国内外で4ブランド・約20軒のホテルを展開する西鉄ホテルグループ。そのうちのひとつ「ソラリア」ブランドは、2011年に東京・銀座で「ソラリア西鉄ホテル銀座」を開業。ホテルブランドの躍進のきっかけとなった。
銀座4丁目と言えば、首都圏のなかでも別格の一等地。ハイレベルなホテルや施設が競い立つなか、競合と肩を並べ営業する「ソラリア西鉄ホテル銀座」には、開業から現在に至るまで、どんなドラマがあったのか。総支配人と支配人にインタビューした。
「ソラリア」ブランドのはじまりは、1989年。福岡市・天神に開業した「ソラリア西鉄ホテル(現・ソラリア西鉄ホテル福岡)」からスタートした。西鉄福岡(天神)駅・西鉄天神高速バスターミナルに直結する「ソラリアプラザ」の上層階にあり、レストラン、ショッピング、シネマ、スポーツなど多様な機能がひとつに。
設備などのハード面に限らず、接客やコンテンツなどソフト面でも高いクオリティを保つシンボルであり、天神のまちの魅力を満喫できる絶好のロケーションだ。
2015年には、初の海外進出となる「ソラリア西鉄ホテルソウル明洞」(韓国・ソウル)を、2017年には庭園デザイナーに石原和幸氏を迎えて「ソラリア西鉄ホテル京都プレミア三条鴨川」(京都市)を開業。「エレガント」「洗練」「気品」「華やかさ」といったキーワードを軸に、ブランド力にさらなる磨きをかけた。
その出発点となったのが、2011年に開業した「ソラリア西鉄ホテル銀座」。オープンからいかにして東京・銀座のまちでそのブランド力や接客の高いクオリティといった魅力を発揮して運営を行っているのか、その裏側をソラリア西鉄ホテル銀座の総支配人・松田尊之さんと支配人・山口貴廣さんに聞いた。
「ソラリア」ブランドが東京初出店。しかも、銀座4丁目という一等地だけに、社内外から注目を集めたことは間違いない。「ソラリア西鉄ホテル銀座」は、いったいどんな特色を持つホテルなのか?
「ソラリア西鉄ホテル」は「上質」や「華やかさ」をキーワードにしたミドルクラスのホテルで、「銀座」のなかでも中心部とも言える銀座4丁目に位置しています。宿泊してくださるお客さまは、ショッピングを楽しんだりお部屋でゆったり過ごされたりと、時間にもお金にも余裕がある方が多いですね。
オープン後しばらくは30~40%がインバウンド客で、大型のスーツケースを抱えているお客さまがよくいらっしゃいました。海外からのお問い合わせは、メールはもちろんお電話でのご連絡も多く、窓口となるフロントではコロナ前はいつも英語が飛び交っていました。
都心の散策や美食を楽しむ方が多い一方で、長期滞在でゆったりと過ごされるお客さまも多いように思います。私たちの客室は決して豪勢ではなく機能的でシンプルですが、「スモールラグジュアリー」を求められるお客さまが多いと感じています。
一方、国内ではビジネスマンや旅行客などを中心に「安心」というイメージでご利用いただいています。コロナ禍でインバウンド客が減った際も、国内のお客さまに足を運んでいただき、大きな励みになりました。特に、福岡や九州のお客さまの割合は昔から多く、親しみをもってご利用いただき大変感謝しております。
感度の高いお客さまが多い分、求められるサービスの質も高いわけですが、そうした緊張感でスタッフもいっそう背中が伸び、成長できる。「ソラリア」ブランドの旗艦店に立つことが、若手からベテランまで全スタッフの働く喜びや誇りにもつながっています。
「ソラリア西鉄ホテル」と言えば、有名なのがレストラン「Furutoshi」で味わえる豪勢な「モーニング」だ。人気の「フルーツサンド」のほか「洋食プレート」と「和食プレート」もあり、好きなメニューを選べるスタイル。どのメニューの野菜も契約農家から仕入れる新鮮な食材ばかりで、モーニングブームの先駆け的な存在となった。
料理長が厳選した食材を使って作る「フルーツサンド」は、メディアやSNSでたちまち話題となり、限定20食で毎日のように完売が続くなど、近隣のオフィスワーカーや観光で来た女性客の注目の的となった。
「ソラリア」ブランドの発信地として、オープン以来順調に成長を続けた「ソラリア西鉄ホテル銀座」。そうした中で直面したコロナ禍において、どのように進化していったのか?
まずは国内のお客さまに利用していただきたいと考えてビジネス客向けの「テレワーク応援プラン」を企画しました。ベッドを減らして客室のレイアウトを変更。会議や打ち合わせに使える4人掛けのテーブルを設置して、テレワークやビジネスの場として使えるデイユースプランです。
さらに、自由に移動できない中でも「旅行の楽しみを感じてもらいたい」という思いから、福岡や九州の工芸品やフォトパネルを用いたコンセプトルームを企画しました。
福岡県産のイチゴ「あまおう」を使ったスイーツや、筑後地方・久留米の特産品「久留米絣」のクッションのほか、福岡の「小石原焼」や「上野(あがの)焼」の急須と湯呑みを用意するなど、インテリアを通して福岡の魅力を発信したのです。
お客さまからの評判は上々でしたよ。北海道からのお客さまが「良かった。行ってみたい」と感想をくださったり、福岡ご出身のお客さまは「なつかしい!」と喜んでくださったり。
私たち現場のスタッフは、「どうしたら足を運んでいただけるのか」と必死で頭を悩ませました。固定概念にとらわれず、集客についてとことん考えるきっかけになったのも事実です。
コロナ禍がもたらした波は、必ずしもマイナスばかりではない。「ソラリア西鉄ホテル銀座」はソフト面でもハード面でも大きく成長を遂げたのだった。
2019年には、ホテルでは絨毯や壁紙、ファブリックの張り替えなど、大幅なリニューアルを実施。ヘアアイロンやワインクーラーを備えるほか、女性優先ルームには顔用のナイトスチーマーを設置するなど、設備やサービスをブラッシュアップして再スタートを切った。
2011年の開業から11年。常連客や銀座の近隣の店舗からは「西鉄さん」と呼ばれることもあると言う。福岡発の「ソラリア」ブランドは、東京・銀座の地にすっかり溶け込んだようだ。
その一方で、松田さんは次の展開を見据えて準備をはじめていた。
これからは、地域とのつながりがカギになると考えています。近隣には老舗の百貨店や飲食店、小売店がたくさんある。でも、1店舗だけで実現できることには限界があります。
単体では難しいことでも、それぞれが志をもって集えば、1+1=2以上のエネルギーが生まれます。そのために、近隣の百貨店や商店に相談しながら、銀座4丁目全体で地域を盛り上げていけたらと考えています。最近では、松屋銀座さんと連携してPRを実施しました。松屋銀座さんの会員向け感謝祭に当ホテルの無料宿泊券提供と会員向け特別優待宿泊プランの販売を行い、一方、当ホテルの宿泊者向けには松屋銀座内で受けられる特典チラシの作成を行いました。
銀座の一員として、「ソラリア」ブランドの一員として、地域に何を還元できるのか。「ソラリア西鉄ホテル銀座」は今、さらなる進化を遂げようとしている。
そのために大切なのは、何より「人」である。山口支配人は、「ソラリア西鉄ホテル銀座」のフロントに立つ魅力と働きがいについてこう語る。
私が初めてここに着任した時も、「ソラリア西鉄ホテル銀座」の評判は耳にしていました。東京の中心地で「ソラリア」の看板を掲げるということは、「西鉄」や「福岡」を代表してその魅力を伝える使命があると考えています。
誇りと緊張感を持ってフロントに立つこと。「ソラリア」ブランドの旗艦店としてのプライドを忘れずに業務に就くことが大切だと、日々実感します。
そのためには、サービスレベルを常に高い水準で維持し、日々磨きあげていくことも欠かせません。地域と連携しながらお客さまのニーズに応え、より良い宿泊体験を提供していけたら。
開業から11年。首都圏の中心地で奮闘する「ソラリア西鉄ホテル銀座」はこれからどう姿を変えていくのか。全国各地の「ソラリア」ブランドの成長にも注目したい。
ソラリア西鉄ホテル銀座
総支配人
2001年、株式会社西鉄ホテルズ入社。九州内の「西鉄イン」や「西鉄リゾートイン那覇」、「ソラリア西鉄ホテル釜山」などで勤務し、2022年3月から現職。
ソラリア西鉄ホテル銀座
支配人
2005年、株式会社西鉄ホテルズに一般職として入社。「西鉄イン新宿」で4年、「西鉄イン日本橋」で7年勤務した後、「ソラリア西鉄ホテル銀座」へ。