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CIC Fukuokaって、どんな場所?
偶発的な出会いと創造が生まれる
イノベーションキャンパスの全貌公開!

CIC Fukuokaって、どんな場所? 偶発的な出会いと創造が生まれる イノベーションキャンパスの全貌公開!

福岡・天神の「ONE FUKUOKA BLDG.(ワンビル)」の7階にある「CIC Fukuoka」は、次世代の挑戦を応援するスタートアップ支援拠点だ。起業家やクリエイター、企業、行政、大学など、さまざまな「出会い」が生まれ、新しいビジネスが動き出している。

アメリカ・ボストンに本社を置き、世界トップクラスのイノベーションキャンパスである「CIC」が、東京の次に選んだ福岡の拠点。その入居者が「CIC Fukuoka」を選んだ理由は何だったのか?オフィスツアーを交えながら紹介する。

目次

「CIC Fukuoka」ってどんな場所?

「ワンビル」7階にオープンした「CIC Fukuoka」は、アメリカ・ボストンに本社を構えるイノベーションキャンパスとして知られている。2020年にオープンした「CIC Tokyo」に続き、アジアでは2拠点目。CICとしては日本初の地方拠点となり、地方発のイノベーションを力強く後押しすることを掲げている。

CIC Fukuokaに集まるメンバーたち

今回は「CIC Fukuoka」の運営を担当する荒木元太朗さんに、オフィススペースを案内してもらった。

荒木さん
荒木さん

自社だけで使える「プライベートオフィス」は143室あり、広さによって1~12名用まで使用できます。また、共用の「コワーキングスペース」には40台のデスクがあり、快適でオープンなワーク環境が用意されています。

今回取材したNUNAIのプライベートオフィス
コワーキングスペース。壁面のアートはイラストレーター・仁太郎さんの作品。ゆたかな色彩と躍動感のある構図が、ワーカーたちの創造性やモチベーションを刺激する

かっこいい!

荒木さん
荒木さん

壁面のイラストは、福岡でグラフィックデザイナーとして活躍した経験を持つ仁太郎さんの描き下ろしです。福岡ゆかりのアーティストによる作品を、館内の随所に採り入れているのも「CIC Fukuoka」の大きな特色なんですよ。

廊下にあるMarumiyan(マルミヤン)さんの作品「CIC FUKUOKA EMAKIMONO
」。過去から未来へと続く流れを絵巻物形式で表現。よく見ると「福岡タワー」など福岡らしいモチーフが!
荒木さん
荒木さん

会議室は16室あり、館内に点在しています。各部屋の名前は「雲」の名称がモチーフです。「YUKI(雪)」や「UROKO(鱗)」などの漢字が扉にデザインされているんですよ。

会議室「UROKO(鱗)」

かわいいですね。入居者は誰でも使えるんですか?

荒木さん
荒木さん

利用する際は、webで予約します。部屋ごとに収容人数やテーブルの形状などが異なるので、用途や目的に合わせて選べるようになっています。このほか、オンライン会議用のフォンブースも完備しています。

会議室「KASA(傘)」
荒木さん
荒木さん

廊下を歩いていると分かると思うんですけど、通路がくねくねと曲がっているでしょ?「Roji Corner (路地コーナー)」と呼ばれていて、偶発的な出会いを呼ぶために、あえてこのような造りになっているんです。角にあるちょっとしたソファスペースは、軽めのミーティングやブレストなど、自由に使えます。

すれ違う時にちょっとした会話が生まれる

日常から出会いが生まれる仕組み。おもしろいですね。

荒木さん
荒木さん

フロアの中で、最もオープンなスペースと言えば、CIC Fukuokaの入口付近にあるキッチンスペースでしょうね。打ち合わせをする人もいれば、黙々とパソコンに向かう人も。もちろん、ドリンクを飲みながら休憩したり読書したりするにも快適ですよ。

キッチンスペース
入居者用のフリードリンクあり。オリジナルのマグカップは福岡県の伝統工芸である小石原焼
荒木さん
荒木さん

みんなで楽しめる、ちょっとユニークなスペースもあります。

卓球台。後ろにあるアートは、白川千佳さんによる作品「ゆるやかに遊ぶ」。福岡市中央区にある大濠公園がモチーフ

卓球台!

荒木さん
荒木さん

仕事の合間にここでリフレッシュできます。ゲームスペースもあって、ここでは会社対抗戦や個人戦が開催されることもありますよ。ゲームを通じて知り合う入居者さんもたくさんいるみたいで、CICらしいですよね。

荒木さん
荒木さん

館内にはジムもあり、入居者は自由に利用できます。仕事の前後に身体を動かす方もいるし、お昼休みにリフレッシュとして運動したい方もいらっしゃいます。シャワールームや仮眠室、授乳室なども自由に利用できるので、多くの利用者さんに活用いただいています。

ジム

仕事と健康を両立できる。まさに理想の環境!「CIC Fukuoka」はイノベーションを促す空間を創り出し、働きやすい最良の環境を提供しているのだ。

マッサージルーム
仮眠室
授乳室

「CIC Fukuoka」を選んだ理由

充実したワークスペースが用意されている「CIC Fukuoka」。現在は約80社/団体のワーカーたちが入居し、日々新たな出会いが生まれている。

Tensor Energyの代表取締役・堀ナナさんと、NUNAI株式会社のJulian Munroさん、Carl de Beerさん、通訳を務めるスタートアップパートナー株式会社の代表取締役・嶋田康亮さんに話を聞いた。

(左から)西鉄の荒木元太朗さん、スタートアップパートナー株式会社の代表取締役・嶋田康亮さん、NUNAI株式会社のJulian Munroさん、Carl de Beerさん、Tensor Energyの代表取締役・堀ナナさん

「CIC Fukuoka」に入居を決めた理由は?

堀さん
堀さん

私たちTensor Energyは、再生可能エネルギー発電所を管理するためのプラットフォームを提供しています。福岡に拠点を設けたのは2022年12月でした。それまではコロナ禍で移動制限があり、東京のバーチャルオフィスに登記をしていました。私はその間も福岡に住んでいたのですが、ようやく移動できるようになり、せっかくなら福岡でオフィスを探そうと共同創業者と相談し、まずは福岡市大名にあるスタートアップ支援施設「FGN(Fukuoka Growth Next)」に入居しました。

堀さん
堀さん

数カ月後に「CICが福岡にできるらしい」と耳にしました。「CIC Tokyo」には何度かお邪魔したことがあり、特に環境・エネルギー分野の大きなコミュニティに参加させてもらっていました。弊社の事業領域がまさにその分野なので、お世話になっていたんです。「福岡にCICができる頃には入居できるように会社を成長させたいね」なんて話していて、そうするうちに自社製品や技術が形になってきたので、良いタイミングだと思って入居を決めました。

Julianさん
Julianさん

私たちは南アフリカ出身で、日本の病院や教育機関などで活用できるAIを活用したバーチャルコンパニオンサービス(CAAS)を開発、提供する会社として起業しました。日本語が母国語ではなく、言語の壁があるので、英語で話せる環境があるCIC Fukuokaはとてもウェルカムに感じました。また、ここなら他のスタートアップ企業や投資家、技術者とのつながりを持てるという点も大きな魅力でした。

東京や大阪ではなく、なぜ福岡に?

Carlさん
Carlさん

ロンドンで長く仕事をしていたのですが、イギリスの会社と連携し、日本法人を設立して、日本での展開を図ることになりました。東京や大阪は人口が多く、似たような企業も多いことを考慮して福岡へ。より大きなインパクトを出せると考えたからです。福岡の環境や雰囲気が好きだというのも大きな理由でした。以前は糸島に住んでいたのですが、今はシティライフを楽しめる福岡市に住んでいます。

「CIC Fukuoka」はこんなに働きやすい

初めてオフィスを見た時の印象は?

堀さん
堀さん

「すごい」の一言でした。まずは建物がとてもモダンで先進的で、共有スペースも素敵で。「ここでいろんな人と出会えたら素晴らしいだろうな」と期待が高まりました。

荒木さん
荒木さん

東京のCICと比べていかがですか?

堀さん
堀さん

東京と福岡は基本的には似た造りなのですが、東京のほうがより広く、利用者も多いですね。ビル全体を見ても多くの会社が入居していて、密度が高い感じがします。一方、福岡は空間が贅沢に使われていて開放感がありますね。キッチンもゆったりと広く感じ、贅沢だな、と。

荒木さん
荒木さん

そうなんですよ。「CIC Fukuoka」は、設計段階から「開放感」を意識して作られています。たとえば本来は壁で仕切られる予定だった部分を腰壁にして空間を広く見せ、一般の方からも内部の様子が見えるように工夫されていたり。そのため、通りすがりの人が気軽に立ち寄れる雰囲気があります。「CIC Tokyo」はビルのセキュリティ上、関係者でなければ様子を外から除くことはできませんが、「CIC Fukuoka」は地域に開かれた設計で、オフィスとまちが共存しているんです。

日常的なオフィスの使い方は?

堀さん
堀さん

朝は必ず、キッチンで水を汲んでから仕事を始めます。だいたい入居者の誰かがいるので、挨拶や雑談をしてから1日がスタートですね。その後オフィススペースへ。午前中はリモートのメンバーとオンライン会議をすることが多く、会議室を借りて現地メンバーとリモートメンバーが一緒にディスカッションしています。

荒木さん
荒木さん

会議室はどう使い分けていますか?

堀さん
堀さん

会議の内容によって選んでいます。しっかり議論したい時は四角いテーブルの部屋を、ブレストやチームミーティングの時は丸いテーブルの部屋を使います。窓の有無や開放感も大事ですね。秘匿性の高い打ち合わせでは外から見えにくい角部屋を選び、そうでない時は明るく開放的な部屋で。用途に合わせて柔軟に選べるのですごく便利です。

執務中の堀さん
Carlさん
Carlさん

私たちも「CIC Fukuoka」をすごく気に入っています。施設は新しいし、必要なものがすべて整っている。天神という中心部にあるので、自宅から通いやすいのもポイントです。ぼくは特にキッチンスペースが気に入っていますね。コーヒーがおいしくて、よく利用しています。

Julianさん
Julianさん

ファイル送信のためにオフィスに来ることもあり、インターネット環境が整っているので作業がはかどります。仕事柄、動画や画像など大容量のデータをやりとりするので、通信速度はすごく重要なんです。海外ともスムーズにやりとりできるので満足しています。

執務中のJulianさん
Carlさん
荒木さん
荒木さん

イベントには参加したことはありますか?

Julianさん
Julianさん

毎週木曜日に開催されているVenture Café Fukuokaのプログラム「Thursday Gathering」やピッチイベントなどに参加したことがあります。

Carlさん
Carlさん

海外との時差の関係で、日本時間の夕方以降に業務のピークタイムがくるので参加できないことも多いのですが。異なる業種の方など今まで知らなかった方々と交流ができて、とても有意義だと感じています。

Thursday Gatheringでピッチを行うお三方 (撮影:Nick Szasz)
堀さん
堀さん

イベントと言えば、キッチンスペースでは「BREAKFAST MEETUP」も開催されていますよね。朝食の提供やちょっとした催しがあり、それを楽しみにしているメンバーもいます。この前は、管理栄養士の資格を持つ「CIC Fukuoka」のスタッフさんが手作りで軽食を用意してくださったとか。新しい入居者との交流のきっかけにもなっていますね。

「BREAKFAST MEETUP」など入居者同士の交流会の予定がまとめられたカレンダー

オープンな雰囲気が出会いや創造を生む

入居後、仕事や生活にプラスの変化はありましたか?

Julianさん
Julianさん

オフィスで他の人と交流する機会が増え、日々の刺激や学びが増えているように感じます。設備が充実したプロフェッショナルな環境に身を置くことで、他社からの見え方も変わると思います。

Carlさん
Carlさん

実際に、CICを通じて複数の企業とつながり、人をご紹介いただいたり、仕事につながったりしたケースもあります。CICならではの人脈やそれらをつなぐノウハウがあり、ネットワークが広がって助かっています。生活環境も含めてプラスになっていると感じています。入居者の方々の雰囲気もすごく好きです。

堀さん
堀さん

わかります。いい雰囲気ですよね。毎朝コーヒーを飲んだり休憩をしたりする際に、自然と他の入居者と顔を合わせ、会話が生まれます。互いの仕事や業界の情報も、この距離感なら気軽に聞ける。「ちょっと打ち合わせできますか?」と声を掛けやすいので、仕事につながる交流が増えました。

荒木さん
荒木さん

社内のスタッフさんも「CIC Fukuoka」の環境を活用してくださっているのでしょうか?

堀さん
堀さん

メンバー全員が「QOLが上がった」と実感していると思いますよ。地下から直接オフィスに上がれるので雨の日も快適ですし、自転車通勤のメンバーも駐輪場が便利だと喜んでいます。また、弊社には母語が英語のメンバーもいますが、スタッフの方々が英語で対応してくださるので安心して過ごせています。ジムも併設されていて、朝にトレーニングをしてから仕事に臨むメンバーもいます。

Julianさん
Julianさん

ぼくたちは、ジムはまだ……。

Carlさん
Carlさん

行こうと思ってるよね、来月から(笑)。

荒木さん
荒木さん

CIC以外の施設やサービスも利用されていますか?

堀さん
堀さん

この前、両親が福岡に遊びに来た際には、最上階にある「ワンフクオカホテル」を利用しました。仕事で忙しくても、昼休みに少し抜けて一緒にランチができて、とても助かりました。ホテルも部屋数が多すぎず、落ち着いた雰囲気で特別感があり、ゲストにとっても居心地が良い環境だとわかりました。

堀さん
堀さん

「CIC Fukuoka」の魅力は、福岡のまちに溶け込みつつ、スタートアップ同士や多様な人々が自然に交わることができる場である、ということ。日常的な偶然の出会いが刺激になり、事業の発展にもつながっています。建物や設備だけでなく、そこにいる人々の空気感そのものが大きな魅力だと思いますね。

荒木さん
荒木さん

すごくうれしいコメントです!

担当者から見た「CIC Fukuoka」の魅力

入居者が働きやすい環境を用意するだけにとどまらず、偶発的な出会いや交流を生む仕掛けを続けている「CIC Fukuoka」。その魅力の核心について、荒木さんはこう語る。

荒木さん
荒木さん

CICのすごいところは、入居後のフォローアップ体制にこそあると思っています。ただ、オフィススペースを貸すのではなく、コミュニティや共創の場を提供している。そうした彼らの信念が、このオープンな雰囲気を醸成しているのだと思います。

ちなみに、「CIC Fukuoka」には11名のスタッフが常駐していて、そのうち半数以上のスタッフが入居者のフォローやイベント企画など、施設の運営のための役割を担っています。だからこそ充実したプログラムが用意できるのでしょう。しかも、距離感の詰め方がまた絶妙で。参加者同士が自然に仲良くなれる空気になるんですよね。

荒木さんから見た「CIC Fukuoka」の魅力は?

荒木さん
荒木さん

隣の会社の人のいろんな姿が見られる環境って、最初はちょっと異質だなと思いませんか。働いている姿だけじゃなくて、休んでいる姿や打ち合わせをしている姿も、オープンスペースだと全部見えるんです。入居者同士が同僚みたいな瞬間もあれば、ビジネスパートナーとして真剣な瞬間もある。その両面が共有できるのが、最大の魅力だと実感しています。

出会いや交流という点では、Venture café Fukuokaが主催する「Thursday Gathering」が好評で、毎回130~150人が集まります。
毎週木曜日の夕方、学生さんからビジネスパーソンまで、どなたでも参加できるイベントで、ビジネスアイディアを発表をする場や、セミナー、ドリンク片手に交流できる場を提供しています。海外の参加者も増えていて、「英語が話せるスタッフがいるので安心して参加できます」という声もよく聞きます。

最後に、今後の展望を聞かせてください。

荒木さん
荒木さん

現在の入居企業・団体は約80社。もちろん、今後も多くの企業/団体の皆さんにご入居いただく予定です。オープンで充実した環境がある「CIC Fukuoka」で出会いの数が増えれば、ビジネスにつながる可能性も広がります。実際に、CIC Fukuoka入居者さん同士のコラボレーションが複数始まっています。更なる入居者さんを募集中ですので、興味があれば気軽に見学にいらしてください。

ワンビルの掲げるコンセプト「創造交差点」が示す通り、偶発的な出会いが日々生まれている「CIC Fukuoka」。今後の取り組みやイベントもエヌカケル編集部が追っていきたいと思います。「Thursday Gathering」への参加もお待ちしています!

  • 荒木 元太朗 さん
    荒木 元太朗 さん

    西日本鉄道株式会社
    天神開発本部 ONE FUKUOKA BLDG.部 オフィス・スカイロビー担当 係長

    2013年に西日本鉄道株式会社に入社、現在36歳。入社後は、自動車事業本部の業務に携わり、トヨタ自動車との協業『my route』プロジェクトや三菱商事との協業AI活用型オンデマンドバス『のるーと』事業など、自動車事業における新事業の立ち上げ期を担当。2021年4月からトヨタファイナンシャルサービス株式会社に出向し、イノベーション本部でアシスタントマネージャー職。2024年、社内公募制度を活用し現職。

  • 堀 ナナ さん
    堀 ナナ さん

    Tensor Energy株式会社 代表取締役

    2011年に戦略系のコンサルタントとして再生可能エネルギー業界へ。2016年にShift Energy Japan株式会社の立ち上げに参画。2021年11月、Vincent Filterと共同でTensor Energy株式会社を創業。電力のGXとDXを加速することをミッションとして、再エネと蓄電池ポートフォリオのアセットマネジメント、AIによる発電予測と電力取引市場の予測、オペレーションの自動化、経済性と環境価値の可視化を行うプラットフォームを開発する。

  • Julian Munroさん
    Julian Munroさん

    NUNAI株式会社 代表取締役

    受賞歴多数のクリエイティブプロデューサー。nuna9とNUNAIを率い、AIと映像で人とテクノロジーをつなぐ新しい体験を創出中。

  • Carl de Beerさん
    Carl de Beerさん

    NUNAI株式会社 取締役

    ロンドンと日本を拠点とするデザイン起業家。グローバルな経験と創造性を活かし、戦略・物語・デザインでつながる冒険を続けている。

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