCMイラストを徹底解剖! シーンに描かれたストーリーとは

エモーショナルでどこかノスタルジーを感じるアニメーションが印象的な2023年度の西鉄のCM。福岡のまちを舞台にしたこの動画のイラストは、若い世代からも支持を集めるイラストレーター・waccaさんが担当。福岡になじみのある人なら、それぞれのシーンの場所での思い出がきっとよみがえってくるはずだ。それぞれのシーンに込められた思いとは?

目次

2023年度の西鉄のテレビCM

西鉄の今年のCMでは、いま若い世代を中心に人気のイラストレーター・waccaさんを起用。福岡のまちの日々の光景を、エモーショナルにどこかノスタルジックな雰囲気で表現していて、全9つのシーンを描き出している。

【全9シーン】
 「大画面」篇/「電車」篇/「天神交差点」篇/「空港」篇/「エレベーター」篇/「高宮駅」篇/「ソラリアプラザ」篇/「ハレノガーデン」篇/「太宰府駅」篇

親しみある、福岡のふとした日常を切り取る

CMで描かれる風景には、福岡で暮らす人なら一目でわかる場所が選ばれている。天神にある商業施設「ソラリアステージ」の「大画面前」(正式には「ソラリアステージ広場ビジョン」)は、定番の待ち合わせ場所だ。福岡に住む人なら、一度は「大画面前」で待ち合わせをしたことがあるのでは?

学生時代に西鉄電車で通学していた人は、「電車」篇を観てなつかしい青春時代を思い出したかもしれない。

ナレーションやテロップといった説明的なアプローチではなく、映像や音楽を通して感覚的に西鉄が伝えたい思いを表現するには、waccaさんのイラストをベースにしたアニメーションCMが適していると考えたのだった。

企画の段階では、他にもたくさんの場所の候補が挙がっていた。西鉄福岡(天神)駅のホームや改札口、バス停、タクシーの中、アイランドシティ、マリンワールドなど、いずれの場合も福岡に住む人にとってなじみのある場所でありながら、西鉄の事業に関わる場所ばかりだ。

描かれている登場人物は、CMのコアターゲットとして設定したZ世代を含む、主に10代から20代の若い男女とした。いま福岡にいる若い世代に「共感」してもらいたいと考えたからだ。

一方、30代以上の人でも、福岡を知る人ならきっと心に響くシーンに出会えるはず。勉強や部活で忙しかった学生時代や、友人と天神で集まって過ごした楽しい時間、忘れられない甘酸っぱい思い出……etc. 描いている人物は若い世代でも、全世代に共感してもらえるはずだ。

福岡に縁のある人気イラストレーター・waccaさんを起用

2023年度のCM制作にあたり、まずは「Z世代を中心とした若い世代に響く広告」という目的が出発点として設定された。WebやSNSでの「映え」もポイントで、テレビCMではめずらしいトーンで目を引きたいという狙いもあった。

発売中の作品集『泳ぐ夢を見た。』

waccaさんの作画の特徴は、「日本的な要素×現代の景色」が絶妙に混ざり合うところだ。なつかしさ、現代っぽさ、未来感。そのすべてがあいまいに溶けだし、独特の世界観をつくり出している。

最近発売されたwaccaさんの作品集の一文にも、

「新しいような懐かしいような、日常のような非日常のような。そんな境界線のないグラデーションの世界」

という表現がある。

この世界観が、「変わり続ける未来を、ともに歩いていく。」という西鉄のメッセージにぴったりだったのだ。「過去」「現在」「未来」は分断されたものではなく、ひとつになってつながっている。未来へと進んでいく変化の時代の中でも、寄り添い歩んでいくことを伝えたい西鉄の思いと、つながりを感じたのだ。

また、実はwaccaさんは福岡にゆかりのある方だった。それも、福岡に根付く西鉄のCM制作をお願いした理由の一つでもあった。

技術力で福岡のリアルを追求

イラストの見本になる素材として、選ばれたスポットの写真をwaccaさんに提供した制作チーム。実は通常のCM制作時と比べて、かなり細かいアングルまで決めたうえで撮影に臨んだ。

シチュエーションごとにクリエイティブディレクターとムービーカメラマン、監督であらかじめアングルを細かく協議。実写のCMを撮影するのと変わらない準備作業を経て、waccaさんにイラストを描いていただくための参考資料の制作にあたったのだった。

アングル確認用の写真

さらに、イラストを作画する前の段階から「エディター」と呼ばれる動画編集スタッフにも参加してもらい、アニメーションで動かしたい部分に応じてレイヤーの作り方や分け方などを細かくオーダーした。

こうして、福岡の「人」と「まち」のリアルを徹底的に追求した制作チーム。第一弾のラフ画をwaccaさんから受け取った際は、みんなで「おおーっ!」「これこれ、この景色だ!」と歓声が!

waccaさんから受け取ったラフ画

写真・ラフ画・完成カットと並べてみると、現実の風景がイラストに落とし込まれていく過程が分かって、おもしろい!

楽曲のイントロ部分のみを採用

また、CMの世界観をつくりあげている要素はイラストだけではない。

9シーンのCMでは、すべて異なる曲を採用。しかも、曲のイントロのみを使っている。異なる楽曲にしたのは、シーンによって登場する人物やストーリーが違うから。まちには十人十色の思い出があり、未来への想いがあるはずだ——。

それぞれのシーンは、「未来への序章」である。そんな演出面のねらいから、使用するのは楽曲のサビ部分ではなく、あえてイントロ部分を選ぶことに決めた。

「変わり続ける未来を、ともに歩いていく」

今回の制作で何より伝えたかったのは、CMにも出てくる「変わり続ける未来を、ともに歩んでいく。」というメッセージ。「未来」というのは、「過去」や「現在」からひと続きのグラデーションの先にあるということだ。

「未来」は特定の誰かだけがつくる特別なものではなく、まちに暮らすみんなといっしょに作り上げていくもの——。西鉄はそこに寄り添っていく役割なのだと考えている。

福岡のまちは、今日も少しずつ姿を変えながら進化を続けている。11月に公開された「ハレノガーデン」篇と「太宰府駅」篇の2本を含め、動画はすべてYouTubeの公式チャンネルで公開中。動画を通して、福岡の未来に想いを馳せてもらいたい。

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